第四章
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カントー地方についたライジングボルテッカーズ
依頼主から貰ったリコという少女の写真を各自のスマホロトムに送り終えフリードは作戦を説明する
「この女の子が持つペンダントを狙ってる奴らがいるらしい、なるべく速やかに保護しよう」
「「「了解!」」」
マードック達がそれぞれ船を降りる為にミーティングルームを出ていくとフリードは空中に浮かぶ一台のスマホロトムに視線をずらした
「ドット、ナマエから連絡はあるか?」
【今朝カントー地方の海域に入ったって連絡は来たけど…まだ合流するには時間がかかりそうだね】
「………そうか………他に何か言ってたか?」
考え事をしながら顎を撫でる彼は返事を待つがドットからの返事がこない、どうしたのかと顔を上げるとすぐ側に彼女のスマホロトムが迫っており画面には紫の髪をしたドットがアップで映っていた
【いい加減にしろよ!喧嘩だかなんだか知らないけどボクを巻き込むな!ナマエに聞きたい事あるならフリードが直接連絡すればいいだろっ!】
「い…いや、別に俺は」
【気になって仕方ないなら素直に言えばいいじゃないか!フリードもナマエも見ててイライラする!二人の問題だろ?素直に連絡出来ないなら面倒くさいし別れればいいじゃん!】
「それは嫌だ!絶対俺は別れないっ!」
嫉妬により素直になれなかったのは自分でも分かっている
大人気なく怒ってしまったのも後悔してる
だが謝るにも怖かったのだ
もしナマエの心に今回の事のせいで別れるという選択が浮かんでいたら、自分ではなく若い男の方がいいと思っていたら…
「(はいそうですかってお前を手放せる程…俺は大人じゃねぇよ)」
下げた腕で拳を作りフリードはツラそうに眉間にシワを寄せ唇を噛んだ
【……はぁ、ならちゃんと連絡してやれば?ナマエもきっと待ってる…てヤバっ!配信の時間だ!じゃっ後はよろしく!】
通話が終わるとドットのスマホロトムは持ち主の元へと帰る為に飛んでいき
「………はぁぁぁ……よしっ!」
フリードは気合いを入れる為に大きく深呼吸を一度すると自分の頬を両手で強く叩き、腰のポケモンから自分のスマホロトムを取り出した
一方フリード達と合流する為にウォーグルでカントー地方を目指していたナマエ
まだ目的のセキエイ学園には距離があり地図を見ては眉を下げ長い髪を頬へと落としていた
『ウォーグル、疲れてない?』
ナマエの問い掛けにウォーグルは平気だとばかりに鳴き声を上げ力強く翼を羽ばたかせた
頼もしい仲間に感謝しながら彼の首筋を撫で気持ちを伝えると彼女のポケットからスマホロトムが目の前に飛び出した
『フリードさん?』
画面に表示されたフリードの文字
ぎこちなくなっていたせいで上手く連絡できなかった相手から電話が来た、ナマエは不安と緊張に体を固くさせ一つ唾を飲み込むと指先で画面を操作した
【あ……よお、今いいか?】
『……はい』
久しぶりに聞いた大好きな人の声
緊張とは違った早くなる胸の鼓動は相手が好きな相手だからだろう
耳に感じる彼の存在に切なさと安心感を感じつつナマエは静かにフリードの次の言葉を待った
【この前はすまなかった…少し…いや結構熱くなっちまって酷い態度だったろ…本当にすまん】
『………もう、いいですよ…あたしの方こそ怪我の事とか色々黙っててごめんなさい…せっかく依頼を受ける事を許して貰ったからこれ以上心配させたくなくて』
彼が先に謝ってくれたお陰でナマエも素直に気持ちを伝えると事ができた、喉につっかえていた事が言えほんの少し体から力が抜ける
【……あのな〜そりゃ心配はするだろ?大事な恋人の事だぜ!】
『…恋人……まだあたしフリードさんの恋人ですか?』
一番聞きたくて聞けなかった事
ナマエは下唇を強く噛みウォーグルの背中に置いていた手に拳をつくった
背中の羽根を突然掴まれたウォーグルは不満げに彼女に振り返ったが…ナマエの潤んだ瞳に文句を言う気がなくなり前を向き直す
【っ!当たり前だろ!何言い出すんだ!】
すぐに帰ってきた彼の言葉は嬉しかった
