第一章
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チハルがナックルシティのビジネスホテルに泊まった次の日、そろそろ昼食でも何処かで済まそうかと考えているとスマホロトムが着信を知らせた
着信相手の名前を見るなり彼女は喜び大事そうに耳にロトムを添え何度か頷くと通話を終えるなり慌てて着替えだし、ホテルのフロントへと降りていく
宿泊客がちらほらといるフロントには頭一つ分高い長身の彼が既に待っておりチハルを見つけるなり片手をひらつかせ笑顔を向けてくれた
『キバナさん!』
「よ!少し時間できたからさ、約束通り観光がてらランチしようぜ?」
昨日の約束を守りに来た彼は近寄ってきた彼女を見るなりギクリと肩を鳴らし笑顔を貼り付けたまま体を強張らせた
彼の視線はチハルの顔ではなく胸元に落ちてしまう、別に巨乳が珍しいわけではないが彼女の服が問題だった
下は短めのショートパンツだが上はピカチュウの顔がプリントされた黒地のTシャツ
これだけなら問題ないが、胸元のピカチュウがたわわな胸に耐えきれず太ったように顔が横に伸ばさていた
その迫力にキバナは笑いを耐え口元を片手で抑えてはそっぽを向き知らぬ顔を決め込む
『キバナさん?どうしました?』
「んん、別に?さぁ〜て何をご馳走するかな?好き嫌いとかある?」
軽く笑いを飲み込み彼女に向き合う
服の事で笑われたなんて思いもしないチハルは呑気にも食事の事で頭がいっぱいになり、二人はホテルを出た
春のナックルシティは暖かく動きやすい薄着の人々が目に入る
大通りにはカラフルな店のショーウィンドウの飾りや小さなアイスクリーム屋さんに集まる子供達、ベンチに腰掛けて道行く人々を眺めながら話をしている老夫婦等穏やかな景色が広がっている
ついそれらに目を奪われていると隣に並ぶキバナに顔を覗かれ話の途中だった事を思い出した
『なんでも大丈夫!と言いたいとこですが…苦い物は苦手です、それ以外ならなんでも』
「オッケー!じゃあさっそくキバナさまのお勧めの店に連れてってやるよ」
両手をパーカーに入れた彼と並んで歩くと彼の足の長さに今更ながら驚く
子供と大人のように一步の幅が違う為、隣では追いつこうと内心必死になった
少し早歩きになってしまう彼女に気がついたキバナはさり気なく歩幅を縮め、チハルの歩きやすいスピードへと変えてくれた
『(やっぱりいい人なんだな)』
改めていい人と感じながら歩いていると彼女の鼻にこんがりと焼けたパンの香りが掠め、つい足が止まった
どうやら直ぐ側にあるベーカリーのオーブンからの匂いのようだ
焼き立てのパンのなんて美味しそうな匂いだろう、空腹もありパンの魅力に涎を垂らしそうになるとキバナが小さく吹き出した
「ぷっ!ハハっ!チハルちゃんて分かりやすいな?んじゃ今日はここのパンにしようぜ?」
『あっ!すみません!つい…いい匂いで』
「うんうん、オレさまもここのパン好きだぜ?特に焼き立てのクロワッサンなんか最高っ」
本当ならば別の店に誘うつもりだったんだろが彼女が気に入ったなら食べさせたい
迷う事なく店へと入れば出来たばかりのパン達が店内で香ばしい香りを出しチハルはキラキラと目を輝かせた
バターの風味と小麦の香りを堪能し腹が幸せに満たされると今度はナックルシティを案内する為に二人は暫く歩いた
歴史ある城と融合した街並みは落ち着きと伝統に包まれつつ若者が好きそうな店も多くチハルは心を奪われていく
『ナックルシティに来て良かった…パンフレットで見た時も綺麗な街だと思ったけど想像以上に素敵ですね』
うっとりと呟けばキバナは自分の事を褒められたように嬉しくなり緩む口元を片手で撫で瞳を細めた
「サンキュ、オレもこの街が好きだから…そう言って貰えるとすげぇ嬉しいわ」
楽しい時間程すぐに過ぎていく
でかけた時は真昼だったのに今じゃすっかり茜色に街が染まっていく
そろそろ彼女を帰さなければならない
キバナはまだ足りない気持ちを残しつつ彼女が泊まっているホテルへ向かいつつ街の見所や世間話を続けた
『あ…あれ可愛いっ』
