賢者の石
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
前を歩くハグリッドの体で気づかなかったが、小屋の扉のすぐそばには古典的な大型バイクが鎮座していた。
原発的な風格を放ち、ドンと真ん中についてるヘッドライトの灯りが、ハグリッドを見つめてるようだ。
バイクの横には鉄で覆われたサイドカーがくっ付いていて、大型バイクが更に大きく見える。
ハリーはエマにしか聞こえない声で「わお」と歓喜の声を出した。
小屋の外は風がびゅうびゅう吹いていて、小さなハリーとエマは今にも飛ばされそうだが、頑張ってバイクのセカンドカーに乗り込んだ。
2人が小さいので、膝を曲げればすっぽりとサイドカーに収まることが出来た。
ここは人里離れた海の上にある小屋、このバイクが走れるような場所はない。
それなのにハグリッドはここにやってきたのだ。
おそらくこのバイクに乗って。
ハリーもエマも、今までに起こったあり得ないような展開と、これから起こるあり得ない展開に、ワクワクこそすれ、恐怖はなかった。
強風はついに雨をポツポツと加え出す。
「いけねぇ、早くこっから飛んでかねぇと。嵐がくるぞ。」
「飛ぶ?今飛ぶっていった?」
「これから雲のうえー出る。コレを飲んでくれ」
ハグリッドは赤色の液体が入った小瓶を取り出して2人に手渡した。
エマは目を見開いてハリーを見、ハリーもまたワクワクした表情でエマを見る。
ハリーの緑色の目が今までにない程キラキラしている。
「「かんぱい!」」
2人は同時にチンと瓶を鳴らし、栓を抜いてグイッと飲み干した。
カラダがカーー!と熱くなった。
ハリーとエマの顔が赤くなり、少し湯気が登っているのが見える。
ハグリッドはモジャモジャの頭にかけてあったゴーグルを装着し、バイクにまたがり「まだ寒いだろうから、これをきちょれ」と皮のコートを2人にかけてくれた。紅茶と濡れた犬のような匂いがするコートだ。
「ほんじゃ、いくぞ。しっかりつかまっちょれよっ」
ブォンブォンッ、ブァーーーーーーーン!!!!
バイクが前に広がる海ではなく、嵐雲に向かって飛び上がった。
2人の子供の頭はおもいっきり後ろにのけぞり、少しだけ首から変な音がしたが、どんどん上昇していくバイクから振り落とされまいと前のレバーをこんかぎりの力で握る。
古小屋の前で、なす術なくバイクを見上げるバーノンおじさんの顔など、2人は眺める余裕はなかった。
バイクは雨雲を抜け、月明かりが静かに光る雲の上にやってきた。
先ほどまでのGはなくなり、バイクも穏やかな運転に切り替わる。
さっきまでの強風の音と大きなエンジン音のせいか、小さく耳鳴りがしていた。
上空およそ10000メートルにいる2人は、ただただ冷えた空気を呆然と感じていた。
「僕、明日筋肉痛になってると思う。」
呆けた声を出したハリーの方に振り向くエマ
————————— 頭がっ…!
雨と強風に煽られ、ハリーの髪の毛は重力に逆らって盛大に上方向へ万歳をして固まっていた。
ハリーはキョトンとエマを見た。
「だめだめだめだめ!!…だめよそんな顔で見ないで!」
ハリーのつぶらな瞳が、稲妻の傷跡が、ぷっくりしたほっぺたが全て露わになっている様がツボに入る。
エマはたまらず大笑いしてしまった。
あまりにも笑うのでハリーはもっとじっと見てやろうと顔を近づけてエマの目を凝視する。
「…あっ…やめて!!ごめんなさいっ!」
エマは必死に両手で顔を隠しながら、体をくの字に曲げて笑い苦しんだ。
それを見たハグリッドもとても嬉しそうだ。
ハグリッドは「そうだ!」とハリーとエマにかけてやったコートに手を伸ばし、ポケットから小さな箱を取り出して2人に差し出した。
箱を開けるとピンクのクリームに緑の文字が書かれたケーキがあった。外の風に冷やされて、クリームの周りが凍ってキラキラ光っている
【たんじょび おめでと】
ハリーもエマも目を輝かせてハグリッドを見た。
「ハリー。ハッピーバースデー」
※※※※※※※※※※※
3人はロンドンにいた。