それでも離れていた間に積もった不安は彼に聞いてほしかった
『だって!喧嘩してから…なんかぎこちなくて…連絡もドットに頼んでたから…このまま終わっちゃうのかなぁて』
すると向う側にいるフリードがため息を一つした息遣いが耳に聞こえ、ナマエはじんわりと背中に嫌な汗を浮かべる
【……それは…俺の意気地がなかっただけだ、俺こそお前に嫌われちまったんじゃないかって……不安だったんだよ】
てっきり呆れられたのかと思えば予想とは違い
彼もまた同じように不安を感じていたのだと知った
心配して喧嘩して……不安になって……また心配して…
歳上の彼でも自分と同じなのだと分かると心に温かい物が広がりナマエは小さく微笑んだ
『……ふふ、あたし達同じだったんですね』
柔らかくなった彼女の声にフリードもまた安心し肩の力を抜きながら微笑んだ
【……ああ、そうだな…同じだ】
やっと元に戻れた
二人は嬉しそうにスマホに耳を寄せ会話を続け、今まで言えなかった身近にあった事等で盛り上がった
オリオとマードックが喧嘩しマードックが負けてしまった事
リザードンの火炎放射を真似ようとホゲータが頑張っている事
ナマエもまた旅先で見たポケモンの事や小さな島々で見た植物について話し時間がとても早く流れていった
【おっと!そろそろ行かないと…あいつ等ばかり働かせたら怒られるからな】
時計を見れば結構な時間が経っている
依頼に戻らなければならない事を彼女に伝えるとナマエも頷き納得した
『今日リコちゃんを迎えに行くんですよね?』
【ん、学園で聞き込みをするつもりだ!ナマエが合流する頃には保護できてる筈さ】
『なるべくあたしもそっちへ早く戻れるように頑張りますね』
【そうだな、そうしてくれると俺も助かるぜ】
『助かる?』
他にも何か困っている事があるんだろか?
彼の仲間達は自分なんかより数倍知識も経験もある
それなのに困っているという事は人手が足りない仕事でもできたのか
心配そうに彼の言葉を待つと
【……正直ナマエ不足で頭がおかしくなりそうなんだよ】
『えっ、え?…あ、また…そんな冗談言って』
突然予想外の事を言い出した彼にナマエは驚き急激に顔を熱くさせていく
その慌てぶりは顔が見えなくてもフリードに伝わり彼はニヤリと意地悪く笑った
【冗談なわけねぇだろ?俺ら恋人になったばかりだ…つまりまだまだラブラブ甘々な時期なんだぜ?できる事なら一分一秒とも離れたくねぇ】
『ラブラブ…?甘々って』
【お前の匂いを嗅ぎながら抱きしめたい…俺のもんだって感じたいし感じて欲しい】
彼女の温もりを思い出しているのかフリードの声は甘く
普段よりも色っぽい
彼は自分の唇を人差し指で軽くなぞり瞳を細めながら笑い散々自分をオアズケにさせた相手に小さな罰を与える
【い〜ぱい甘やかしてキスして…強く抱きしめてお前の首筋に俺のもんて印つけて…】
『〜〜っ!ちょっストップ!なんか色々と危ないのでこれ以上は口にしないでください!』
思った通りナマエには効果抜群だったらしい
イタズラが成功したフリードはクスクスと笑い
【ハハッ、だから早く俺の胸に帰って来い……早くお前に会いたい】
願いを込めて思いを伝えた
無事に再会できるように
少しでも早く戻れるようにと
『………はい』
通話が終わりスマホをしまってもナマエとフリードは暫く動く事は出来ずお互いの事を頭に浮かべては恋心を膨らませ瞳を濃く潤ませていた
「(会いたい)」
『(会いたいなぁ)』
だが彼女達の再会を遅らせるように依頼は一筋縄ではいかなかったようだ
リコという少女に用があったのはフリード達だけではなく謎の少年が彼らの前に立ち塞がり
またナマエの帰還を邪魔するように雲行きは妖しくなり嵐が彼女の旅を邪魔する事になった
空は厚い雲に覆われ雨風が横殴りに襲い掛かり飛行を得意とするウォーグルもナマエを気遣いながら飛ぶには危険すぎる
『っ、ウォーグルっ!どっかで雨宿りしよう!島を見つけたら降りてくれる?』
体を揺らさせながら必死に降り立つ場所を探していると暗い海の真ん中に島を見つけた
ウォーグルは早くナマエを安全な場所へ避難させようと急降下するが、一際強い風が彼らを襲い
『わあっ!!』
ギャギャっ!!
