第三章
夢小説設定
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「ゴホッ、っ、ん…」
『風邪ですか?』
「あ〜かもな、まあほっとけば治るさ」
飛行船で旅をしていると色々な気候や激しい温暖差に体力を奪われやすい
ポケモンも含め仲間達はモリーに定期的に健康診断を受け早めの処置をしてもらっていたがフリードは治療室にあまり足を運ばなかった
自分は大丈夫
そんなどこからか沸いてくる大きな自信があった
今回も軽い風邪だろうと言う彼は甘く見ていたようだ、朝から咳が続き昼を過ぎた頃には熱が高くなり遠目にも顔が赤いのが分かるようになる
そして夜には高熱を出しついに寝込んでしまった
「いつもの薬出しとくから、まったく…少しでも異常がある時は治療室に来るように何度も言ってるのに」
「ハハッ…わりぃ…」
フリードの自室に来たモリーは悪態をつきつつ薬を用意しベッドで眠る彼に手渡した
フリードはへらりと苦笑いを浮かべているが本当は体調が悪く苦しいのだろう
これ以上は今は責めまいと治療鞄を持ち上げた彼女は部屋の隅で待機していたナマエへと視線を向ける
「ナマエも風邪が移る前に部屋からでなよ?」
『あ…はい、もう少し話したら…』
しょんぼりと肩を落とすナマエに小さく鼻で笑いモリーは静かに部屋を出た、フリードと二人っきりになったナマエは気不味そうに自分の手を持ち合わせ視線を彷徨わせた
「そんなとこいないでもっとこっち来いよ、それとも風邪をひいた男には近寄りたくないか?」
上体を少し起こした彼は熱があるというのに優しく手招きし呼んでくれる
ナマエは切なさと恋しさに唇をむず痒くさせゆっくりと彼の側に近寄るとベッドへと腰掛けた
『寝ないでいいんですか?』
「もうちょっとお前とお喋りしたら寝るさ」
漸く側に来てくれた恋人に満足するとフリードは枕へとゆっくりと頭を倒し仰向けに寝てくれた
「あ〜あ、風邪とはな…キャップやリザードンに怒られちまう」
やれやれとため息交じりに言う彼は拗ねた子供のようでナマエはつい口元を緩めてしまう
『怒りませんよ、二匹とも優しい子だもの』
「そりゃお前に対してだろ?俺には結構シビアなんだぜ?この間もちょーと失敗しただけですげぇ怒られたしな」
彼女から見るとリザードンは甘えん坊でキャップは紳士だが、フリードに対しては違うようだ
男同士だからというのもあるのかもしれない
『あ!フリードさん夕飯まだでしたよね?何か食べますか?』
ふと時計を見ればいつもの夕飯の時間が過ぎている
彼が望むならマードックに頼んで食べやすい物を持ってこようかと考えていると、フリードは少し考えたふりをしたニヤリと笑った
「んー……ならナマエが食べたい」
『帰ります』
「へ?ちょっ!」
ベッドから立ち上がり突然扉の方へと歩き出そうとした彼女にフリードは大慌てし前のめりにナマエの腕を咄嗟に掴んだ
「ああああっ!嘘っ!ジョーク!悪かったって!」
『もう!……心配してるのに』
頬を膨らませながらも元の位置に座り直した彼女にフリードはホッとし自分の黒いロンTの襟元を指先で揺らした
「はぁ…大袈裟だな、よくある風邪だから一晩寝れば治るってのに」
『でも苦しそうです…顔もこんなに赤いし…熱い』
襟元を揺らし涼もうとする彼の頬を手の甲で撫でてみた
熱い熱気を肌で感じ心配そうに見ているとフリードは困ったように笑った
「………たまに一気に体が疲労を思い出すんだ、普段は何してもびくともしない癖に何でもない時にぐわっ!てな…でも大抵一晩寝れば治るからそんな泣きそうな顔すんなよ」
