賢者の石
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
一年生達はハグリッドに引率され、大きな湖をボートで渡って城までやってきた。
ハグリッドが城の扉を大きな拳で叩くと、扉が大きく開き、エメラルドのローブを羽織った厳格そうな魔女が待っていた。
その人はミネルバ•マクゴナガルと名乗った。
ハグリッドから新入生達を引き継ぎ、マクゴナガルは正面の壮大な大理石の階段を登り、石畳みのホールを横切って脇にある小部屋にやってきた。
ホールの入り口に向かうと思っていた一年生達は、不安そうに肩を並べた。
「新入生の皆さん、ようこそホグワーツへ。
今から皆さんはこの扉をくぐり、上級生と合流しますが、その前に組み分けをします。
グリフィンドール、ハッフルパフ、レイブンクロー、スリザリン、学校にいる間は寮があなた方の家です。
良い行いをすれば寮の得点となり、規則を破ったりすれば、減点されます。
学年末には最高得点の寮に優勝カップが渡されます。間も無く組み分けの儀式が始まります。
ここで暫し待機しておきなさい。」
ロンは顔が青白かった。
ハリーとエマも緊張で胃から何か出てきてしまいそうだ。
おまけに城の中をゴースト達が新入生に声をかけるもんだから、誰かが悲鳴をあげている。
後ろの方でハーマイオニーが「大丈夫、大丈夫よ。組分けの試験の予習なら完璧にした筈なんだから!」とブツクサ言っているのが聞こえ、余計に気分が悪くなる。
新入生はみんな気が気ではなかった。
マクゴナガルが「では、行きますよ」と声をかけた時、エマは緊張のあまりちょっと泣きそうになってた。
まるでここで自分の運命が決まる裁判が始まるような気分だ。
しかし、ホールの入り口に入ると、全員が息を呑むほど壮大な光景が広がった。
何千という蝋燭が四つの長テーブルを照らし、上には天井ではなく満点の星空が広がっている。
まるで宇宙の中にこの部屋があるようだった。
「魔法で空に見えるようにしてあるのよ。ホグワーツの歴史っていう本でよんだわ!」
ハーマイオニーが言った。
一年生達の前に【組分け帽子】が置かれた。
大広間がシン…としてその帽子をみんなが見つめている。
くたびれたシワみたいな部分がグニグニ動き、パクパクと歌い出した。
私はきれいじゃないけれど
人は見かけによらぬもの
私をしのぐ賢い帽子
あるなら私は身を引こう
山高帽子は真っ黒だ
シルクハットはすらりと高い
私はホグワーツ組み分け帽子
私は彼らの上をいく
君の頭に隠れたものを
組み分け帽子はお見通し
かぶれば君に教えよう
君が行くべき寮の名を
グリフィンドールに行くならば
優希ある者住まう寮
勇猛果敢な騎士道で
他とは違うグリフィンドール
ハッフルパフに行くならば
君は正しく忠実で
忍耐強く真実で
苦労を苦労と思わない
古き賢きレイブンクロー
君に意欲があるならば
機知と学びの友人を
ここで必ず得るだろう
スリザリンではもしかして
君はまことの友を得る
どんな手段を使っても
目的遂げる狡猾さ
かぶってごらん!恐れずに!
興奮せずに、お任せを!
君を私の手にゆだね(私は手なんかないけれど)
だって私は考える帽子!
