百物語とは(元拍手八月)
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そもそもの発端はといえば、教員であるランピーが寮に持ち込んだ大量の蝋燭だった。
「チャッカマンで花火ってやっぱりちょっと味気無いじゃない?だから通販でローソク買ったんだけどねぇ数量間違えちゃってっ!皆良かったら使ってね!花火は先生がぜんぶやっちゃったから無いんだけどねっ!」
そんなことを言われても段ボール箱一杯に詰まった白蝋燭をどうしろと。
談話室の隅に置かれたそれらは厭な感じに不気味で、花火の予定も牛の刻参りをする予定も無い寮生達はそれらを完全に持て余していた。
「なぁ、じゃコレやろーぜ!」
最初に言い出したのはリフティだった。
放課後に、いつもの面子で、蝋燭の話を聞いた途端に彼が差し出したのは最近買い換えたばかりのスマートフォンの液晶画面。そこには言うまでもなく『百物語』の文字が躍る。次の瞬間、片割れの提案に珍しくも反論抜きで乗ったシフティが具体的に企画を立ち上げた。
結局、悪友トリオの残る一人が殆ど口を挟む隙もなく、するすると決まっていく夏の夜の肝試しはこうして実行されているわけなのだが、
「つか、百物語って百個も話すのかよ!疲れねーの?」
「百個じゃなくて百話だよリフティ」
「馬鹿か、普通に百話話してみろっつーの!話一つ当たり五分で済ませてもトータル500分、つまり八時間二十分掛かんぞ。夜九時に始めても終わんのは……朝の五時過ぎか?空白むっつの。そもそもてめーら怪談話のど最中に新聞配達のバイク音聴こえてきたとして萎えねー自信あんのかよ?」
「だっからバカって言うな!……なんつうかよく分かんねーけど、ねぇな!!」
「だから最近は略式が主流らしいけどね」
「リャク式ってなんだよ?」
「イチ、お前なんでそんな事まで知ってんだよ……」
「本で読んだ。──要するに本当に百話話すんじゃなくて、予め決めておいた話数で終了にする形式だよ」
「ハッ、じゃそれでいーだろ」
「けどさぁ、そんじゃただ怖い話するだけっつか、百個でもねーし、何つーか、ツマンなくね?」
「…………じゃ、こっちで面白くしてやろーぜ?」
そう言ってシフティは、日替わりの伊達眼鏡を押し上げながらにしゃりと笑った。
「例えば、誰かが部屋の中に隠れておいて、話し終わった瞬間に脅かすとかな」
そんなこんなでソファの下で。
ふわりと、また闇が少し濃くなって、まだ火の灯る蝋燭は着実に減る。
「…………それで、女が振り返って一言、言うんだ『 どうしてわかったの? 』って」
今正に明かりを消したトゥーシーは、語りを終えた事を証明するかのように軽く両手を上げ、そして隣のスニッフルズから全力の体当たりを受ける。
「痛いけど!?」
「何考えてるんですか!トゥーシーは味方だと思ってたのに!これで僕、目だけじゃなくて耳も塞がなきゃならなくなった!!」
「これだけ騒がしいと怖いものも怖くなくなるって」
「だぁからッ!台詞!オチは!やめろって言ってんじゃねーか!!」
「ああああ怖くねーわ!全然怖くねえわ!びびってねえしリフがうっせーだけだし!!」
「あ、これもよく聞く感じの話だね。僕も知ってるよ」
「訊いても良いかい?その女性は結局自分が幽霊であることを知られたかったのかい?知られたくなかったのかい?知られたくないのなら何故──」
「兎に角、じゃあ次は……」
進行を促したのは、今度は誰だったか。
略式で行くと、決めたのは話数ではなく一人当たりの語る回数。
全員が一巡すれば終了とする事にしたこの会で、順番を終えたのは双子とフリッピー、そして今しがたの少年。
「さて、次はようやく僕の番だね!」
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