彼女が足を止め見つめた先はゲームセンターだった、店先に置かれたクレーンゲームには可愛らしいポケモンのぬいぐるみが並んでおりキバナも足を止める
「ゲーセンか、せっかくだし覗いていこうぜ?」
『はい!』
店内は高めのBGMに負けない程ゲーム機の音やボタンを叩く音、若者の笑い声で賑わう
すぐ隣にいるというのに声が掻き消されそうでキバナは背中を丸めチハルの耳元へと唇を寄せた
「何かやりたいのあるっ?」
『はいっさっきのぬいぐるみを取りたいです!』
勢いよくキバナへと振り向けば青い瞳がすぐ側に見え一瞬チハルは息を飲み込んだ
彼の瞳は海のように青くそれでいて何処か緑が混ざったような深く美しい色合いだった
見惚れそうになり慌てて顔を背けゲーム機へと駆け出せばキバナは不思議そうに彼女の後ろからついていった
「うわっ、胸でかっ!」
「つーかちょい可愛いくね?声かける?」
彼女が隣を通り過ぎた若い男達はニヤニヤと笑いつつチハルを目で追いかけた
遊び気分で獲物を眺める男達にキバナは瞳を鋭くさせ無表情になると横を通る瞬間彼らにわざと大きな体をぶつけた
「痛っ!おいっ気をつけろよっ!!」
チハルばかり見ていた男は誰がぶつかったかも確認せずに文句を口にしたが、相手が自分より遙かに長身でしかもナックルシティでは誰もが知る相手だと分かると顔を青ざめさせた
「……あ?なんか言ったか?」
恐ろしく低い声は騒音にも負けず耳に届く
ファンサービスでいつも向ける笑顔ではなく冷めた瞳で見下ろす彼に男達はそそくさと逃げ出してしまい、キバナは彼らの後ろ姿に向かって舌を出して睨んだ
チハルの元へと急げば彼女はクレーンゲームのガラスに貼り付き景品のぬいぐるみに眉を寄せていた
どうやらキバナが何をしていたか気がついていないほど夢中になっていたようだ
そんな彼女に彼は困ったように小さく笑いチハルの後ろから同じようにクレーンゲームのガラスに顔を近づけた
「どれが欲しいの?」
『これ!さっきやったけど全然取れませんでした!』
見れば笑ったヌメラの小さなぬいぐるみが逆さまに埋もれている、何度か挑戦したようだが諦めきれないのかチハルはじぃっとヌメラを見続けた
「ちょっと貸してみ」
キバナは彼女の後ろから覆いかぶさったままコインをゲーム機に入れるとボタンを操作しだし、ヌメラめがけ機械が動き出す
その動きをチハルもソワソワと見守りクレーンがヌメラを掴む、すると逆さまに埋もれていたヌメラの角にもう一匹のヌメラのぬいぐるみが絡まりぶら下がったまま引き上がった
『うわっ、わわっ!キバナさん!キバナさん!』
「待て待て!油断するな!」
景品を確実にゲット出来るまで油断はできない、途中で落ちたら…とヒヤヒヤしつつ見守ると二匹のヌメラは見事穴へと落ち下の取り出し口に落とされた
「よしっ!」
『凄い!取れた!取れた!しかも二匹ですよ?』
凄い凄いと小さな子供のようにはしゃぎ喜ぶ彼女に取り出し口から出したぬいぐるみを手渡せばヌメラに負けない程の蕩けた笑顔を浮かべてくれた
「ラッキーだったな!オレもまさか二匹取れるとは思わなかったぜ」
二匹のヌメラを嬉しそうに眺めた彼女は一匹をキバナへと向け、チハルが何をしたいのか分からないキバナは自然とぬいぐるみを受け取った
「ん?」
『キバナさんの分です』
「いいのか?せっかく二匹取れたのに」
『はい!キバナさんのお陰ですし、この子が寂しくないようにたまに会わせてくれれば大丈夫です』
またこうして遊びたい
その意味も含めたお誘いだった
ニヒヒと子供っぽく笑う彼女はその後ヌメラを大切そうに手の中で撫で、キバナも手に持ったヌメラを見下し自然と笑みを浮かべた
「んじゃチハルちゃんのヌメラが寂しがらないようにまた近いうちに遊ぼうな?」
『はい!』
キバナのヌメラはオス、彼女のヌメラは赤いリボンをつけたメスのようだ
だからだろう、キバナは小さなイタズラを思いつき口角を吊り上げた
「ふふ…じゃあ約束のチューな」
『え?』
上から覆いかぶさるように背中を丸めてくる彼、後ろへと逃げようとするがクレーンゲームのガラスに背中がぶつかり逃げられない
『(え?え?ちゅーって?なんで?嘘っ…嘘ぉ!)』
突然何故こんな事に?