歌い終わると上級生全員が拍手喝采をした。
マクゴナガルが帽子の横に立ち、手で拍手を嗜める。
ぐるぐるに巻かれた羊皮紙を持ち、首にかけてある小さな丸メガネをかけた。
「これからABC順に名前を呼びます。呼ばれたものは前へ」
「アボット•ハンナ」
ハンナは椅子に座り、カポリと帽子を被らされる。
一瞬の沈黙後、帽子が「ハッフルパフ!」と叫んだ。
右側のテーブルから拍手が上がり、こっちこっちとハンナを呼んだ。
ハンナは緊張から解放され笑顔でハッフルパフの席に座った。
「ボーンズ•スーザン」
「ハッフルパフ!」
「ブート•テリー」
「レイブンクロー!」
「ファース•エマ」
ドクン!と心臓が飛び跳ねた。手に汗をかいていて気持ち悪い、足の裏も汗をかいてるみたいだ。
ドキドキという心臓の音を鼓膜で感じながら、エマは椅子に座った。
すると、耳元で「うーーーん」と声が聞こえた。
「なるほど、勇気があって頭も悪くないな。心も優しく好奇心が強い、ふむふむ…」
帽子の声だ!
「……………うーむ。見えない。
何か黒いものが大きくお前の意識を覆っているようだ。何か大きな隠し事があるのか?」
そんなものない筈。…ない筈だ。
でも、私は自分の事をよく知らない。
「ほう、知らないというのは嘘ではないようだ」
知らない、だから知りたい。
私は自分の事を、両親の事をもっと知りたい!
「ふむ、そうか。強い信念を持ってそれが辛い事実だったとしても受け入れる覚悟があるのだな。
それでは…」
「グリフィンドール!」
正面のテーブルからワー!!と拍手が湧き起こる。
パーシー、フレッド、ジョージがニコニコしながら迎えてくれた。
「結構時間かかったな!」
「帽子と何話してたんだ?」
「兎にも角にも!おめでとう!ようこそグリフィンドールへ!」
エマは安堵して、ヘラヘラと笑った。
この寮にはエマを歓迎してくれる上級生ばかりだったのでホッとした。
力が抜けたせいで、何人かの新入生の組み分けを見過ごしていたが、ハーマイオニーが呼ばれた。
「グリフィンドール!」
ハーマイオニーが拍手に包まれながら、ほころびつつコチラに駆け足でやってきた。
安心感がエマとハーマイオニーの頬を緩ませ、2人は心から笑顔を向け合った。
「ハーマイオニー!嬉しいわ」
「私もっ!」
「マルフォイ•ドラコ」
マルフォイは全く緊張なんかしていない様子で気品と性悪さを漂わせながら椅子に座る。
帽子はマルフォイの頭に触れる前に叫んだ
「スリザリン!」
マルフォイはフン!と傲慢に笑って、スリザリンの席についた。
そんなマルフォイに熱い視線を送っている黒髪でおかっぱの女の子の頬が赤らんでいるのは気のせいだろうか。
「ポッター•ハリー」
会場がシンっとする。
所々で「ハリーポッター?」「例のあの人の?」
「凄い、本物のポッターだ」というヒソヒソ声が聞こえる。
他にない緊張感が大広間中に漂った。
あの有名なハリー•ポッターはどの寮に組分けされるのか。全員が静観している。
ハリーは異様な空気感に緊張してる様子で、椅子に腰をかけ、帽子を被った。
ハリーは目をギュッとつぶって祈るようにブツブツと何か言っている。
長い…沈黙が長い。
エマは緊張し出して、乾いた手にまた汗が滲んだ。
「グリフィンドール!」
と帽子が叫び、グリフィンドールの席は割れんばかりの拍手、大喝采が起きた。
フレッドとジョージが指笛を鳴らしている。
照れたようにコチラにかけてくるハリーに、エマも安堵した。
ワーワーと通りがけに色んな人に絡まれている。
「やったぞ!ハリーを取った!!」
「おめでとう!ハリー!!」
ハリーは笑いながらグリフィンドール生達を通り抜け、エマの隣に座った。
