最終章
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本当に美味い物ほど味わうのが難しいというのを俺は初めて知った
ずっと食べたかったそれは触れる前はゆっくりと味わい大切にしようと思っていたのに
いざ食べると味を楽しむ前に早く全部欲しくて飲み込んでしまい、もう一度味を確かめようと次から次へと求めてしまう
俺とナマエは飛行船の故障をいい事に丸一日家で過ごした
二人だけの時間、俺だけの恋人
ガキみたいに浮かれちまって
つい彼女の体力も考えず求めてしまう
着替えてる最中やほんの些細な会話の途中…
愛情表現の触れるだけのキスから深いキスに変わった瞬間
行為を終え彼女の体を労る時や風呂に連れていった時…等など一日だけで何回ヤッたか分からねぇくらい発情しちまった
甘い声や涙を浮かべる瞳
俺の名を呼び腕の中で幸せそうに笑う顔
柔らかい唇と噛みつきたくなる程白く細い首筋
いい匂いがして柔らかい肌
頭から爪先まで全てが愛しくて…
本当に俺は心の底からナマエに惚れてるようだ
今もカーテンの隙間から差し込む柔らかい朝日に照らされ、ベッドにうつ伏せに倒れ疲れながら熱い吐息を繰り返す姿が愛しい
『ぁ…皆の…ご飯…』
「俺がやっとくから少し眠っとけ」
『……ん』
汗と俺の出した物で酷い有り様だ
なのに幸せそうに眠るものだから可愛くて仕方ない
普段の可愛らしい笑顔も勿論好きだが、行為中の女の顔になる瞬間は俺の背筋をゾクゾクと震わせる程エロい
好きで好きで…もっと色んな顔がみたくて、余裕もなく力任せに抱いて泣かせて
それでも止まらない
旅の仲間には悪いが一生このままナマエを俺の家に閉じ込めて囲ってしまいたいと思ってしまう程だ
これが結婚願望ってやつなんだろうか?
いまいちハッキリとはしないが、ナマエをずっと俺だけの物にしたいと出会ってから今まで思ってきた
きっとこれが答えだ
「………指輪買っとくか」
隣で疲れて眠る彼女の左手を起こさないようにそっと持ち上げると薬指を親指で軽く撫でサイズを目測する
俺の勝手な自己満足だが…誰かに奪われる前にここに予約しとこう
「……よしっ!ちょっと待ってろな?」
目測を終えた俺はナマエの薬指に愛を込めてキスをすると彼女の相棒達が入ったボールをポケットにしまい、音を立てないように外へと出かけリザードンで空へと飛び上がった
どんな指輪にしようか
どんな言葉をかけようか
「……プロポーズ……か、なんかむず痒いな」
言いたい事、あげたいものが浮びすぎて俺は機嫌良くパルデアの街へと向かった
***************
フリードが出かけてから暫く
漸く目をさましたナマエは時計を見てぎょっとし眠気を吹き飛ばした
『もう夕方って…あたしどんだけ寝てたんだろ』
ベッドサイドにはフリードからの置き手紙があり、眠っていたから後でまた来るとの事だ
『ずっとフリードさんとくっついてたからかな?いきなり一人になると変な感じ…寂しくてそわそわする』
欲望と本能のままに求め合い抱き合っていた一日…
前日も似たように過ごしたなぁと変な罪悪感を感じつつフリードが用意してくれていた服に着替える
首や胸元のキスマークが目立たないように首まで隠れたノースリーブのタートルネック
下はジーンズとシンプルに揃え最後に胸元に彼のプレゼントしてくれたネックレスをつけた
『ぅ…腰…というか足がフラフラしてる』
少し外の空気が吸いたくなり機械のようにギクシャクする足で必死に階段を降りる
外への扉を開けると茜色の光と涼しい風が彼女の髪を撫で気持ちがいい
『……はぁ…なんか久しぶりに外に出た気分』
ふぅと息を吐きながら肩の力を抜くと、ふと遠くに一人で歩くリコを見かけた
『あれ?リコちゃーん!』
大きな声で声をかけるとリコは足を止め辺りを見回し、ナマエに気がつくとコチラへと駆け寄ってくれた
「ナマエ!あれ?ここが#主人公 #の家なの?」
『あ、ううん、あたしのはこの隣の家で…ここはフリードさんの家』
「え、あ…そっそうなんだ!」
