心中
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「まぁ、あれだな。お前さんも難儀なやつだな」
無事に下ろしてもらって、服の裾を直していると頭にぼふっと手が載った。元海賊はオレの髪を掻き混ぜながら、「ほれ、いつまでもぶすっとしなさんな」と、ちょっと大人ぶった調子でハンディにも笑いかけている。
「らっせる、」
「要は遊びに行くんだろ?俺も混ぜろって」
最後に軽く叩いてから、ラッセルの左手は離れていった。
「ちょうど暇してたんだよ」
そして隙あらば釣りに行こうとするくせにそんなことを言うので、オレとハンディは意図せず顔を合わせた。
「な、なんだよ」
「……いや」
「なんでもないよ」
重なった返事に元海賊は眉を顰めて。
ハンディは少し笑っていた。
道のど真ん中で話すと邪魔になるからと、オレ達は一旦木陰に寄ることにした。
遊園地とか動物園とかねぇ、とラッセルが思案する。行ったことないのはどっちだと聞かれ、どっちもだと答えるとハンディは目を剥いた。
「スーパーとか、図書館くらいしか行ったことない。ペチュニアがバイトしてるとこなら見に行ったけど」
「見に行ったけど、って喫茶店と遊園地は別物だぞ」
呆れ顔のハンディに何と言い返そうか迷っていると、その横でラッセルが何かに気付いたように片眉をあげた。
何か、と問う前に、
「イチだ!」
イチだけど。
後ろから聞こえてきた覚えのある声に振り向けば、やはりフレイキーが嬉しそうにこちらを見ていた。しかしその赤い髪は思っていたよりも遥かに高い位置にある。
「おう、なんだそれ流行ってんのか?」
ラッセルが言うが、担ぐのと肩車とでは根本的な何かが違う。
偶然だねっ、と、いつもより遠くから聞こえる言葉に軽く挨拶を返して、ハンディと話していた緑の瞳に視線を移す。フレイキーを載せた緑の髪はオレに気付いてふわっと揺れた。
「今日は別行動。──せっかくだから、フレイキーに付き合ってもらっていつもは出来ないことをやってるんだ」
僕、映画最後まで見られたの初めてだよ、とフリッピーはにっこり笑った。
「あ、あのね、すっごくおもしろかったの!」
せがまれて、フリッピーは座り込む寸前まで身をかがめる。フレイキーはもぞもぞと地面に降り立ってこっちに駆けてきた。
なんだか甘い匂いがする、と思っていたらフレイキーが両手でポップコーンを抱えている。バケツみたいな大きさの容器に入ったそれはぽろぽろと零れながらもオレに向かって差し出される。
「はいっ」
「……くれるの?」
「うんっ、おいしいよ!えっと、フリッピーが買ってくれたんだよ」
なんだか必死だな、とふるふるしている赤毛を眺めていると、微笑ましそうに、でも苦笑しているフリッピーが目に入った。ああ、そういうことか。
オレは小さな友達にこれ以上心配をかけないよう、ポップコーンをひとつ口に放り込んだ。
「甘いね」
「キャラメル味!」
フレイキーはそう言ってはしゃぐ。
この笑顔に、一体オレは何回救われているのだろうか。
「映画か、そういえば長らく行ってないな」
見るとハンディがにっ、と笑っていた。
応えるようにラッセルが軽く呻く。
「面白きゃいいが、ずっと座って見てられっかなぁ」
「あんたいっつも釣りで座ってるんじゃないのか」
「あ、面白そうなのやってたよ?僕達もまだ見てないんだけど」
「ホントか?」
「うん、良かったらさ……、ねぇフレイキー」
「ふ?う、うんっボクも行く!」
呆気にとられる間もなくどんどん話が進んでいく。不意に小さな手が差し出される。
「ね、みんなで行こうよ!」
迷うことなくこちらへ向けられたそれに、それらに、オレはどうしても我慢が出来なくて。
──今だけ。すこしだけ。最後にするから。
そっと縋るように手を伸ばした。
▼
「そういえば覚醒はフリッピーがいなくても平気なのか?」
映画館への道すがら、思い出したようにハンディが問う。
「大丈夫、ディドさんに頼んであるから!」
振り向いてにこっと笑ったフリッピーを、オレと、そしてハンディとラッセルは二度見したのだった。
【end】
「まぁ、あれだな。お前さんも難儀なやつだな」