「よかった!!ハリー」
「エマ、ありがとう」
ハリーのほっぺが少し赤くなっていた。
最後の方でロンが呼ばれた。
ハリーはロンが横でずっと「今日程ウィーズリーのWを呪った事はない」と言っているのを聞き続けたそうだ。
ロンは長い事緊張する羽目になったせいなのか、椅子に向かう足がフラフラしていた。
青白く、今にも倒れそうなロンとは相反して帽子はみんなに聞こえる声で
「あー、ウィーズリーの子だね!お前の行く先は決まっとる。グリフィンドール!!」
と軽快に叫んだ。
ロンはふにゃふにゃと力が抜けた。
再びフラフラの足取りでグリフィンドールの席にやってくる。
みんなウィズリーの子を歓迎していた。
パーシー、フレッド、ジョージは笑いながら「よくやった!よくやった」とロンの背中をバシバシ叩いていた。
ロンがハリーの横に座り「もう僕お腹ぺこぺこだよ。空想で何度も吐いたからお腹空っぽだもの」なんてよく分からない事を言った。
組み分けが終わり、アルバス•ダンブルドアが席から立ち、手を広げた。
ダンブルドアが立った瞬間、上級生達はみんな静まり、それにつられて新入生達も静かになった。
ダンブルドアはずっとキラキラした瞳をしている。
「新入生諸君、おめでとう!お腹も空いてる事じゃろ。では、宴を始めよう」
長テーブルにあった空の金の食器に、料理が突然現れた。
凄い魔法だ。
会場が一気に活気づいて、ガヤガヤと賑やかになった。みんなお腹が空いていたので次々とお皿に料理を盛った。
ローストチキン、マッシュポテト、ローストビーフ、オレンジジュース、にんじんのグラッセ、ブロッコリー、ソーセージ、カボチャスープ、ベーコン、サンドイッチ、卵料理…
こんなに沢山の料理を好きなだけ食べていいなんてハリーとエマは経験してこなかったので、ウキウキワクワクしながら色んな料理をお皿に盛った。
ロンは両手にチキンを握りながら夢中で齧り付いている。
1人のゴーストがグリフィンドールのテーブルの上をぐるぐると回っていた。
「僕知ってるよ、殆ど首なしニックだ」
ロンがチキンを頬張りながら言った。
自分の事を呼ばれて、ニックはムっ!と立ち止まった
「殆ど首なし?なんでなの?」
ハーマイオニーが尋ねる。
「ほぉら。この通り」
ニックは自分の首をもって横へずらした。クチャっというリアルな音と文字通り首の皮一枚繋がっている状態を目の当たりにする。
唐突なグロテスクにハーマイオニーが「きゃぁ!」と悲鳴をあげ、ロンが「うげっ!」と唸った。
ニックは悲鳴に満足して、スーっと消えていった。
豪勢だった料理が消え、今度はデザートが出てきた。
色んな種類のアイスクリーム、洋梨タルト、プティング、イチゴゼリー、カボチャパイ、糖蜜パイ、エクレア
エクレア…ダードリーの残りやマージョリーの目をかいくぐれた時にしか食べれなかった夢のエクレア…
エマはそーっとエクレアを一つとり、ゆっくり口に持っていった。
クリームが、上に載っているチョコレートが、ぱり、シナっとしたシュー生地が口の中に広がる。
あー幸せだ。
こんなに沢山の料理をデザートを満喫できるなんて…!生きててよかった。
「エマ!なんて顔してるんだよ」
ロンがニマニマして言った。
「…ロン、エクレアなのよ?」
エマはわざとゆっくり呟いた。
「ハハっ!なんだよそれー」
ロンは何故かとても嬉しそうに笑っている。
「邪魔しちゃだめよ。私とエクレアの時間を」
エマはまたゆーっくりエクレアを一口かじった。
あー、至福。神様、ありがとう。。
ロンはデザートを食べるエマを見ながら、きゃっきゃと笑っていた。
