遠足
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「えっ、うそお!?イチちゃんまだ死んだこと無いの!?」
それだけ聞くととんでもない台詞な気がするが。
しかしラッセルが代わりに噴き出したのでオレは何も言わないことにした。何も言わずに視線を向けてみた。特に何の効果もなかったが。
ラッセルとランピーが釣りを始めて数時間。
オレはそれを眺めたり、二人の会話を聞き流したりしてるだけ。強いて言うなら海を見ていたのだが、二人とも少し経ってはオレに質問を投げかけてくるのを繰り返すので、それに答えたりもしていた。そんな折のそんな発言だった。
「お前さん……もちっとこう、いくらなんでもそれはねーわ!」
ラッセルが真面目に身を引いている。という事はオレの感覚はそこまで間違っていないらしい。
「だってっ、え、うそ!えぇー……」
ランピーは何故か頭を抱えてぶつぶつ呟いている。かなり危ない人に見える。
「お前さん、なんかかなりヤバイ人みたいになってんぞ」
総評だった。
「だって、ラッセル知らないかもしれないけどさぁ!イチちゃんはここに来てから一ヶ月くらいモールの家に住んでたんだよっ!?」
「おぉ、そうなのか?」
黒い眼帯に一つを塞がれたラッセルの眼は、どうしてかランピーではなくオレの方を見た。
訊かれてるみたいなので答える。
「うん」
「ほら、ほらぁ聞いたぁ!?」
すると何故かランピーの語気が上がってしまう。
「あのねイチちゃん、ピンと来ないと思うけどっ、モールとそれだけ一緒にいて死なないのって凄いよ!?」
ようやく顔をあげたかと思えば目を回す勢いで喚いている。しかもそのせいで釣竿がぶんぶん揺れてかなり危ない。
「お、僕ってあんまり死なないみたいなんだけど、モールと一緒にいたら死ぬ率上がるもんっ!すっごい死ぬもおん!ねぇラッセル!?」
「いや、俺はお前さんに殺された回数のが多いわ」
苦虫を飲み下したような顔で苦笑しながら言うラッセルを見て、ランピーのテンションは今度は急激に下がり始めた。
「うそ、ホントに?うわぁー……なに?モールって実は目見えてるのかな?それで俺だけ殺してるのかなぁ……」
「おい落ち着けって」
「イチちゃんは一回も死んでないんでしょ?モールと居るときの僕の死亡率凄いよ!?」
「……」
「それはお前の自業自得じゃ、」
「いや、ちょっと確かめてくるっ!!」
「はぁっ!?」
叫びながら立ち上がったランピーは竿をぽいっと放り投げた。とっさに避けるがそれこそ当たったら死んでしまいそうだ。
「ちょっと気にはなってたんだよね。モールって見えてるんじゃないかなぁって!いつも間違えないで僕の足に杖刺すし、手にも刺すし、自分は避けるし……」
「……」
「……」
がこん、とバケツを蹴飛ばしながら歩き出そうとするトラブルメイカー。
そのまますぐにでも走り出しそうな勢いだったが、ふと立ち止まった。あ、とか言っている。ぐるんと振り返ってオレを見下ろす。
「そうそう、イチちゃん!俺はこれで行くけどー!すぐじゃなくてもいいから、ちゃんと街を回るんだよ?」
「え?」
「記憶がないと自分の人格も覚えてない事が多いからねぇ、色んな人に会ってみて?昔のことは思い出せなくても、それで『自分』は少しずつ分かってくるはずだから──そしたらちゃんと笑えるからね?」
大丈夫だいじょーぶ、自己紹介おぼえたでしょ?心配しなくてもいいよ。
二言三言囁いて、オレの頭をぼふっと押さえる。
「なんだ、一応医者らしいこと出来んじゃねーか」
呆れと感心が半々くらいのトーンでラッセルが言う。
結局その日はそのままラッセルの釣りを眺めて、別れ際に魚を貰って窓の割れた家に帰った。
眠る直前、ランピーが最後に言っていた言葉が少しだけ気に掛かった。けど。
今のオレには意味がよく分らず、とりあえず、気にしない事にした。
『あぁ、でも髪の毛が緑色の人には気をつけてね?』
【end】
一か月前の話→保護者