無事に下ろしてもらって、服の裾を直していると頭にぼふっと手が載った。元海賊はオレの髪を掻き混ぜながら、「ほれ、いつまでもぶすっとしなさんな」と、ちょっと大人ぶった調子でハンディにも笑いかけている。
「らっせる、」
「要は遊びに行くんだろ?俺も混ぜろって」
最後に軽く叩いてから、ラッセルの左手は離れていった。
「ちょうど暇してたんだよ」
そして隙あらば釣りに行こうとするくせにそんなことを言うので、オレとハンディは意図せず顔を合わせた。
「な、なんだよ」
「……いや」
「なんでもないよ」
重なった返事に元海賊は眉を顰めて。
ハンディは少し笑っていた。
道のど真ん中で話すと邪魔になるからと、オレ達は一旦木陰に寄ることにした。
遊園地とか動物園とかねぇ、とラッセルが思案する。行ったことないのはどっちだと聞かれ、どっちもだと答えるとハンディは目を剥いた。
「スーパーとか、図書館くらいしか行ったことない。ペチュニアがバイトしてるとこなら見に行ったけど」
「見に行ったけど、って喫茶店と遊園地は別物だぞ」
呆れ顔のハンディに何と言い返そうか迷っていると、その横でラッセルが何かに気付いたように片眉をあげた。
何か、と問う前に、
「イチだ!」
イチだけど。
後ろから聞こえてきた覚えのある声に振り向けば、やはりフレイキーが嬉しそうにこちらを見ていた。しかしその赤い髪は思っていたよりも遥かに高い位置にある。
「おう、なんだそれ流行ってんのか?」
ラッセルが言うが、担ぐのと肩車とでは根本的な何かが違う。
偶然だねっ、と、いつもより遠くから聞こえる言葉に軽く挨拶を返して、ハンディと話していた緑の瞳に視線を移す。フレイキーを載せた緑の髪はオレに気付いてふわっと揺れた。
「今日は別行動。──せっかくだから、フレイキーに付き合ってもらっていつもは出来ないことをやってるんだ」
僕、映画最後まで見られたの初めてだよ、とフリッピーはにっこり笑った。
「あ、あのね、すっごくおもしろかったの!」
せがまれて、フリッピーは座り込む寸前まで身をかがめる。フレイキーはもぞもぞと地面に降り立ってこっちに駆けてきた。
なんだか甘い匂いがする、と思っていたらフレイキーが両手でポップコーンを抱えている。バケツみたいな大きさの容器に入ったそれはぽろぽろと零れながらもオレに向かって差し出される。
「はいっ」
「……くれるの?」
「うんっ、おいしいよ!えっと、フリッピーが買ってくれたんだよ」
なんだか必死だな、とふるふるしている赤毛を眺めていると、微笑ましそうに、でも苦笑しているフリッピーが目に入った。ああ、そういうことか。
オレは小さな友達にこれ以上心配をかけないよう、ポップコーンをひとつ口に放り込んだ。
「甘いね」
「キャラメル味!」
フレイキーはそう言ってはしゃぐ。
この笑顔に、一体オレは何回救われているのだろうか。
「映画か、そういえば長らく行ってないな」
見るとハンディがにっ、と笑っていた。
応えるようにラッセルが軽く呻く。
「面白きゃいいが、ずっと座って見てられっかなぁ」
「あんたいっつも釣りで座ってるんじゃないのか」
「あ、面白そうなのやってたよ?僕達もまだ見てないんだけど」
「ホントか?」
「うん、良かったらさ……、ねぇフレイキー」
「ふ?う、うんっボクも行く!」
呆気にとられる間もなくどんどん話が進んでいく。不意に小さな手が差し出される。
「ね、みんなで行こうよ!」
迷うことなくこちらへ向けられたそれに、それらに、オレはどうしても我慢が出来なくて。
──今だけ。すこしだけ。最後にするから。
そっと縋るように手を伸ばした。
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「そういえば覚醒はフリッピーがいなくても平気なのか?」
映画館への道すがら、思い出したようにハンディが問う。
「大丈夫、ディドさんに頼んであるから!」
振り向いてにこっと笑ったフリッピーを、オレと、そしてハンディとラッセルは二度見したのだった。
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