周りはみんな自分の家の事や、グィディッチの事等ワイワイ話をしている。
ハーマイオニーなんかパーシーに「本当にはやく授業を受けたいわ、変身術に興味があるの!」なんて話をしていた。
「エマ、よくたべるね。」
「ハリーだって、それ3皿目でしょ?」
「だって、こんなに食べれるの初めてじゃないか」
クスクス笑い合っていると、エマは視線を感じた。
フと顔を挙げると、スリザリンの席にいるマルフォイと一瞬ぱちっと目があったようだったが、マルフォイは視線を流れるように逸らしながらゴブレットを口に運んだ。
気のせいか…
「イタ!!」
ハリーが額を抑えた。
「ハリーっどうしたの?」
「…なんか急に傷が痛んだんだ。」
ハリーが額を抑えながら先生達の並ぶ席を見ていた。
視線の先にはクィレル先生と、黒髪で黒ローブの先生。
一瞬2人がハリーを見ていたようにも見えた。
パーシーが黒髪の先生は、セブルス•スネイプ先生だと教えてくれた。魔法薬の先生でスリザリンの寮監。
クィレルの席を狙ってるらしい。
ハリーはスネイプ先生をじっと見つめていたが、もう目が合う事はなかった。
デザートも終わり、最後にダンブルドアからお話があった。
校内にある森に入らない事、グィディッチの予選に参加したい者は、マダム•フーチに名乗り出る事、それから
「痛い思いをして死にたくない者は、今年いっぱい四階の右側の廊下には近づかない事。以上!解散!」
ふしぎな守りごとが多いなと思いながらも、お腹いっぱいで早く休みたいエマはパーシーにノロノロとついていった。
階段、廊下、壁画、階段、階段、階段…
なかなか辿りつかないな、なんて思っているとエマの目の前で1人の幽霊がニョッキーと現れた。
エマはハっ!と目が覚めて大きな口をした小男を見つめた。
「おおっほほほほぉぉお!!かーわいいっ一年生ちゃぁーーーん!!!」
「ピーブス!!一年生を脅かすな!血みどろ男爵を呼ぶぞ!」
パーシーが叫ぶと、ピーブスはあっかんべーをして、ネビルの体を通り抜けながら笑って去っていった。ネビルはサー!と顔が青くなった。「冷たい!!」
「ピーブスには気をつけた方がいい。あいつをコントロールできるのは血みどろ男爵だけだ。さぁ、着いたぞ!」
壁には太った婦人の肖像画があった。
婦人が「合言葉は?」と尋ねるとパーシーが「カプートドラニコス」とハキハキ答える。
するとズズズズ…と肖像画が横にずれ、壁に丸い穴が開いてある。
穴の向こうにはチラチラと暖炉の火らしき灯りが見えている。
生徒はその穴を這い上り、中に入るのだそうだ。
中に入ると、あったたかい雰囲気と高級感のある円形の談話室、部屋は赤で統一されて、暖炉にチロチロと火が灯っている。
両脇に階段があり、それぞれ女子寮、男子寮と別れていた。
みんな長旅で疲れたのか、ゾロゾロと部屋に向かう。
エマの部屋はハーマイオニーとパーバディ•パチルと同室だった。
部屋には自分たちの荷物がちゃんと置いてあって、ミネットがエマのベッドに丸まってスヤスヤ眠っていた。
「私、エマ•ファースよ」
「ハーマイオニー•グレンジャー、よろしく」
「ラベンダー•ブラウンよ」
ハーマイオニーがあくびをして、エマとラベンダーもつられてあくびをした。
3人ともむにゃむにゃとパジャマに着替え
「おやすみー」
と布団にはいった。
すぐに寝息が聞こえてきた。
ハリーはロンと一緒の部屋かな…もう寝たんだろうか…グリフィンドール…に…入れて…よかった………
エマも眠った。
その晩、夢を見た。
赤ん坊の手が見える。
叫ぶ女の人、沢山飛び交う光、男の人の声、黒い塊が不気味ゆらめいている。
嫌だ、離れたくない、行かないで、1人にしないで、お母さん!!
