賢者の石
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「僕はロン、ロン•ウィーズリー」
「エマ•ファースよ」
同じコンパートメントにやってきたロンとエマは握手をした。
ロンはじっとハリーを見つめて「見てもいい?」と自分の額をちょんちょんと指差した。
「うん、どうぞ」
ハリーは前髪を上げて稲妻型の傷を見せた。
「すっげぇー本物だ!」
「ねぇ、何でハリーの傷痕、みんなが見たがるの?」
「何でって、そりゃぁ例のあの人がつけた傷だもの」
「うん、だから何でそれがそんなに凄い事なの?」
「まさか、君たちしらないの?!」
ロンは大声を出した。
そう、ハリーとエマはハリーの名前が兎に角有名で、みんなが傷痕に歓喜するのは見てたら分かるが、理由をまだだれからも聞いてない。
ロンはゴクリと唾をのんで体を寄せてきた。
ハリーとエマもぐぐっと身を寄せる。
「例のあの人の事知ってる?」
「うん、皆名前を言うのを怖がるよね。」
「昔の戦争を起こした張本人だよ。例のあの人は沢山の部下を連れてマグル生まれや半純潔の魔法使いを沢山殺したんだ。」
「半純潔?」
「自分の親どっちかがマグル生まれの人の事さ。例のあの人はマグルや半純潔を憎んでいた。
例のあの人に立ち向かう人達がいたんだ。ハリーの両親もその中にいた」
ロンは少し言いづらそうにしつつも続けた。
「それで、例のあの人が…その…君の両親を殺した時、赤ん坊の君だけが助かった。その時についた傷がその傷さ、君を襲ったその日に例のあの人は姿を消したんだ。君が例のあの人に勝ったんだよ。」
一通り話したのか、ロンは椅子にもたれかけ、ほっぺを膨らませながらフーーーーっと息をついた。
例のあの人の事を何度もハリーに言うのはなかなか気力を使ったらしい。
「これくらいは皆知ってるよ。子供用の本にも載ってる」
ロンは口角を片方あげてニッと笑った。
「成る程、世界一悪い魔法使いから唯一生き残った男の子ってわけね。」
「僕、そんな凄い事したなんて、全く覚えてないよ」
「そりゃぁそうさ。君が例のあの人に襲われたのは1歳の時だろ」
「…………。」
ハリーは暫く黙って窓の景色を見ていた。
ガラガラガラと車内販売のカートを押したおばさんがやってきた。
色とりどりの箱が積まれていて、どれもキラキラ輝いてるようだ。
「お菓子はいかが??」
「僕いいや、自分のがある」
ロンはゴロンとしたコンビーフサンドをポケットから出して苦笑いをした。物欲しそうにお菓子を眺めながら。
色とりどりのお菓子はどれも珍しくてとても美味しそうで、ハリーもエマも目を輝かせた。
ハリーはポケットから金貨をだした。
「全部ちょうだい!」
「やった!ハリーのおごりよ!」
「ちゃっかりしてるなーエマ、またニキビ出来るよ」
「だって見てよ!こんなお菓子見た事ないっこれでニキビが出来るなら本望だわ」
「ロンも一緒に食べようよ!」
「うわぁ!いいの?」
豪快にソファの上いっぱいにお菓子を広げた。
バーティーボッツの百味ビーンズ、カエルチョコレート、大鍋ケーキ、ハエ型ヌガー、ドルーブル風船ガム…素晴らしい面々だ。
エマはカエルチョコレートの箱が可愛いので手に取った。
「カエルチョコ、そいつ飛び出すよ!」
既にお菓子でいっぱいの口でロンがモガモガ言った。
箱を開いてみるとチョコレートのカエルが動いていた。
「いっ…!」
なんだか気持ち悪い。
「早く捕まえないと逃げちゃう!」
ロンが言うが早いかカエルはぴょんと飛んで窓の隙間からビューンと飛んでいってしまった。
「あーあ。あいつらすぐ逃げちゃうんだよ」
「あれを食べるのはなかなか勇気がいるわ」
カエルチョコのくせにヌタヌタしたリアル感があったカエルを思い出しながらエマは空の箱を見た。
キラリと光る一枚のカード。
「ダンブルドアだ!僕もう6枚も持ってるよ」
エマはびっくりした。ダンブルドアとロンが言うそのおじいさんのカードの写真がこっちを見ながら笑いかけたり、頭を掻いたりしている。
「ハリー!みてこれ!!」
「うわっ!動いてる!なんで?!」
「写真なんだから当たり前だろ?」
ロンの言葉に2人は同時に顔を上げてロンを見た