顔を赤くし気不味そうに答えた彼女、何かを察したリコは顔を真っ赤にさせ二人は似たような顔をしてはオロオロと他の話題を必死に考えた
「そ、そうだ!私これからスパイスを買いに行くんだけど…一緒にいかない?」
『スパイス?うん!買い物ならあたしも行きたい!』
せっかくパルデアに来たんだ
買い物をするにしても、しないにしても気分転換になる
是非一緒にとリコと共にスマホの地図片手に街へ歩き出した
『マードックさんが欲しいって言ってたの?』
「うん!でも昨日は手に入らなくて…そしたらネットのサイトで限定スパイスが手に入るって」
『へぇ、ラッキーだね!(あれ?でも…この辺りにお店なんてあったかな?)』
パルデアを全て知ってるわけではないが、この先にスパイスの店はなかった筈だ
疑問を感じながらリコのスマホの地図にそい歩いていくと段々と人気のない細い道になり、周りも倉庫のような建物しか見えなくなった
「あれ…おかしいな…この辺りのはずなのに」
彼女の足元にいるニャオハも不思議そうに小首を傾げる
『この辺なんだよね?なら空から見れば…ぁ、そっかあたしのボールはフリードさんに渡したんだった』
腰に手をかけようとするがナマエの相棒達はフリードが預かっていた
これではウォーグルで空から見る事もできない
どうしたものかと足を止めると
コツンッと後ろから誰かの足跡が聞こえ、自然と二人はそちらを振り返った
「おやおや…お嬢さん達、こんな場所でどうしました?」
緑色の髪に黒縁眼鏡
物腰の柔らかい口調は最後に会った時そのものだった
『……どうして…ここに?』
驚きと喜びの混じった顔を浮かべるナマエにリコは不思議そうに二人を見比べた
彼女の知り合いだろうか
それならばとリコは一歩前に踏み出し
「あの、よければ道を教えてくれませんか?このスパイスを買いに行きたい…ん……あれ?」
スマホを開きネットのチラシを出そうとするがエラーになった
さっきまでは確かに開けたサイトだというのに
「申し訳ないですが、少々急がせて貰いますよ」
「え?」
突如リコの前に現れたポケモンはオーベムだった
そのポケモンは光を放つとリコとニャオハは動けなくなり、電池が切れたようにその場に膝を付き俯いた
『リコちゃん?え?どうしたのっ!』
ナマエも膝を付きリコを支えながら顔を覗き込んだ
だがリコは無表情のまま喋りもせず地面だけを見つめている
何が起きたのか分からない
戸惑っている彼女に構わずオーベムはリコの首に下がっているペンダントを奪うと主の元へと帰っていった
「ふふ…簡単でしたね」
手の中に握りしめたペンダントに微笑んだ彼、それをまだ理解でないといった顔でナマエは見上げた
『スピネルさん?どういう事ですか?リコちゃんに何をしたの!そのペンダントをどうするつもりですか!』
「久しぶりに再会できたというのに…まだ他人の事ばかり気にするんですね」
スピネルはゆっくりと近寄り片膝を地面につけるとナマエの顎をそっと掬い上げ、自分へと向かせた
「貴女ならもう予想ができてる筈だ…私が敵だと」
『っ!どうして…?いつからこんな』
「最初からです…貴女と出会った時から私は既にエクスプローラーズの一員でした」
嘘だと目を見開く彼女にスピネルは鼻で笑いピンク色の下唇をそっと親指の腹でなぞった
「今回は別の仕事で来ただけですが、ここで貴女に会えたのは好都合でした」
近寄ってくる整った顔
睫毛の長い瞳は妖しく細められ何か良からぬ事を考えているのが分かった
『仕事って…目的はリコちゃんのペンダントなの?それは彼女にとって大事な物なの!お願いスピネルさん!返してくださいっ』
必死にスピネルに頼み込むが、彼の視線は彼女の首に下がったネックレスに向けられていた
蜂蜜色の石がついたそれは過去に会った男…フリードを思い出した黒い感情が湧き出てくる
「それは簡単には聞けないお願いですね」
『……どうしたら聞いてくれますか?』
アカデミーで過ごした時間が二人にはある、もしかしたらお願いを聞いてくれるかもしれない
小さな期待を込めてスピネルを見つめた
彼女の反応をスピネルは予想していたのか悩む仕草もせず静かに微笑んだ
「…………私の物になるなら…今回は見逃してあげてもいいですよ?」
