その5
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【story of addition - 5】
887:HERO☆生徒会長
会長は僕だよ!!
心配を掛けてしまったかな 双子の言う通り僕の携帯からふりかけ(覚)くんが投稿したんだよ
ああ 自分の携帯で投稿するように言っておいたからもう大丈夫だよ!コテも変えておいたからね!!
「さて。と、どうしたものなのだろうね?」
手の中にあるのは、同行人から取り返したスマートフォン。
自らのコメントの後に続いて、怒涛の勢いでレスポンスを示していくスレ板を文字通り流し見ながらスプレンディドは首を傾けた。
目の前には、最早進むべきなのかどうか是非も分からない道。
どこまでも続いているかのように伸びた廊下は奥に深い暗闇を湛えている。視認が追いついていないのだ。
歩けども歩けども、それが晴れることはなく、ただただ足元の廊下は伸びていく。まるで自分たちが足を進めているその行為こそが、新たに空間の端を広げているような錯覚に囚われる。
学生寮は縦に長い。
階数こそ無駄にあるものの、こんなにも横へ移動できるほど敷地は広くなかったと思うのだけど。
……天井から等間隔に落ちる白熱灯の薄暗い光と、どこか小奇麗に並ぶ部屋のドア。何も書かれていない部屋番号と果てのない事を除けば、見慣れている筈の日常風景。そのコントラストはかえって気味が悪く、じっとりとした不快感を煽る。
「どうも僕の部屋にも戻れそうにないしね……」
振り返ったところで、同じく果ての無い廊下が見えるだけだ。退路はない。
「やはりこのまま歩き続けるしかないのかな?それとも、走ってみるかい?」
今まさに超常現象に見舞われているとはとても思えない軽い調子と明るい表情で、元生徒会長は隣へと冗談交じりの問いを投げた。
しかし現在の同行者──普段とは瞳の色を変えたフリッピーはそんなふざけた質問に、返事をくれるような親切な男ではない。先程書き込みの方法を教えてやったのだが、自分の携帯電話を両手で持ってがちゃがちゃとやっている。多分、スレ民やイチくんとの応酬に忙しいのだろう。
ひどいじゃないか、僕とは話してくれないくせに。
「ねぇ覚醒くん。歩き続けていたら、いつか出られるのかい?」
それでもめげずにそう話しかけた瞬間、フリッピーの手元がぴたりと止まる。
「……出られるワケねぇだろ」
呟きと共に目を眇め、そして漸くこちらを向いた見慣れたその顔はいつものように顰めっ面だ。けれども、白い光に照らされたその瞳はいつも以上に目前の何かへの警戒心に浸かっている。
「ボケが、そもそもてめぇなんざ放っといてさっさと部屋に帰りゃ良かったんだ!!」
思いついたかのように、廊下に設置された消火器を蹴り飛ばしながらもフリッピーはその歩を止めない。
二人がこの消火器を目にするのもこれで一体何度目になるか。本来ならば、一フロアに一つだけの筈なのだが。
「うん?では何故そうしなかったんだい?」
彼にはそれができた筈だ。何故ならあの後、揃って部屋から出た瞬間、案の定フリッピーの意識は沈み…………即座に、彼を守護する為に『彼』が来た。事情を知っているのかいないのか、くるりと代わった金色の瞳は傍らのスプレンディドと、そして置かれた状況に眉を顰め……舌打ち一つを残してさっさと歩き始めたのである。そして今に至る。
「後が面倒だからだよ、クソっ」
吐き捨てるように悪態をつき、噛み締めた犬歯を露わにする。「てめぇ早くアイツの知らねぇとこでくたばれ」まぁそれは叶えてはあげられない願いな訳だけれど。スレッドでの応酬に戻る、そのジーンズのポケットから覗くのは、今は役目を潜めた緑の御守。
「──やはり思った通り君達は優しいね、自慢の親友だよ!」
「せめて君『達』ってのを訂正しろその舌削ぐぞ!!」