「僕らがいた世界は写真は動かないよ。テレビじゃあるまいし」
「テレビ?…パパから聞いた事があるような気がするけど、、テレビって何?」
「おやまぁ」
エマは思わず声が出た。こんなに魔法界と人間界は違う物なのかと酷く感心してしまった。
カードの裏側を見ると、ダンブルドアについての説明が載っていた。
【アルバス・ダンブルドア
現在ホグワーツ校校長。近代の魔法使いの中で最も偉大な魔法使いと言われている。特に1945年闇の魔法使いグリンデルバルドを破った。
ドラゴンの血液の12種類の利用法の発見
パートナーであるニコラス・フラメルとの錬金術の共同研究などで有名。趣味は室内楽とボウリング。
】
「ダンブルドアってホグワーツの校長なのね」
エマは説明を流し見した。ハリーはハエ型ヌガーをモグモグ食べながらエマの持ってるカードを覗き込んだ。
「あ、いなくなってる」
カードにいたはずのダンブルドアは姿を消していた
「どっか出かけたんだろ、また帰ってくるよ」
呆れたようにロンが大鍋ケーキに手を出そうとした時、ロンの胸ポケットがモゾモゾうごき、中からひょっこりネズミが顔を出した。
「それ、君のペット?」
ハリーが尋ねた
「うん。スキャバーズ、コイツ寝てばっかりなんだ。お腹減ったのかな。」
スキャバーズはくたびれた髭を下げてクンクンと鼻を動かしている。デップリとしたフォルムはやや哀愁を放っていた。
ロンは少し心配そうにミネットを見たが、ミネットはスキャバーズを横目でチラリと見てスヤスヤ眠った。
「大丈夫、ミネットは襲わないわよ」
ロンはホッとしてスキャバーズを両手で握って持ち上げた。
「カッコ悪いだろ」
「うん。ちょっとね」
「少しマシにしたくて、ジョージから魔法習ったんだけど…」
「え?!魔法?見てみたいわ!!」
エマとハリーは目を輝かせてロンの前に座った。
ロンは顔を赤らめて腰から杖を出してゴホンゴホンと咳払いをした。
「あー…」
呪文を口にする前にコンパートメントのドアが開いた。
3人ともドアの方を向く。
そこには栗色のふわふわな髪の毛が背中まで伸びている前歯の可愛い女の子が、真新しいローブに身を包み、顎をちょっと上へ向けてツン!と澄ましていた。
「ネビルのカエル見なかった?逃げ出しちゃったの…あら?魔法を使うの?私も見たいわ!」
そういうとサッとハリーの隣に座った。
「エホン!…お日様ー、ひな菊ー、とろけたバター、このデブで間抜けなネズミを黄色に変えよ!」
びりっ!大鍋ケーキをつついてるスキャバーズのお尻が光って消えた。
その他に変化はない。
「その呪文、本当に合ってるの?」
女の子は訝しげに言った
「上手くいかなかったわね。私も簡単な呪文なら家でやってみたけど、全部上手くいったわ。教科書に載ってる呪文はもちろん、教科書に載ってることは全部暗記したの。テストでいい成績を出すためだもの、当然よね!ホグワーツってとても素晴らしい学校だもの。私は魔法の全てを知りたいと思ってるわ!あら、私まだ自分の名前を言ってなかったわね、ハーマイオニー•グレンジャーよ。あなた達のお名前は?」
まくし立てるようにハーマイオニーが喋るのをロンはやや機嫌悪そうに聞いていた。
「エマ•ファースよ」
「ロン•ウィーズリー…」
「ハリー•ポッターだよ」
女の子はくるりとハリーの方を向いた。
「あら、私あなたの事本で読んだわ!近代魔法史、黒魔術の栄枯盛衰、二十世紀の魔法大事件に名前があったわね。そのハリーさんかしら?」
「えー、僕そんな本にものってるの?」
ハリーが小さく悲鳴を上がるとハーマイオニーは眉をしかめた。
「自分の事調べないの?私があなただったら自分の名前が載ってる本を読み潰すと思うわ。」
「そうだろうよ」とロンが小さく言っていたがハーマイオニーは気づいていない。
「ハーマイオニー、本当に沢山本を読んでるのね」
「そんな事ないわ。学生が本を読むのは当たり前だもの、私はまだまだ沢山色んな事を学びたいのよ」
「うん、凄い事よ。私本を読む機会って全然無かったから貴方がちょっと羨ましい」
エマが言うとハーマイオニーは少しだけ笑った。
「ありがと、貴方も興味がある事を教えてくれたらオススメの本を教えるわ!
