第一章
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
フリードとナマエがぎこちなくなり距離をとってから一週間が経とうとしていた
『ねぇネモ…どうしたらいい?』
放課後ネモと共に下校し、屋台からアイスを買ったナマエは彼女の分を手渡しながら問いかけた
「どうしたらって、ナマエはフリードさんと今まで通り仲良くしたいんでしょ?だったら素直にそう言いに行ったらいいんじゃない?」
『う〜ネモはそういうの出来るだろうけど…あたしにはちょっと勇気がいるよ』
「そうなの?」
嫌いな物は嫌い、好きな物は好き真っ直ぐになんでも思った事を言えるネモが羨ましい
彼女ほど素直ならばこんなに悩む事もなかったかもしれない
ナマエは冷たく甘いモモンの味がするアイスを舐めながらも眉を下げ俯いた
『(別に喧嘩したわけじゃないけど…あの日から妙に避けられてる気がする)』
家が隣同士なのだから約束がなくても顔を合わせる事はあった
学校への登下校や買い物先の店で会ってもフリードは挨拶程度の会話しかせず、前のように他愛ない話も出掛ける誘いもしなくなった
そして目もすぐに逸らすようになってしまい背中に寂しさが込み上げる
「フリードさんって確か天才って言われたポケモン博士でしょ?ならバトルに誘えば仲良くなれるんじゃないかな!ポケモン大好きなんだし!」
きらりと瞳を輝かせるネモはきっと仲直り目的ではなく純粋にバトルがしたいだけだろう
友人の悪い癖に苦笑いを浮かべつつネモの案は最終手段として考えとこうと心の隅にしまい込む
「とにかくさ!ウジウジしてたって仕方ないしコッチから声かけに行こうよ!ねっ!」
『うわっ!』
パンッと不意に背中を叩かれナマエは体をフラリとよろめかせてしまい、アイスを握っていた片手が前を横切ろうとした誰かの胸元にぶつかってしまった
「……おや」
『っ!ごっごめんなさいっ!』
直ぐ様謝り顔を上げれば相手は黒縁メガネをかけた青年だった
彼にぶつかり潰れてしまったモモン味のアイスはべちゃりと音をたてて地面に落下し、スーツにはアイスで濡れた痕が残っている
『ぁ…とにかく拭かないとっ』
「ごめんっ私が押したからっ…待ってて今ハンカチ濡らしてくる!」
ネモは素早く何処かへと駆け出してしまい取り残されたナマエは顔を青くさせ彼のスーツについたアイスをハンカチで拭き取った
アイスがなくなっても染みで色の変わったスーツは元には戻らず、気持ちが焦るばかりだ
『本当にっ、本当にごめんなさいっ!』
学校でも日々嫌な思いをし
フリードとも上手くいっていない
そして今他人にまで迷惑をかけてしまった
もうこの世の終わりとでも言うように悲しみに顔を歪めているとハンカチを握るナマエの手に大きな手が重なった
「これくらい大丈夫ですよ?私の方こそ考え事をしてしまっていて…貴女のアイスを駄目にしてしまった、申し訳ありません」
物腰の柔らかい言い方をする彼は深緑の長い前髪から覗く瞳をニッコリと細め微笑んでくれた
怒って当然だと言うのに
優しい声はナマエの不安をほんの少し軽くなり苦しかった喉奥が楽になる
「あぁ…私の服より貴女の手が汚れてしまった」
彼は自分の懐からハンカチを取り出し溶けたアイスが少しついてしまっていたナマエの手を包み、優しく壊れ物を扱うように拭ってくれた
『駄目っ汚れちゃいますからっ』
「しぃ…大人しくしててください」
長身を屈めた彼はメガネをかけていても美形である事が分かりナマエは申し訳無さと気不味さに視線を泳がせ唇を結ぶ
指の一本一本を丁寧に拭き満足すると彼は背筋を戻し小首を傾げながら微笑んだ
「綺麗になりましたね、そうだ良ければお詫びにアイスを弁償したいのですが…何味がお好きですか?」
『えっ、いえいえ!それを言うならこっちが弁償しないといけないですし!アイスの事は忘れてください!』
「そうですか?遠慮しなくてもいいんですよ?」
『本当に大丈夫です!貴方こそ…スーツに染みが』
「このくらい大丈夫ですよ」
『でも……ぁ』
お互いにお互いの事を心配し遠慮し合う、似たようなやり取りを繰り返している事に気がつくとナマエは小さく笑い青年も静かに笑った
「ではせめてオススメのアイスを教えください、実は私もアイスが食べたかったのですがどの味にするか悩んでたんです」