「それは困るな、話すことが出来なくなってしまうだろう?」
「だから黙れ っつってんだよ、公害バルサン野郎が!!」
揶揄に慟哭する同行人に、にっこりと笑いかける自称英雄元生徒会長優等生スプレンディドは今日も変わらず空気が読めない。
「……しかし、こうも出口が無いとなると、歩き続けていても意味がないんじゃないのかい?」
「なんだ、疲れたのか?遠慮なく止まって休めよ、それで死んでくれんなら俺のせいじゃない」
実はこの時スプレンディドは、出口が無いなら作れば良いじゃないか、とまたしてもぶっ飛んだ視線を壁に向けていたわけだが、そんな規格外に対して返ってきたのはらしくもなく、字面だけなら気遣い深い言葉と、付け加えて不穏な台詞。
「……何かあるの?」
振り返ってみても、元生徒会長には変わらず暗い廊下が見えるだけ。
「そもそも俺は出口を探して歩いてるわけじゃねぇ」
しかし、再び向き合ったその表情は真剣そのもので。
「逃げてるんだよ馬鹿会長」
成る程、どうやら彼には僕とは違う世界が見えているらしい。
スプレンディドには相変わらず何も見えないけれど、ランピーの家のぬいぐるみのように、イチくんと双子へ近付く女人のように、きっと此処にも居るのだろう……何かが。
「僕にはただの長い廊下に見えるんだけれど」
「俺にもただの長い廊下に見えるぜ?バ会長」
そう言うと、覚醒と呼ばれる男は珍しく笑って見せた。但し鼻で。
そしてぼそりと付け加える。
「……廊下は、な」
自らの肩越しに背後を睨む金色に、有る筈のない影が移りこんだ気がした。
「覚醒くん?」
「るせぇ、死ぬ気がねえんなら黙って歩け。あと、こっち来んな」
「はは、それは難しい注文だね!」
やがて奇妙な二人組は再び歩を進め始める。
雰囲気を尖らせる認定友人に追いすがりながら、最後に振り返って見た異様な黒が渦巻く廊下の果ては、ぽっかりと開いた穴のようで。
──まるで冥府への入り口に見えた。
【continue?】
→
887:HERO☆生徒会長
会長は僕だよ!!
心配を掛けてしまったかな 双子の言う通り僕の携帯からふりかけ(覚)くんが投稿したんだよ
ああ 自分の携帯で投稿するように言っておいたからもう大丈夫だよ!コテも変えておいたからね!!
「さて。と、どうしたものなのだろうね?」
手の中にあるのは、同行人から取り返したスマートフォン。
自らのコメントの後に続いて、怒涛の勢いでレスポンスを示していくスレ板を文字通り流し見ながらスプレンディドは首を傾けた。
目の前には、最早進むべきなのかどうか是非も分からない道。
どこまでも続いているかのように伸びた廊下は奥に深い暗闇を湛えている。視認が追いついていないのだ。
歩けども歩けども、それが晴れることはなく、ただただ足元の廊下は伸びていく。まるで自分たちが足を進めているその行為こそが、新たに空間の端を広げているような錯覚に囚われる。
学生寮は縦に長い。
階数こそ無駄にあるものの、こんなにも横へ移動できるほど敷地は広くなかったと思うのだけど。
……天井から等間隔に落ちる白熱灯の薄暗い光と、どこか小奇麗に並ぶ部屋のドア。何も書かれていない部屋番号と果てのない事を除けば、見慣れている筈の日常風景。そのコントラストはかえって気味が悪く、じっとりとした不快感を煽る。
「どうも僕の部屋にも戻れそうにないしね……」
振り返ったところで、同じく果ての無い廊下が見えるだけだ。退路はない。
「やはりこのまま歩き続けるしかないのかな?それとも、走ってみるかい?」
今まさに超常現象に見舞われているとはとても思えない軽い調子と明るい表情で、元生徒会長は隣へと冗談交じりの問いを投げた。
しかし現在の同行者──普段とは瞳の色を変えたフリッピーはそんなふざけた質問に、返事をくれるような親切な男ではない。先程書き込みの方法を教えてやったのだが、自分の携帯電話を両手で持ってがちゃがちゃとやっている。多分、スレ民やイチくんとの応酬に忙しいのだろう。
