元拍手連載
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ざく、と、座布団ほどの大きさになった枯葉を乗り越えて、いい加減疲れてきた足を進める。
幸いなことに木漏れ日の多く、視界だけは良好な森の中。
「まさか草に身長を抜かれる日が来るとは思わなかった……」
荒い息継ぎの合間に呟けば、小枝に躓き転びそうになる。メルヘンっていうのは自分で体験するものじゃないな。
クッキーを食べて風に飛ばされて気付いたこと。どうやらオレの体は規格外に小さくなってしまったらしい。
どうやら、もなにも、実際こうして何もかもを見上げる境遇なのだけれど。
例えば、この目の前にある恐らくはキノコ。立派な神殿の柱並みのスケールだが恐らくは茸。その笠はさながら家屋の屋根のように高く広がっている。全力でジャンプしてどうにかこうにか届くかどうか。と、
「あ」
ぼうっと見上げていれば、屋根の縁、つまりキノコの笠の上から一瞬何かがちらりと見えた。
それは多分、髪の毛で、日に透けたその色は濃い紫。
「トゥーシー」
殆ど直感で呼びかければ、再びひょいっと、今度は顔が覗き出た。ただしそれはさっき見たのとは違う人物。
「あれ、アリスじゃん」
「カドルス?」
わーい、と手を振っている金髪は、でもやっぱりオレの問いかけを否定するのだ。
「カドルス?なに言ってんの、アリス」
にこにこしたまま言い捨てると無邪気な顔は引っ込んだ。代わりに届いた軽い声。「上がって来なよ」
……簡単に言ってくれる。
オレは四歩下がって、もう二歩下がる。靴紐が解けていない事を確認する。そして、
「──っ」
全速力で距離を縮める。助走は三歩目で、膝を深く折り曲げる。
まさか本気で渾身の垂直跳びをする羽目になるとは。内心腐りながら全身で伸びるように上を目指せば何とか両手が笠に届いた。しかし届いただけだ。慣性で揺れる体を必死で支えるが、努力虚しく指先がずるりと汗で滑った。
「ぅわ、あ」
駄目だ、落ちる。
そう理性が諦めかけた瞬間、滑る右の手首が強く引かれた。落下を免れた両足がぶらんと振り子のように振れるのをじたばたと往なしながら、耐えた左手に力を込めると、爪の隙間にニュルっと果肉が詰まり気持ち悪い。
「何やってんの、アリス?」
上を見上げれば、やっぱりそこには心底怪訝そうな顔のトゥーシーがオレの手首を掴まえていた。
(ごめん、と、りあえず引き上げて……)
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