エマは眉間に皺を寄せて一筋涙を流していた。
ハグリッドが城の扉を大きな拳で叩くと、扉が大きく開き、エメラルドのローブを羽織った厳格そうな魔女が待っていた。
その人はミネルバ•マクゴナガルと名乗った。
ハグリッドから新入生達を引き継ぎ、マクゴナガルは正面の壮大な大理石の階段を登り、石畳みのホールを横切って脇にある小部屋にやってきた。
ホールの入り口に向かうと思っていた一年生達は、不安そうに肩を並べた。
「新入生の皆さん、ようこそホグワーツへ。
今から皆さんはこの扉をくぐり、上級生と合流しますが、その前に組み分けをします。
グリフィンドール、ハッフルパフ、レイブンクロー、スリザリン、学校にいる間は寮があなた方の家です。
良い行いをすれば寮の得点となり、規則を破ったりすれば、減点されます。
学年末には最高得点の寮に優勝カップが渡されます。間も無く組み分けの儀式が始まります。
ここで暫し待機しておきなさい。」
ロンは顔が青白かった。
ハリーとエマも緊張で胃から何か出てきてしまいそうだ。
おまけに城の中をゴースト達が新入生に声をかけるもんだから、誰かが悲鳴をあげている。
後ろの方でハーマイオニーが「大丈夫、大丈夫よ。組分けの試験の予習なら完璧にした筈なんだから!」とブツクサ言っているのが聞こえ、余計に気分が悪くなる。
新入生はみんな気が気ではなかった。
マクゴナガルが「では、行きますよ」と声をかけた時、エマは緊張のあまりちょっと泣きそうになってた。
まるでここで自分の運命が決まる裁判が始まるような気分だ。
しかし、ホールの入り口に入ると、全員が息を呑むほど壮大な光景が広がった。
何千という蝋燭が四つの長テーブルを照らし、上には天井ではなく満点の星空が広がっている。
まるで宇宙の中にこの部屋があるようだった。
「魔法で空に見えるようにしてあるのよ。ホグワーツの歴史っていう本でよんだわ!」
ハーマイオニーが言った。
一年生達の前に【組分け帽子】が置かれた。
大広間がシン…としてその帽子をみんなが見つめている。
くたびれたシワみたいな部分がグニグニ動き、パクパクと歌い出した。
私はきれいじゃないけれど
人は見かけによらぬもの
私をしのぐ賢い帽子
あるなら私は身を引こう
山高帽子は真っ黒だ
シルクハットはすらりと高い
私はホグワーツ組み分け帽子
私は彼らの上をいく
君の頭に隠れたものを
組み分け帽子はお見通し
かぶれば君に教えよう
君が行くべき寮の名を
グリフィンドールに行くならば
優希ある者住まう寮
勇猛果敢な騎士道で
他とは違うグリフィンドール
ハッフルパフに行くならば
君は正しく忠実で
忍耐強く真実で
苦労を苦労と思わない
古き賢きレイブンクロー
君に意欲があるならば
機知と学びの友人を
ここで必ず得るだろう
スリザリンではもしかして
君はまことの友を得る
どんな手段を使っても
目的遂げる狡猾さ
かぶってごらん!恐れずに!
興奮せずに、お任せを!
君を私の手にゆだね(私は手なんかないけれど)
だって私は考える帽子!
