第一章
夢小説設定
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久しぶりに電車に乗った
「…………」
窓の外を通り過ぎていく景色を深く被った帽子の影から見送り俺は瞳をぼんやりとさせた
電車は線路を進む度にガタンっガタンっとリズミカルに音を鳴らし、だからといって単調ではなく不意に下から突き上げられたかのような浮遊感が偶にする
小さな箱に閉じ込められた人々は同じタイミングで体を揺らしながらもそれぞれの目的地まで思い思いに暇を潰す
話に花を咲かせる若者や新聞紙を盾に自分の世界に入ろうとする年配の者、イヤホンから音を漏らしつつスマホを眺める社会人
彼らを軽く見回し俺も自分の世界に入る為にまた窓の外を眺めた
「(久しぶりに乗ったが…落ち着かないな)」
いつもはリザードンで移動するが今日は生憎彼はポケモンドック…健康診断の日だ
タクシーや他のポケモンを使っても良かったが俺は普段彼女が見ている世界を見たくなり電車に乗り込んだ
「(資料によると次の駅を降りてすぐ近くの店でアルバイトをしているようだが)」
ローズさんから貰ったお見合い相手の資料には住んでる住所や仕事場についても簡単に書かれている
ガラルチャンピオンを相手にするのだから偽装は許されないという事にらしいが、正直そこまで目を通した事はない
ただナマエに関しては別だ
初めて会った後俺はすぐにゴミ箱に一度は捨ててしまった資料を拾い上げシワが出来た紙を必死に読んだ
彼女の事をもっと知りたくて堪らない、紙切れやメールだけでなく俺はこの目で確かめたくなり今内緒でナマエの仕事場へと向かっている
帽子を深く被り長い髪を一つに結んだ俺は私服姿という事もありまだ周りにバレていない
バレていれば狭い電車の中はきっと騒ぎになり線路を踏む音さえ聞こえなかった事だろう
「(おっと、そろそろ駅だな)」
*****************
『いらっしゃいませ〜』
店内受付のカウンターで笑顔で迎えてくれたナマエ
店の制服なのか少し短めなタイトスカートが気になるが、可愛いから怒れない
自分の番になり彼女の前に立つとナマエは一瞬体をビクつかせ帽子の影を落とした俺の顔を下から恐る恐る覗き込んだ
『……もしかして……ダンデさん?』
「良く分かったな!」
『匂いで…ってそんな事よりなんでココに?』
一度嗅いだだけで俺の匂いを覚えてくれたのか!まあ俺も君の匂いは覚えたから目を瞑っていても見つけられる自信があるが
少なからず意識してくれた事がつい嬉しくてニヤける口元を然りげ無く指先で隠しメニューで悩むふりをする
「この近くに用があってな、腹が減ったから寄ってみたんだが…まさか君に会えるなんてラッキーだぜ」
嘘だ
事前に調べて迷わないように何度も地図を確認してここに来た
『そうなんですね、凄い偶然でびっくりしました』
疑う事を知らないんだろうか?
こんなに無防備で接客してたらいつか他のアルファやベータに取られてしまいそうで不安だ
「(マーキングしたいが…突然そんな事言えないよな)」
まだ告白もしていないのに俺はすっかり彼女を自分の恋人と錯覚してしまい心配ばかり増えていた
『ウチのメニュー多くて迷いますよね?このハンバーガーやピザが特に人気なんですよ?』
眉間にシワを寄せた俺をどうやら彼女は注文に悩んでいると勘違いしたらしく親切にオススメを教えてくれた
まあ確かにメニューの量が凄いが
「ん?ここは宅配もするのか?」
メニューの片隅に書かれた文字に気がつき顔を上げるとナマエと視線がぶつかった
『ぁ、はいっ!お電話頂ければ宅配もできますよ!』
慌てて視線を泳がせ頬を赤める彼女は必死に説明するが、俺は違うことばかり考えてしまっていた
「(宅配だと?こんな無防備で警戒心のないようなナマエが自宅に来ると言うのか?そんなのカモネギが鍋を自分で持ってきたようなものじゃないかっ)」
悶々とした妄想が勝手に脳内で進んでいく
宅配に来た彼女があの手この手で室内に呼ばれて美味しく食べられる姿や嫌だと泣きつつ官能的に乱れる姿を……
今時ありえない昼ドラのようなお約束だと言うのに俺はあろうことか彼女を襲うシチュエーションに興奮しそうになり軽く咳払いをした
「(何故襲ってくる相手が皆俺なんだ!暴走するにしても程がある)」
『あの…ダンデさん?ご注文はお決まりですか?』
ハッと我に帰り前を向けばナマエが眉を下げて微笑んでおり困っているのが分かる
他にも客がいるのに受付の店員を独占しすぎたようだ
「すまないっ!じゃあこのセットをLサイズで頼む」
