第二章
夢小説設定
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バウタウン
ユウリは順調にルリナに勝ちバッチを手にしていたところだった
「おめでとう、次も頑張ってね」
ジムのフロアにてルリナから祝福の言葉を貰い彼女は嬉しそうに微笑んだ
「ありがとうございます!あの、失礼ですが…私で何人目ですか?」
「そうね…貴女で二人目よ?一人目はチャンピオンの弟だったわ」
それを聞きユウリは顔を曇らせ自分の顎を指で撫でた
「チハルという女の子はまだ来てませんか?」
「ええ、確か同じく推薦された子よね?ちょっとした有名人だから私が見落とすわけないわ」
「(変だな?チハルならすぐにジムを通過すると思ったのに…まだ来てないなんて)」
三人の中でも強かったチハル
てっきり先に通過していると思っていたのだが、違うようだ
ユウリはポケットからスマホを取り出し連絡を入れてみたがコール音ばかり鳴り相手は出てくれなかった
「何か問題が?」
心配そうにルリナがユウリを見つめているとジムへと新しくジムチャレンジャーが入ってきた
「ぁ…ごめんなさい、次の挑戦者が来たから私は行くけど何かあったら言って頂戴ね?」
「はい!ありがとうございます!」
ルリナは次に向け準備する為に奥の部屋へと消えていき、代りにユウリの横を新しく来たジムチャレンジャーが横切った
「……調子にのってんじゃねぇよガキ」
「!」
誰にも聞かれないように口にした男性にユウリは驚き振り返るが、彼は受付へと向かいバッチを係りに見せているところだった
「(空耳かな…というかそうであってほしい)」
怖い人には近寄るまい
ユウリはさっさとフロアから出ようとしたが
「君!これは君のバッチじゃないだろ!」
突然後ろで怒鳴った受付係の声にユウリは足を止め自然と振り返った
「え…そんな、そんな事ないですよ?」
手を左右に揺らし何かの間違いだと言う男性に受付係の彼は更に声を大きくさせた
「誤魔化してもだめだ!バッチにはそれぞれ登録されたIDがあって受付で分かるんだ!これはチハル選手のバッチだぞ!」
「………え?チハル?」
何故この男性がチハルのバッチを持っていたのか
醜く顔を歪める男と怒鳴る受付係を見つめながらユウリの背中にゾクリとした嫌な予感が走った
一方、チハルはと言うと崖の下で地面に座り込み眉を下げていた
『……どうしよ…全然登れそうにない』
岩肌は脆く登ろうとしては崩れてしまい上には上がれない
周りを見ても円上に広がった崖に抜け道はなくお手上げだ
せめての救いは崖がそこまで深くなかった事だろうか
怪我はしたが重症ではない
打ち付けた腰や背中は痛むが、ずっとここにいるわけにもいかないのだ
『メッソンもいないし…スマホロトムも置いてきたし……はぁ』
擦りむいた膝を撫で気持ちが落ち込んでいく、すると崖の影にポケモンの巣を見つけた
巣の周りには他のポケモンに食われたのか卵の潰れた物が何個も散らばっており見るのもツラい
『っ……可哀相に』
食べる方も生きる為だ、それは分かっているが小さな命の散った姿を見るのは心が締めつけられる
痛む体を揺らし巣へと近寄ると、たった一つだけまだ生まれていない卵が残っていた
巣の草で隠れて助かったのだろう
兄弟達のいない卵をチハルは抱き上げ胸に包むと優しく撫で声をかけた
『……怖かったね、一人でよく頑張ったね』
寂しい場所に一人ぼっち
それは昔の自分に重なりチハルは卵を見つめ瞳を潤ませた
『あたし…あたしも…頑張ってたんだけどな…なんで…こうなるのかな?』
ただポケモントレーナーとしてジムチャレンジャーとして努力していたつもりなのだが、運悪く目をつけられた
自分は何か悪い事をしたのだろうか
誰かを傷付けたのか
考えても答えはなく
体の痛みと胸の痛みにただ涙を流した
『…っ、いやだ、ここで諦めたくない!せっかくガラルに来たんだもん…それに…』
約束がある
頭にダンデの顔が浮かびチハルは涙で濡れた目元を乱暴に手の甲で擦ると空を見上げ大きく息を吸い込み
『ーーっ、誰かぁぁ!!助けてくださぁぁいっ!!』
初めて大きな声を出した気がした
妙にスッキリした気分になり肩で息を数回すると胸に抱いていた卵から軋んだ音が鳴り
『えっ!生まれっ』
生まれると思った途端卵はパキパキと音を立てて崩れ中から紫の赤ん坊、エレズンが生まれた
『ぅ…うわぁ!エレズンだ!初めて見たっ』
電気タイプのエレズン
生まれたての彼は小さくあくびをし自分を抱いてくれていた彼女を見上げると嬉しそうに笑い、ペロペロと涙で濡れた頬を舐めてくれた
『ふ…ふふっ…擽ったいよ…っ、ひっ…ん…エレズン…生まれて良かったね…』
今の自分の残酷な状況と彼が生まれた事による嬉しさ
彼の兄弟はもういない悲しさと生まれたばかりの愛らしさ
色んな感情か混ざりまた涙がこぼれてしまう
その度にエレズンは健気に頬を舐め慰めてくれた
『ん、ありがとうっ…そうだ、もう一回叫べば誰か気がつくかも』
もう一度と顔を空へと向けると一羽のココガラが彼女の元へと飛んできた
野生であるこのココガラはチハルが先程助けた子だ
『ココガラ、よかった!あのねあたしここから出れなくて……』
せめてスマホを持ってきて貰おうと説明しようとした途端、上から何やら大きな影が降ってきた
どっしっっっんッ!!