困惑しパニックを起こすチハルはどうしたらいいのか分からず眉をさげ頬を真っ赤にし、苦し紛れに手に持っていたヌメラを顔の前に出し目を瞑ってガードした
「はい、チューってな!」
『……………へ?』
恐る恐る目を開ければキバナの顔は最初見たままの距離を保っておりキスできるような距離ではない
一体どうなっているんだと手元に視線を向けると彼女のヌメラにキバナのヌメラが顔をくっつけておりキスをしているかのようだった
「何?何か勘違いしちゃった?」
片目を細め意地悪く笑う彼は確信犯だろう
キョトンとキバナを見上げたチハルは騙された事に気がつくとジワジワと頬を真っ赤にさせ口元を震わせ、下がっていた眉を吊り上げた
『〜〜〜っ!!なっなんでもないです!』
キバナはいい人
そう思っていたが彼女の中で新しく彼のイメージが変わった
キバナは………意地悪な人だ
着信相手の名前を見るなり彼女は喜び大事そうに耳にロトムを添え何度か頷くと通話を終えるなり慌てて着替えだし、ホテルのフロントへと降りていく
宿泊客がちらほらといるフロントには頭一つ分高い長身の彼が既に待っておりチハルを見つけるなり片手をひらつかせ笑顔を向けてくれた
『キバナさん!』
「よ!少し時間できたからさ、約束通り観光がてらランチしようぜ?」
昨日の約束を守りに来た彼は近寄ってきた彼女を見るなりギクリと肩を鳴らし笑顔を貼り付けたまま体を強張らせた
彼の視線はチハルの顔ではなく胸元に落ちてしまう、別に巨乳が珍しいわけではないが彼女の服が問題だった
下は短めのショートパンツだが上はピカチュウの顔がプリントされた黒地のTシャツ
これだけなら問題ないが、胸元のピカチュウがたわわな胸に耐えきれず太ったように顔が横に伸ばさていた
その迫力にキバナは笑いを耐え口元を片手で抑えてはそっぽを向き知らぬ顔を決め込む
『キバナさん?どうしました?』
「んん、別に?さぁ〜て何をご馳走するかな?好き嫌いとかある?」
軽く笑いを飲み込み彼女に向き合う
服の事で笑われたなんて思いもしないチハルは呑気にも食事の事で頭がいっぱいになり、二人はホテルを出た
春のナックルシティは暖かく動きやすい薄着の人々が目に入る
大通りにはカラフルな店のショーウィンドウの飾りや小さなアイスクリーム屋さんに集まる子供達、ベンチに腰掛けて道行く人々を眺めながら話をしている老夫婦等穏やかな景色が広がっている
ついそれらに目を奪われていると隣に並ぶキバナに顔を覗かれ話の途中だった事を思い出した
『なんでも大丈夫!と言いたいとこですが…苦い物は苦手です、それ以外ならなんでも』
「オッケー!じゃあさっそくキバナさまのお勧めの店に連れてってやるよ」
両手をパーカーに入れた彼と並んで歩くと彼の足の長さに今更ながら驚く
子供と大人のように一步の幅が違う為、隣では追いつこうと内心必死になった
少し早歩きになってしまう彼女に気がついたキバナはさり気なく歩幅を縮め、チハルの歩きやすいスピードへと変えてくれた
『(やっぱりいい人なんだな)』
改めていい人と感じながら歩いていると彼女の鼻にこんがりと焼けたパンの香りが掠め、つい足が止まった
どうやら直ぐ側にあるベーカリーのオーブンからの匂いのようだ