『スピネルさんの…物?』
「ええ、貴女の能力は素晴らしい!是非私の役にたっていただきたい」
元々彼がナマエに近寄った理由はポケモンと話せる特殊な力があるからだ
何かと利用価値があると見ていた彼は今度こそ彼女を手に入れようとするが…
『それが…少し前からあたしにはもう能力はなくて、ポケモンの声は聞こえないんです』
リコの為なら役に立ちたい
だがスピネルが求めるのは消えてしまった自分の力だ
これでは交換条件にならないと顔を青くさせるが、スピネルは怒るでもなく小首を傾げた
「ほう?……ですが能力が完全に消えたとは考えにくい、私が自ら貴女の体を調べ能力を取り戻して差し上げますよ」
『調べる?』
「ええ、貴女の全てをね」
目の前に突き付けられたペンダント
キラキラと不思議な輝きを放つそれをスピネルはナマエに見せつけ口角を吊り上げる
「さあ…どうします?私の物になりますか?それともお友達を犠牲にしてペンダントは諦めますか?」
戦いたくてもボールはない
このまま彼を見逃すのも嫌だ
だから…
『貴方と……行きます』
例え自分に何かおきてもきっとフリード達なら助けてくれる
今はリコをなんとかしなくてはと自分を差し出した
「ふ…ふふっ……ふははっ!」
顔が歪む程笑みを浮かべた彼は勢いよくナマエの顎を掴み直すと噛みつくように唇に襲いかかった
『んんっ!』
抵抗しようとするが、僅かな唇の隙間から舌が捩じ込まれる
フリードとは違う少し長い舌
同じキスという行為だというのにナマエの体は拒否反応を起こし背筋を震わせた
驚いた彼女は咄嗟に彼の舌に噛みつき逃げようとスピネルの肩を強く押し身を引いた
「っ!」
『っ…はぁっ…ぅ』
「……ふふ、調教し甲斐がありますね」
口の端から薄っすらと血を流した彼は指先で何かを指示するとオーベムが彼女の目の前に現れた
『っ!』
リコに放った光と同じ色だ
妖しい光を見ないようにしようとするが遅く
オーベムの催眠によりナマエは意識を失い、力が抜け落ちた彼女をスピネルが支える
「可愛い人だ…貴女の考えてる事なんてお見通しですよ?」
やっと腕の中に堕ちてきたオモチャ
スピネルは眠りに入った彼女の首元に手を伸ばすとブツッと鈍い音をさせネックレスを引き千切り、忌々しそうに美しく輝く石を睨みつけた
「二度と横取りなんてさせない…無駄な悪知恵が浮かばないよう貴女の心からあの男を消し去ってあげましょう」
その後リコが正気に戻った頃にはその場にスピネルとナマエの姿はなかった
ずっと食べたかったそれは触れる前はゆっくりと味わい大切にしようと思っていたのに
いざ食べると味を楽しむ前に早く全部欲しくて飲み込んでしまい、もう一度味を確かめようと次から次へと求めてしまう
俺とナマエは飛行船の故障をいい事に丸一日家で過ごした
二人だけの時間、俺だけの恋人
ガキみたいに浮かれちまって
つい彼女の体力も考えず求めてしまう
着替えてる最中やほんの些細な会話の途中…
愛情表現の触れるだけのキスから深いキスに変わった瞬間
行為を終え彼女の体を労る時や風呂に連れていった時…等など一日だけで何回ヤッたか分からねぇくらい発情しちまった
甘い声や涙を浮かべる瞳
俺の名を呼び腕の中で幸せそうに笑う顔
柔らかい唇と噛みつきたくなる程白く細い首筋
いい匂いがして柔らかい肌
頭から爪先まで全てが愛しくて…
本当に俺は心の底からナマエに惚れてるようだ
今もカーテンの隙間から差し込む柔らかい朝日に照らされ、ベッドにうつ伏せに倒れ疲れながら熱い吐息を繰り返す姿が愛しい
『ぁ…皆の…ご飯…』
「俺がやっとくから少し眠っとけ」
『……ん』
汗と俺の出した物で酷い有り様だ
なのに幸せそうに眠るものだから可愛くて仕方ない
普段の可愛らしい笑顔も勿論好きだが、行為中の女の顔になる瞬間は俺の背筋をゾクゾクと震わせる程エロい
好きで好きで…もっと色んな顔がみたくて、余裕もなく力任せに抱いて泣かせて
それでも止まらない
旅の仲間には悪いが一生このままナマエを俺の家に閉じ込めて囲ってしまいたいと思ってしまう程だ
これが結婚願望ってやつなんだろうか?