と、地震のような揺れを起こし彼女達の直ぐ側に降り立った黒い影はゆらりと顔をあげチハルは驚きに目を見開いた
『キテルグマ!メッソン!』
キテルグマの肩には彼女の鞄とメッソンが乗っていた
メッソンは余程心配していたのか大泣きをしながら彼女の胸に飛びこみ甘えだし、エレズンは不服そうに顔を膨らませた
『メッソン…ごめんねっ、心配かけたね』
メッソンと再会を喜んでいるとキテルグマが近寄り
『え?』
モフモフの毛に包まれた彼は怪我をしたチハルを見下ろし様子を伺うと壊れ物でも触るようにゆっくりと彼女を腕に抱き上げ、次の瞬間勢いよく崖上へと飛び上がった
『っ!ひゃっっ!!』
あまりの身体能力に驚きチハルは緊張に体を強張らせたが、キテルグマはそのまま彼女を運んだまま走り出し土煙を上げながら森を出ていく
その後キテルグマに抱かれバウタウンに来たチハルは目立ってしまい、そのおかげでユウリと再会する事もできた
あの男はチハルのバッチが目当てで近寄ったらしく全てがバレた彼はキテルグマに殴られた後、可哀想な姿になって警察に連れて行かれたらしい
ユウリは順調にルリナに勝ちバッチを手にしていたところだった
「おめでとう、次も頑張ってね」
ジムのフロアにてルリナから祝福の言葉を貰い彼女は嬉しそうに微笑んだ
「ありがとうございます!あの、失礼ですが…私で何人目ですか?」
「そうね…貴女で二人目よ?一人目はチャンピオンの弟だったわ」
それを聞きユウリは顔を曇らせ自分の顎を指で撫でた
「チハルという女の子はまだ来てませんか?」
「ええ、確か同じく推薦された子よね?ちょっとした有名人だから私が見落とすわけないわ」
「(変だな?チハルならすぐにジムを通過すると思ったのに…まだ来てないなんて)」
三人の中でも強かったチハル
てっきり先に通過していると思っていたのだが、違うようだ
ユウリはポケットからスマホを取り出し連絡を入れてみたがコール音ばかり鳴り相手は出てくれなかった
「何か問題が?」
心配そうにルリナがユウリを見つめているとジムへと新しくジムチャレンジャーが入ってきた
「ぁ…ごめんなさい、次の挑戦者が来たから私は行くけど何かあったら言って頂戴ね?」
「はい!ありがとうございます!」
ルリナは次に向け準備する為に奥の部屋へと消えていき、代りにユウリの横を新しく来たジムチャレンジャーが横切った
「……調子にのってんじゃねぇよガキ」
「!」
誰にも聞かれないように口にした男性にユウリは驚き振り返るが、彼は受付へと向かいバッチを係りに見せているところだった
「(空耳かな…というかそうであってほしい)」
怖い人には近寄るまい
ユウリはさっさとフロアから出ようとしたが
「君!これは君のバッチじゃないだろ!」
突然後ろで怒鳴った受付係の声にユウリは足を止め自然と振り返った
「え…そんな、そんな事ないですよ?」
手を左右に揺らし何かの間違いだと言う男性に受付係の彼は更に声を大きくさせた
「誤魔化してもだめだ!バッチにはそれぞれ登録されたIDがあって受付で分かるんだ!これはチハル選手のバッチだぞ!」
「………え?チハル?」
何故この男性がチハルのバッチを持っていたのか
醜く顔を歪める男と怒鳴る受付係を見つめながらユウリの背中にゾクリとした嫌な予感が走った
一方、チハルはと言うと崖の下で地面に座り込み眉を下げていた
『……どうしよ…全然登れそうにない』
岩肌は脆く登ろうとしては崩れてしまい上には上がれない
周りを見ても円上に広がった崖に抜け道はなくお手上げだ
せめての救いは崖がそこまで深くなかった事だろうか
怪我はしたが重症ではない
打ち付けた腰や背中は痛むが、ずっとここにいるわけにもいかないのだ
