第三章
夢小説設定
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日が沈みかけるワイルドエリア
水辺の近くでは手持ちポケモン達が楽しげに駆け回り、三人の荷物が纏めて置かれた岩場には二匹のヌメラのぬいぐるみが寄り添ってキバナ達を見つめていた
「はぁぁぁ〜なんでこうなるかな?」
「それは俺の台詞だぜ」
スンッとした曇った瞳になる彼らはテントを準備しながら文句を呟いた
ロマンチックな夜を迎えたかったのに結局チハルの希望を断る事もできず三人で流星群を見る事になったのだ、不満が出るのは当たり前だ
「あ、言っとくけどチハルちゃんはオレさまのテントで寝てもらうから」
「なんでそうなるんだ!俺のテントの方がデカイだろ!こっちに寝かせるべきだ」
「いやオレさまの方がデカイし!ほら見ろっこのオレが寝そべっても余裕の広さを!」
大きさはあまり変わらないが、二人はムキになり言い合う
その騒ぎに気がついたチハルは焚き火の側から二人の元へと駆け寄った
『どうしました?』
「いや?別に?な、ダンデ」
「……ああ」
アイコンタクトをする二人に小首を傾げつつ彼らの後ろに見える立てたばかりのテントに目を輝かせた
『うわぁ!大きいですね!こんなに大きいテント初めて見ました!』
「ンフフ!まあなっ!中も広いんだぜ?覗いてみ」
キバナは自分テントへと誘い入れようと入口を捲って見せてくれた
すると彼女は疑う事もなく惹き寄せられテントの中へと頭を入れた
だがこれが良くなかった
「「!!」」
テントの中を見ようと頭を入れた彼女は自然と四つん這いになり、キバナ達から見えるのは短いスカートから出た白い太ももと際どい尻
見えそうで見えないスカートの向こう側に自然と目が釘付けになってしまい唾を呑み込んでしまう
『本当だ!とっても広いですね!』
「っ!だ、だろ?」
「ぐっ!」
彼女の声に我に返るが声が震えてしまう、キバナはそっぽを向き何事もなかったようにしダンデもまた熱くなる体を誤魔化そうとテントの準備に戻る
その間も視界の隅っこで揺れ動く彼女の尻が気になり男達は理性を抑えるのに必死だった
「(あっぶねっ!これダンデがいなかったから絶対襲ってたわ)」
「(落ち着けっ…っ、落ち着けっ俺の!流石に引かれるぞ!)」
『こんなに広いと寝袋より布団とかでごろんって寝たくなりますね』
やっと出てきた彼女に内心ホッとしつつ二人は胸を撫で下ろし、肩を落としたのをチハルは知らないだろう
「オレもそう思ってさ毛布持ってきたんだ、ちょっと待っててな」
キバナは彼女と使おうとしていた大きめの毛布を取り、中に眠る場所を作ろうとしゃがみ込んだ
すると彼のポケットから何か小さな物が落ちた
『キバナさん、何か落としましたよ?』
「へ?」
キバナが落とした物を拾ったチハルはそれが何かも分からず手に取り、男二人はギョッと目を見開く
「なっ、キバナっ!お前何持ってきてるんだ!」
顔から首下まで真っ赤にしたダンデはキバナに怒り声を荒げる
「い、いやぁ念の為?」
下心があったなんてダンデには言えず苦笑いを浮かべるがダンデの怒りは治まらない
「何が念の為だ!恋人でもないのにこんなっ…こんなっ物を!」
『これなんですか?ガム?』
これは避妊具という物だ
四角形の包みに入ったそれは円状の物が薄っすらと見えるが、初めて見る彼女には想像もつかない
裏返したり指でなぞっている姿にダンデは背中に変な汗を滲ませ慌てる
「駄目だっ君の手が穢れる!早く捨てるんだ!」
「いやいやお前が決めるなし、ごめん返して?」
『ん、はいどうぞっ』
「(ワァオ、好きな子からコンドーム渡されるって結構くるな…ん?)」