『はいありがとうございます!ではお席でお待ち下さいね』
慌てて注文したせいでナマエに笑われてしまったが悪い気はしない
帽子を深く被り直し空いている席にどっかりと腰を落とすと嫌な会話が耳に届いた
「あの子オメガじゃね?」
「へぇ〜悪くないじゃん、デザートに味見させてくんないかな?」
離れた席で続く会話はナマエの事を言っているようだ
いっそこのテーブルでも投げつけてやろうかと思うが流石に俺がやったら怪我人が出る
我慢だと言い聞かせ暴れそうな腕を胸の前で組み待っているとナマエがトレーに乗った食事を運んできてくれた
『お待たせしました!って…あれ?何処か具合悪いですか?顔色が…』
「いや、大丈夫だ!それより君は何時まで仕事なんだ?」
『仕事は夜の八時までです』
「大変だな…一人で帰ってるのか?」
トレーをテーブルに置く彼女にまだ行って欲しくなくて前のめりに質問をする
『一人ですけど大丈夫です、慣れましたから』
ニッコリと微笑む姿は可愛らしいが、やはり心配だ
「夜道を女性一人で帰るのは危ないんじゃないか?君を守るポケモンはいるのか?」
『ポケモンはいませんが大丈夫ですよ!こんな目立たない女誰も相手にしませんから』
ケラケラと笑うとナマエは仕事場へと背を向けて戻っていき、俺は彼女の後ろ姿を見届けながら大きなハンバーガーに噛みついた
「(なんであんなに無防備なんだ?自分がどれだけ魅力的か分かってないのか?)」
制服のシャツから見え隠れする細い首筋、短いタイトスカートから分かる形の良い尻や柔らかそうな太腿
それらに牙を向けるように俺は大きく口を開きハンバーガーに噛みつきあっという間に食べ終えてしまった
「(………腹が減るな)」
空腹とはまた違う腹の減ったような感覚、これはきっと
欲情だ
「…………」
窓の外を通り過ぎていく景色を深く被った帽子の影から見送り俺は瞳をぼんやりとさせた
電車は線路を進む度にガタンっガタンっとリズミカルに音を鳴らし、だからといって単調ではなく不意に下から突き上げられたかのような浮遊感が偶にする
小さな箱に閉じ込められた人々は同じタイミングで体を揺らしながらもそれぞれの目的地まで思い思いに暇を潰す
話に花を咲かせる若者や新聞紙を盾に自分の世界に入ろうとする年配の者、イヤホンから音を漏らしつつスマホを眺める社会人
彼らを軽く見回し俺も自分の世界に入る為にまた窓の外を眺めた
「(久しぶりに乗ったが…落ち着かないな)」
いつもはリザードンで移動するが今日は生憎彼はポケモンドック…健康診断の日だ
タクシーや他のポケモンを使っても良かったが俺は普段彼女が見ている世界を見たくなり電車に乗り込んだ
「(資料によると次の駅を降りてすぐ近くの店でアルバイトをしているようだが)」
ローズさんから貰ったお見合い相手の資料には住んでる住所や仕事場についても簡単に書かれている
ガラルチャンピオンを相手にするのだから偽装は許されないという事にらしいが、正直そこまで目を通した事はない
ただナマエに関しては別だ
初めて会った後俺はすぐにゴミ箱に一度は捨ててしまった資料を拾い上げシワが出来た紙を必死に読んだ
彼女の事をもっと知りたくて堪らない、紙切れやメールだけでなく俺はこの目で確かめたくなり今内緒でナマエの仕事場へと向かっている
帽子を深く被り長い髪を一つに結んだ俺は私服姿という事もありまだ周りにバレていない
バレていれば狭い電車の中はきっと騒ぎになり線路を踏む音さえ聞こえなかった事だろう
「(おっと、そろそろ駅だな)」
*****************
『いらっしゃいませ〜』
店内受付のカウンターで笑顔で迎えてくれたナマエ
店の制服なのか少し短めなタイトスカートが気になるが、可愛いから怒れない
自分の番になり彼女の前に立つとナマエは一瞬体をビクつかせ帽子の影を落とした俺の顔を下から恐る恐る覗き込んだ
『……もしかして……ダンデさん?』
「良く分かったな!」
『匂いで…ってそんな事よりなんでココに?』
一度嗅いだだけで俺の匂いを覚えてくれたのか!まあ俺も君の匂いは覚えたから目を瞑っていても見つけられる自信があるが
少なからず意識してくれた事がつい嬉しくてニヤける口元を然りげ無く指先で隠しメニューで悩むふりをする
「この近くに用があってな、腹が減ったから寄ってみたんだが…まさか君に会えるなんてラッキーだぜ」
嘘だ
事前に調べて迷わないように何度も地図を確認してここに来た
『そうなんですね、凄い偶然でびっくりしました』
疑う事を知らないんだろうか?