道中、ハグリッドはホグワーツについてや魔法界について話をしてくれた。そして、ハリーの両親とエマの両親は交通事故で死んだと聞かされていたが、実は魔法界の戦争の末、命を落とした事を聞かされた。
ハリーの両親は【名前を言ってはいけないあの人】に殺され、エマの両親については詳しい事はわからないのだそう。ハグリッドは【名前を言ってはいけないあの人】の名前を言う時、怯えたように ヴォルデモートと言った。
両親の名前や死んだ理由をもっと詳しく聞こうとしたが「わしには荷が重い」と話を終わらされてしまった。
3人はこれから【ダイアゴン横丁】に行って入学用品を揃えるのだという。
3人はロンドンの街中を歩いた。
ハグリッドはチャリング•クロス通りにある廃れた建物の扉を開けて中に入っていくので、ハリーとエマも後に続いた。
中は外観では想像ができない広さだ。
パブになっていて、長いローブを着た客で賑わっており、長テーブルやカウンターでお酒を飲んでいる。
ハグリッドがカウンターにいるハゲ頭で酷い猫背の男に声をかけると、男はハリーをみつめて驚いたような顔をした
「やれ嬉しや、貴方はもしや、ハリーポッターですか?」
「ハリーポッター?」
「おかえりなさい、お会い出来て光栄です!」
「私、ドリス•クロックフォードです。夢のようですわ」
店員の声を皮切りに、次から次へとパブにいる客達がハリーに握手を求め、ハリーは困惑しながらもされるがままに握手をしていた。
「ハグリッド、ハリーはこっちの世界じゃ、そんなに有名人なの?」
「あぁ、魔法界じゃハリーを知らん奴はおらん」
エマが不思議がっていると、頭にターバンを巻いている挙動不審な男がハリーに話かけていた。
「や、やぁ、ハリー…ポッター、お、お会い出来てこ、光栄だよ」
「おー!クィレル先生、気づかんかった。ハリー、エマ、クィレル先生だ。闇の魔術に対する防衛術を教えとる」
クィレル先生は酷く吃りながらハリーをキョドキョドと見た。
「こんにちは、クィレル先生」
「ハリー、き君には、闇のぼ防衛術は…必要、ないかも、しれんな…」
はっははっは。とぎこちなく笑うクィレル。
クィレルの視線はハリーからエマに移る。
「き、君もホグ、ワーツの生徒かな?」
「はい、エマ•ファースです。よろしくお願いします」
クィレルはエマを見つめて、やや瞳孔が開いたような様子を見せたが、気づくか気づかないかで、「では、し、新学期に」と去っていった。
「さぁ、もう行かにゃ、ダイアゴン横丁はこっちだ」
ハグリッドはパブの裏の中庭に出て、煉瓦の壁を独特なリズムで叩くと、煉瓦の一つ一つが回転し、やがてアーチの入り口を作った。
ここがダイアゴン横丁
ローブを来た人達が賑わい、見た事もない商品を売ってる店が所狭しと連なっている。
「羽ペンやインクはここだな。鍋屋はあっち、、いや先に制服用意せにゃ」
「あの、ハグリッド。僕たちお金がないよ。」
心配そうにハグリッドの袖を掴み、2人はハグリッドを見上げた。
ダーズリー一家が自分達にお小遣いなどくれるはずもなく、全くすっからかんの一文無しなのだ。
「あぁ、心配いらん。金なら銀行にある。」
「銀行があるの?」
「正面に見える建物だ。ついてこい、お前さんらの為に金庫がつくられてある。あそこはこえーけど、ボクワーツの次に安全な場所だ。」
一層高くそびえ立つ白い建物の観音扉を潜ると、大勢の小鬼が連なり、高い机の上で各々仕事をしていた。
全員揃いも揃って堅物で厳格でやや恐ろしげな顔をしている。
ハグリッドは正面に座って仕事をしている小鬼に声をかけた。
「ゴホン、やぁ、グリップフック、ハリーポッター とエマ•ファースの金庫を開けてもらいたい。」
「鍵はお持ちかな?」
「もちろん、もってるぞ、えー…と」
ゴソゴソとコートのポケットを漁り、二つの鍵を取り出し、グリップフックの前に置く。
「ほら、これだ。そう、もう一つ。ダンブルドア先生からだ。例の、あの、あれをもっていかにゃならん」
ハグリッドはエヘンっと咳払いをした。
「こちらです」
グリップフックに連れられて、建物の地下空間に案内された。
地下空間はひんやりとしていて暗く、鍾乳洞や滝のある複雑に入り組んだ道をトロッコで進むのだそうだ。