歌い終わると上級生全員が拍手喝采をした。
マクゴナガルが帽子の横に立ち、手で拍手を嗜める。
ぐるぐるに巻かれた羊皮紙を持ち、首にかけてある小さな丸メガネをかけた。
「これからABC順に名前を呼びます。呼ばれたものは前へ」
「アボット•ハンナ」
ハンナは椅子に座り、カポリと帽子を被らされる。
一瞬の沈黙後、帽子が「ハッフルパフ!」と叫んだ。
右側のテーブルから拍手が上がり、こっちこっちとハンナを呼んだ。
ハンナは緊張から解放され笑顔でハッフルパフの席に座った。
「ボーンズ•スーザン」
「ハッフルパフ!」
「ブート•テリー」
「レイブンクロー!」
「ファース•エマ」
ドクン!と心臓が飛び跳ねた。手に汗をかいていて気持ち悪い、足の裏も汗をかいてるみたいだ。
ドキドキという心臓の音を鼓膜で感じながら、エマは椅子に座った。
すると、耳元で「うーーーん」と声が聞こえた。
「なるほど、勇気があって頭も悪くないな。心も優しく好奇心が強い、ふむふむ…」
帽子の声だ!
「……………うーむ。見えない。
何か黒いものが大きくお前の意識を覆っているようだ。何か大きな隠し事があるのか?」
そんなものない筈。…ない筈だ。
でも、私は自分の事をよく知らない。
「ほう、知らないというのは嘘ではないようだ」
知らない、だから知りたい。
私は自分の事を、両親の事をもっと知りたい!
「ふむ、そうか。強い信念を持ってそれが辛い事実だったとしても受け入れる覚悟があるのだな。
それでは…」
「グリフィンドール!」
正面のテーブルからワー!!と拍手が湧き起こる。
パーシー、フレッド、ジョージがニコニコしながら迎えてくれた。
「結構時間かかったな!」
「帽子と何話してたんだ?」
「兎にも角にも!おめでとう!ようこそグリフィンドールへ!」
エマは安堵して、ヘラヘラと笑った。
この寮にはエマを歓迎してくれる上級生ばかりだったのでホッとした。
力が抜けたせいで、何人かの新入生の組み分けを見過ごしていたが、ハーマイオニーが呼ばれた。
「グリフィンドール!」
ハーマイオニーが拍手に包まれながら、ほころびつつコチラに駆け足でやってきた。
安心感がエマとハーマイオニーの頬を緩ませ、2人は心から笑顔を向け合った。
「ハーマイオニー!嬉しいわ」
「私もっ!」
「マルフォイ•ドラコ」
マルフォイは全く緊張なんかしていない様子で気品と性悪さを漂わせながら椅子に座る。
帽子はマルフォイの頭に触れる前に叫んだ
「スリザリン!」
マルフォイはフン!と傲慢に笑って、スリザリンの席についた。
そんなマルフォイに熱い視線を送っている黒髪でおかっぱの女の子の頬が赤らんでいるのは気のせいだろうか。
「ポッター•ハリー」
会場がシンっとする。
所々で「ハリーポッター?」「例のあの人の?」
「凄い、本物のポッターだ」というヒソヒソ声が聞こえる。
他にない緊張感が大広間中に漂った。
あの有名なハリー•ポッターはどの寮に組分けされるのか。全員が静観している。
ハリーは異様な空気感に緊張してる様子で、椅子に腰をかけ、帽子を被った。
ハリーは目をギュッとつぶって祈るようにブツブツと何か言っている。
長い…沈黙が長い。
エマは緊張し出して、乾いた手にまた汗が滲んだ。
「グリフィンドール!」
と帽子が叫び、グリフィンドールの席は割れんばかりの拍手、大喝采が起きた。
フレッドとジョージが指笛を鳴らしている。
照れたようにコチラにかけてくるハリーに、エマも安堵した。
ワーワーと通りがけに色んな人に絡まれている。
「やったぞ!ハリーを取った!!」
「おめでとう!ハリー!!」
ハリーは笑いながらグリフィンドール生達を通り抜け、エマの隣に座った。