いまいちハッキリとはしないが、ナマエをずっと俺だけの物にしたいと出会ってから今まで思ってきた
きっとこれが答えだ
「………指輪買っとくか」
隣で疲れて眠る彼女の左手を起こさないようにそっと持ち上げると薬指を親指で軽く撫でサイズを目測する
俺の勝手な自己満足だが…誰かに奪われる前にここに予約しとこう
「……よしっ!ちょっと待ってろな?」
目測を終えた俺はナマエの薬指に愛を込めてキスをすると彼女の相棒達が入ったボールをポケットにしまい、音を立てないように外へと出かけリザードンで空へと飛び上がった
どんな指輪にしようか
どんな言葉をかけようか
「……プロポーズ……か、なんかむず痒いな」
言いたい事、あげたいものが浮びすぎて俺は機嫌良くパルデアの街へと向かった
***************
フリードが出かけてから暫く
漸く目をさましたナマエは時計を見てぎょっとし眠気を吹き飛ばした
『もう夕方って…あたしどんだけ寝てたんだろ』
ベッドサイドにはフリードからの置き手紙があり、眠っていたから後でまた来るとの事だ
『ずっとフリードさんとくっついてたからかな?いきなり一人になると変な感じ…寂しくてそわそわする』
欲望と本能のままに求め合い抱き合っていた一日…
前日も似たように過ごしたなぁと変な罪悪感を感じつつフリードが用意してくれていた服に着替える
首や胸元のキスマークが目立たないように首まで隠れたノースリーブのタートルネック
下はジーンズとシンプルに揃え最後に胸元に彼のプレゼントしてくれたネックレスをつけた
『ぅ…腰…というか足がフラフラしてる』
少し外の空気が吸いたくなり機械のようにギクシャクする足で必死に階段を降りる
外への扉を開けると茜色の光と涼しい風が彼女の髪を撫で気持ちがいい
『……はぁ…なんか久しぶりに外に出た気分』
ふぅと息を吐きながら肩の力を抜くと、ふと遠くに一人で歩くリコを見かけた
『あれ?リコちゃーん!』
大きな声で声をかけるとリコは足を止め辺りを見回し、ナマエに気がつくとコチラへと駆け寄ってくれた
「ナマエ!あれ?ここが#主人公 #の家なの?」
『あ、ううん、あたしのはこの隣の家で…ここはフリードさんの家』
「え、あ…そっそうなんだ!」
顔を赤くし気不味そうに答えた彼女、何かを察したリコは顔を真っ赤にさせ二人は似たような顔をしてはオロオロと他の話題を必死に考えた
「そ、そうだ!私これからスパイスを買いに行くんだけど…一緒にいかない?」
『スパイス?うん!買い物ならあたしも行きたい!』
せっかくパルデアに来たんだ
買い物をするにしても、しないにしても気分転換になる
是非一緒にとリコと共にスマホの地図片手に街へ歩き出した
『マードックさんが欲しいって言ってたの?』
「うん!でも昨日は手に入らなくて…そしたらネットのサイトで限定スパイスが手に入るって」
『へぇ、ラッキーだね!(あれ?でも…この辺りにお店なんてあったかな?)』
パルデアを全て知ってるわけではないが、この先にスパイスの店はなかった筈だ
疑問を感じながらリコのスマホの地図にそい歩いていくと段々と人気のない細い道になり、周りも倉庫のような建物しか見えなくなった
「あれ…おかしいな…この辺りのはずなのに」
彼女の足元にいるニャオハも不思議そうに小首を傾げる
『この辺なんだよね?なら空から見れば…ぁ、そっかあたしのボールはフリードさんに渡したんだった』
腰に手をかけようとするがナマエの相棒達はフリードが預かっていた
これではウォーグルで空から見る事もできない
どうしたものかと足を止めると
コツンッと後ろから誰かの足跡が聞こえ、自然と二人はそちらを振り返った
「おやおや…お嬢さん達、こんな場所でどうしました?」
緑色の髪に黒縁眼鏡
物腰の柔らかい口調は最後に会った時そのものだった
『……どうして…ここに?』
驚きと喜びの混じった顔を浮かべるナマエにリコは不思議そうに二人を見比べた
彼女の知り合いだろうか
それならばとリコは一歩前に踏み出し
「あの、よければ道を教えてくれませんか?このスパイスを買いに行きたい…ん……あれ?」
スマホを開きネットのチラシを出そうとするがエラーになった
さっきまでは確かに開けたサイトだというのに
「申し訳ないですが、少々急がせて貰いますよ」
「え?」
突如リコの前に現れたポケモンはオーベムだった
そのポケモンは光を放つとリコとニャオハは動けなくなり、電池が切れたようにその場に膝を付き俯いた