3人とグリップフックがトロッコに乗り込む。
ギギギと錆びた鉄が擦れる音がして、ゆっくり動き出したかと思うと、結構な速さででビュンビュンと線路を進む。
ハリーとエマはあっちやこっちにぐらぐらしたが、何とかハグリッドの巨体にしがみついて安定感を保った。
当のハグリッドは少し気持ち悪そうだ。
「687番金庫でございます。鍵を拝借」
グリップフックが金庫の扉をテキパキと開くと、
中には金貨、銀貨が山のように積まれていた。その山は金庫の奥の方まで続いている。
「ハリーの父さん、母さんがお前に残していったもんだ。
さぁ、遠慮しねぇでコレにいくらか入れてけ」
目の前の光景に口をあんぐり開けて固まっているハリーの頭に、ハグリッドはヒョイと麻の袋を乗せながら言った。
ハリーは金庫から麻の袋がこんもりする量のお金を詰める。
「次はエマの金庫だな。」
「私の金庫は別にあるの?」
「勿論だ。」
「私のお父さんとお母さんも私に残してくれてるの?」
エマが尋ねると、ハグリッドは少し複雑そうな顔して一瞬押し黙る。
「…あぁ、そうだな。お前さんの父さんと母さんが残してくれたんだ。」
ハグリッドは少し声を詰まらせながら切なそうに言った。
何故ハグリッドが泣きそうなのかエマはとても気になったが、金庫に到着してしまい聞きそびれてしまう。
「712番金庫でございます。」
金庫の中はハリーのものよりも大きく、小さい小部屋くらいあり、所狭しと金貨が積まれてあった。
金貨銀貨以外にも、宝石や金のインゴットもバラバラと無造作に積まれていた。
「すごいや。エマ、君の両親って王様だったんじゃない?」
2人とも驚き桃の木だ。おっかなびっくり麻の袋にお金をつめていると、ハグリッドとグリップフックはエマの金庫の隣にある「713番金庫」に向かっていた。
他の金庫の扉よりも厳重そうな重い重い扉にグリップフックの指がスーっと線を引くように撫でると、扉が消え去った。
まさに魔法だ。
「ゴブリン以外のものがこの扉に触れると、触れたものを吸い取って中に閉じ込める呪いがかけられています。」
ゴブリンは不気味に笑った。
成程、ここは安全で怖いところという意味が理解できる。
ハグリッドは金庫の中にあった黒い袋に包まれた何かを大事そうに胸ポケットにしまった。
原発的な風格を放ち、ドンと真ん中についてるヘッドライトの灯りが、ハグリッドを見つめてるようだ。
バイクの横には鉄で覆われたサイドカーがくっ付いていて、大型バイクが更に大きく見える。
ハリーはエマにしか聞こえない声で「わお」と歓喜の声を出した。
小屋の外は風がびゅうびゅう吹いていて、小さなハリーとエマは今にも飛ばされそうだが、頑張ってバイクのセカンドカーに乗り込んだ。
2人が小さいので、膝を曲げればすっぽりとサイドカーに収まることが出来た。
ここは人里離れた海の上にある小屋、このバイクが走れるような場所はない。
それなのにハグリッドはここにやってきたのだ。
おそらくこのバイクに乗って。
ハリーもエマも、今までに起こったあり得ないような展開と、これから起こるあり得ない展開に、ワクワクこそすれ、恐怖はなかった。
強風はついに雨をポツポツと加え出す。
「いけねぇ、早くこっから飛んでかねぇと。嵐がくるぞ。」
「飛ぶ?今飛ぶっていった?」
「これから雲のうえー出る。コレを飲んでくれ」
ハグリッドは赤色の液体が入った小瓶を取り出して2人に手渡した。
エマは目を見開いてハリーを見、ハリーもまたワクワクした表情でエマを見る。
ハリーの緑色の目が今までにない程キラキラしている。
「「かんぱい!」」
2人は同時にチンと瓶を鳴らし、栓を抜いてグイッと飲み干した。
カラダがカーー!と熱くなった。
ハリーとエマの顔が赤くなり、少し湯気が登っているのが見える。
ハグリッドはモジャモジャの頭にかけてあったゴーグルを装着し、バイクにまたがり「まだ寒いだろうから、これをきちょれ」と皮のコートを2人にかけてくれた。紅茶と濡れた犬のような匂いがするコートだ。
「ほんじゃ、いくぞ。しっかりつかまっちょれよっ」
ブォンブォンッ、ブァーーーーーーーン!!!!