「よかった!!ハリー」
「エマ、ありがとう」
ハリーのほっぺが少し赤くなっていた。
最後の方でロンが呼ばれた。
ハリーはロンが横でずっと「今日程ウィーズリーのWを呪った事はない」と言っているのを聞き続けたそうだ。
ロンは長い事緊張する羽目になったせいなのか、椅子に向かう足がフラフラしていた。
青白く、今にも倒れそうなロンとは相反して帽子はみんなに聞こえる声で
「あー、ウィーズリーの子だね!お前の行く先は決まっとる。グリフィンドール!!」
と軽快に叫んだ。
ロンはふにゃふにゃと力が抜けた。
再びフラフラの足取りでグリフィンドールの席にやってくる。
みんなウィズリーの子を歓迎していた。
パーシー、フレッド、ジョージは笑いながら「よくやった!よくやった」とロンの背中をバシバシ叩いていた。
ロンがハリーの横に座り「もう僕お腹ぺこぺこだよ。空想で何度も吐いたからお腹空っぽだもの」なんてよく分からない事を言った。
組み分けが終わり、アルバス•ダンブルドアが席から立ち、手を広げた。
ダンブルドアが立った瞬間、上級生達はみんな静まり、それにつられて新入生達も静かになった。
ダンブルドアはずっとキラキラした瞳をしている。
「新入生諸君、おめでとう!お腹も空いてる事じゃろ。では、宴を始めよう」
長テーブルにあった空の金の食器に、料理が突然現れた。
凄い魔法だ。
会場が一気に活気づいて、ガヤガヤと賑やかになった。みんなお腹が空いていたので次々とお皿に料理を盛った。
ローストチキン、マッシュポテト、ローストビーフ、オレンジジュース、にんじんのグラッセ、ブロッコリー、ソーセージ、カボチャスープ、ベーコン、サンドイッチ、卵料理…
こんなに沢山の料理を好きなだけ食べていいなんてハリーとエマは経験してこなかったので、ウキウキワクワクしながら色んな料理をお皿に盛った。
ロンは両手にチキンを握りながら夢中で齧り付いている。
1人のゴーストがグリフィンドールのテーブルの上をぐるぐると回っていた。
「僕知ってるよ、殆ど首なしニックだ」
ロンがチキンを頬張りながら言った。
自分の事を呼ばれて、ニックはムっ!と立ち止まった
「殆ど首なし?なんでなの?」
ハーマイオニーが尋ねる。
「ほぉら。この通り」
ニックは自分の首をもって横へずらした。クチャっというリアルな音と文字通り首の皮一枚繋がっている状態を目の当たりにする。
唐突なグロテスクにハーマイオニーが「きゃぁ!」と悲鳴をあげ、ロンが「うげっ!」と唸った。
ニックは悲鳴に満足して、スーっと消えていった。
豪勢だった料理が消え、今度はデザートが出てきた。
色んな種類のアイスクリーム、洋梨タルト、プティング、イチゴゼリー、カボチャパイ、糖蜜パイ、エクレア
エクレア…ダードリーの残りやマージョリーの目をかいくぐれた時にしか食べれなかった夢のエクレア…
エマはそーっとエクレアを一つとり、ゆっくり口に持っていった。
クリームが、上に載っているチョコレートが、ぱり、シナっとしたシュー生地が口の中に広がる。
あー幸せだ。
こんなに沢山の料理をデザートを満喫できるなんて…!生きててよかった。
「エマ!なんて顔してるんだよ」
ロンがニマニマして言った。
「…ロン、エクレアなのよ?」
エマはわざとゆっくり呟いた。
「ハハっ!なんだよそれー」
ロンは何故かとても嬉しそうに笑っている。
「邪魔しちゃだめよ。私とエクレアの時間を」
エマはまたゆーっくりエクレアを一口かじった。
あー、至福。神様、ありがとう。。
ロンはデザートを食べるエマを見ながら、きゃっきゃと笑っていた。
周りはみんな自分の家の事や、グィディッチの事等ワイワイ話をしている。