そうだわ、私が試した簡単な魔法、見せてあげる」
ハーマイオニーはさっと杖をハリーの前に出した
「オキュラス レパロ!」
ハリーの壊れたメガネがシュルシュル!!と治った。
「うわ!凄い!」
ロンは全く面白くないといった顔をしている。
「簡単な魔法よ!ハリー、あなたは覚えた方がいいかもね。
ところで貴方たち、着替えないの?もうすぐホグワーツにつくわよ!」
それだけ言うとハーマイオニーはサッサとコンパートメントを出て行った。
「何だったんだよあいつー!」
ロンが小さく喚いた。
明らかに不機嫌になっているロンを嗜めるように、エマがカエルチョコを差し出す。
ロンがブスっとしながらカエルチョコの箱を開けると、勢いよくカエルが飛び出してコンパートメントの開いてるドアから逃げていった。
「あ!チョコが!」
ロンのイライラを抑えるための糖分が逃げていく。
「捕まえてっ!」
ロンの掛け声に反射的にエマはカエルチョコを追いかけて廊下に出た。
チョコレートのくせに脚力のあるカエルは素早くピョンピョン飛び回り、なかなか捕まえられない。
ピョーンと高く遠くへ飛んだカエルを素早くキャッチしたのは、見覚えのあるプラチナブロンドの男の子。両隣にダドリーみたいな男の子を2人連れ立っている。
プラチナブロンドはキャッチしたカエルチョコを訝しげに眺めた
「あのー。ごめんそれ、私のなの」
こちらに目を映したプラチナブロンドがやや目を見開いた
「君はマダムの店にいた無知な子だよね」
「あー…はぁ。」
「僕はドラコ•マルフォイだ。君は?」
「エマ•ファース」
意地悪そうにドラコがニヤリと笑った
「ファース、落ちてるものを拾うなんて、君よっぽどひもじかったのかい」
ケラケラケラと取り巻きのデブ2人が笑っている。
何だこれは。一瞬で3対1の空気を作り出したマルフォイに感心すらしてしまう。
「どうだっていいでしょ、かえしてよ」
エマがチョコを奪おうと手を伸ばしたが、マルフォイは取らせまいと笑いながらエマの手を避ける。
エマが意地になってきて必死で追いかけるが、マルフォイの動きは無駄がなく素早かった。
「ほら、どうした!大事なカエルチョコなんだろ!」
マルフォイは愉快そうに笑っている。
取り巻きもゲラゲラと笑う声が耳についてイライラした。
マルフォイと取り巻き達は揶揄いながらチョコが溶ける間も無いくらい早いパスを繰り広げている。
エマはまるで操り人形のようにあっちやこっちへ行く羽目になっていた。
情けなさと怒りが沸々と湧いてくる。
「のろまー!」
ダドリー1号の言葉にエマはカッ!と頭に血が上った。
マルフォイに飛びかかり、マルフォイのブラウス越しに左肩ガブリと噛み付いた。
「なっ!やめろ!!」
マルフォイは身体を捻ってエマを振り払う。
エマは乱れた髪の隙間からギロリと3人を睨みつけた。
マルフォイは動揺し、左肩を押さえている。
何が起こったか理解するのに少し時間を置き、カァとドラコの顔が赤くなる。
「てめー!女だからって容赦しねーぞ!」
ダドリー2号が叫ぶ。
「やってみなさい!次は何に噛み付くか分からないわよ!」
マルフォイは瞬きもせず目を見開いてエマを見ている。
ダドリー2号がエマに向かって拳を振り上げたのと同時に、ガラリと音がしてコンパートメントからハリーとロンが顔を出した。
「エマ、どうしたんだよ」
ダドリー2号はサッと拳をしまい、ダドリー1号がカエルチョコをパクっと食べてしまった。
マルフォイはフン!とローブからハンカチを取り出して手を拭き、ローブの襟と少し乱れた前髪をサッとを直して、エマを通り過ぎ、ハリーの前に向かった。
エマは急激に冷静になった。
別にチョコレートなんてどうだっていいのに、意地になってしまっていた。