屋台へと視線を向けた彼に吊られナマエも店へ視線を向けた、小さな店だが味は数種類ありカラフルな色は見ているだけでワクワクする
『あたしは…モモン味が好きです、さっぱりしてて美味しいんですよ?』
「モモンですか、なるほど」
さっき食べていたアイスも同じ味だ
何気なく素直に言うと青年はニッコリと笑い屋台の店主に何やら注文をする為に背を向けた
『(大きな人…フリードさんくらいあるかも)』
長い髪を一つに結んだ彼はスーツが良く似合い品もある
近所では見ない顔だと考えていると青年は振り返り何故か手には同じアイスが二つ握られていた
「どうぞ」
『……え?』
渡されたピンク色のアイスは爽やかなフルーツの香りがするモモンのアイス
「あぁ…確かにこれは美味しいですね、甘くてそれでいて風味もいい…癖になりそうです」
『……アイス、ありがとうございます』
「美味しいアイスを教えてくれたお礼ですよ」
顔を上げ目を大きくさせながら青年を見上げるが、彼は瞳を細め軽くお辞儀をするとナマエを置いて何処かへと歩いて行ってしまった
「お待たせって…あれ?あの人は?」
やっと来たネモは濡れたハンカチを握り辺りを見回したが既に男は消えており片眉を吊り上げた
『……行っちゃった』
彼の消えた方向を見つめたままナマエは暫くぼんやりと瞳を曇らせ、青年の顔を思い出そうとする
ペパーともフリードともまた違った大人の雰囲気を持つ青年に対し不思議な感情が心に残り、ナマエは戸惑ってもいた
「んー服大丈夫だったのかな?ってアイスっ!溶けてるよ?」
『あ…うん』
慌てて舐めたモモンの味はさっぱりと甘く、冷たさが気持ちよかった
***************
ネモとその後雑談しながら途中まで一緒に帰り、それぞれの家路へと別れた
街から離れた場所に自宅がある為、周りの風景は段々とのどかになり坂道を降りる頃には辺り一面に草むらが広がり野生ポケモン達が平和に遊んでいるのが見える
いつも通りの風景を眺めながら歩いていると緑色の草むらで目立つ白を見つけた、それは地べたに胡座をかき座っているフリードだった
『……ぁ、フリードさんだ』
彼はカメラを真剣な目で覗いておりまだナマエには気がついていない
このまま知らん顔して家に帰る事もできるが、ナマエの足は止まり小さく拳を作った
『(ネモならきっと声をかけるっ、そうだよ!あたしから動かないとずっとこのままかもしれないし)』
気合を入れ道のない草むらへと足を進め近寄ると
「……ん?っ!ナマエ?」
『こんにちは、何してるんですか?』
突然現れた彼女にフリードは一瞬驚くが苦笑いを浮かべながら冷静さを取り戻そうとしていた
「あ?ああっ実は興味深いピカチュウを見つけてな?見るか?」
録画機能を操作し画面を映すと確かにそこにはピカチュウが映っていた
ナマエはよく見ようと彼の隣に腰かけ画面を見つめすぐに驚きに口を開いた
『この子っ空飛んでるっ!』
「なっ!凄いだろ?俺もこんな奴初めて見た……って…ん?なんか甘い匂いがするな」
鼻をひくつかせ匂いを追いかけた彼は自然と顔をナマエへと近づけた
「香水?いや違うな、何か食ったのか?」
急に近くなった距離感に彼女は驚き画面に集中したふりをし視線を落とす
『えっと、多分モモンの匂いかもです!あたしさっきモモン味のアイス食べたからっ』
ちらりと彼を見るといつもの蜂蜜色の瞳は閉じられ匂いを嗅ぐのに集中しているようだ
久しぶりに近くで見た彼の顔は鼻筋も通っており唇の形もいい
小麦色の肌からは太陽の匂いがしそうな程健康的でナマエはつい見惚れてしまう
「あぁ…そっか、モモンか…いい匂いだな」
頬に近寄る彼の鼻先
僅かに長い前髪が彼女の肌をこしょこしょと掠め擽ったい、反射的にナマエが肩を竦めた次の瞬間
ちゅっ
「……あ」
『……え?』
わざとではない
彼女が動いたせいでフリードの唇がぶつかっただけだが、確かにこれはキスだった
意識した途端じわじわとナマエは頬を赤めていき、フリードも目を見開き自分の口元を片手で隠し頬を赤めていった
「いやっ、悪い!今のは事故で、本当にすまんっ!」
『いえっ大丈夫です!う、うん?大丈夫…です、はい…嫌じゃないです…から』
ナマエは必死に画面に映るピカチュウに意識を向けようとするが顔を向けているだけで見えてはいない
