文化祭とは(元拍手十一月)
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眠り姫。
別題、眠りの森の美女とも呼ばれる有名な童話だ。とある国のお姫様が、産まれた時に掛けられた呪いの通り16歳の誕生日に深い眠りに落ちてしまう。その呪いを解くために王子様が奮闘し、悪い魔女を倒してお姫様は眼を覚ますハッピーエンド……言ってしまえばよくある御伽噺だ。
講堂のステージ。
照明が落ちブザーが鳴る。幕が上がり、随分本格的なセットは三年生に建築科志望のハンディがいるからだろう。
穏やかな音楽と共に劇の始まりを告げるナレーションが紡がれる。通常通りの脚本ならば、フリッピーの出番はもう少し後かと座り直そうとした瞬間、スポットライトと共に物語の主役が登場してオレはそのままパイプ椅子からずり落ちた。
「…………えっ、籤って男女混合だったのか」
淡い薔薇色のドレスに、綺麗な靴。華奢なデザインの慎ましい王冠を載せて……そしてウィッグとも言い難い金髪のヘアエクステでセミロングになったスプレンディドがそこに居た。
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『やぁ、待たせたね! 僕がオーロラ姫だよ!』
台詞は本当にあれで合っているのか?
隣で泡を喰った顔をしているスネイキーはともかく、多分マウスはこの配役を知っていたに違いない。ずり上がって坐り直すオレを見て、声を殺して爆笑しているのだから。
「…………誰っスかアレ」
「生徒会長……」
宇宙の神秘でも垣間見たかのような表情でもう一人が言うので反射的に答える。
舞台上のお姫様は、いや、会長はその怪力に見合わず線の細い方なので──男子高校生がドレスを着ているにしては然程の見苦しさは感じられないがそれはそれとして違和感が凄い……若干の聞き覚えがある感想なのだがもしかして今オレは傍から見るとあんな感じなのか。
すると漸く笑いが小慣れたらしいマウスが、それでもニヤつきながら補足を寄越した。
「噂のスプレンディド君やろ? 知っとる知っとる、中等部ん時から
本当に何でマウスはこんなにも何もかも知っているんだ。その話他校にまで広がってるのか。というかそんな話が流布する程の全生徒代表があの中途半端な女装姿で舞台に立っていて大丈夫なのか。
「せぇーとかいィ? たいちょーも確か入ってンじゃなかったっけ?」
「フリッピーは庶務だよ……そうか主役どっちも生徒会なのか」
「ちゅうかオヒメサマ声ひっくいなー」
地声で話してるからだろう。
それにしても声と一人称を寄せる気が全く無さそうだが、それ以外なら演技が上手い。そうこうしている間に女装でさえなければ流石に主役の似合うスプレンディド──オーロラ姫は毒針に倒れてしまう。お姫様が本当に会長ならきっと呪いくらいでは眠らなかっただろう。
「クジの割には他ン配役が事故ってねーんだけど ?」
「まぁーせやけどうちの王子様も
なんだかんだと真面目に観劇する感想を聞きながら……ふと隣を見ると、マウスの手に団扇が握られていた。
「……いつの間に作ったんだ、それ」
それ自体は学校で配っていた単なる備品なのだがよくよく観察すればフリッピーの名前が油性ペンででかでかと書いてある。
「おやおやおやぁあ? 坊ちゃん手ぶらやん、応援団扇のひとつも持っとらんやなんて俄かやなあ!」
にやぁんと態とらしく嗤うが、いや、そうなのか? ついさっきまでオレと同じくお姫様に驚いていた筈のスネイキーまで、その手に“たいちょーファンサして”と書かれた団扇が握られていた。……ファンサとやらは先程して貰ったのでは。
「……フリッピーは、恥ずかしがるんじゃないか」
「「知ってる」」
もしかしてその為にわざわざ最前列に座ったのか。吃驚するほど声を揃えて、ニヤつくマウスと真顔を貫くスネイキーは……フリッピーの困った顔を期待するそれは意地悪では無いのだろうけど。
そうこうする内に自称お姫様はガラスの棺と茨の城に閉じ込められて、場面展開のため灯りが徐々に落ちていく。
「ほれ、そろそろ真打ち登場やでー坊ちゃんもよぉ見とかんと!」
「あ、どーせ暇してンなら動画撮っといてドウガー」
「オレ、携帯にカメラがついてないんだ」
「今時ぃ!?うっそやん!!」
「はぁあぁ?つっかえねー…」
腹を抱えた引き笑いと容赦のない吐き捨て。どちらもボリュームが抑えられているのがマナー上とてもしっかりしていると思う。やがて笑い疲れた方から最終的に声が掛かった。「せやったら今ちゃんと自分らの目ぇで見とかんとなー」それはオレに向けたようでもスネイキーに向けたようでもあったが。
「ま、舞台の上ではナニが起こるか分からんもんやで」
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