その3
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【story of addition - 3】
567:HERO☆生徒会長
やあ!そろそろ僕の出番かな?
ほぅら、出た。
クロゼットの容赦ない狭さに己の長身を押し込めて、ディスプレイの白い光で顔を照らしながらランピーはへらりと笑う。いつも通りのその表情に危機感は微塵も見えない。だから……だから、油断をしていたという表現では誤りがあるだろう。そもそも最初から気を張ってなどいない。したがってランピーがその呟きを落としたのはある意味で必然だったのかもしれない。
「んんー、ディドと、フリッピーまで出てきちゃったらホントに終わりかなぁ?」
短いオカルトごっこだったねえ?
目を細めて、混沌と流れていくスレッドを追う。飽くまでも自分としては未だ何も起きていないこの状況。正直もう少し楽しんでも良かったのだが、しかしそれでも後輩を三人も巻き込んでいる。しかも内一人は後の怖い保護者が満を持している。……潮時だろう。
どこまでも不真面目な思考を巡らせ、事態の収拾に向けるレスポンスを打ち込むべく長い指を蠢かせ、
「──あ」
そして、漸く気付く。
自分で調べ、自分で書き込んだ筈の注意事項の三番目。
《 ・隠れてる時は静かに 》
こと、オカルト、スピリチュアルな事象に置いてありがちなその制約が、何故ありがちなのかといえばそれはもうそれだけ重要な約束事だからに違いないのである。
沈黙を破ってはいけない……言葉を発してはいけないという、それは。
鈍感鈍感と言われ続けて二十数年、それでも流石に、ランピーの背には冷たい汗がつぅ、と流れた。手元の端末から半端なメッセージを送信してしまっている、そんな事にも気付かない。つい先程まで気にも留めなかった暗闇が妙に重い。────音が、聞こえる。
「…………」
二度、同じ過ちは犯さなかった。自分の迂闊さをそれなりに理解している青年は防策として口を手で覆う。それを待っていたかのように、外から、音が。
ずるり、と。
ずるり……、ずるり……、と、何か重たいものを引き摺るような湿った音は、考えるまでも無く移動している。この、クローゼットに向って。──微かに、カラリと金属の擦れる音がした。
元から、頭の悪いわけではない医学部生は、否応無く自分の置かれた状況について正しく理解できてしまう。
何故、霊感の欠片も無い筈の自分にこの音が聴こえるのか。先程の、動画を介して拡散した女の声とは何が違うのか。簡単なことだ。……これは物理的な現象なのだ。それもその筈、ずる、ずる……と異音を伴い徘徊する「ナニカ」は、あのぬいぐるみに違いないのだから。
音が、止まった。
ぬいぐるみが歩みを止めたのだろう。何の根拠も裏付けも無く、ただ本能だけが警鐘を鳴らし確信する。────見られている、と。
「……ッ!」
不意に視界が利かなくなり、ランピーはほんの一瞬パニックに陥りそうになる。が、何の事はない。手元のスマートフォンがタイムアウトにより画面を落とした、それだけだ。気付いてしまえば返って冷静になれた。動揺に止まりかけていた思考を廻す。光源が落ちたのは寧ろ好都合だ。息を殺して出来る限りの気配を消した。思い出したのだ、これは、「かくれんぼ」だ。
どれくらい、じっとしていたのかはわからない。
やがて再び異音が聴こえ始める。ずる、ずるり、とその不気味な音はしかし、今のランピーにとっては救いでしかない。ぬいぐるみは、鬼は、離れていく。
「………………」
本来なら、深々と息を吐き出したかった。が、そういうわけにも行かないので、指の間から溜息と疲労を少しずつ零してだらりと肩の力を抜いた。思ったよりも体が強張っていたらしく、関節がやや軋む。
てっきり、もう終わりだと思っていたのだが。
(むしろ思ったより、長引きそう、かなぁ……?)
とりあえず掲示板に戻ろうと、スマートフォンのロックを外しながら、パスコードを打ち込むその手は彼らしくも無く少し震えていた。
【continue?】
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