バランスを崩した彼女は海へと落ちてしまった
ウォーグルは直ぐ様助けようとするが黒い波が彼女を飲み込んでしまい悲痛な鳴き声だけが響く
『(苦しっ、ウォーグルっ!!)』
海水は冷たく、荒波により右へ左へと体を強い力で引っ張られるようだ
手を伸ばしウォーグルへ助けを求めようとするが波に翻弄されもうどちらが上か下かも分からない
苦しさに気泡が口から抜け出し闇に意識が奪われていく彼女の頭には今まで過去が浮かんでは消え、これが走馬灯かと何処か冷静に感じた
虐められた事
一人ぼっちでいた時元気をくれたドラメシヤ
歩み寄ってくれたペパーやネモ
いつも優しい母
そして突然自分の世界に現れた蜂蜜色の瞳をした彼
ぼんやりと見える海中
首筋に下げていたネックレスの鎖がふわりと浮かび地上からさす僅かな光が宝石に反射し蜂蜜色の光を輝かせる
『(……フリードさん)』
暗い海の中に光る小さな蜂蜜色は静かに闇に包まれ消えていき
嵐は次の朝になるまで続いた
依頼主から貰ったリコという少女の写真を各自のスマホロトムに送り終えフリードは作戦を説明する
「この女の子が持つペンダントを狙ってる奴らがいるらしい、なるべく速やかに保護しよう」
「「「了解!」」」
マードック達がそれぞれ船を降りる為にミーティングルームを出ていくとフリードは空中に浮かぶ一台のスマホロトムに視線をずらした
「ドット、ナマエから連絡はあるか?」
【今朝カントー地方の海域に入ったって連絡は来たけど…まだ合流するには時間がかかりそうだね】
「………そうか………他に何か言ってたか?」
考え事をしながら顎を撫でる彼は返事を待つがドットからの返事がこない、どうしたのかと顔を上げるとすぐ側に彼女のスマホロトムが迫っており画面には紫の髪をしたドットがアップで映っていた
【いい加減にしろよ!喧嘩だかなんだか知らないけどボクを巻き込むな!ナマエに聞きたい事あるならフリードが直接連絡すればいいだろっ!】
「い…いや、別に俺は」
【気になって仕方ないなら素直に言えばいいじゃないか!フリードもナマエも見ててイライラする!二人の問題だろ?素直に連絡出来ないなら面倒くさいし別れればいいじゃん!】
「それは嫌だ!絶対俺は別れないっ!」
嫉妬により素直になれなかったのは自分でも分かっている
大人気なく怒ってしまったのも後悔してる
だが謝るにも怖かったのだ
もしナマエの心に今回の事のせいで別れるという選択が浮かんでいたら、自分ではなく若い男の方がいいと思っていたら…
「(はいそうですかってお前を手放せる程…俺は大人じゃねぇよ)」
下げた腕で拳を作りフリードはツラそうに眉間にシワを寄せ唇を噛んだ
【……はぁ、ならちゃんと連絡してやれば?ナマエもきっと待ってる…てヤバっ!配信の時間だ!じゃっ後はよろしく!】
通話が終わるとドットのスマホロトムは持ち主の元へと帰る為に飛んでいき
「………はぁぁぁ……よしっ!」
フリードは気合いを入れる為に大きく深呼吸を一度すると自分の頬を両手で強く叩き、腰のポケモンから自分のスマホロトムを取り出した
一方フリード達と合流する為にウォーグルでカントー地方を目指していたナマエ
まだ目的のセキエイ学園には距離があり地図を見ては眉を下げ長い髪を頬へと落としていた
『ウォーグル、疲れてない?』
ナマエの問い掛けにウォーグルは平気だとばかりに鳴き声を上げ力強く翼を羽ばたかせた
