第一章
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
キバナと遊んだ次の日
約束通りダンデが朝早く迎えに来てくれた
ただ約束を守っただけだというのに彼はドヤ顔をし何故そこまで自信満々なのか謎だが、チハルは彼の隣に立つリザードンの方に釘付けになった
『うわぁ生のリザードン初めてみました!大きいですね!』
「カッコイイだろ?俺の自慢の相棒だ」
『はい!カッコイイし強そうです!』
褒められたリザードンは満更でもなく鼻息荒くさせチハルの腹に顔を擦り付けた
ツヤツヤしたオレンジ色のリザードンの肌には古い傷跡がいくつもあり今までどんな激しいバトルしてきたのかがよく分かる
彼の傷跡を指先でなぞりながらチハルは眉を下げて微笑みリザードンの活躍を想像した
『こんなに傷だらけなのにパートナーと一緒に戦ってくれるなんて…きっとダンデさんと強い絆があるんですね』
「そうだな、俺がまだジムチャレンジをする前から彼とは一緒だが兄弟のように共に育ち戦ってきたからきっと誰よりも分かり合っているぜ!な?リザードン!」
ダンデの声に反応しリザードンもチハルの腹から顔を離して鳴き声をあげた
ポケモンとトレーナーは一見指示を出す人間の方が上に見えるが本来はきっと対等なのだろう
理想の姿をダンデに見たチハルは自分もそうなりたいと思いながらまだ見ぬパートナーに想いを寄せた
「よし!ハロンに行こう!リザードンに乗ってくれ」
『え?二人も乗って大丈夫なんですか?』
背を向けるリザードンに視線を向けるが彼は早く乗れとばかりに炎がついた尻尾を揺らした
乗せてくれるのはありがたいが、本当に二人も乗って大丈夫なんだろうか?
心配で中々足が進まない彼女にダンデは優しく笑いチハルの肩に触れた
「俺のリザードンは力持ちだから大丈夫だ!それに君くらいなら俺でも軽々運べるぜ?」
『いえ、でも…ここからハロンって遠いって地図で見ましたし…あたし今日はカバンも下げてるしきっと重いと思う、それに昨日食べすぎて…』
まだ迷う彼女にダンデは焦れったくなり気持ちが固まるのを待たずに行動に移した
「乗れば分かるさ!」
『え?ちょっ、ひやぁ!!』
チハルの許しも貰わず彼はショートパンツから出た彼女の膝裏と背中に腕を回し軽々抱き上げた
見た目通り小柄な体は軽くダンデの腕の中に簡単に収まってしまう
今日は白いシャツではなく大きめのパーカーを上に来ている為胸元への視線を迷わせる必要もなくダンデは自然と笑顔を向ける事ができた
「軽いな?ちゃんと食べないと駄目だぜ?」
「食べてます!昨日だってお昼にパンを三つも食べちゃいましたし」
「パン?俺なら十個は食えるぜ!」
軽く笑いながら移動しリザードンの背中へと乗せるとダンデもその後ろへと飛び乗った
『ど…どうしたら?』
「リザードンの首の付根を掴むといい、後は俺が支えよう」
リザードンの背中は見た目より乗り心地もよく温かい、翼の付け根にダンデは足をかけるとチハルの腹に片腕を回し落ちないように支えてやった
太い腕の感触はパーカーを着ていても分かり逞しさに胸が大きく飛び跳ねる
『(なんか…密着してる!お腹柔らかいのバレちゃう!少しでも凹ませないとっ)』
そこまで相手が気にしていないのに気になるのが女性という物かもしれない
チハルは無駄な努力をし腹を凹ませては頬をほんのり赤めていた
「よしリザードン!出発だ!」
ダンデの声と共に大きな翼を左右に開き地面から飛び上がるリザードン、二人分の重さなど感じない程彼は伸び伸びと空を飛び気持ちのいい風がチハルの頬を撫でた
『う……わぁ……』
大空はどこまでも広く高い
地面から高い空を飛ぶせいか空気は涼しく、肌に感じる風が清々しい
先程までの心配も何処かへおいてきてしまったのかチハルは自由な空の世界にすっかりハマってしまった
「怖くないか?」