彼女の手の甲に頬を少し押し付け甘えるとナマエもほんの少し落ち着いたようだ
先程より心配の色を薄くさせると眉を下げながらも微笑み返した
『…ん』
手を戻しお互いに見つめ合うとフリードから先に話を切り出す
「本当なら部屋に戻れって言うべきなんだろうが…我儘言っていいか?」
『いいですよ?』
彼の我儘ならなんでも聞きたい
どんな事を言ってくるのかと思えばフリードは少し迷いつつもナマエを見つめ
「……俺が眠るまででいい、側にいてくれないか?」
予想よりもシンプルな我儘だった
てっきり何か持って来いだの食べたいだと言われると思っていたナマエはふにゃりと笑い
『ふふ、最初からそのつもりでしたよ』
「ふはっ、流石俺の彼女だな!」
俺の彼女と言われナマエはほんわかと嬉しい気持ちが胸に広がった
今さらながら恋人になれた喜びに浸っていると
「あ、もう一つ我儘いいか?」
『あ、はい!なんですか?』
ハッと我に帰りニヤける口元に力を入れ直すと、ベッドで寝ていた彼は突然上半身を起こし腕を胸の前でクロスさせると黒いロンTの裾を掴み
「汗で服が気持ち悪いんだ、着替え取ってくれないか?」
『へ?』
確認する前にフリードは自分の服を捲り上げ小麦色の腹筋から胸筋が服の中から見えだし、襟元を通って服を脱ぎ終わったフリードは白い前髪を揺らしながらコチラを金色の瞳で見つめた
普段はジャケットのせいで分かりにくいが全て脱いだ彼の体は男性らしく筋肉が浮き出ており二の腕も太い
『っ、ぁ、…え?』
上半身だけとはいえ男性の裸に動揺してしまうとフリードは彼女の後ろを指差し
「あのクローゼットに白いシャツがあったはずなんだ、それをくれないか?」
『ひゃひゃい!』
挙動不審に勢いよく立ち上がった彼女は耳まで真っ赤にしクローゼットへと急ぎ、そんな彼女の後ろ姿にフリードはニヤける口元を手のひらで隠した
「(これくらいで意識してんのか?マジで可愛いなぁ)」
『(早く着てもらわないと!あたし女の子なのに鼻血出ちゃうかも!)』
急いで持ってきたシャツを顔を背けながら彼に押し付け、初な反応にクスクス笑いながらフリードもシャツに着替えてくれた
『(な…なんか……色っぽい?)』
小麦色の肌のせいなのか
それとも熱があるからなのか
白いシャツを羽織る姿、腕を袖に通す一つ一つの仕草が美しくて見惚れてしまう
胸の前をボタンで数ヵ所留め終わると襟の中に入ってしまった後ろ髪を軽く手のひらで払い元に戻す
全てを終えた彼はじっとコチラを見ていたナマエに気が付き意地悪く口元を吊り上げた
「なんだ?惚れ直したのか?」
『へあっ!なっ!そんなんじゃ無くもない事もないようなっ』
慌ててしまい変な事を口走ってしまいナマエは自分の無駄に動いてしまう口元を両手で隠し眉を下げた
『……惚れ直した……かもです』
「っ!」
言い訳を言ったらもっとからかってやろう
そう思っていたのにまさかの素直な答えに今度はフリードが胸をときめかせる番だ
どちらが病人なのか分からない程顔が真っ赤になった二人
どちらとなく視線が合わさるとフリードは自分の首の後ろを擦りながら口を尖らせた
「〜〜っ、風邪治したら覚えてろよっ!」
『えっ?』
「前に言ったろ?俺が欲しくて堪らなくしてやるって!その練習するからな!」
『ええぇぇぇ!!』
風邪を引いてはいるがフリードも男だ
恋人と少しでも早く一歩踏み出したいようだ
フンッと不貞腐れ枕へと倒れ込む彼
風邪が治った後の事に不安を感じ頬をより熱くしてしまうナマエ
そして…
その日はすぐに来てしまった