同級生の彼とはこれから会う機会も多いだろうに結構な事をしたかもしれない。
そんなエマの反省をよそに、マルフォイはハリーの前に立ち息を整え、あくまで礼儀正しく笑うように心がけてるようだった。
「この汽車にハリーポッターがいると聞いてね。
こっちはクラップとゴイル。
僕はドラコ•マルフォイだ。」
クスクスとロンが笑った。
ドラコはめざとくギロっと睨み、上から下までロンを値踏みするように見た後、フン!と鼻でせせら笑う。
「僕の名前がおかしいのか?君の名前は聞かなくても分かる。ウィーズリー家は赤毛のそばかすで貧乏で育てきれない程子供を産んだって父上から聞いてるよ」
ダードリーズがニヤニヤと馬鹿にしたように笑っている。
「ポッター、魔法界にも家柄のいいのとそうじゃないのがいるんだ。僕が教えてあげるよ」
マルフォイが握手を求めたが、ハリーは手を取らなかった。
「おあいにく様。僕は自分で選べるよ」
ハリーは自分の事を沢山助けてくれたウィーズリー家の事や友達になったロンをバカにされて怒っているようだった。
マルフォイは目を見開き驚いた後、ヒヤッとする程冷たい視線をハリーに向けた。
「なるほど、君には両親がいないから礼儀を習う機会が無かったようだね、ウィーズリー家のような下等な人種と付き合うと君も同類に成り下がるだろうよ」
「何だと!もういっぺん言ってみろ!」
ロンが大声を出した。ハリーもジリ…と体を構えている。一触即発な空気感が漂う。
「こら!お前達何してるんだ!!間も無くホグワーツにつくぞ!」
パーシーがツカツカやってきて、ピリついた空気が遮断された。
マルフォイはハリー達を睨みつけながら反対車両に向かう。
エマは一瞬マルフォイと目が合ったが、彼らは風のように去っていった。
「ロン、そろそろ着替えろ、もうすぐつくぞ。」
パーシーはそれだけ言うと忙しそうに見回りを続けた。
「全く、なんってやつだ…あんな奴もいるんだな」
ハリーは驚きと怒りが混ざったような声を出した。
「マルフォイ家の息子だよ。例のあの人に従えた家系さ。
例のあの人が消えた途端、真っ先にこっち側に戻ってきた家族の一つだって。
魔法で例のあの人に無理やり従ってたって言ってたそうなんだけど、パパは信じてない。
マルフォイの父親はそういうやつだって言ってた。マルフォイ家は代々スリザリンにはいってるんだ。
例のあの人もスリザリン。狡猾で残忍な奴らが入る寮。あいつにピッタリだね。」
ロンは憎々しげに言った
「……僕スリザリンに入ったらどうしよう。」
そんなところ絶対に入りたくない!とハリーは顔を曇らせる。
「ハリーが滑稽で残忍なんて思った事ないわ。大丈夫よ」
「だといいんだけど。」
「あっ!やばいっ早く着替えなきゃ!エマ、僕らすぐ終わらすから先に着替えていいかい?」
「うん、いいよ。」
エマはそよそよと汽車の廊下で風に当たる。
もうドラコ•マルフォイには色んな意味で会いたくないと思ったのだった。
「エマ•ファースよ」
同じコンパートメントにやってきたロンとエマは握手をした。
ロンはじっとハリーを見つめて「見てもいい?」と自分の額をちょんちょんと指差した。
「うん、どうぞ」
ハリーは前髪を上げて稲妻型の傷を見せた。
「すっげぇー本物だ!」
「ねぇ、何でハリーの傷痕、みんなが見たがるの?」
「何でって、そりゃぁ例のあの人がつけた傷だもの」
「うん、だから何でそれがそんなに凄い事なの?」
「まさか、君たちしらないの?!」
ロンは大声を出した。
そう、ハリーとエマはハリーの名前が兎に角有名で、みんなが傷痕に歓喜するのは見てたら分かるが、理由をまだだれからも聞いてない。
ロンはゴクリと唾をのんで体を寄せてきた。
ハリーとエマもぐぐっと身を寄せる。