焼き立てのパンのなんて美味しそうな匂いだろう、空腹もありパンの魅力に涎を垂らしそうになるとキバナが小さく吹き出した
「ぷっ!ハハっ!チハルちゃんて分かりやすいな?んじゃ今日はここのパンにしようぜ?」
『あっ!すみません!つい…いい匂いで』
「うんうん、オレさまもここのパン好きだぜ?特に焼き立てのクロワッサンなんか最高っ」
本当ならば別の店に誘うつもりだったんだろが彼女が気に入ったなら食べさせたい
迷う事なく店へと入れば出来たばかりのパン達が店内で香ばしい香りを出しチハルはキラキラと目を輝かせた
バターの風味と小麦の香りを堪能し腹が幸せに満たされると今度はナックルシティを案内する為に二人は暫く歩いた
歴史ある城と融合した街並みは落ち着きと伝統に包まれつつ若者が好きそうな店も多くチハルは心を奪われていく
『ナックルシティに来て良かった…パンフレットで見た時も綺麗な街だと思ったけど想像以上に素敵ですね』
うっとりと呟けばキバナは自分の事を褒められたように嬉しくなり緩む口元を片手で撫で瞳を細めた
「サンキュ、オレもこの街が好きだから…そう言って貰えるとすげぇ嬉しいわ」
楽しい時間程すぐに過ぎていく
でかけた時は真昼だったのに今じゃすっかり茜色に街が染まっていく
そろそろ彼女を帰さなければならない
キバナはまだ足りない気持ちを残しつつ彼女が泊まっているホテルへ向かいつつ街の見所や世間話を続けた
『あ…あれ可愛いっ』
彼女が足を止め見つめた先はゲームセンターだった、店先に置かれたクレーンゲームには可愛らしいポケモンのぬいぐるみが並んでおりキバナも足を止める
「ゲーセンか、せっかくだし覗いていこうぜ?」
『はい!』
店内は高めのBGMに負けない程ゲーム機の音やボタンを叩く音、若者の笑い声で賑わう
すぐ隣にいるというのに声が掻き消されそうでキバナは背中を丸めチハルの耳元へと唇を寄せた
「何かやりたいのあるっ?」
『はいっさっきのぬいぐるみを取りたいです!』
勢いよくキバナへと振り向けば青い瞳がすぐ側に見え一瞬チハルは息を飲み込んだ
彼の瞳は海のように青くそれでいて何処か緑が混ざったような深く美しい色合いだった
見惚れそうになり慌てて顔を背けゲーム機へと駆け出せばキバナは不思議そうに彼女の後ろからついていった
「うわっ、胸でかっ!」
「つーかちょい可愛いくね?声かける?」
彼女が隣を通り過ぎた若い男達はニヤニヤと笑いつつチハルを目で追いかけた
遊び気分で獲物を眺める男達にキバナは瞳を鋭くさせ無表情になると横を通る瞬間彼らにわざと大きな体をぶつけた
「痛っ!おいっ気をつけろよっ!!」
チハルばかり見ていた男は誰がぶつかったかも確認せずに文句を口にしたが、相手が自分より遙かに長身でしかもナックルシティでは誰もが知る相手だと分かると顔を青ざめさせた
「……あ?なんか言ったか?」
恐ろしく低い声は騒音にも負けず耳に届く
ファンサービスでいつも向ける笑顔ではなく冷めた瞳で見下ろす彼に男達はそそくさと逃げ出してしまい、キバナは彼らの後ろ姿に向かって舌を出して睨んだ
チハルの元へと急げば彼女はクレーンゲームのガラスに貼り付き景品のぬいぐるみに眉を寄せていた
どうやらキバナが何をしていたか気がついていないほど夢中になっていたようだ