『メッソンもいないし…スマホロトムも置いてきたし……はぁ』
擦りむいた膝を撫で気持ちが落ち込んでいく、すると崖の影にポケモンの巣を見つけた
巣の周りには他のポケモンに食われたのか卵の潰れた物が何個も散らばっており見るのもツラい
『っ……可哀相に』
食べる方も生きる為だ、それは分かっているが小さな命の散った姿を見るのは心が締めつけられる
痛む体を揺らし巣へと近寄ると、たった一つだけまだ生まれていない卵が残っていた
巣の草で隠れて助かったのだろう
兄弟達のいない卵をチハルは抱き上げ胸に包むと優しく撫で声をかけた
『……怖かったね、一人でよく頑張ったね』
寂しい場所に一人ぼっち
それは昔の自分に重なりチハルは卵を見つめ瞳を潤ませた
『あたし…あたしも…頑張ってたんだけどな…なんで…こうなるのかな?』
ただポケモントレーナーとしてジムチャレンジャーとして努力していたつもりなのだが、運悪く目をつけられた
自分は何か悪い事をしたのだろうか
誰かを傷付けたのか
考えても答えはなく
体の痛みと胸の痛みにただ涙を流した
『…っ、いやだ、ここで諦めたくない!せっかくガラルに来たんだもん…それに…』
約束がある
頭にダンデの顔が浮かびチハルは涙で濡れた目元を乱暴に手の甲で擦ると空を見上げ大きく息を吸い込み
『ーーっ、誰かぁぁ!!助けてくださぁぁいっ!!』
初めて大きな声を出した気がした
妙にスッキリした気分になり肩で息を数回すると胸に抱いていた卵から軋んだ音が鳴り
『えっ!生まれっ』
生まれると思った途端卵はパキパキと音を立てて崩れ中から紫の赤ん坊、エレズンが生まれた
『ぅ…うわぁ!エレズンだ!初めて見たっ』
電気タイプのエレズン
生まれたての彼は小さくあくびをし自分を抱いてくれていた彼女を見上げると嬉しそうに笑い、ペロペロと涙で濡れた頬を舐めてくれた
『ふ…ふふっ…擽ったいよ…っ、ひっ…ん…エレズン…生まれて良かったね…』
今の自分の残酷な状況と彼が生まれた事による嬉しさ
彼の兄弟はもういない悲しさと生まれたばかりの愛らしさ
色んな感情か混ざりまた涙がこぼれてしまう
その度にエレズンは健気に頬を舐め慰めてくれた
『ん、ありがとうっ…そうだ、もう一回叫べば誰か気がつくかも』
もう一度と顔を空へと向けると一羽のココガラが彼女の元へと飛んできた
野生であるこのココガラはチハルが先程助けた子だ
『ココガラ、よかった!あのねあたしここから出れなくて……』
せめてスマホを持ってきて貰おうと説明しようとした途端、上から何やら大きな影が降ってきた
どっしっっっんッ!!
と、地震のような揺れを起こし彼女達の直ぐ側に降り立った黒い影はゆらりと顔をあげチハルは驚きに目を見開いた
『キテルグマ!メッソン!』
キテルグマの肩には彼女の鞄とメッソンが乗っていた
メッソンは余程心配していたのか大泣きをしながら彼女の胸に飛びこみ甘えだし、エレズンは不服そうに顔を膨らませた
『メッソン…ごめんねっ、心配かけたね』
メッソンと再会を喜んでいるとキテルグマが近寄り
『え?』
モフモフの毛に包まれた彼は怪我をしたチハルを見下ろし様子を伺うと壊れ物でも触るようにゆっくりと彼女を腕に抱き上げ、次の瞬間勢いよく崖上へと飛び上がった
『っ!ひゃっっ!!』
あまりの身体能力に驚きチハルは緊張に体を強張らせたが、キテルグマはそのまま彼女を運んだまま走り出し土煙を上げながら森を出ていく
その後キテルグマに抱かれバウタウンに来たチハルは目立ってしまい、そのおかげでユウリと再会する事もできた
あの男はチハルのバッチが目当てで近寄ったらしく全てがバレた彼はキテルグマに殴られた後、可哀想な姿になって警察に連れて行かれたらしい