それが何か知らずにキバナへと手渡そうとする彼女に彼は悪戯を思い浮かべニヤリと笑った
「ねぇチハルちゃん、それ持ってさダンデにこう言ってみ?」
テントから出たキバナはチハルの耳元へと口を寄せると何やら指示をし、ダンデへと体を向けさせた
『ダンデさん』
「なっ…なんだ?」
嫌な予感がする
だが待つしかないダンデはドクドクと煩い胸を感じながらもチハルを見つめる
彼女はキバナの指示を再現しようと考え、少し困ったように眉を下げ
持っていたコンドームの袋を両手で握り自分の口元へと寄せると
『あたしと…仲良く使いましょ?』
とどめの上目遣いを言われた通りに表現すればダンデの鼻から何やら赤い物がタラリと流れた
『え!ダンデさん鼻血がっ!』
「っ!〜〜っ!キバナァっ!!」
手で鼻を隠し怒るが間抜けな姿に怯える事もなくキバナは腹を抱えて大笑いしだす
「ダッハハハッ!スッゲェ顔真っ赤!何?ときめいた?刺激強かった?」
「いい加減にしろっ彼女に変な事を教えるなっ!」
なんとも騒がしいキャンプだ
『ん〜焼きマシュマロ美味しっ』
ダンデの鼻血も落ち着き頭上の空に星が煌めく頃
三人は焚き火を囲み枝に刺したマシュマロを焼いて楽しんでいた
「熱いぞ?舌火傷すんなよ?」
『んふふっ美味しいから平気ですよ』
「こんな物まで用意するなんて…流石だなキバナ」
「まぁな…って!おいっマシュマロ刺しすぎ!!」
人が用意したものでも遠慮なく食べる彼は枝に限界までマシュマロを刺し焼いていた
4連の雪だるまのような枝
どうやって食べるのかと思えばバーベキューの肉のように横から噛みつきだしチハルは笑ってしまう
パチパチと火花が焚き火の中から聞こえオレンジの光に包まれる三人
これだけでも十分楽しいが今日の目的は他にある
「おっ、そろそろ始まるかもな」
「よしっ火を消そう」
時計を確認したキバナとダンデは急ぎ焚き火を消すと辺りは真っ暗となり足元さえ見えない
『見えない…あの、二人共そこにいますよね?』
目がまだ慣れないのだろう
宙を撫でる彼女の姿に二人は微笑み手を伸ばした
「ふふっオレさまはここにいるぜ?」
「すぐ目が慣れるさ!ほら…おいで」
伸ばした両手に大きな手が触れ強く握られる
目の前にキバナとダンデが並びぼんやりと見えた青い瞳と金色の瞳にホッとした
すると暗い空に薄っすらと青い光が走った
『あっ…流れ星!』
たった一つ
すぅっと、流れ星が長い光の尾を引いて消えていった
その一つ目が合図のように次から次へと青白い光が我先にと流れていく
夕立のように次第に増える星の雨
確かに夜だというのに流れる沢山の星の光が三人の顔を照らし表情がハッキリと分かる
『………うわぁ』
「すげぇな」
「あぁ…星のシャワーみたいだ」
青く光る星の尾
細い流れ星が先に流れ落ちる星を追いかけるように幾つも流れ落ち夢の世界のようだった
こんなにも世界は美しかった
狭い世界から出たばかりのチハルは感動し喉がつかえ、口を固く結ぼうとするが顎が小刻みに震えてしまった
『……っ……ぁ……』
胸がいっぱいになるこの感覚はなんだろう、もっと見たいのに視界が歪みクリアにしようと瞬きを激しくすれば頬に熱い涙が伝い落ちた
「チハル?」
「えっチハルちゃん?どうしたの?」
流れ星の照らす彼女の泣き顔に気がつきキバナとダンデは心配そうに背中を丸めた
『っ…ん…なんかっ…あまりに…ん…綺麗で…勝手に涙が…』
痛みや悲しみによる涙でないと分かると男達の顔から緊張が抜け落ち小さく笑った
「ハハッ…分かる、なんか心に響くよな」
「フフ…これほど綺麗なんだ、俺もちゃんと見るのは初めてだが…今ならカップルに人気なのも分かる気がするぜ」