隣に座っていたフリードも背筋を戻し胡座をかき直して座るが、手のひらで隠した唇をぺろりと舌で舐めとり仄かに感じるモモンの味に瞳を熱くさせた
「(………甘っ)」
『ねぇネモ…どうしたらいい?』
放課後ネモと共に下校し、屋台からアイスを買ったナマエは彼女の分を手渡しながら問いかけた
「どうしたらって、ナマエはフリードさんと今まで通り仲良くしたいんでしょ?だったら素直にそう言いに行ったらいいんじゃない?」
『う〜ネモはそういうの出来るだろうけど…あたしにはちょっと勇気がいるよ』
「そうなの?」
嫌いな物は嫌い、好きな物は好き真っ直ぐになんでも思った事を言えるネモが羨ましい
彼女ほど素直ならばこんなに悩む事もなかったかもしれない
ナマエは冷たく甘いモモンの味がするアイスを舐めながらも眉を下げ俯いた
『(別に喧嘩したわけじゃないけど…あの日から妙に避けられてる気がする)』
家が隣同士なのだから約束がなくても顔を合わせる事はあった
学校への登下校や買い物先の店で会ってもフリードは挨拶程度の会話しかせず、前のように他愛ない話も出掛ける誘いもしなくなった
そして目もすぐに逸らすようになってしまい背中に寂しさが込み上げる
「フリードさんって確か天才って言われたポケモン博士でしょ?ならバトルに誘えば仲良くなれるんじゃないかな!ポケモン大好きなんだし!」
きらりと瞳を輝かせるネモはきっと仲直り目的ではなく純粋にバトルがしたいだけだろう
友人の悪い癖に苦笑いを浮かべつつネモの案は最終手段として考えとこうと心の隅にしまい込む
「とにかくさ!ウジウジしてたって仕方ないしコッチから声かけに行こうよ!ねっ!」
『うわっ!』
パンッと不意に背中を叩かれナマエは体をフラリとよろめかせてしまい、アイスを握っていた片手が前を横切ろうとした誰かの胸元にぶつかってしまった
「……おや」
『っ!ごっごめんなさいっ!』
直ぐ様謝り顔を上げれば相手は黒縁メガネをかけた青年だった
彼にぶつかり潰れてしまったモモン味のアイスはべちゃりと音をたてて地面に落下し、スーツにはアイスで濡れた痕が残っている
『ぁ…とにかく拭かないとっ』
「ごめんっ私が押したからっ…待ってて今ハンカチ濡らしてくる!」
ネモは素早く何処かへと駆け出してしまい取り残されたナマエは顔を青くさせ彼のスーツについたアイスをハンカチで拭き取った
アイスがなくなっても染みで色の変わったスーツは元には戻らず、気持ちが焦るばかりだ
『本当にっ、本当にごめんなさいっ!』
学校でも日々嫌な思いをし
フリードとも上手くいっていない
そして今他人にまで迷惑をかけてしまった
もうこの世の終わりとでも言うように悲しみに顔を歪めているとハンカチを握るナマエの手に大きな手が重なった
「これくらい大丈夫ですよ?私の方こそ考え事をしてしまっていて…貴女のアイスを駄目にしてしまった、申し訳ありません」
物腰の柔らかい言い方をする彼は深緑の長い前髪から覗く瞳をニッコリと細め微笑んでくれた
怒って当然だと言うのに
優しい声はナマエの不安をほんの少し軽くなり苦しかった喉奥が楽になる
「あぁ…私の服より貴女の手が汚れてしまった」
彼は自分の懐からハンカチを取り出し溶けたアイスが少しついてしまっていたナマエの手を包み、優しく壊れ物を扱うように拭ってくれた
『駄目っ汚れちゃいますからっ』
「しぃ…大人しくしててください」
長身を屈めた彼はメガネをかけていても美形である事が分かりナマエは申し訳無さと気不味さに視線を泳がせ唇を結ぶ
指の一本一本を丁寧に拭き満足すると彼は背筋を戻し小首を傾げながら微笑んだ
「綺麗になりましたね、そうだ良ければお詫びにアイスを弁償したいのですが…何味がお好きですか?」
『えっ、いえいえ!それを言うならこっちが弁償しないといけないですし!アイスの事は忘れてください!』
「そうですか?遠慮しなくてもいいんですよ?」
『本当に大丈夫です!貴方こそ…スーツに染みが』
「このくらい大丈夫ですよ」
『でも……ぁ』
お互いにお互いの事を心配し遠慮し合う、似たようなやり取りを繰り返している事に気がつくとナマエは小さく笑い青年も静かに笑った
「ではせめてオススメのアイスを教えください、実は私もアイスが食べたかったのですがどの味にするか悩んでたんです」
屋台へと視線を向けた彼に吊られナマエも店へ視線を向けた、小さな店だが味は数種類ありカラフルな色は見ているだけでワクワクする