「例のあの人の事知ってる?」
「うん、皆名前を言うのを怖がるよね。」
「昔の戦争を起こした張本人だよ。例のあの人は沢山の部下を連れてマグル生まれや半純潔の魔法使いを沢山殺したんだ。」
「半純潔?」
「自分の親どっちかがマグル生まれの人の事さ。例のあの人はマグルや半純潔を憎んでいた。
例のあの人に立ち向かう人達がいたんだ。ハリーの両親もその中にいた」
ロンは少し言いづらそうにしつつも続けた。
「それで、例のあの人が…その…君の両親を殺した時、赤ん坊の君だけが助かった。その時についた傷がその傷さ、君を襲ったその日に例のあの人は姿を消したんだ。君が例のあの人に勝ったんだよ。」
一通り話したのか、ロンは椅子にもたれかけ、ほっぺを膨らませながらフーーーーっと息をついた。
例のあの人の事を何度もハリーに言うのはなかなか気力を使ったらしい。
「これくらいは皆知ってるよ。子供用の本にも載ってる」
ロンは口角を片方あげてニッと笑った。
「成る程、世界一悪い魔法使いから唯一生き残った男の子ってわけね。」
「僕、そんな凄い事したなんて、全く覚えてないよ」
「そりゃぁそうさ。君が例のあの人に襲われたのは1歳の時だろ」
「…………。」
ハリーは暫く黙って窓の景色を見ていた。
ガラガラガラと車内販売のカートを押したおばさんがやってきた。
色とりどりの箱が積まれていて、どれもキラキラ輝いてるようだ。
「お菓子はいかが??」
「僕いいや、自分のがある」
ロンはゴロンとしたコンビーフサンドをポケットから出して苦笑いをした。物欲しそうにお菓子を眺めながら。
色とりどりのお菓子はどれも珍しくてとても美味しそうで、ハリーもエマも目を輝かせた。
ハリーはポケットから金貨をだした。
「全部ちょうだい!」
「やった!ハリーのおごりよ!」
「ちゃっかりしてるなーエマ、またニキビ出来るよ」
「だって見てよ!こんなお菓子見た事ないっこれでニキビが出来るなら本望だわ」
「ロンも一緒に食べようよ!」
「うわぁ!いいの?」
豪快にソファの上いっぱいにお菓子を広げた。
バーティーボッツの百味ビーンズ、カエルチョコレート、大鍋ケーキ、ハエ型ヌガー、ドルーブル風船ガム…素晴らしい面々だ。
エマはカエルチョコレートの箱が可愛いので手に取った。
「カエルチョコ、そいつ飛び出すよ!」
既にお菓子でいっぱいの口でロンがモガモガ言った。
箱を開いてみるとチョコレートのカエルが動いていた。
「いっ…!」
なんだか気持ち悪い。
「早く捕まえないと逃げちゃう!」
ロンが言うが早いかカエルはぴょんと飛んで窓の隙間からビューンと飛んでいってしまった。
「あーあ。あいつらすぐ逃げちゃうんだよ」
「あれを食べるのはなかなか勇気がいるわ」
カエルチョコのくせにヌタヌタしたリアル感があったカエルを思い出しながらエマは空の箱を見た。
キラリと光る一枚のカード。
「ダンブルドアだ!僕もう6枚も持ってるよ」
エマはびっくりした。ダンブルドアとロンが言うそのおじいさんのカードの写真がこっちを見ながら笑いかけたり、頭を掻いたりしている。
「ハリー!みてこれ!!」
「うわっ!動いてる!なんで?!」
「写真なんだから当たり前だろ?」
ロンの言葉に2人は同時に顔を上げてロンを見た
「僕らがいた世界は写真は動かないよ。テレビじゃあるまいし」
「テレビ?…パパから聞いた事があるような気がするけど、、テレビって何?」
「おやまぁ」
エマは思わず声が出た。こんなに魔法界と人間界は違う物なのかと酷く感心してしまった。
カードの裏側を見ると、ダンブルドアについての説明が載っていた。
【アルバス・ダンブルドア
現在ホグワーツ校校長。近代の魔法使いの中で最も偉大な魔法使いと言われている。特に1945年闇の魔法使いグリンデルバルドを破った。