後ろから声をかけたダンデに彼女は顔だけを振り向かせ楽しげにはにかんだ笑みを見せた
『全然!ポケモンと空を飛ぶのは初めてですが寧ろ楽しいし気持ちいいです!リザードンって凄いですね!』
初の飛行を恐れる事なく楽しいと言ってのけた彼女にダンデは驚くがすぐに笑顔へと変わり前を見つめた
「(もしかしたら…彼女は俺に近いのかもしれない)」
ダンデも初めての飛行は恐れる事なく寧ろ楽しいと感じた、ポケモンに好かれる彼女ならきっと将来いいトレーナーになる
そんな予感を感じながらハロンを目指し暫く上空からのガラルを楽しんだ
ナックルシティから後半のワイルドエリア、そしてエンジンシティから前半のワイルドエリア
それぞれ強さが違うポケモンがいる事、開会式は毎年エンジンシティで行われる事を説明し進んでいると下に牧草地が見えてきた
緑いっぱいの広い牧場に見てる白い塊はウールーの群れだろう
『ウールーだ!もこもこで可愛いっ!』
「あっこら!あまり前のめりになったら…」
よく見ようと下を覗き込もうとし体を丸めると腹に回していたダンデの腕にチハルの胸がむにゅんと形を変えて乗っかった
「っ!!」
ウールーに夢中で気がついていないのだろう
柔らかくも重みのある胸の感触にダンデは体中に熱い血が流れていくのを感じた
神経が腕に集まり僅かに彼女が体を揺らす度にマシュマロのような柔らかい物が触れる
その度にダンデは息を止め別の事を考えようと必死に頭をフル回転させた
「リザードン!待ち合わせの時間に遅れる!少し急いでくれ!」
まだ時間はある筈だが、そう言いたげに視線を後ろにリザードンは向けるが顔を真っ赤にした相棒に気がつくとリザードンは言われた通りに飛行速度を早めてくれた
彼のお陰ですぐにブラッシータウンに着き待ち合わせの駅前に降り立つとダンデはチハルを降ろしてやり、ほんの少し距離をとった
『ここは?』
「ブラッシータウンだ、ここで弟と待ち合わせなんだが…」
被っていた帽子で口元を隠した彼はそっぽを向き弟を探すふりをする、先程の事のせいで赤くなった顔を見せたくないようだ
コチラを見てくれないダンデに不安を感じ、何か自分は粗相をしてしまったんだろうかと眉を下げるがリザードンが彼女の頬を舐め慰めてくれた
『んっ、ふふ…リザードンったら、あっそうだ!ここまで運んでくれてありがとうね?疲れなかった?』
頬を舐める彼の喉元を撫でてやりながら聞けばリザードンはグルグルと喉を鳴らしご機嫌だ
本当に彼女はポケモンに好かれやすいようだ
横目にチハルに甘える相棒を見つめダンデは帽子に隠れた口元をムっと歪めていた
「(なんだか…面白くないぜ)」
どちらに対しての気持ちなのかは分からない
だが仲良さげな彼らに嫉妬しているのは確かだ
初めて感じる感情に戸惑っていると駅前には人々が集まりだしダンデの存在に気がついたファンが群がってきた
皆はそれぞれバトルを褒め憧れを口にし彼を歓迎している、チハルは盛り上がる渦に圧倒されリザードンの影へと隠れるしか出来なかった
そんな中一人の女性がダンデへ近づきカメラを向けた
「あの!記念に一枚一緒に撮ってもいいですか?」
「ああ!勿論いいぜ」
ファンサービスにも慣れているようだ
彼女はダンデの隣に並び他のファンに写真を撮って貰おうとしたが、ふと彼の手に持った帽子に視線が止まった
「良かったら帽子…被ってみてもいいですか?いつも被ってるチャンピオンの帽子…一度触ってみたくて」
ファンに優しいダンデならきっと良いと言ってくれる、そう思ったのだが女性が帽子に触れる前にダンデは帽子を自分の頭に深く被せた
「すまないが帽子は駄目だ、俺は試合で自分の身につける物は誰にも触れさせないと決めてるんだ」
これはダンデなりの拘りだ
特に帽子はコレクションにするほど気に入っているアイテムの為誰にも貸した事がない
一部のファンの間では有名な話だが彼女は知らなかったようだ
「すみませんっ!我が儘言って」