こんなに無防備で接客してたらいつか他のアルファやベータに取られてしまいそうで不安だ
「(マーキングしたいが…突然そんな事言えないよな)」
まだ告白もしていないのに俺はすっかり彼女を自分の恋人と錯覚してしまい心配ばかり増えていた
『ウチのメニュー多くて迷いますよね?このハンバーガーやピザが特に人気なんですよ?』
眉間にシワを寄せた俺をどうやら彼女は注文に悩んでいると勘違いしたらしく親切にオススメを教えてくれた
まあ確かにメニューの量が凄いが
「ん?ここは宅配もするのか?」
メニューの片隅に書かれた文字に気がつき顔を上げるとナマエと視線がぶつかった
『ぁ、はいっ!お電話頂ければ宅配もできますよ!』
慌てて視線を泳がせ頬を赤める彼女は必死に説明するが、俺は違うことばかり考えてしまっていた
「(宅配だと?こんな無防備で警戒心のないようなナマエが自宅に来ると言うのか?そんなのカモネギが鍋を自分で持ってきたようなものじゃないかっ)」
悶々とした妄想が勝手に脳内で進んでいく
宅配に来た彼女があの手この手で室内に呼ばれて美味しく食べられる姿や嫌だと泣きつつ官能的に乱れる姿を……
今時ありえない昼ドラのようなお約束だと言うのに俺はあろうことか彼女を襲うシチュエーションに興奮しそうになり軽く咳払いをした
「(何故襲ってくる相手が皆俺なんだ!暴走するにしても程がある)」
『あの…ダンデさん?ご注文はお決まりですか?』
ハッと我に帰り前を向けばナマエが眉を下げて微笑んでおり困っているのが分かる
他にも客がいるのに受付の店員を独占しすぎたようだ
「すまないっ!じゃあこのセットをLサイズで頼む」
『はいありがとうございます!ではお席でお待ち下さいね』
慌てて注文したせいでナマエに笑われてしまったが悪い気はしない
帽子を深く被り直し空いている席にどっかりと腰を落とすと嫌な会話が耳に届いた
「あの子オメガじゃね?」
「へぇ〜悪くないじゃん、デザートに味見させてくんないかな?」
離れた席で続く会話はナマエの事を言っているようだ
いっそこのテーブルでも投げつけてやろうかと思うが流石に俺がやったら怪我人が出る
我慢だと言い聞かせ暴れそうな腕を胸の前で組み待っているとナマエがトレーに乗った食事を運んできてくれた
『お待たせしました!って…あれ?何処か具合悪いですか?顔色が…』
「いや、大丈夫だ!それより君は何時まで仕事なんだ?」
『仕事は夜の八時までです』
「大変だな…一人で帰ってるのか?」
トレーをテーブルに置く彼女にまだ行って欲しくなくて前のめりに質問をする
『一人ですけど大丈夫です、慣れましたから』
ニッコリと微笑む姿は可愛らしいが、やはり心配だ
「夜道を女性一人で帰るのは危ないんじゃないか?君を守るポケモンはいるのか?」
『ポケモンはいませんが大丈夫ですよ!こんな目立たない女誰も相手にしませんから』
ケラケラと笑うとナマエは仕事場へと背を向けて戻っていき、俺は彼女の後ろ姿を見届けながら大きなハンバーガーに噛みついた
「(なんであんなに無防備なんだ?自分がどれだけ魅力的か分かってないのか?)」
制服のシャツから見え隠れする細い首筋、短いタイトスカートから分かる形の良い尻や柔らかそうな太腿
それらに牙を向けるように俺は大きく口を開きハンバーガーに噛みつきあっという間に食べ終えてしまった
「(………腹が減るな)」
空腹とはまた違う腹の減ったような感覚、これはきっと
欲情だ