バイクが前に広がる海ではなく、嵐雲に向かって飛び上がった。
2人の子供の頭はおもいっきり後ろにのけぞり、少しだけ首から変な音がしたが、どんどん上昇していくバイクから振り落とされまいと前のレバーをこんかぎりの力で握る。
古小屋の前で、なす術なくバイクを見上げるバーノンおじさんの顔など、2人は眺める余裕はなかった。
バイクは雨雲を抜け、月明かりが静かに光る雲の上にやってきた。
先ほどまでのGはなくなり、バイクも穏やかな運転に切り替わる。
さっきまでの強風の音と大きなエンジン音のせいか、小さく耳鳴りがしていた。
上空およそ10000メートルにいる2人は、ただただ冷えた空気を呆然と感じていた。
「僕、明日筋肉痛になってると思う。」
呆けた声を出したハリーの方に振り向くエマ
————————— 頭がっ…!
雨と強風に煽られ、ハリーの髪の毛は重力に逆らって盛大に上方向へ万歳をして固まっていた。
ハリーはキョトンとエマを見た。
「だめだめだめだめ!!…だめよそんな顔で見ないで!」
ハリーのつぶらな瞳が、稲妻の傷跡が、ぷっくりしたほっぺたが全て露わになっている様がツボに入る。
エマはたまらず大笑いしてしまった。
あまりにも笑うのでハリーはもっとじっと見てやろうと顔を近づけてエマの目を凝視する。
「…あっ…やめて!!ごめんなさいっ!」
エマは必死に両手で顔を隠しながら、体をくの字に曲げて笑い苦しんだ。
それを見たハグリッドもとても嬉しそうだ。
ハグリッドは「そうだ!」とハリーとエマにかけてやったコートに手を伸ばし、ポケットから小さな箱を取り出して2人に差し出した。
箱を開けるとピンクのクリームに緑の文字が書かれたケーキがあった。外の風に冷やされて、クリームの周りが凍ってキラキラ光っている
【たんじょび おめでと】
ハリーもエマも目を輝かせてハグリッドを見た。
「ハリー。ハッピーバースデー」
※※※※※※※※※※※
3人はロンドンにいた。
道中、ハグリッドはホグワーツについてや魔法界について話をしてくれた。そして、ハリーの両親とエマの両親は交通事故で死んだと聞かされていたが、実は魔法界の戦争の末、命を落とした事を聞かされた。
ハリーの両親は【名前を言ってはいけないあの人】に殺され、エマの両親については詳しい事はわからないのだそう。ハグリッドは【名前を言ってはいけないあの人】の名前を言う時、怯えたように ヴォルデモートと言った。
両親の名前や死んだ理由をもっと詳しく聞こうとしたが「わしには荷が重い」と話を終わらされてしまった。
3人はこれから【ダイアゴン横丁】に行って入学用品を揃えるのだという。
3人はロンドンの街中を歩いた。
ハグリッドはチャリング•クロス通りにある廃れた建物の扉を開けて中に入っていくので、ハリーとエマも後に続いた。
中は外観では想像ができない広さだ。
パブになっていて、長いローブを着た客で賑わっており、長テーブルやカウンターでお酒を飲んでいる。
ハグリッドがカウンターにいるハゲ頭で酷い猫背の男に声をかけると、男はハリーをみつめて驚いたような顔をした
「やれ嬉しや、貴方はもしや、ハリーポッターですか?」
「ハリーポッター?」
「おかえりなさい、お会い出来て光栄です!」
「私、ドリス•クロックフォードです。夢のようですわ」
店員の声を皮切りに、次から次へとパブにいる客達がハリーに握手を求め、ハリーは困惑しながらもされるがままに握手をしていた。
「ハグリッド、ハリーはこっちの世界じゃ、そんなに有名人なの?」
「あぁ、魔法界じゃハリーを知らん奴はおらん」
エマが不思議がっていると、頭にターバンを巻いている挙動不審な男がハリーに話かけていた。
「や、やぁ、ハリー…ポッター、お、お会い出来てこ、光栄だよ」
「おー!クィレル先生、気づかんかった。ハリー、エマ、クィレル先生だ。闇の魔術に対する防衛術を教えとる」
クィレル先生は酷く吃りながらハリーをキョドキョドと見た。
「こんにちは、クィレル先生」
「ハリー、き君には、闇のぼ防衛術は…必要、ないかも、しれんな…」
はっははっは。とぎこちなく笑うクィレル。
クィレルの視線はハリーからエマに移る。
「き、君もホグ、ワーツの生徒かな?」
