分裂
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「わぁーぉ、何してるの?ラグビー?」
記憶違いでなければこの家は、ドアを開けた人、つまりスニッフルズの家だったと思うのだが、奥からもう一人出てきた。青髪金メッシュのひょろ長い男だ。要するにランピーだ。
確かに、今現在オレはフリッピーにタックルをかましたような格好になってはいるが。というか、完全に背中に乗り上げて、ともすれば踏み潰している。
流石にまずいかと、降りようとして、
「……」
思い直して意外と広い背中の上に乗っかったまま、体制だけ直した。緑の髪は何も言わない。
「ラグビーじゃないよ。……鬼ごっこ」
「おにごっこ……?」
ワインボトルに入ったポン酢を見るような目でスニフがオレを見てきた。多分、オレがフリッピーを押しつぶしたままだからだと思う。ただオレだって別に好きでこうしてるわけじゃない。
……黙っていれば分からないとでも思っているのだろうか。
降りた瞬間、フリッピーは逃げるだろう。そしたらもうどうしようもなくなる。転んだときか、ドアが掠ったときか、タイミングまでは分からないが、さっきも言ったように
「えっと……、スニッフルズ達は何してるの」
訊くと、スニフではなくランピーが答える。
「んー?んふふっ」
答えてはいないか。
「あのねぇ、実はスニフがおもしろーいコトしてたから僕も──そうだ、ちょーどいいや」
スニッフルズの、開発。
ああ、そういえばこの前から何か熱心に研究していたのだったか。
痛い目にあったばかりなので若干体がひいてしまった。しかしフリッピーの背中も少し震えたのは何故だろう。
が、一番大きな反応を見せたのは件のスニッフルズその人だった。
「丁度いい?丁度いいって言いました?今!?」
「スニッフルズ?」
「……」
喚きながらランピーを追うように家の中へ戻っていくスニフ。
どうしようこの状況。いい加減、降りた方がいいのだろうか。それともこのまま、本当に瞳の色が変わっているかどうか、確かめてみようか。
冗談半分に逡巡しながら、死体のように黙りっぱなしの若葉の髪の毛を見つめていると、いきなり大きな声がした。
「だからダメですってばっ!!!」
そして、その瞬間トラックに轢かれた。
………………。
……いや、おかしい。
自分で言っておいてなんだが、トラックに轢かれるのはおかしい。
そもそもフリッピーの上に乗っかっていたわけだし、道路ではなく家の軒下だし、トラックを運転していそうな人は目の前にいたわけだし。
大体、死んでいたらこんなにぐだぐだと考え続けられるわけがない。
だが一瞬視界が真っ白になって、ついでに思考も真っ白になって、この跳ね飛ばされるような感覚は轢き殺された時の感じに限りなく似ている。
──やがて視力が回復する。同時に誰かが後ろから襟首を掴みオレの体を放り投げた。……なんなんだ本当に。
「ぶ、」
なんだかまたしてもデジャヴな感触と共に硬いような軟らかいような何かに突っ込む。流石に分かる。しゃがみこんでいたフリッピーだ。
「……い、イチちゃ、ん」
但し今度は正面だった。抱え込むようにオレを受け止めて、瞳の色は間違いようもない緑。そして目を見開いている。さらに口が開いている。
「あっれぇー?」
「っ、っ、……!?」
ランピーが少し決まりの悪いという顔を傾げてすぐ横に立っていた。その白衣の裾を引っ張って、スニッフルズが幽霊でも見たような表情で口をぱくぱくさせている。
……あれ、この配置。
じゃあオレのことを放り投げたのは──
その時点で特にそうする理由もないはずなのだが、オレはゆっくりと後ろを振り返った。緑目のフリッピーがオレの腕をぎゅっと握る。そして信じられないモノを見た。
「え」
戸口のちかく。若葉色の頭。軍服。帽子は、ない。そういえば軍帽はどこに落としてきてしまったのだろういつの間にかオレの手から消えている。そしてその人は振り返った。
「……チッ」
何の舌打ちかは分からないけれど、その金色の目はやっぱり綺麗だと思う。
──それで、終わりだと思っていた。フリッピーがフリッピーとフリッピーに分かれた、それが、緑目のフリッピーを動揺させランピーを驚嘆させスニフを驚愕させ金目のフリッピーに舌打ちさせ、オレの、信じられないことだと思っていた。
とんだ勘違いだ。
ばたん、とドアの閉まる音がして。
金色フリッピーが家の中に引き入れたのだろう、そのお陰でオレからも見えるようになった、その、黒くて、小柄な、
「…………え?」
とてもとても、不愉快そうな顔をしている子供は。
どこからどうみても『オレ』だった。
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