頼もしい仲間に感謝しながら彼の首筋を撫で気持ちを伝えると彼女のポケットからスマホロトムが目の前に飛び出した
『フリードさん?』
画面に表示されたフリードの文字
ぎこちなくなっていたせいで上手く連絡できなかった相手から電話が来た、ナマエは不安と緊張に体を固くさせ一つ唾を飲み込むと指先で画面を操作した
【あ……よお、今いいか?】
『……はい』
久しぶりに聞いた大好きな人の声
緊張とは違った早くなる胸の鼓動は相手が好きな相手だからだろう
耳に感じる彼の存在に切なさと安心感を感じつつナマエは静かにフリードの次の言葉を待った
【この前はすまなかった…少し…いや結構熱くなっちまって酷い態度だったろ…本当にすまん】
『………もう、いいですよ…あたしの方こそ怪我の事とか色々黙っててごめんなさい…せっかく依頼を受ける事を許して貰ったからこれ以上心配させたくなくて』
彼が先に謝ってくれたお陰でナマエも素直に気持ちを伝えると事ができた、喉につっかえていた事が言えほんの少し体から力が抜ける
【……あのな〜そりゃ心配はするだろ?大事な恋人の事だぜ!】
『…恋人……まだあたしフリードさんの恋人ですか?』
一番聞きたくて聞けなかった事
ナマエは下唇を強く噛みウォーグルの背中に置いていた手に拳をつくった
背中の羽根を突然掴まれたウォーグルは不満げに彼女に振り返ったが…ナマエの潤んだ瞳に文句を言う気がなくなり前を向き直す
【っ!当たり前だろ!何言い出すんだ!】
すぐに帰ってきた彼の言葉は嬉しかった
それでも離れていた間に積もった不安は彼に聞いてほしかった
『だって!喧嘩してから…なんかぎこちなくて…連絡もドットに頼んでたから…このまま終わっちゃうのかなぁて』
すると向う側にいるフリードがため息を一つした息遣いが耳に聞こえ、ナマエはじんわりと背中に嫌な汗を浮かべる
【……それは…俺の意気地がなかっただけだ、俺こそお前に嫌われちまったんじゃないかって……不安だったんだよ】
てっきり呆れられたのかと思えば予想とは違い
彼もまた同じように不安を感じていたのだと知った
心配して喧嘩して……不安になって……また心配して…
歳上の彼でも自分と同じなのだと分かると心に温かい物が広がりナマエは小さく微笑んだ
『……ふふ、あたし達同じだったんですね』
柔らかくなった彼女の声にフリードもまた安心し肩の力を抜きながら微笑んだ
【……ああ、そうだな…同じだ】
やっと元に戻れた
二人は嬉しそうにスマホに耳を寄せ会話を続け、今まで言えなかった身近にあった事等で盛り上がった
オリオとマードックが喧嘩しマードックが負けてしまった事
リザードンの火炎放射を真似ようとホゲータが頑張っている事
ナマエもまた旅先で見たポケモンの事や小さな島々で見た植物について話し時間がとても早く流れていった
【おっと!そろそろ行かないと…あいつ等ばかり働かせたら怒られるからな】
時計を見れば結構な時間が経っている
依頼に戻らなければならない事を彼女に伝えるとナマエも頷き納得した
『今日リコちゃんを迎えに行くんですよね?』
【ん、学園で聞き込みをするつもりだ!ナマエが合流する頃には保護できてる筈さ】
『なるべくあたしもそっちへ早く戻れるように頑張りますね』
【そうだな、そうしてくれると俺も助かるぜ】
『助かる?』
他にも何か困っている事があるんだろか?