キバナは濡れた彼女の目元を指で拭ってやり同じようにダンデも頬を伝う涙を指で撫でてやった
その間も空では星が流れ世界を青白く照らす
宝石が散らばったような夜空を三人は暫く見つめ、感動する気持ちを伝えるようにお互いの手を強く握った
『お二人のお陰です…こんなに楽しいと思えたの生まれて初めてかもしれない』
心から思った事を告げるとキバナは真面目な顔になり、彼女を見つめるとチハルの顎を指の背ですくい上げた
「こんなもんじゃないぜ?もっと沢山オマエに見せたい景色や物があるしオレにもっと頼って甘えて欲しい…だからさ」
真っ直ぐにコチラを見る青
空の流星群にも負けない綺麗な青は優しく光り美しい
「オレの隣でずっとこれからも一緒に見ていかない?」
『一緒に?』
「オレさ……チハルちゃんの事が」
「っ!キバナ!」
キバナの言葉に異変を感じたダンデは慌てて止めようとするが言葉を止める事は叶わず
彼はついに想いを伝えた
「好きだ」
『っ…え?』
「オレさま、チハルちゃんが大好き…だからオレだけの物になってくれない?」
突然の事にもう一度聞き返そうとするとキバナの手を払いのけダンデが顔を覗き込んできた
「チハル!待ってくれ!俺もっ、俺だって今日君に伝えたい事があって」
『ダンデ…さ…ん?』
「この前の事を謝りたかった…あの日は君の気持ちを考えず、ただ欲しくて堪らなくて触れてしまっただろ?」
「は?オマエ人には文句言っといて手だしたの?」
ギクリとダンデの肩が揺れたがここまで来て止めるわけにもいかず眉を険しくさせる
「キバナは黙っててくれ!…君は酒のせいだと言ったがあの日は別に酔ってなかったんだ…あれは俺の意思だ」
病室での事が酒による誤ちではなく
彼の意思
そう考えるとチハルの頬は真っ赤になり、彼女の反応にキバナは片眉を吊り上げた
キバナは知らないのだ
ダンデが彼女に何をしたのか
それが嫉妬となりダンデを睨むが彼は初めての告白に夢中で視線に構っていられなかった
「ジムチャレンジ中にこんな事を言っては迷惑かもしれないが今言わないと後悔してしまう気がして」
チハルの手を両手で握ったダンデは一度唾を飲み込むと眉を下げ真っ赤な顔で口を開いた
「何にでも一生懸命な君が愛しくて堪らない…いつか俺の元に行くと約束してくれた君の言葉がどれほど俺の心を救ってくれたか」
『っ!』
「好きだっ!君しか考えられないっ俺と恋人になって欲しい!」
告白を伝え終えるとキバナは大きくため息を一つし両手を自分の腰に当て眉を険しくさせた
「……あ〜あ、結局オレら恋愛でもこうなっちまうのな?」
ダンデもキバナの気配に気がつき彼女から手を離すと威嚇するように両手を組み合わせキバナを睨んだ
「そうだな、どこまでもライバル…という事か」
「チハル」
「チハルちゃん」
『はっはいっ!』
目の前に立つガラルチャンピオンとトップジムリーダー
「「どっちを選ぶ?」」
あまりに突然の愛の告白を受けチハルの心はぐちゃぐちゃだ
驚いたというのも一つの理由だが
その他にも彼女には素直に気持ちを受けとれない理由がある
『(どうしよ…嬉しいのに…ドキドキしてるのに…喉が…胸が苦しいっ)』
もしも全て投げ捨てて、彼らと生きられたらどんなに幸せだろう
どうして自分は自由に彼らの元へ行ける身じゃなかったんだろう
どちらかなんて選べないが
寧ろ選ぶ事さえ許されない身だ
頭に浮かぶのは両親との約束と
ローズの顔
考えれば考える程胸が締め付けられ苦しくなり涙が次々と頬を伝い落ちた
「ちょっ!チハルちゃん!」
「大丈夫かっ!どうして泣いてっ」
胸の服を強く握る彼女に二人はオロオロと眉を下げて近寄り背中を擦ったり肩を撫でるが、チハルは俯いたまま震えた声をひり出した