ドラゴンの血液の12種類の利用法の発見
パートナーであるニコラス・フラメルとの錬金術の共同研究などで有名。趣味は室内楽とボウリング。
】
「ダンブルドアってホグワーツの校長なのね」
エマは説明を流し見した。ハリーはハエ型ヌガーをモグモグ食べながらエマの持ってるカードを覗き込んだ。
「あ、いなくなってる」
カードにいたはずのダンブルドアは姿を消していた
「どっか出かけたんだろ、また帰ってくるよ」
呆れたようにロンが大鍋ケーキに手を出そうとした時、ロンの胸ポケットがモゾモゾうごき、中からひょっこりネズミが顔を出した。
「それ、君のペット?」
ハリーが尋ねた
「うん。スキャバーズ、コイツ寝てばっかりなんだ。お腹減ったのかな。」
スキャバーズはくたびれた髭を下げてクンクンと鼻を動かしている。デップリとしたフォルムはやや哀愁を放っていた。
ロンは少し心配そうにミネットを見たが、ミネットはスキャバーズを横目でチラリと見てスヤスヤ眠った。
「大丈夫、ミネットは襲わないわよ」
ロンはホッとしてスキャバーズを両手で握って持ち上げた。
「カッコ悪いだろ」
「うん。ちょっとね」
「少しマシにしたくて、ジョージから魔法習ったんだけど…」
「え?!魔法?見てみたいわ!!」
エマとハリーは目を輝かせてロンの前に座った。
ロンは顔を赤らめて腰から杖を出してゴホンゴホンと咳払いをした。
「あー…」
呪文を口にする前にコンパートメントのドアが開いた。
3人ともドアの方を向く。
そこには栗色のふわふわな髪の毛が背中まで伸びている前歯の可愛い女の子が、真新しいローブに身を包み、顎をちょっと上へ向けてツン!と澄ましていた。
「ネビルのカエル見なかった?逃げ出しちゃったの…あら?魔法を使うの?私も見たいわ!」
そういうとサッとハリーの隣に座った。
「エホン!…お日様ー、ひな菊ー、とろけたバター、このデブで間抜けなネズミを黄色に変えよ!」
びりっ!大鍋ケーキをつついてるスキャバーズのお尻が光って消えた。
その他に変化はない。
「その呪文、本当に合ってるの?」
女の子は訝しげに言った
「上手くいかなかったわね。私も簡単な呪文なら家でやってみたけど、全部上手くいったわ。教科書に載ってる呪文はもちろん、教科書に載ってることは全部暗記したの。テストでいい成績を出すためだもの、当然よね!ホグワーツってとても素晴らしい学校だもの。私は魔法の全てを知りたいと思ってるわ!あら、私まだ自分の名前を言ってなかったわね、ハーマイオニー•グレンジャーよ。あなた達のお名前は?」
まくし立てるようにハーマイオニーが喋るのをロンはやや機嫌悪そうに聞いていた。
「エマ•ファースよ」
「ロン•ウィーズリー…」
「ハリー•ポッターだよ」
女の子はくるりとハリーの方を向いた。
「あら、私あなたの事本で読んだわ!近代魔法史、黒魔術の栄枯盛衰、二十世紀の魔法大事件に名前があったわね。そのハリーさんかしら?」
「えー、僕そんな本にものってるの?」
ハリーが小さく悲鳴を上がるとハーマイオニーは眉をしかめた。
「自分の事調べないの?私があなただったら自分の名前が載ってる本を読み潰すと思うわ。」
「そうだろうよ」とロンが小さく言っていたがハーマイオニーは気づいていない。
「ハーマイオニー、本当に沢山本を読んでるのね」
「そんな事ないわ。学生が本を読むのは当たり前だもの、私はまだまだ沢山色んな事を学びたいのよ」
「うん、凄い事よ。私本を読む機会って全然無かったから貴方がちょっと羨ましい」
エマが言うとハーマイオニーは少しだけ笑った。
「ありがと、貴方も興味がある事を教えてくれたらオススメの本を教えるわ!
