ka-pow!
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◇◆◇◆◇◆◇
「だったら俺の判断は間違ってないっスよね、隊長」
「先行し過ぎの身分外独断行為にゃ変わりないけどな。普通まず確かめるやろ」
「北の工作員っスかねー」
「聞けや!けど、スパイならここまで間抜けとちゃうやろ?」
「はぁー?スパイに見えないからスパイを疑ってんでしょ。『俺っち工作員でーす』みたいな顔したやつに仕事務まるワケねーですしぃーマウスまじウゼー」
「いっぺん死にさらせアホガキ!そ、れ、が、浅はかやって言ってんねん。だぁもうこれだからスネちゃまはホントに……迂闊に民間人しかも子供消してみぃな、対米軍のネガキャンテロやったらどないすんねん」
「……臆病鶏」
「慎重と言え、慎、重、と!」
「あーうるさっ、だるいわー……」
妙な具合に覇気が無いのに、それでいてよく通るテノール。聴いた事のないイントネーションでテンポの良い、少し高めの声。
両者の休みない応酬の、その向こう側で『隊長』は何かを考え込むように腕組みをして立っていた。オレの唯一知る人。しかし、相手はオレを知らないと言う。
……そろそろ、覚悟を決めなければならないのかもしれない。
「しかもこの坊っちゃん、現地民ちゃうよ?肌白いし頭と目、黒いし──ヘタに要人の子供やったりしてみろお前一人の戦犯で済まへんで」
これは多分、夢じゃない。
◇◆◇◆◇◆◇
「まぁーどっちにしろこのまま放り出せば勝手に屍体が増えるだけっスけどね」
「この戦況やったらなぁー……坊っちゃんの正体が何にせよ、結局は二択に落ち着く訳やな」
──要するに、生かすか、殺すか。
◇◆◇◆◇◆◇
「つまり、保護兼監視っつーことスか?」
「うん。本当に民間人や要人の御子息だったとしたら、当然守るべき対象だし……もしスパイだとしても、重要機密や作戦内容を一切知られなければそれ程問題は無いと思います。野放しにするよりはマシだと。だから、」
「やからってうちの班で保護せんでも!」
「えっ、ウチ預かりなんスかあいつ!」
「いや、だって一任されちゃいましたし……ていうかスネイキーが今まで通り面倒見てくれそうだなって」
「はい!はいはい、隊長!この若造にそんな根気はあらへんと思います!」
「隊長ぉー、俺やだっスあれの監視とか……『事故』で殺っちゃいましょーよ」
「ちょ、もう今までの説明何のためにしたの!?とにかく!」
「しばらくの間あの子はフリッピー班で保護します!」
◇◆◇◆◇◆◇
心底かったるそうなスネイキーに着いて行けば、ドサドサっと渡された、細長い布切れや装甲の薄いヘルメット。
「はぁぁーなんで俺がこんなん……だりーわー」
それを何とか受け取ってはみるものの、如何せん用途が分らない。戦争文化に特別疎いつもりは無かったのだが。やはり『見るのと聞くのでは大違い』という奴だろうか。とりあえずヘルメットはともかく、布切れをべろんと広げてみれば、それは黒い包帯のような様態をしていた。
「とかなんとか言いつつちゃんとやってるやん。隊長命令さまサマやなぁ」
不意に現れた明るい声。
見ればテントの裏手からゴーグルで隠れた大きな目が覗いていた。
そのままマウスは一目でオレの現状を悟ったらしく「ゲートルって言うんやで、それ」と悪い顔でにんまり笑った。名前より装着方法を教えて欲しい。
「ま、スネちゃんは隊長大好きやもんなー。なぁ?」
「マウスほんとウゼーわー、早く昇進しろよ二階級くらいさぁ」
「殉職せえってか」
やがてからかいの標的は移ったが、問いかけられたスネイキーは遠慮容赦なく舌打ちをお見舞いしていた。しかも害虫でも見るような目までオマケで付きである。
が、マウスの方は腐っても年上らしく、一瞬不足そうな声を出したものの、その口元はニマニマと歪んだままだ。
「はぁー……あんただって隊長に拾ってもらったようなモンじゃん」
茶化されっぱなしの後輩は分が悪いと踏んだのか、ふいっと視線を逸らしてどこか拗ねたように呟くのだが、当のゴーグルは「これ坊っちゃんにはちょっとデカない?」と全く聴いていない。因みにその手にあるのはさっき渡されたヘルメットだ。
「拾ってもらった?」
ところで少し気になった……身につまされるフレーズが有ったので拾ってみれば、一瞬だけ固まる空気。これは選択肢を謝ったかと咄嗟に焦るが、一瞬は一瞬だった。ひと呼吸後嘘のように元に戻った雰囲気の中、より近くにいるスネイキーへ視線を向ければ、やや気まずそうなりに返事をくれた。
「隊にだよ」
ぶっきら棒に言い捨てたスネイキーは、見下ろして漸くオレの惨状に気が付いたらしい。要するに、布切れと格闘したところ両足が絡まって身動きが取れなくなったという状況に。