「はい、エマ•ファースです。よろしくお願いします」
クィレルはエマを見つめて、やや瞳孔が開いたような様子を見せたが、気づくか気づかないかで、「では、し、新学期に」と去っていった。
「さぁ、もう行かにゃ、ダイアゴン横丁はこっちだ」
ハグリッドはパブの裏の中庭に出て、煉瓦の壁を独特なリズムで叩くと、煉瓦の一つ一つが回転し、やがてアーチの入り口を作った。
ここがダイアゴン横丁
ローブを来た人達が賑わい、見た事もない商品を売ってる店が所狭しと連なっている。
「羽ペンやインクはここだな。鍋屋はあっち、、いや先に制服用意せにゃ」
「あの、ハグリッド。僕たちお金がないよ。」
心配そうにハグリッドの袖を掴み、2人はハグリッドを見上げた。
ダーズリー一家が自分達にお小遣いなどくれるはずもなく、全くすっからかんの一文無しなのだ。
「あぁ、心配いらん。金なら銀行にある。」
「銀行があるの?」
「正面に見える建物だ。ついてこい、お前さんらの為に金庫がつくられてある。あそこはこえーけど、ボクワーツの次に安全な場所だ。」
一層高くそびえ立つ白い建物の観音扉を潜ると、大勢の小鬼が連なり、高い机の上で各々仕事をしていた。
全員揃いも揃って堅物で厳格でやや恐ろしげな顔をしている。
ハグリッドは正面に座って仕事をしている小鬼に声をかけた。
「ゴホン、やぁ、グリップフック、ハリーポッター とエマ•ファースの金庫を開けてもらいたい。」
「鍵はお持ちかな?」
「もちろん、もってるぞ、えー…と」
ゴソゴソとコートのポケットを漁り、二つの鍵を取り出し、グリップフックの前に置く。
「ほら、これだ。そう、もう一つ。ダンブルドア先生からだ。例の、あの、あれをもっていかにゃならん」
ハグリッドはエヘンっと咳払いをした。
「こちらです」
グリップフックに連れられて、建物の地下空間に案内された。
地下空間はひんやりとしていて暗く、鍾乳洞や滝のある複雑に入り組んだ道をトロッコで進むのだそうだ。
3人とグリップフックがトロッコに乗り込む。
ギギギと錆びた鉄が擦れる音がして、ゆっくり動き出したかと思うと、結構な速さででビュンビュンと線路を進む。
ハリーとエマはあっちやこっちにぐらぐらしたが、何とかハグリッドの巨体にしがみついて安定感を保った。
当のハグリッドは少し気持ち悪そうだ。
「687番金庫でございます。鍵を拝借」
グリップフックが金庫の扉をテキパキと開くと、
中には金貨、銀貨が山のように積まれていた。その山は金庫の奥の方まで続いている。
「ハリーの父さん、母さんがお前に残していったもんだ。
さぁ、遠慮しねぇでコレにいくらか入れてけ」
目の前の光景に口をあんぐり開けて固まっているハリーの頭に、ハグリッドはヒョイと麻の袋を乗せながら言った。
ハリーは金庫から麻の袋がこんもりする量のお金を詰める。
「次はエマの金庫だな。」
「私の金庫は別にあるの?」
「勿論だ。」
「私のお父さんとお母さんも私に残してくれてるの?」
エマが尋ねると、ハグリッドは少し複雑そうな顔して一瞬押し黙る。
「…あぁ、そうだな。お前さんの父さんと母さんが残してくれたんだ。」
ハグリッドは少し声を詰まらせながら切なそうに言った。
何故ハグリッドが泣きそうなのかエマはとても気になったが、金庫に到着してしまい聞きそびれてしまう。
「712番金庫でございます。」
金庫の中はハリーのものよりも大きく、小さい小部屋くらいあり、所狭しと金貨が積まれてあった。
金貨銀貨以外にも、宝石や金のインゴットもバラバラと無造作に積まれていた。
「すごいや。エマ、君の両親って王様だったんじゃない?」
2人とも驚き桃の木だ。おっかなびっくり麻の袋にお金をつめていると、ハグリッドとグリップフックはエマの金庫の隣にある「713番金庫」に向かっていた。
他の金庫の扉よりも厳重そうな重い重い扉にグリップフックの指がスーっと線を引くように撫でると、扉が消え去った。
まさに魔法だ。
「ゴブリン以外のものがこの扉に触れると、触れたものを吸い取って中に閉じ込める呪いがかけられています。」
ゴブリンは不気味に笑った。
成程、ここは安全で怖いところという意味が理解できる。
ハグリッドは金庫の中にあった黒い袋に包まれた何かを大事そうに胸ポケットにしまった。