ハーマイオニーなんかパーシーに「本当にはやく授業を受けたいわ、変身術に興味があるの!」なんて話をしていた。
「エマ、よくたべるね。」
「ハリーだって、それ3皿目でしょ?」
「だって、こんなに食べれるの初めてじゃないか」
クスクス笑い合っていると、エマは視線を感じた。
フと顔を挙げると、スリザリンの席にいるマルフォイと一瞬ぱちっと目があったようだったが、マルフォイは視線を流れるように逸らしながらゴブレットを口に運んだ。
気のせいか…
「イタ!!」
ハリーが額を抑えた。
「ハリーっどうしたの?」
「…なんか急に傷が痛んだんだ。」
ハリーが額を抑えながら先生達の並ぶ席を見ていた。
視線の先にはクィレル先生と、黒髪で黒ローブの先生。
一瞬2人がハリーを見ていたようにも見えた。
パーシーが黒髪の先生は、セブルス•スネイプ先生だと教えてくれた。魔法薬の先生でスリザリンの寮監。
クィレルの席を狙ってるらしい。
ハリーはスネイプ先生をじっと見つめていたが、もう目が合う事はなかった。
デザートも終わり、最後にダンブルドアからお話があった。
校内にある森に入らない事、グィディッチの予選に参加したい者は、マダム•フーチに名乗り出る事、それから
「痛い思いをして死にたくない者は、今年いっぱい四階の右側の廊下には近づかない事。以上!解散!」
ふしぎな守りごとが多いなと思いながらも、お腹いっぱいで早く休みたいエマはパーシーにノロノロとついていった。
階段、廊下、壁画、階段、階段、階段…
なかなか辿りつかないな、なんて思っているとエマの目の前で1人の幽霊がニョッキーと現れた。
エマはハっ!と目が覚めて大きな口をした小男を見つめた。
「おおっほほほほぉぉお!!かーわいいっ一年生ちゃぁーーーん!!!」
「ピーブス!!一年生を脅かすな!血みどろ男爵を呼ぶぞ!」
パーシーが叫ぶと、ピーブスはあっかんべーをして、ネビルの体を通り抜けながら笑って去っていった。ネビルはサー!と顔が青くなった。「冷たい!!」
「ピーブスには気をつけた方がいい。あいつをコントロールできるのは血みどろ男爵だけだ。さぁ、着いたぞ!」
壁には太った婦人の肖像画があった。
婦人が「合言葉は?」と尋ねるとパーシーが「カプートドラニコス」とハキハキ答える。
するとズズズズ…と肖像画が横にずれ、壁に丸い穴が開いてある。
穴の向こうにはチラチラと暖炉の火らしき灯りが見えている。
生徒はその穴を這い上り、中に入るのだそうだ。
中に入ると、あったたかい雰囲気と高級感のある円形の談話室、部屋は赤で統一されて、暖炉にチロチロと火が灯っている。
両脇に階段があり、それぞれ女子寮、男子寮と別れていた。
みんな長旅で疲れたのか、ゾロゾロと部屋に向かう。
エマの部屋はハーマイオニーとパーバディ•パチルと同室だった。
部屋には自分たちの荷物がちゃんと置いてあって、ミネットがエマのベッドに丸まってスヤスヤ眠っていた。
「私、エマ•ファースよ」
「ハーマイオニー•グレンジャー、よろしく」
「ラベンダー•ブラウンよ」
ハーマイオニーがあくびをして、エマとラベンダーもつられてあくびをした。
3人ともむにゃむにゃとパジャマに着替え
「おやすみー」
と布団にはいった。
すぐに寝息が聞こえてきた。
ハリーはロンと一緒の部屋かな…もう寝たんだろうか…グリフィンドール…に…入れて…よかった………
エマも眠った。
その晩、夢を見た。
赤ん坊の手が見える。
叫ぶ女の人、沢山飛び交う光、男の人の声、黒い塊が不気味ゆらめいている。
嫌だ、離れたくない、行かないで、1人にしないで、お母さん!!
エマは眉間に皺を寄せて一筋涙を流していた。