そんな彼女に彼は困ったように小さく笑いチハルの後ろから同じようにクレーンゲームのガラスに顔を近づけた
「どれが欲しいの?」
『これ!さっきやったけど全然取れませんでした!』
見れば笑ったヌメラの小さなぬいぐるみが逆さまに埋もれている、何度か挑戦したようだが諦めきれないのかチハルはじぃっとヌメラを見続けた
「ちょっと貸してみ」
キバナは彼女の後ろから覆いかぶさったままコインをゲーム機に入れるとボタンを操作しだし、ヌメラめがけ機械が動き出す
その動きをチハルもソワソワと見守りクレーンがヌメラを掴む、すると逆さまに埋もれていたヌメラの角にもう一匹のヌメラのぬいぐるみが絡まりぶら下がったまま引き上がった
『うわっ、わわっ!キバナさん!キバナさん!』
「待て待て!油断するな!」
景品を確実にゲット出来るまで油断はできない、途中で落ちたら…とヒヤヒヤしつつ見守ると二匹のヌメラは見事穴へと落ち下の取り出し口に落とされた
「よしっ!」
『凄い!取れた!取れた!しかも二匹ですよ?』
凄い凄いと小さな子供のようにはしゃぎ喜ぶ彼女に取り出し口から出したぬいぐるみを手渡せばヌメラに負けない程の蕩けた笑顔を浮かべてくれた
「ラッキーだったな!オレもまさか二匹取れるとは思わなかったぜ」
二匹のヌメラを嬉しそうに眺めた彼女は一匹をキバナへと向け、チハルが何をしたいのか分からないキバナは自然とぬいぐるみを受け取った
「ん?」
『キバナさんの分です』
「いいのか?せっかく二匹取れたのに」
『はい!キバナさんのお陰ですし、この子が寂しくないようにたまに会わせてくれれば大丈夫です』
またこうして遊びたい
その意味も含めたお誘いだった
ニヒヒと子供っぽく笑う彼女はその後ヌメラを大切そうに手の中で撫で、キバナも手に持ったヌメラを見下し自然と笑みを浮かべた
「んじゃチハルちゃんのヌメラが寂しがらないようにまた近いうちに遊ぼうな?」
『はい!』
キバナのヌメラはオス、彼女のヌメラは赤いリボンをつけたメスのようだ
だからだろう、キバナは小さなイタズラを思いつき口角を吊り上げた
「ふふ…じゃあ約束のチューな」
『え?』
上から覆いかぶさるように背中を丸めてくる彼、後ろへと逃げようとするがクレーンゲームのガラスに背中がぶつかり逃げられない
『(え?え?ちゅーって?なんで?嘘っ…嘘ぉ!)』
突然何故こんな事に?
困惑しパニックを起こすチハルはどうしたらいいのか分からず眉をさげ頬を真っ赤にし、苦し紛れに手に持っていたヌメラを顔の前に出し目を瞑ってガードした
「はい、チューってな!」
『……………へ?』
恐る恐る目を開ければキバナの顔は最初見たままの距離を保っておりキスできるような距離ではない
一体どうなっているんだと手元に視線を向けると彼女のヌメラにキバナのヌメラが顔をくっつけておりキスをしているかのようだった
「何?何か勘違いしちゃった?」
片目を細め意地悪く笑う彼は確信犯だろう
キョトンとキバナを見上げたチハルは騙された事に気がつくとジワジワと頬を真っ赤にさせ口元を震わせ、下がっていた眉を吊り上げた
『〜〜〜っ!!なっなんでもないです!』
キバナはいい人
そう思っていたが彼女の中で新しく彼のイメージが変わった
キバナは………意地悪な人だ