『ごめ…ごめ…ん…なさいっ、あたしっ…お二人とは…付き合えないっ』
「…………え?」
「……………は?」
水辺の近くでは手持ちポケモン達が楽しげに駆け回り、三人の荷物が纏めて置かれた岩場には二匹のヌメラのぬいぐるみが寄り添ってキバナ達を見つめていた
「はぁぁぁ〜なんでこうなるかな?」
「それは俺の台詞だぜ」
スンッとした曇った瞳になる彼らはテントを準備しながら文句を呟いた
ロマンチックな夜を迎えたかったのに結局チハルの希望を断る事もできず三人で流星群を見る事になったのだ、不満が出るのは当たり前だ
「あ、言っとくけどチハルちゃんはオレさまのテントで寝てもらうから」
「なんでそうなるんだ!俺のテントの方がデカイだろ!こっちに寝かせるべきだ」
「いやオレさまの方がデカイし!ほら見ろっこのオレが寝そべっても余裕の広さを!」
大きさはあまり変わらないが、二人はムキになり言い合う
その騒ぎに気がついたチハルは焚き火の側から二人の元へと駆け寄った
『どうしました?』
「いや?別に?な、ダンデ」
「……ああ」
アイコンタクトをする二人に小首を傾げつつ彼らの後ろに見える立てたばかりのテントに目を輝かせた
『うわぁ!大きいですね!こんなに大きいテント初めて見ました!』
「ンフフ!まあなっ!中も広いんだぜ?覗いてみ」
キバナは自分テントへと誘い入れようと入口を捲って見せてくれた
すると彼女は疑う事もなく惹き寄せられテントの中へと頭を入れた
だがこれが良くなかった
「「!!」」
テントの中を見ようと頭を入れた彼女は自然と四つん這いになり、キバナ達から見えるのは短いスカートから出た白い太ももと際どい尻
見えそうで見えないスカートの向こう側に自然と目が釘付けになってしまい唾を呑み込んでしまう
『本当だ!とっても広いですね!』
「っ!だ、だろ?」
「ぐっ!」
彼女の声に我に返るが声が震えてしまう、キバナはそっぽを向き何事もなかったようにしダンデもまた熱くなる体を誤魔化そうとテントの準備に戻る
その間も視界の隅っこで揺れ動く彼女の尻が気になり男達は理性を抑えるのに必死だった
「(あっぶねっ!これダンデがいなかったから絶対襲ってたわ)」
「(落ち着けっ…っ、落ち着けっ俺の!流石に引かれるぞ!)」
『こんなに広いと寝袋より布団とかでごろんって寝たくなりますね』
やっと出てきた彼女に内心ホッとしつつ二人は胸を撫で下ろし、肩を落としたのをチハルは知らないだろう
「オレもそう思ってさ毛布持ってきたんだ、ちょっと待っててな」
キバナは彼女と使おうとしていた大きめの毛布を取り、中に眠る場所を作ろうとしゃがみ込んだ
すると彼のポケットから何か小さな物が落ちた
『キバナさん、何か落としましたよ?』
「へ?」
キバナが落とした物を拾ったチハルはそれが何かも分からず手に取り、男二人はギョッと目を見開く
「なっ、キバナっ!お前何持ってきてるんだ!」
顔から首下まで真っ赤にしたダンデはキバナに怒り声を荒げる
「い、いやぁ念の為?」
下心があったなんてダンデには言えず苦笑いを浮かべるがダンデの怒りは治まらない
「何が念の為だ!恋人でもないのにこんなっ…こんなっ物を!」
『これなんですか?ガム?』
これは避妊具という物だ
四角形の包みに入ったそれは円状の物が薄っすらと見えるが、初めて見る彼女には想像もつかない
裏返したり指でなぞっている姿にダンデは背中に変な汗を滲ませ慌てる
「駄目だっ君の手が穢れる!早く捨てるんだ!」
「いやいやお前が決めるなし、ごめん返して?」
『ん、はいどうぞっ』
「(ワァオ、好きな子からコンドーム渡されるって結構くるな…ん?)」
それが何か知らずにキバナへと手渡そうとする彼女に彼は悪戯を思い浮かべニヤリと笑った