そうだわ、私が試した簡単な魔法、見せてあげる」
ハーマイオニーはさっと杖をハリーの前に出した
「オキュラス レパロ!」
ハリーの壊れたメガネがシュルシュル!!と治った。
「うわ!凄い!」
ロンは全く面白くないといった顔をしている。
「簡単な魔法よ!ハリー、あなたは覚えた方がいいかもね。
ところで貴方たち、着替えないの?もうすぐホグワーツにつくわよ!」
それだけ言うとハーマイオニーはサッサとコンパートメントを出て行った。
「何だったんだよあいつー!」
ロンが小さく喚いた。
明らかに不機嫌になっているロンを嗜めるように、エマがカエルチョコを差し出す。
ロンがブスっとしながらカエルチョコの箱を開けると、勢いよくカエルが飛び出してコンパートメントの開いてるドアから逃げていった。
「あ!チョコが!」
ロンのイライラを抑えるための糖分が逃げていく。
「捕まえてっ!」
ロンの掛け声に反射的にエマはカエルチョコを追いかけて廊下に出た。
チョコレートのくせに脚力のあるカエルは素早くピョンピョン飛び回り、なかなか捕まえられない。
ピョーンと高く遠くへ飛んだカエルを素早くキャッチしたのは、見覚えのあるプラチナブロンドの男の子。両隣にダドリーみたいな男の子を2人連れ立っている。
プラチナブロンドはキャッチしたカエルチョコを訝しげに眺めた
「あのー。ごめんそれ、私のなの」
こちらに目を映したプラチナブロンドがやや目を見開いた
「君はマダムの店にいた無知な子だよね」
「あー…はぁ。」
「僕はドラコ•マルフォイだ。君は?」
「エマ•ファース」
意地悪そうにドラコがニヤリと笑った
「ファース、落ちてるものを拾うなんて、君よっぽどひもじかったのかい」
ケラケラケラと取り巻きのデブ2人が笑っている。
何だこれは。一瞬で3対1の空気を作り出したマルフォイに感心すらしてしまう。
「どうだっていいでしょ、かえしてよ」
エマがチョコを奪おうと手を伸ばしたが、マルフォイは取らせまいと笑いながらエマの手を避ける。
エマが意地になってきて必死で追いかけるが、マルフォイの動きは無駄がなく素早かった。
「ほら、どうした!大事なカエルチョコなんだろ!」
マルフォイは愉快そうに笑っている。
取り巻きもゲラゲラと笑う声が耳についてイライラした。
マルフォイと取り巻き達は揶揄いながらチョコが溶ける間も無いくらい早いパスを繰り広げている。
エマはまるで操り人形のようにあっちやこっちへ行く羽目になっていた。
情けなさと怒りが沸々と湧いてくる。
「のろまー!」
ダドリー1号の言葉にエマはカッ!と頭に血が上った。
マルフォイに飛びかかり、マルフォイのブラウス越しに左肩ガブリと噛み付いた。
「なっ!やめろ!!」
マルフォイは身体を捻ってエマを振り払う。
エマは乱れた髪の隙間からギロリと3人を睨みつけた。
マルフォイは動揺し、左肩を押さえている。
何が起こったか理解するのに少し時間を置き、カァとドラコの顔が赤くなる。
「てめー!女だからって容赦しねーぞ!」
ダドリー2号が叫ぶ。
「やってみなさい!次は何に噛み付くか分からないわよ!」
マルフォイは瞬きもせず目を見開いてエマを見ている。
ダドリー2号がエマに向かって拳を振り上げたのと同時に、ガラリと音がしてコンパートメントからハリーとロンが顔を出した。
「エマ、どうしたんだよ」