『あたしは…モモン味が好きです、さっぱりしてて美味しいんですよ?』
「モモンですか、なるほど」
さっき食べていたアイスも同じ味だ
何気なく素直に言うと青年はニッコリと笑い屋台の店主に何やら注文をする為に背を向けた
『(大きな人…フリードさんくらいあるかも)』
長い髪を一つに結んだ彼はスーツが良く似合い品もある
近所では見ない顔だと考えていると青年は振り返り何故か手には同じアイスが二つ握られていた
「どうぞ」
『……え?』
渡されたピンク色のアイスは爽やかなフルーツの香りがするモモンのアイス
「あぁ…確かにこれは美味しいですね、甘くてそれでいて風味もいい…癖になりそうです」
『……アイス、ありがとうございます』
「美味しいアイスを教えてくれたお礼ですよ」
顔を上げ目を大きくさせながら青年を見上げるが、彼は瞳を細め軽くお辞儀をするとナマエを置いて何処かへと歩いて行ってしまった
「お待たせって…あれ?あの人は?」
やっと来たネモは濡れたハンカチを握り辺りを見回したが既に男は消えており片眉を吊り上げた
『……行っちゃった』
彼の消えた方向を見つめたままナマエは暫くぼんやりと瞳を曇らせ、青年の顔を思い出そうとする
ペパーともフリードともまた違った大人の雰囲気を持つ青年に対し不思議な感情が心に残り、ナマエは戸惑ってもいた
「んー服大丈夫だったのかな?ってアイスっ!溶けてるよ?」
『あ…うん』
慌てて舐めたモモンの味はさっぱりと甘く、冷たさが気持ちよかった
***************
ネモとその後雑談しながら途中まで一緒に帰り、それぞれの家路へと別れた
街から離れた場所に自宅がある為、周りの風景は段々とのどかになり坂道を降りる頃には辺り一面に草むらが広がり野生ポケモン達が平和に遊んでいるのが見える
いつも通りの風景を眺めながら歩いていると緑色の草むらで目立つ白を見つけた、それは地べたに胡座をかき座っているフリードだった
『……ぁ、フリードさんだ』
彼はカメラを真剣な目で覗いておりまだナマエには気がついていない
このまま知らん顔して家に帰る事もできるが、ナマエの足は止まり小さく拳を作った
『(ネモならきっと声をかけるっ、そうだよ!あたしから動かないとずっとこのままかもしれないし)』
気合を入れ道のない草むらへと足を進め近寄ると
「……ん?っ!ナマエ?」
『こんにちは、何してるんですか?』
突然現れた彼女にフリードは一瞬驚くが苦笑いを浮かべながら冷静さを取り戻そうとしていた
「あ?ああっ実は興味深いピカチュウを見つけてな?見るか?」
録画機能を操作し画面を映すと確かにそこにはピカチュウが映っていた
ナマエはよく見ようと彼の隣に腰かけ画面を見つめすぐに驚きに口を開いた
『この子っ空飛んでるっ!』
「なっ!凄いだろ?俺もこんな奴初めて見た……って…ん?なんか甘い匂いがするな」
鼻をひくつかせ匂いを追いかけた彼は自然と顔をナマエへと近づけた
「香水?いや違うな、何か食ったのか?」
急に近くなった距離感に彼女は驚き画面に集中したふりをし視線を落とす
『えっと、多分モモンの匂いかもです!あたしさっきモモン味のアイス食べたからっ』
ちらりと彼を見るといつもの蜂蜜色の瞳は閉じられ匂いを嗅ぐのに集中しているようだ
久しぶりに近くで見た彼の顔は鼻筋も通っており唇の形もいい
小麦色の肌からは太陽の匂いがしそうな程健康的でナマエはつい見惚れてしまう
「あぁ…そっか、モモンか…いい匂いだな」
頬に近寄る彼の鼻先
僅かに長い前髪が彼女の肌をこしょこしょと掠め擽ったい、反射的にナマエが肩を竦めた次の瞬間
ちゅっ
「……あ」
『……え?』
わざとではない
彼女が動いたせいでフリードの唇がぶつかっただけだが、確かにこれはキスだった
意識した途端じわじわとナマエは頬を赤めていき、フリードも目を見開き自分の口元を片手で隠し頬を赤めていった
「いやっ、悪い!今のは事故で、本当にすまんっ!」
『いえっ大丈夫です!う、うん?大丈夫…です、はい…嫌じゃないです…から』
ナマエは必死に画面に映るピカチュウに意識を向けようとするが顔を向けているだけで見えてはいない
隣に座っていたフリードも背筋を戻し胡座をかき直して座るが、手のひらで隠した唇をぺろりと舌で舐めとり仄かに感じるモモンの味に瞳を熱くさせた
「(………甘っ)」