軍人
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いつだったか。
意図せず人を傷つけてしまった事がある。
オレが何も考えずに、何も意識せずに零した言葉はその背景を安々と通り越して、勝手にオレの大事な人を傷つけた。怪我をしたような、傷が痛むような顔をさせてしまった。結局その時のオレはどうしようもなく無力で、傷ついた筈の大工さんはその傷を自分で治してあまつさえオレまで慰めてくれたのだけれど。……言葉というものは、時に誰もが思うよりも強い鋭さで、誰かを切りつけてしまうものなのだと、オレはあの時知ったのだ。
だから。
搾り出すように自分を傷つける言葉を吐き出した軍人さんは、今までそれを誰にも押し付けられずに自分の中に溜め込み続けていた緑の眼の人は、きっと、ずっと、その言葉で──内側から自分を切り衝け続けてきたのだろう。
「何でこんなことまで話しちゃったんだろう……」
それはさっきも聞いたような気がする。
自嘲の言葉というよりは、自分の言動に本気で驚いている様にぽかんとした顔を晒す。
その言葉を放した後悔の、その気持ちはオレにはまだよく分らない。分らないのだけど。
分らないからこそ。
「大丈夫」
だってオレには何も分らないのだから。
「大丈夫だよ、オレは言わない。何も言わないし、誰にも言わない──オレはただ、聞いただけだ」
虚を衝かれたようにぼんやりとしていた軍人さんが、何かに気付いたように顔を上げた。
「オレも優しさと弱さは同じじゃないと思うけど」
「……うん」
分からないので何も言わないし何も言えない、けれど快復するまでの時間潰しにと呟いてみれば返答があり少し安心する。
フリッピーが言う『本当に優しい人』が誰を指して居るのかは知らないけれど。
「でも強さが優しさな訳でもない……優しさや強さが、いつも同じものだとも限らない」
例えば人を殴る行為は、それだけではただの暴力なのに時と場合で『優しさ』だと認定されることもある。『優しさ』が人を傷つけることもあるらしいし、稀に別の『優しさ』と敵対したりもする。ふと空色の笑顔を思い出す。オレとは意見が合わないけれど、正義だって同じようなものだ。何かを定義する事はこんなにも難しい。やっぱりそれは、誰かが勝手に決めてしまってはいけないものなのかもしれない。
「変か、そうじゃないかを決めるのはフリッピーだけど、自分だけど。優しいかどうかを決めるのはフリッピーじゃない。フリッピーを優しいっていう人がいたなら、その人にとってフリッピーは『優しかった』んだと思う。それを否定するのは誰にも出来ない、と思う」
フリッピーの言う『本当に優しい人』がオレの知ってる人だとすれば。──フリッピーにとって優しいその人は、他の人に優しいわけではないだろう。その人の優しさをオレが否定することは出来ないように、フリッピーの優しさをフリッピー自身が否定するのもまたご法度なのだと、そう思った。
だってそれはフリッピーのことを優しいという誰かを拒否するに等しい。
「……フリッピーがもし、フリッピーの言うように弱くても、何にもなくても、優しくしようと思ってた訳じゃなくっても、……それでもオレは最初に会った日、一緒に帰ってくれて嬉しかった」
それは誰にも否定は出来ない筈だ。フリッピーにも。だってオレの中にあるオレの気持ちなのだから……否定出来るのだとしたらそれはオレ自身 にだけだ。
ぼすん、とクッションの落ちる音がする。
見れば、軍人さんはクッションだけでなく何か他のものまで落としてしまったような、迷子の子供のような顔をしていた。
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いつだったか。
意図せず人を傷つけてしまった事がある。
オレが何も考えずに、何も意識せずに零した言葉はその背景を安々と通り越して、勝手にオレの大事な人を傷つけた。怪我をしたような、傷が痛むような顔をさせてしまった。結局その時のオレはどうしようもなく無力で、傷ついた筈の大工さんはその傷を自分で治してあまつさえオレまで慰めてくれたのだけれど。……言葉というものは、時に誰もが思うよりも強い鋭さで、誰かを切りつけてしまうものなのだと、オレはあの時知ったのだ。
だから。
搾り出すように自分を傷つける言葉を吐き出した軍人さんは、今までそれを誰にも押し付けられずに自分の中に溜め込み続けていた緑の眼の人は、きっと、ずっと、その言葉で──内側から自分を切り衝け続けてきたのだろう。
「何でこんなことまで話しちゃったんだろう……」
それはさっきも聞いたような気がする。
自嘲の言葉というよりは、自分の言動に本気で驚いている様にぽかんとした顔を晒す。
その言葉を放した後悔の、その気持ちはオレにはまだよく分らない。分らないのだけど。
分らないからこそ。
「大丈夫」
だってオレには何も分らないのだから。
「大丈夫だよ、オレは言わない。何も言わないし、誰にも言わない──オレはただ、聞いただけだ」
虚を衝かれたようにぼんやりとしていた軍人さんが、何かに気付いたように顔を上げた。
「オレも優しさと弱さは同じじゃないと思うけど」
「……うん」
分からないので何も言わないし何も言えない、けれど快復するまでの時間潰しにと呟いてみれば返答があり少し安心する。
フリッピーが言う『本当に優しい人』が誰を指して居るのかは知らないけれど。
「でも強さが優しさな訳でもない……優しさや強さが、いつも同じものだとも限らない」
例えば人を殴る行為は、それだけではただの暴力なのに時と場合で『優しさ』だと認定されることもある。『優しさ』が人を傷つけることもあるらしいし、稀に別の『優しさ』と敵対したりもする。ふと空色の笑顔を思い出す。オレとは意見が合わないけれど、正義だって同じようなものだ。何かを定義する事はこんなにも難しい。やっぱりそれは、誰かが勝手に決めてしまってはいけないものなのかもしれない。
「変か、そうじゃないかを決めるのはフリッピーだけど、自分だけど。優しいかどうかを決めるのはフリッピーじゃない。フリッピーを優しいっていう人がいたなら、その人にとってフリッピーは『優しかった』んだと思う。それを否定するのは誰にも出来ない、と思う」
フリッピーの言う『本当に優しい人』がオレの知ってる人だとすれば。──フリッピーにとって優しいその人は、他の人に優しいわけではないだろう。その人の優しさをオレが否定することは出来ないように、フリッピーの優しさをフリッピー自身が否定するのもまたご法度なのだと、そう思った。
だってそれはフリッピーのことを優しいという誰かを拒否するに等しい。
「……フリッピーがもし、フリッピーの言うように弱くても、何にもなくても、優しくしようと思ってた訳じゃなくっても、……それでもオレは最初に会った日、一緒に帰ってくれて嬉しかった」
それは誰にも否定は出来ない筈だ。フリッピーにも。だってオレの中にあるオレの気持ちなのだから……否定出来るのだとしたらそれは
ぼすん、とクッションの落ちる音がする。
見れば、軍人さんはクッションだけでなく何か他のものまで落としてしまったような、迷子の子供のような顔をしていた。
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