「ねぇチハルちゃん、それ持ってさダンデにこう言ってみ?」
テントから出たキバナはチハルの耳元へと口を寄せると何やら指示をし、ダンデへと体を向けさせた
『ダンデさん』
「なっ…なんだ?」
嫌な予感がする
だが待つしかないダンデはドクドクと煩い胸を感じながらもチハルを見つめる
彼女はキバナの指示を再現しようと考え、少し困ったように眉を下げ
持っていたコンドームの袋を両手で握り自分の口元へと寄せると
『あたしと…仲良く使いましょ?』
とどめの上目遣いを言われた通りに表現すればダンデの鼻から何やら赤い物がタラリと流れた
『え!ダンデさん鼻血がっ!』
「っ!〜〜っ!キバナァっ!!」
手で鼻を隠し怒るが間抜けな姿に怯える事もなくキバナは腹を抱えて大笑いしだす
「ダッハハハッ!スッゲェ顔真っ赤!何?ときめいた?刺激強かった?」
「いい加減にしろっ彼女に変な事を教えるなっ!」
なんとも騒がしいキャンプだ
『ん〜焼きマシュマロ美味しっ』
ダンデの鼻血も落ち着き頭上の空に星が煌めく頃
三人は焚き火を囲み枝に刺したマシュマロを焼いて楽しんでいた
「熱いぞ?舌火傷すんなよ?」
『んふふっ美味しいから平気ですよ』
「こんな物まで用意するなんて…流石だなキバナ」
「まぁな…って!おいっマシュマロ刺しすぎ!!」
人が用意したものでも遠慮なく食べる彼は枝に限界までマシュマロを刺し焼いていた
4連の雪だるまのような枝
どうやって食べるのかと思えばバーベキューの肉のように横から噛みつきだしチハルは笑ってしまう
パチパチと火花が焚き火の中から聞こえオレンジの光に包まれる三人
これだけでも十分楽しいが今日の目的は他にある
「おっ、そろそろ始まるかもな」
「よしっ火を消そう」
時計を確認したキバナとダンデは急ぎ焚き火を消すと辺りは真っ暗となり足元さえ見えない
『見えない…あの、二人共そこにいますよね?』
目がまだ慣れないのだろう
宙を撫でる彼女の姿に二人は微笑み手を伸ばした
「ふふっオレさまはここにいるぜ?」
「すぐ目が慣れるさ!ほら…おいで」
伸ばした両手に大きな手が触れ強く握られる
目の前にキバナとダンデが並びぼんやりと見えた青い瞳と金色の瞳にホッとした
すると暗い空に薄っすらと青い光が走った
『あっ…流れ星!』
たった一つ
すぅっと、流れ星が長い光の尾を引いて消えていった
その一つ目が合図のように次から次へと青白い光が我先にと流れていく
夕立のように次第に増える星の雨
確かに夜だというのに流れる沢山の星の光が三人の顔を照らし表情がハッキリと分かる
『………うわぁ』
「すげぇな」
「あぁ…星のシャワーみたいだ」
青く光る星の尾
細い流れ星が先に流れ落ちる星を追いかけるように幾つも流れ落ち夢の世界のようだった
こんなにも世界は美しかった
狭い世界から出たばかりのチハルは感動し喉がつかえ、口を固く結ぼうとするが顎が小刻みに震えてしまった
『……っ……ぁ……』
胸がいっぱいになるこの感覚はなんだろう、もっと見たいのに視界が歪みクリアにしようと瞬きを激しくすれば頬に熱い涙が伝い落ちた
「チハル?」
「えっチハルちゃん?どうしたの?」
流れ星の照らす彼女の泣き顔に気がつきキバナとダンデは心配そうに背中を丸めた
『っ…ん…なんかっ…あまりに…ん…綺麗で…勝手に涙が…』
痛みや悲しみによる涙でないと分かると男達の顔から緊張が抜け落ち小さく笑った
「ハハッ…分かる、なんか心に響くよな」
「フフ…これほど綺麗なんだ、俺もちゃんと見るのは初めてだが…今ならカップルに人気なのも分かる気がするぜ」
キバナは濡れた彼女の目元を指で拭ってやり同じようにダンデも頬を伝う涙を指で撫でてやった
その間も空では星が流れ世界を青白く照らす
