元拍手二月
name change
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
──というのが、まあ大体、五年ほど前の話である。
「怪我、ない?」
オレは視線を下げたまま、鼠のゲージを抱え込んだ赤毛の頭に問う。
足元にはドアのレール。脇には放り捨てられたボストンバック。
まるで何かの仕込みのように、過去を彷彿とさせる場面である。
ただ、違うことといえば、オレの両手が支えているのが、鳥籠ではなく小さな後輩の肩だということだけ。
「だ、だ、だいじょ、だいじょぶですごめんなさいぃっ!」
駅のトイレででも既に着替えていたのか、ずろんと長く黒いローブに身を包んだ華奢な体躯。首元のネクタイは黒地に校章。一年生だ。
気にしなくていいよ、と伝えてボストンバックを持ち上げれば、ますます悲しげな顔をする。
「……新入生、だよね」
「っぅ、はいぃっ、ふ、ふふれいきー、ですっ」
「フレイキー」
必要以上に怖がられているような気がするが、まあ体調が悪いとかそういうわけではなさそうだ。
ならばこの時間帯、この状況で新一年生の悩み事はひとつだけ。
「コンパートメントの、空きが見つからない?」
尋ねれば、きゅっと眉間に皴を寄せたまま頷いた。
さて。
宣言どおり監督生に成り上がった某上級生の言うことに従うのは個人的に非常に腹立たしいのだが、やはりオレには、『先輩として後輩に親切にする義務がある』のだろう。
未だに怯えたように震える頭を安心させるためニ、三度撫でると、オレはゆっくりと口を開いた──。
(すごく……騒がしい双子が居るオレのコンパートメントか、ひとりしか居ないけど薬壺と悪態だらけの部屋か、どっちがいい?)
(ふぇっ!?)
【end】
4/4ページ