素直な暗殺者は「うっわ……無いわ」と零して、その表情からドン引きしているのが丸分かりなのだがいやこれでも精一杯の努力はしたのである。結果が追いつかなかっただけで。
やがて何だかんだと言いながら、スネイキーはオレの前に屈んだかと思えばきちんとゲートルを巻き直してくれた。「次、一人で出来なきゃ馬鹿って呼ぶから」と本当にぶつくさ吐きながらでは有ったが。
後ろで一部始終を見ていた小柄な軍服が、腹を抱えているのもとても気になったが。
◇◆◇◆◇◆◇
そして笑いの挟間に僅か聴こえた呟きは、きっと独り言なので聞こえなかった振りをした。
「……俺もこいつも、軍に持て余されとる厄介者やったからな」
◇◆◇◆◇◆◇
「まさか、坊っちゃんやなしに嬢ちゃんやったとはな……」
「はぁー……誰だっけなぁ雑魚寝と共用風呂で充分とか言ってたのぉー」
「仕方ないやん!知らんかってんから!つか雑魚寝はともかく風呂どうすんやフロ」
「別に適当でよくねー?チビだしガリだし」
「や、あかんやつやそれ。やって、ついてへんし穴あいてるし」
「うわぁーマウスきめぇ……穴なんか野郎でもあいてんじゃん」
「あのなぁ、スネちゃん……軍でそういう事言うたら洒落にならへんぞ。お前みたいな小綺麗なタイプは特に」
「マウス、あんた…………非処女っスか」
「死なすぞ」
「いやぁー初めて知ったわー、へぇー貫通済みだったんスね先輩」
「違、う、し!わざとらしく先輩言うな!」
「はい、桶とタオル。使ってね。そこのテント空けて貰ったから……そのうち何とかするから今日はこれで我慢してくれる?」
「わかった、ありがとう」
「うん、──ところでそこの二人はさっきから何の話をしているのかな?」
「何でもないです隊長!!」
「ごめんなさいっス隊長!」
◇◆◇◆◇◆◇
「おい」
どこか懐かしい低音と共に、襟首を強く掴まれ後ろに引っ張られる。
「勝手にうろちょろすんなクソガキ」
「フリッ……!」
その口調は《彼》の存在証明。
◇◆◇◆◇◆◇
「な……っ、なんで」
「ええからはよ逃げぇ!」
足下に倒れ伏したのは、いつも朗々と何処かの方言で話す歩兵。
オレを庇わなければこの人は、もっと上手く立ち回れた筈なのに。
逃げろと言われても、どこに逃げれば良いのかが分らなかった……マウスを置いていける訳も無い。そもそもこんな所に敵が居るのがおかしいのだ。咄嗟に、倒れた身体を庇うように前に出る。背中から「アホか!」と切羽詰った声が聴こえたがやや遅い。
……相手の武器が、銃でなくて良かった。
目の前の巨躯を見上げて、来るだろう衝撃に身構えた次の瞬間────、
「ここは子供の遊び場ではありませんよ」
物言わず崩れ落ちたのは、オレではなく相手の方だった。
そして新たに聴こえてきた静かな声は冷徹に辺りに響く。
倒れた敵の向こうに見える人影に、有り得ない既視感が揺れた。──かつん、と、地面の小石を削るそれは白杖。
目の前の光景が脳に届いた瞬間、思考と動きがにわかに完全停止した。
そのフリーズしたオレの体を背後から誰かが引き倒す。マウスだ。尻餅をついたオレと入れ替わるように立ち上がり、現れる筈のなかった第三勢力を睨み上げる。
「失礼、貴方は子供ではありませんでしたね」
髪型が違う。
戦場にしては、そして成人男性にしては長めの、しかし耳を晒したベリーショート。
髪色も違う。
それはありふれた、燻んだ茶色。
「さて、私はその子供の隣に転がっているアタッシュケースが欲しいのですが」
しかし、その端整な顔に掛けられた黒眼鏡は、そしてその奥の氷のような瞳は誤認の余地がなく。
「──貴方は私の敵ですか?」
そこに居たのは、間違いようもなくオレの
──、
◇◆◇◆◇◆◇
「なんでお前が《フリッピー》の事まで知ってンだよ!?」
◇◆◇◆◇◆◇
今ならまだ、間に合う。
そうすればきっと、少なくとも一人は助かる。でも…………。
でも、《彼》があの人を殺さなければ、オレはもう二度とあの街で二人に……フリッピーに会う事はできない。
「は、──最低だな、オレ」
◇◆◇◆◇◆◇
仲間を無くした。
首から下げる金属片が虚しく音を起てる。視界に入る両手は赤色。
自分の存在すらあやふやになりつつある小隊長は、その総てを懸けて思考する。
目の前には、戦場を背景にするには余りにも脆弱で華奢な子供がひとり。
澄んだ黒色の小さな子供は真っ直ぐに男を見上げて言った。
「──×××××」
そして、僕は。
────────俺は、
【……to be continued.】
◇◆◇◆◇◆◇
というわけで、後日公開!
(連載と同時進行予定)
嘘だけどね!!!((OωO ))!!!
Happy April Fool !!!
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