彼の仲間達は自分なんかより数倍知識も経験もある
それなのに困っているという事は人手が足りない仕事でもできたのか
心配そうに彼の言葉を待つと
【……正直ナマエ不足で頭がおかしくなりそうなんだよ】
『えっ、え?…あ、また…そんな冗談言って』
突然予想外の事を言い出した彼にナマエは驚き急激に顔を熱くさせていく
その慌てぶりは顔が見えなくてもフリードに伝わり彼はニヤリと意地悪く笑った
【冗談なわけねぇだろ?俺ら恋人になったばかりだ…つまりまだまだラブラブ甘々な時期なんだぜ?できる事なら一分一秒とも離れたくねぇ】
『ラブラブ…?甘々って』
【お前の匂いを嗅ぎながら抱きしめたい…俺のもんだって感じたいし感じて欲しい】
彼女の温もりを思い出しているのかフリードの声は甘く
普段よりも色っぽい
彼は自分の唇を人差し指で軽くなぞり瞳を細めながら笑い散々自分をオアズケにさせた相手に小さな罰を与える
【い〜ぱい甘やかしてキスして…強く抱きしめてお前の首筋に俺のもんて印つけて…】
『〜〜っ!ちょっストップ!なんか色々と危ないのでこれ以上は口にしないでください!』
思った通りナマエには効果抜群だったらしい
イタズラが成功したフリードはクスクスと笑い
【ハハッ、だから早く俺の胸に帰って来い……早くお前に会いたい】
願いを込めて思いを伝えた
無事に再会できるように
少しでも早く戻れるようにと
『………はい』
通話が終わりスマホをしまってもナマエとフリードは暫く動く事は出来ずお互いの事を頭に浮かべては恋心を膨らませ瞳を濃く潤ませていた
「(会いたい)」
『(会いたいなぁ)』
だが彼女達の再会を遅らせるように依頼は一筋縄ではいかなかったようだ
リコという少女に用があったのはフリード達だけではなく謎の少年が彼らの前に立ち塞がり
またナマエの帰還を邪魔するように雲行きは妖しくなり嵐が彼女の旅を邪魔する事になった
空は厚い雲に覆われ雨風が横殴りに襲い掛かり飛行を得意とするウォーグルもナマエを気遣いながら飛ぶには危険すぎる
『っ、ウォーグルっ!どっかで雨宿りしよう!島を見つけたら降りてくれる?』
体を揺らさせながら必死に降り立つ場所を探していると暗い海の真ん中に島を見つけた
ウォーグルは早くナマエを安全な場所へ避難させようと急降下するが、一際強い風が彼らを襲い
『わあっ!!』
ギャギャっ!!
バランスを崩した彼女は海へと落ちてしまった
ウォーグルは直ぐ様助けようとするが黒い波が彼女を飲み込んでしまい悲痛な鳴き声だけが響く
『(苦しっ、ウォーグルっ!!)』
海水は冷たく、荒波により右へ左へと体を強い力で引っ張られるようだ
手を伸ばしウォーグルへ助けを求めようとするが波に翻弄されもうどちらが上か下かも分からない
苦しさに気泡が口から抜け出し闇に意識が奪われていく彼女の頭には今まで過去が浮かんでは消え、これが走馬灯かと何処か冷静に感じた
虐められた事
一人ぼっちでいた時元気をくれたドラメシヤ
歩み寄ってくれたペパーやネモ
いつも優しい母
そして突然自分の世界に現れた蜂蜜色の瞳をした彼
ぼんやりと見える海中
首筋に下げていたネックレスの鎖がふわりと浮かび地上からさす僅かな光が宝石に反射し蜂蜜色の光を輝かせる
『(……フリードさん)』
暗い海の中に光る小さな蜂蜜色は静かに闇に包まれ消えていき
嵐は次の朝になるまで続いた