「いや、それより早く写真を撮ろう」
気不味い気持ちのまま女性が写真を撮り終わると、ダンデの待ち人が迎えに現れた
弟のホップだ
彼は自分の幼馴染みの少女を連れておりダンデに紹介すると家まで競争だと言い走ってしまった
困りながらもホップを追いかける少女を見送りダンデは後ろを振り返るとリザードンの影に隠れたチハルへと近寄った
「すまないな…騒がしくて」
『いえいえ、それ程ダンデさんが皆に好かれているって分かりましたから』
待たせたのに怒るわけでもなく、ふにゃりと笑う彼女にダンデは自然と優しい笑みを浮かべ目尻を下げた
その顔はチャンピオンダンデではなく一人の男であるダンデ本来の笑顔かもしれない
「さあ、行こう!君に約束のポケモン達を会わせたい」
『はい!』
**********************
ブラッシータウンからすぐ側のハロンタウンは牧場や畑が多くのんびりした田舎町だ
ナックルシティとも違った自然の美しさに感動しつつチハルはダンデの家へと案内された
「チハル、俺の弟のホップそしてホップの幼馴染みのユウリくんだ」
『初めましてホップくん、ユウリちゃん』
身長としてはあまり変わらないチハルとホップ達は簡単な自己紹介をし特にユウリは同じ女性だからかチハルに興味津々に話しかけてくる
「チハルさん良かったら私の事はユウリって呼んで?」
『じゃあ、あたしもチハルでいいよ、よろしくねユウリ』
「そんな事よりポケモン!兄貴から早く貰おうぜ!」
女同士のやり取りに痺れをきらせたホップによりついにポケモンと顔合わせを始める
ダンデが用意した三匹はヒバニーとサルノリ、そしてメッソンだった
ユウリとホップはどの子にするか悩んでいるようだが、チハルの足元には既にメッソンが自分から近寄り彼女をじっと見上げていた
「どうやらメッソンは君と旅に出たいようだな」
メッソンの気持ちを感じ取ったダンデはそう告げるとチハルは嬉しそうに顔を明るくさせ足元にいる彼を抱き上げた
『あたしと…一緒に来てくれる?』
問いかければメッソンは可愛らしく高い声で鳴き笑顔を見せてくれた
水ポケモンのメッソン、この子がチハルの初めてのパートナーでありこれから長い旅を共にする事になる
楽しい事だけではないだろうが
ポケモンと一緒ならきっと乗り越えられる事だろう
約束通りダンデが朝早く迎えに来てくれた
ただ約束を守っただけだというのに彼はドヤ顔をし何故そこまで自信満々なのか謎だが、チハルは彼の隣に立つリザードンの方に釘付けになった
『うわぁ生のリザードン初めてみました!大きいですね!』
「カッコイイだろ?俺の自慢の相棒だ」
『はい!カッコイイし強そうです!』
褒められたリザードンは満更でもなく鼻息荒くさせチハルの腹に顔を擦り付けた
ツヤツヤしたオレンジ色のリザードンの肌には古い傷跡がいくつもあり今までどんな激しいバトルしてきたのかがよく分かる
彼の傷跡を指先でなぞりながらチハルは眉を下げて微笑みリザードンの活躍を想像した
『こんなに傷だらけなのにパートナーと一緒に戦ってくれるなんて…きっとダンデさんと強い絆があるんですね』
「そうだな、俺がまだジムチャレンジをする前から彼とは一緒だが兄弟のように共に育ち戦ってきたからきっと誰よりも分かり合っているぜ!な?リザードン!」
ダンデの声に反応しリザードンもチハルの腹から顔を離して鳴き声をあげた
ポケモンとトレーナーは一見指示を出す人間の方が上に見えるが本来はきっと対等なのだろう
理想の姿をダンデに見たチハルは自分もそうなりたいと思いながらまだ見ぬパートナーに想いを寄せた
「よし!ハロンに行こう!リザードンに乗ってくれ」
『え?二人も乗って大丈夫なんですか?』
背を向けるリザードンに視線を向けるが彼は早く乗れとばかりに炎がついた尻尾を揺らした
乗せてくれるのはありがたいが、本当に二人も乗って大丈夫なんだろうか?