ひどいじゃないか、僕とは話してくれないくせに。
「ねぇ覚醒くん。歩き続けていたら、いつか出られるのかい?」
それでもめげずにそう話しかけた瞬間、フリッピーの手元がぴたりと止まる。
「……出られるワケねぇだろ」
呟きと共に目を眇め、そして漸くこちらを向いた見慣れたその顔はいつものように顰めっ面だ。けれども、白い光に照らされたその瞳はいつも以上に目前の何かへの警戒心に浸かっている。
「ボケが、そもそもてめぇなんざ放っといてさっさと部屋に帰りゃ良かったんだ!!」
思いついたかのように、廊下に設置された消火器を蹴り飛ばしながらもフリッピーはその歩を止めない。
二人がこの消火器を目にするのもこれで一体何度目になるか。本来ならば、一フロアに一つだけの筈なのだが。
「うん?では何故そうしなかったんだい?」
彼にはそれができた筈だ。何故ならあの後、揃って部屋から出た瞬間、案の定フリッピーの意識は沈み…………即座に、彼を守護する為に『彼』が来た。事情を知っているのかいないのか、くるりと代わった金色の瞳は傍らのスプレンディドと、そして置かれた状況に眉を顰め……舌打ち一つを残してさっさと歩き始めたのである。そして今に至る。
「後が面倒だからだよ、クソっ」
吐き捨てるように悪態をつき、噛み締めた犬歯を露わにする。「てめぇ早くアイツの知らねぇとこでくたばれ」まぁそれは叶えてはあげられない願いな訳だけれど。スレッドでの応酬に戻る、そのジーンズのポケットから覗くのは、今は役目を潜めた緑の御守。
「──やはり思った通り君達は優しいね、自慢の親友だよ!」
「せめて君『達』ってのを訂正しろその舌削ぐぞ!!」
「それは困るな、話すことが出来なくなってしまうだろう?」
「だから
揶揄に慟哭する同行人に、にっこりと笑いかける自称英雄元生徒会長優等生スプレンディドは今日も変わらず空気が読めない。
「……しかし、こうも出口が無いとなると、歩き続けていても意味がないんじゃないのかい?」
「なんだ、疲れたのか?遠慮なく止まって休めよ、それで死んでくれんなら俺のせいじゃない」
実はこの時スプレンディドは、出口が無いなら作れば良いじゃないか、とまたしてもぶっ飛んだ視線を壁に向けていたわけだが、そんな規格外に対して返ってきたのはらしくもなく、字面だけなら気遣い深い言葉と、付け加えて不穏な台詞。
「……何かあるの?」
振り返ってみても、元生徒会長には変わらず暗い廊下が見えるだけ。
「そもそも俺は出口を探して歩いてるわけじゃねぇ」
しかし、再び向き合ったその表情は真剣そのもので。
「逃げてるんだよ馬鹿会長」
成る程、どうやら彼には僕とは違う世界が見えているらしい。
スプレンディドには相変わらず何も見えないけれど、ランピーの家のぬいぐるみのように、イチくんと双子へ近付く女人のように、きっと此処にも居るのだろう……何かが。
「僕にはただの長い廊下に見えるんだけれど」
「俺にもただの長い廊下に見えるぜ?バ会長」
そう言うと、覚醒と呼ばれる男は珍しく笑って見せた。但し鼻で。
そしてぼそりと付け加える。
「……廊下は、な」
自らの肩越しに背後を睨む金色に、有る筈のない影が移りこんだ気がした。
「覚醒くん?」
「るせぇ、死ぬ気がねえんなら黙って歩け。あと、こっち来んな」
「はは、それは難しい注文だね!」
やがて奇妙な二人組は再び歩を進め始める。
雰囲気を尖らせる認定友人に追いすがりながら、最後に振り返って見た異様な黒が渦巻く廊下の果ては、ぽっかりと開いた穴のようで。
──まるで冥府への入り口に見えた。
【continue?】
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