『リコちゃん?え?どうしたのっ!』
ナマエも膝を付きリコを支えながら顔を覗き込んだ
だがリコは無表情のまま喋りもせず地面だけを見つめている
何が起きたのか分からない
戸惑っている彼女に構わずオーベムはリコの首に下がっているペンダントを奪うと主の元へと帰っていった
「ふふ…簡単でしたね」
手の中に握りしめたペンダントに微笑んだ彼、それをまだ理解でないといった顔でナマエは見上げた
『スピネルさん?どういう事ですか?リコちゃんに何をしたの!そのペンダントをどうするつもりですか!』
「久しぶりに再会できたというのに…まだ他人の事ばかり気にするんですね」
スピネルはゆっくりと近寄り片膝を地面につけるとナマエの顎をそっと掬い上げ、自分へと向かせた
「貴女ならもう予想ができてる筈だ…私が敵だと」
『っ!どうして…?いつからこんな』
「最初からです…貴女と出会った時から私は既にエクスプローラーズの一員でした」
嘘だと目を見開く彼女にスピネルは鼻で笑いピンク色の下唇をそっと親指の腹でなぞった
「今回は別の仕事で来ただけですが、ここで貴女に会えたのは好都合でした」
近寄ってくる整った顔
睫毛の長い瞳は妖しく細められ何か良からぬ事を考えているのが分かった
『仕事って…目的はリコちゃんのペンダントなの?それは彼女にとって大事な物なの!お願いスピネルさん!返してくださいっ』
必死にスピネルに頼み込むが、彼の視線は彼女の首に下がったネックレスに向けられていた
蜂蜜色の石がついたそれは過去に会った男…フリードを思い出した黒い感情が湧き出てくる
「それは簡単には聞けないお願いですね」
『……どうしたら聞いてくれますか?』
アカデミーで過ごした時間が二人にはある、もしかしたらお願いを聞いてくれるかもしれない
小さな期待を込めてスピネルを見つめた
彼女の反応をスピネルは予想していたのか悩む仕草もせず静かに微笑んだ
「…………私の物になるなら…今回は見逃してあげてもいいですよ?」
『スピネルさんの…物?』
「ええ、貴女の能力は素晴らしい!是非私の役にたっていただきたい」
元々彼がナマエに近寄った理由はポケモンと話せる特殊な力があるからだ
何かと利用価値があると見ていた彼は今度こそ彼女を手に入れようとするが…
『それが…少し前からあたしにはもう能力はなくて、ポケモンの声は聞こえないんです』
リコの為なら役に立ちたい
だがスピネルが求めるのは消えてしまった自分の力だ
これでは交換条件にならないと顔を青くさせるが、スピネルは怒るでもなく小首を傾げた
「ほう?……ですが能力が完全に消えたとは考えにくい、私が自ら貴女の体を調べ能力を取り戻して差し上げますよ」
『調べる?』
「ええ、貴女の全てをね」
目の前に突き付けられたペンダント
キラキラと不思議な輝きを放つそれをスピネルはナマエに見せつけ口角を吊り上げる
「さあ…どうします?私の物になりますか?それともお友達を犠牲にしてペンダントは諦めますか?」
戦いたくてもボールはない
このまま彼を見逃すのも嫌だ
だから…
『貴方と……行きます』
例え自分に何かおきてもきっとフリード達なら助けてくれる
今はリコをなんとかしなくてはと自分を差し出した
「ふ…ふふっ……ふははっ!」
顔が歪む程笑みを浮かべた彼は勢いよくナマエの顎を掴み直すと噛みつくように唇に襲いかかった
『んんっ!』
抵抗しようとするが、僅かな唇の隙間から舌が捩じ込まれる
フリードとは違う少し長い舌
同じキスという行為だというのにナマエの体は拒否反応を起こし背筋を震わせた
驚いた彼女は咄嗟に彼の舌に噛みつき逃げようとスピネルの肩を強く押し身を引いた
「っ!」
『っ…はぁっ…ぅ』
「……ふふ、調教し甲斐がありますね」
口の端から薄っすらと血を流した彼は指先で何かを指示するとオーベムが彼女の目の前に現れた
『っ!』
リコに放った光と同じ色だ
妖しい光を見ないようにしようとするが遅く
オーベムの催眠によりナマエは意識を失い、力が抜け落ちた彼女をスピネルが支える
「可愛い人だ…貴女の考えてる事なんてお見通しですよ?」
やっと腕の中に堕ちてきたオモチャ
スピネルは眠りに入った彼女の首元に手を伸ばすとブツッと鈍い音をさせネックレスを引き千切り、忌々しそうに美しく輝く石を睨みつけた
「二度と横取りなんてさせない…無駄な悪知恵が浮かばないよう貴女の心からあの男を消し去ってあげましょう」
その後リコが正気に戻った頃にはその場にスピネルとナマエの姿はなかった