心配で中々足が進まない彼女にダンデは優しく笑いチハルの肩に触れた
「俺のリザードンは力持ちだから大丈夫だ!それに君くらいなら俺でも軽々運べるぜ?」
『いえ、でも…ここからハロンって遠いって地図で見ましたし…あたし今日はカバンも下げてるしきっと重いと思う、それに昨日食べすぎて…』
まだ迷う彼女にダンデは焦れったくなり気持ちが固まるのを待たずに行動に移した
「乗れば分かるさ!」
『え?ちょっ、ひやぁ!!』
チハルの許しも貰わず彼はショートパンツから出た彼女の膝裏と背中に腕を回し軽々抱き上げた
見た目通り小柄な体は軽くダンデの腕の中に簡単に収まってしまう
今日は白いシャツではなく大きめのパーカーを上に来ている為胸元への視線を迷わせる必要もなくダンデは自然と笑顔を向ける事ができた
「軽いな?ちゃんと食べないと駄目だぜ?」
「食べてます!昨日だってお昼にパンを三つも食べちゃいましたし」
「パン?俺なら十個は食えるぜ!」
軽く笑いながら移動しリザードンの背中へと乗せるとダンデもその後ろへと飛び乗った
『ど…どうしたら?』
「リザードンの首の付根を掴むといい、後は俺が支えよう」
リザードンの背中は見た目より乗り心地もよく温かい、翼の付け根にダンデは足をかけるとチハルの腹に片腕を回し落ちないように支えてやった
太い腕の感触はパーカーを着ていても分かり逞しさに胸が大きく飛び跳ねる
『(なんか…密着してる!お腹柔らかいのバレちゃう!少しでも凹ませないとっ)』
そこまで相手が気にしていないのに気になるのが女性という物かもしれない
チハルは無駄な努力をし腹を凹ませては頬をほんのり赤めていた
「よしリザードン!出発だ!」
ダンデの声と共に大きな翼を左右に開き地面から飛び上がるリザードン、二人分の重さなど感じない程彼は伸び伸びと空を飛び気持ちのいい風がチハルの頬を撫でた
『う……わぁ……』
大空はどこまでも広く高い
地面から高い空を飛ぶせいか空気は涼しく、肌に感じる風が清々しい
先程までの心配も何処かへおいてきてしまったのかチハルは自由な空の世界にすっかりハマってしまった
「怖くないか?」
後ろから声をかけたダンデに彼女は顔だけを振り向かせ楽しげにはにかんだ笑みを見せた
『全然!ポケモンと空を飛ぶのは初めてですが寧ろ楽しいし気持ちいいです!リザードンって凄いですね!』
初の飛行を恐れる事なく楽しいと言ってのけた彼女にダンデは驚くがすぐに笑顔へと変わり前を見つめた
「(もしかしたら…彼女は俺に近いのかもしれない)」
ダンデも初めての飛行は恐れる事なく寧ろ楽しいと感じた、ポケモンに好かれる彼女ならきっと将来いいトレーナーになる
そんな予感を感じながらハロンを目指し暫く上空からのガラルを楽しんだ
ナックルシティから後半のワイルドエリア、そしてエンジンシティから前半のワイルドエリア
それぞれ強さが違うポケモンがいる事、開会式は毎年エンジンシティで行われる事を説明し進んでいると下に牧草地が見えてきた
緑いっぱいの広い牧場に見てる白い塊はウールーの群れだろう
『ウールーだ!もこもこで可愛いっ!』
「あっこら!あまり前のめりになったら…」
よく見ようと下を覗き込もうとし体を丸めると腹に回していたダンデの腕にチハルの胸がむにゅんと形を変えて乗っかった
「っ!!」
ウールーに夢中で気がついていないのだろう
柔らかくも重みのある胸の感触にダンデは体中に熱い血が流れていくのを感じた
神経が腕に集まり僅かに彼女が体を揺らす度にマシュマロのような柔らかい物が触れる
その度にダンデは息を止め別の事を考えようと必死に頭をフル回転させた
「リザードン!待ち合わせの時間に遅れる!少し急いでくれ!」
まだ時間はある筈だが、そう言いたげに視線を後ろにリザードンは向けるが顔を真っ赤にした相棒に気がつくとリザードンは言われた通りに飛行速度を早めてくれた
彼のお陰ですぐにブラッシータウンに着き待ち合わせの駅前に降り立つとダンデはチハルを降ろしてやり、ほんの少し距離をとった
『ここは?』
「ブラッシータウンだ、ここで弟と待ち合わせなんだが…」
被っていた帽子で口元を隠した彼はそっぽを向き弟を探すふりをする、先程の事のせいで赤くなった顔を見せたくないようだ