宝石が散らばったような夜空を三人は暫く見つめ、感動する気持ちを伝えるようにお互いの手を強く握った
『お二人のお陰です…こんなに楽しいと思えたの生まれて初めてかもしれない』
心から思った事を告げるとキバナは真面目な顔になり、彼女を見つめるとチハルの顎を指の背ですくい上げた
「こんなもんじゃないぜ?もっと沢山オマエに見せたい景色や物があるしオレにもっと頼って甘えて欲しい…だからさ」
真っ直ぐにコチラを見る青
空の流星群にも負けない綺麗な青は優しく光り美しい
「オレの隣でずっとこれからも一緒に見ていかない?」
『一緒に?』
「オレさ……チハルちゃんの事が」
「っ!キバナ!」
キバナの言葉に異変を感じたダンデは慌てて止めようとするが言葉を止める事は叶わず
彼はついに想いを伝えた
「好きだ」
『っ…え?』
「オレさま、チハルちゃんが大好き…だからオレだけの物になってくれない?」
突然の事にもう一度聞き返そうとするとキバナの手を払いのけダンデが顔を覗き込んできた
「チハル!待ってくれ!俺もっ、俺だって今日君に伝えたい事があって」
『ダンデ…さ…ん?』
「この前の事を謝りたかった…あの日は君の気持ちを考えず、ただ欲しくて堪らなくて触れてしまっただろ?」
「は?オマエ人には文句言っといて手だしたの?」
ギクリとダンデの肩が揺れたがここまで来て止めるわけにもいかず眉を険しくさせる
「キバナは黙っててくれ!…君は酒のせいだと言ったがあの日は別に酔ってなかったんだ…あれは俺の意思だ」
病室での事が酒による誤ちではなく
彼の意思
そう考えるとチハルの頬は真っ赤になり、彼女の反応にキバナは片眉を吊り上げた
キバナは知らないのだ
ダンデが彼女に何をしたのか
それが嫉妬となりダンデを睨むが彼は初めての告白に夢中で視線に構っていられなかった
「ジムチャレンジ中にこんな事を言っては迷惑かもしれないが今言わないと後悔してしまう気がして」
チハルの手を両手で握ったダンデは一度唾を飲み込むと眉を下げ真っ赤な顔で口を開いた
「何にでも一生懸命な君が愛しくて堪らない…いつか俺の元に行くと約束してくれた君の言葉がどれほど俺の心を救ってくれたか」
『っ!』
「好きだっ!君しか考えられないっ俺と恋人になって欲しい!」
告白を伝え終えるとキバナは大きくため息を一つし両手を自分の腰に当て眉を険しくさせた
「……あ〜あ、結局オレら恋愛でもこうなっちまうのな?」
ダンデもキバナの気配に気がつき彼女から手を離すと威嚇するように両手を組み合わせキバナを睨んだ
「そうだな、どこまでもライバル…という事か」
「チハル」
「チハルちゃん」
『はっはいっ!』
目の前に立つガラルチャンピオンとトップジムリーダー
「「どっちを選ぶ?」」
あまりに突然の愛の告白を受けチハルの心はぐちゃぐちゃだ
驚いたというのも一つの理由だが
その他にも彼女には素直に気持ちを受けとれない理由がある
『(どうしよ…嬉しいのに…ドキドキしてるのに…喉が…胸が苦しいっ)』
もしも全て投げ捨てて、彼らと生きられたらどんなに幸せだろう
どうして自分は自由に彼らの元へ行ける身じゃなかったんだろう
どちらかなんて選べないが
寧ろ選ぶ事さえ許されない身だ
頭に浮かぶのは両親との約束と
ローズの顔
考えれば考える程胸が締め付けられ苦しくなり涙が次々と頬を伝い落ちた
「ちょっ!チハルちゃん!」
「大丈夫かっ!どうして泣いてっ」
胸の服を強く握る彼女に二人はオロオロと眉を下げて近寄り背中を擦ったり肩を撫でるが、チハルは俯いたまま震えた声をひり出した
『ごめ…ごめ…ん…なさいっ、あたしっ…お二人とは…付き合えないっ』
「…………え?」
「……………は?」