「えっ、うそお!?イチちゃんまだ死んだこと無いの!?」
それだけ聞くととんでもない台詞な気がするが。
しかしラッセルが代わりに噴き出したのでオレは何も言わないことにした。何も言わずに視線を向けてみた。特に何の効果もなかったが。
ラッセルとランピーが釣りを始めて数時間。
オレはそれを眺めたり、二人の会話を聞き流したりしてるだけ。強いて言うなら海を見ていたのだが、二人とも少し経ってはオレに質問を投げかけてくるのを繰り返すので、それに答えたりもしていた。そんな折のそんな発言だった。
「お前さん……もちっとこう、いくらなんでもそれはねーわ!」
ラッセルが真面目に身を引いている。という事はオレの感覚はそこまで間違っていないらしい。
「だってっ、え、うそ!えぇー……」
ランピーは何故か頭を抱えてぶつぶつ呟いている。かなり危ない人に見える。
「お前さん、なんかかなりヤバイ人みたいになってんぞ」
総評だった。
「だって、ラッセル知らないかもしれないけどさぁ!イチちゃんはここに来てから一ヶ月くらいモールの家に住んでたんだよっ!?」
「おぉ、そうなのか?」
黒い眼帯に一つを塞がれたラッセルの眼は、どうしてかランピーではなくオレの方を見た。
訊かれてるみたいなので答える。
「うん」
「ほら、ほらぁ聞いたぁ!?」
すると何故かランピーの語気が上がってしまう。
「あのねイチちゃん、ピンと来ないと思うけどっ、モールとそれだけ一緒にいて死なないのって凄いよ!?」
ようやく顔をあげたかと思えば目を回す勢いで喚いている。しかもそのせいで釣竿がぶんぶん揺れてかなり危ない。
「お、僕ってあんまり死なないみたいなんだけど、モールと一緒にいたら死ぬ率上がるもんっ!すっごい死ぬもおん!ねぇラッセル!?」
「いや、俺はお前さんに殺された回数のが多いわ」
苦虫を飲み下したような顔で苦笑しながら言うラッセルを見て、ランピーのテンションは今度は急激に下がり始めた。
「うそ、ホントに?うわぁー……なに?モールって実は目見えてるのかな?それで俺だけ殺してるのかなぁ……」
「おい落ち着けって」
「イチちゃんは一回も死んでないんでしょ?モールと居るときの僕の死亡率凄いよ!?」
「……」
「それはお前の自業自得じゃ、」
「いや、ちょっと確かめてくるっ!!」
「はぁっ!?」
叫びながら立ち上がったランピーは竿をぽいっと放り投げた。とっさに避けるがそれこそ当たったら死んでしまいそうだ。
「ちょっと気にはなってたんだよね。モールって見えてるんじゃないかなぁって!いつも間違えないで僕の足に杖刺すし、手にも刺すし、自分は避けるし……」
「……」
「……」
がこん、とバケツを蹴飛ばしながら歩き出そうとするトラブルメイカー。
そのまますぐにでも走り出しそうな勢いだったが、ふと立ち止まった。あ、とか言っている。ぐるんと振り返ってオレを見下ろす。
「そうそう、イチちゃん!俺はこれで行くけどー!すぐじゃなくてもいいから、ちゃんと街を回るんだよ?」
「え?」
「記憶がないと自分の人格も覚えてない事が多いからねぇ、色んな人に会ってみて?昔のことは思い出せなくても、それで『自分』は少しずつ分かってくるはずだから──そしたらちゃんと笑えるからね?」
大丈夫だいじょーぶ、自己紹介おぼえたでしょ?心配しなくてもいいよ。
二言三言囁いて、オレの頭をぼふっと押さえる。
「なんだ、一応医者らしいこと出来んじゃねーか」
呆れと感心が半々くらいのトーンでラッセルが言う。
結局その日はそのままラッセルの釣りを眺めて、別れ際に魚を貰って窓の割れた家に帰った。
眠る直前、ランピーが最後に言っていた言葉が少しだけ気に掛かった。けど。
今のオレには意味がよく分らず、とりあえず、気にしない事にした。
『あぁ、でも髪の毛が緑色の人には気をつけてね?』
【end】
一か月前の話→保護者
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