ダドリー2号はサッと拳をしまい、ダドリー1号がカエルチョコをパクっと食べてしまった。
マルフォイはフン!とローブからハンカチを取り出して手を拭き、ローブの襟と少し乱れた前髪をサッとを直して、エマを通り過ぎ、ハリーの前に向かった。
エマは急激に冷静になった。
別にチョコレートなんてどうだっていいのに、意地になってしまっていた。
同級生の彼とはこれから会う機会も多いだろうに結構な事をしたかもしれない。
そんなエマの反省をよそに、マルフォイはハリーの前に立ち息を整え、あくまで礼儀正しく笑うように心がけてるようだった。
「この汽車にハリーポッターがいると聞いてね。
こっちはクラップとゴイル。
僕はドラコ•マルフォイだ。」
クスクスとロンが笑った。
ドラコはめざとくギロっと睨み、上から下までロンを値踏みするように見た後、フン!と鼻でせせら笑う。
「僕の名前がおかしいのか?君の名前は聞かなくても分かる。ウィーズリー家は赤毛のそばかすで貧乏で育てきれない程子供を産んだって父上から聞いてるよ」
ダードリーズがニヤニヤと馬鹿にしたように笑っている。
「ポッター、魔法界にも家柄のいいのとそうじゃないのがいるんだ。僕が教えてあげるよ」
マルフォイが握手を求めたが、ハリーは手を取らなかった。
「おあいにく様。僕は自分で選べるよ」
ハリーは自分の事を沢山助けてくれたウィーズリー家の事や友達になったロンをバカにされて怒っているようだった。
マルフォイは目を見開き驚いた後、ヒヤッとする程冷たい視線をハリーに向けた。
「なるほど、君には両親がいないから礼儀を習う機会が無かったようだね、ウィーズリー家のような下等な人種と付き合うと君も同類に成り下がるだろうよ」
「何だと!もういっぺん言ってみろ!」
ロンが大声を出した。ハリーもジリ…と体を構えている。一触即発な空気感が漂う。
「こら!お前達何してるんだ!!間も無くホグワーツにつくぞ!」
パーシーがツカツカやってきて、ピリついた空気が遮断された。
マルフォイはハリー達を睨みつけながら反対車両に向かう。
エマは一瞬マルフォイと目が合ったが、彼らは風のように去っていった。
「ロン、そろそろ着替えろ、もうすぐつくぞ。」
パーシーはそれだけ言うと忙しそうに見回りを続けた。
「全く、なんってやつだ…あんな奴もいるんだな」
ハリーは驚きと怒りが混ざったような声を出した。
「マルフォイ家の息子だよ。例のあの人に従えた家系さ。
例のあの人が消えた途端、真っ先にこっち側に戻ってきた家族の一つだって。
魔法で例のあの人に無理やり従ってたって言ってたそうなんだけど、パパは信じてない。
マルフォイの父親はそういうやつだって言ってた。マルフォイ家は代々スリザリンにはいってるんだ。
例のあの人もスリザリン。狡猾で残忍な奴らが入る寮。あいつにピッタリだね。」
ロンは憎々しげに言った
「……僕スリザリンに入ったらどうしよう。」
そんなところ絶対に入りたくない!とハリーは顔を曇らせる。
「ハリーが滑稽で残忍なんて思った事ないわ。大丈夫よ」
「だといいんだけど。」
「あっ!やばいっ早く着替えなきゃ!エマ、僕らすぐ終わらすから先に着替えていいかい?」
「うん、いいよ。」
エマはそよそよと汽車の廊下で風に当たる。
もうドラコ•マルフォイには色んな意味で会いたくないと思ったのだった。