暗闇
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おいしいそうな匂いで目が覚めた。
モールさんは料理が出来る。モールさんのごはんはおいしいと思う。すごく、おいしいと思う。
「おはようモールさん」
「おはようイチ」
今朝もオレはマグカップを貰った。
いつもは冷たい牛乳なのに、昨日と今日は甘いホットミルクを。
甘いものが精神安定に効くと言ったのはランピー。オレはそれを聞いてモールさんがわざわざ蜂蜜を買ってきたことを知っている。モールさんはそんなに甘いものが好きじゃないことも。
乳白色のミルクが揺蕩う湯気越しに、ぼんやりと見える極彩色。
「……モールさんって灯台みたいだね」
寝起きの頭のままに言ってみたけれど、意味は通用しなかった。当たり前か。ものすごく変な顔をされてしまった。
「何を言っているのか分かりかねますが……まさかランピーの物言いが感染 ったのではないでしょうね」
言いながら、テーブルクロスに朝食のプレートを置いてくれる。どうやらモールさんの中では“意味不明=ランピー”という等式が成り立つらしい。あながち間違っているとは断定できないところが恐ろしい。
置かれていたフォークを手に視線を落とす。
かじりついたら、さく、と鳴りそうなトースト。狐色のバターが乗ってる。浅めのボールにはトマトとレタス。至れり尽くせりである。それにハムが敷いてある目玉焼き。黄身がふたつある。そのうち一つが破れて泣いていた。オレはついついそれをじっと眺めてしまう。
「これ、持っていってもいい?」
顔を上げて頼むと、どこに、だとか、誰に、だとかそんなことも訊かずに、オレの身元引受人は心底呆れたような顔をした。それから実にわざとらしい溜息をひとつ。
「好きになさい」
すかさずお盆を持ち上げようとするが、やはりそれすらも見透かされているらしい。
「半分は食べなさい」
今朝はもうサングラスをかけているモールさんを見ながら、フォークと口を素直に動かすことにする。勿論、苦にはならない。モールさんのご飯はおいしいのだから。
…………そうやって、オレは暢気に忘れていたのだ。
いくら光が照らしてくれても、そこが暗い海だということを。
灯台から逸れてしまえば、そこはただの暗闇だということを。
→
おいしいそうな匂いで目が覚めた。
モールさんは料理が出来る。モールさんのごはんはおいしいと思う。すごく、おいしいと思う。
「おはようモールさん」
「おはようイチ」
今朝もオレはマグカップを貰った。
いつもは冷たい牛乳なのに、昨日と今日は甘いホットミルクを。
甘いものが精神安定に効くと言ったのはランピー。オレはそれを聞いてモールさんがわざわざ蜂蜜を買ってきたことを知っている。モールさんはそんなに甘いものが好きじゃないことも。
乳白色のミルクが揺蕩う湯気越しに、ぼんやりと見える極彩色。
「……モールさんって灯台みたいだね」
寝起きの頭のままに言ってみたけれど、意味は通用しなかった。当たり前か。ものすごく変な顔をされてしまった。
「何を言っているのか分かりかねますが……まさかランピーの物言いが
言いながら、テーブルクロスに朝食のプレートを置いてくれる。どうやらモールさんの中では“意味不明=ランピー”という等式が成り立つらしい。あながち間違っているとは断定できないところが恐ろしい。
置かれていたフォークを手に視線を落とす。
かじりついたら、さく、と鳴りそうなトースト。狐色のバターが乗ってる。浅めのボールにはトマトとレタス。至れり尽くせりである。それにハムが敷いてある目玉焼き。黄身がふたつある。そのうち一つが破れて泣いていた。オレはついついそれをじっと眺めてしまう。
「これ、持っていってもいい?」
顔を上げて頼むと、どこに、だとか、誰に、だとかそんなことも訊かずに、オレの身元引受人は心底呆れたような顔をした。それから実にわざとらしい溜息をひとつ。
「好きになさい」
すかさずお盆を持ち上げようとするが、やはりそれすらも見透かされているらしい。
「半分は食べなさい」
今朝はもうサングラスをかけているモールさんを見ながら、フォークと口を素直に動かすことにする。勿論、苦にはならない。モールさんのご飯はおいしいのだから。
…………そうやって、オレは暢気に忘れていたのだ。
いくら光が照らしてくれても、そこが暗い海だということを。
灯台から逸れてしまえば、そこはただの暗闇だということを。
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