コチラを見てくれないダンデに不安を感じ、何か自分は粗相をしてしまったんだろうかと眉を下げるがリザードンが彼女の頬を舐め慰めてくれた
『んっ、ふふ…リザードンったら、あっそうだ!ここまで運んでくれてありがとうね?疲れなかった?』
頬を舐める彼の喉元を撫でてやりながら聞けばリザードンはグルグルと喉を鳴らしご機嫌だ
本当に彼女はポケモンに好かれやすいようだ
横目にチハルに甘える相棒を見つめダンデは帽子に隠れた口元をムっと歪めていた
「(なんだか…面白くないぜ)」
どちらに対しての気持ちなのかは分からない
だが仲良さげな彼らに嫉妬しているのは確かだ
初めて感じる感情に戸惑っていると駅前には人々が集まりだしダンデの存在に気がついたファンが群がってきた
皆はそれぞれバトルを褒め憧れを口にし彼を歓迎している、チハルは盛り上がる渦に圧倒されリザードンの影へと隠れるしか出来なかった
そんな中一人の女性がダンデへ近づきカメラを向けた
「あの!記念に一枚一緒に撮ってもいいですか?」
「ああ!勿論いいぜ」
ファンサービスにも慣れているようだ
彼女はダンデの隣に並び他のファンに写真を撮って貰おうとしたが、ふと彼の手に持った帽子に視線が止まった
「良かったら帽子…被ってみてもいいですか?いつも被ってるチャンピオンの帽子…一度触ってみたくて」
ファンに優しいダンデならきっと良いと言ってくれる、そう思ったのだが女性が帽子に触れる前にダンデは帽子を自分の頭に深く被せた
「すまないが帽子は駄目だ、俺は試合で自分の身につける物は誰にも触れさせないと決めてるんだ」
これはダンデなりの拘りだ
特に帽子はコレクションにするほど気に入っているアイテムの為誰にも貸した事がない
一部のファンの間では有名な話だが彼女は知らなかったようだ
「すみませんっ!我が儘言って」
「いや、それより早く写真を撮ろう」
気不味い気持ちのまま女性が写真を撮り終わると、ダンデの待ち人が迎えに現れた
弟のホップだ
彼は自分の幼馴染みの少女を連れておりダンデに紹介すると家まで競争だと言い走ってしまった
困りながらもホップを追いかける少女を見送りダンデは後ろを振り返るとリザードンの影に隠れたチハルへと近寄った
「すまないな…騒がしくて」
『いえいえ、それ程ダンデさんが皆に好かれているって分かりましたから』
待たせたのに怒るわけでもなく、ふにゃりと笑う彼女にダンデは自然と優しい笑みを浮かべ目尻を下げた
その顔はチャンピオンダンデではなく一人の男であるダンデ本来の笑顔かもしれない
「さあ、行こう!君に約束のポケモン達を会わせたい」
『はい!』
**********************
ブラッシータウンからすぐ側のハロンタウンは牧場や畑が多くのんびりした田舎町だ
ナックルシティとも違った自然の美しさに感動しつつチハルはダンデの家へと案内された
「チハル、俺の弟のホップそしてホップの幼馴染みのユウリくんだ」
『初めましてホップくん、ユウリちゃん』
身長としてはあまり変わらないチハルとホップ達は簡単な自己紹介をし特にユウリは同じ女性だからかチハルに興味津々に話しかけてくる
「チハルさん良かったら私の事はユウリって呼んで?」
『じゃあ、あたしもチハルでいいよ、よろしくねユウリ』
「そんな事よりポケモン!兄貴から早く貰おうぜ!」
女同士のやり取りに痺れをきらせたホップによりついにポケモンと顔合わせを始める
ダンデが用意した三匹はヒバニーとサルノリ、そしてメッソンだった
ユウリとホップはどの子にするか悩んでいるようだが、チハルの足元には既にメッソンが自分から近寄り彼女をじっと見上げていた
「どうやらメッソンは君と旅に出たいようだな」
メッソンの気持ちを感じ取ったダンデはそう告げるとチハルは嬉しそうに顔を明るくさせ足元にいる彼を抱き上げた
『あたしと…一緒に来てくれる?』
問いかければメッソンは可愛らしく高い声で鳴き笑顔を見せてくれた
水ポケモンのメッソン、この子がチハルの初めてのパートナーでありこれから長い旅を共にする事になる
楽しい事だけではないだろうが
ポケモンと一緒ならきっと乗り越えられる事だろう