喧嘩
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ギグルスに駆け寄ってきた青い少女は、当然しがみつかれたオレの傍にも辿り着くことになり、その足が急制動した瞬間、恐らくは下げたフレグランスの首飾りからふわりと香る、なんだろう何処か病院を思い出すような、強制的な清涼感を促す香り……あれ、
「ギグ!」
失っている過去ではなく、ごく最近の記憶の端を何かが捲り上げようとした瞬間、それは可憐な叫び声に中断される。
「……ペチュ」
もしかして一生解けないのだろうかと馬鹿な想像をするくらいには固く回っていたギグルスの腕が躊躇うようにオレの腹から離れていく。ペチュニアはそんなピンク色の少女に近づくと、悲しげにも見える表情でそっと懇願した。
「ごめんねギグ、私が悪かったの。許してくれないかしら……?」
「…………」
「ずっと、探してたの。謝りたくて……」
「…………」
ぼすん、と今度は拘束とは違う体温を感じればフレイキーがこちらに寄りかかるように立ち上がり、ギグルスに向かって「ねっ」と困ったように笑った。少女はそして突っ立っているだけのオレを見て、そしてトゥーシーがその背中を小突いた。
「ゆるす、わ」
ぼそ、と言い、覚悟を決めたようにペチュニアを見つめる。
「もういいわ、気にしない!私も、ちょっと言い過ぎちゃったかも、知れないし……ごめん」
「ギグ、嬉しいわ、ありがとう!」
そう言って、ペチュニアは感激したようにギグルスに飛びついた。それに耐え切れなかったように、ギグルスが笑顔を浮かべる。絵に描いたような仲直りだ。
結局二人は喧嘩していたのだろうか?してないのだろうか。顛末が勢いよくついて行けない、後でトゥーシーかフレイキーに訊こうかと周りを見渡せば当のトゥーシーが牽制するように「その辺ややこしいから、そっとしとけ」と耳打ちをしてくる。
その辺、の目線の先にしっかり混ざっていたカドルスがまたさらりと訊く。
「それで結局なにが原因だったわけ?」
「カ、カドルスには関係……ぅペチュが昨日ハンディと会ってたこと私に秘密にしてたのよ」
「隠すつもりはなかったのよ……。たまたま会っただけだったから言い損ねちゃって」
ぷい、と顔を背けて、そして何かを堪えきれなくなったかのように答えるギグルスと、申し訳なさそうに言うペチュニア。
二人には当然のやり取りのようだが。
ナッティはそもそも理解する気がなさそうだが、オレとフレイキーはつい顔を見合わせた。
……そんなことで?
「そん「カド、今は黙れ」……」
そうして更にオレは出てきた新しい名前にかなりの時間差を経て記憶の中に天啓を得る。
「…………あ、
「……どったの?イチ多分人間だよ?」
トゥーシーに塞がれていた口を解放されたカドルスが、驚いたように言うが、いや、違う、少し思い出した事があっただけだ。いつだったかにも鼻腔を擽った消毒液のような香り。それは、そう、いつぞや普段と様子の異なる大工さんが纏っていた移香ではなかっただろうか。少しは慣用句も覚えたのだオレは。曰く、『人の恋路を邪魔するものは馬に蹴られて死んでしまえ』…………都都逸だが。オレはどうやら既に一度蹴られ掛けている。なるほどそういう話ならややこしいのだろう。訳も分らず立ち入るべきではない。
「立ち入らないために最低限を知りたい」
「俺、関わらなくても関わられるからあんま関わりたくないんだけど」
最近のその理系っぽいのスニフの影響?と呟いて、取り上げていたサッカーボールをぽいっと親友に投げ渡すトゥーシーは「うわぁっ」とそれを拾いにいく少年と、すっかり二人の世界におしゃべりを興じさせる少女達を何処か遠い眼で眺めて早口言葉のようなことを言う。何か核心に触れてしまっただろうか。
すると腰元からやや躊躇いがちに、語尾の震えるか細い声がした。
きゅぅ、と掴まれた布地が伸びる。
「あ、あのね、ギグルスはね、たぶん……ちょっとさびしいだけなんだよ。カドルスも。それでペチュニアはやさしいの」
フレイキーは、わざと抽象的な事を言おうとする性格じゃない。だから多分オレにではなく雀斑の友人に向けた言葉だったのだろう。トゥーシーは聞いた瞬間勢いよく両手で顔を覆って、
「あ゛ーフレイキーは良いよな賢くて、俺にはもうよく分からんーー!」
「ふぇっ!?ボ、ボクはなんにも、トゥーシーはみんなからお話きいてるから、きっと、た、たいへんなんだね……!」
どうしよう物凄く置いてけぼりである。
そんな事を考えていたので、背中に衝撃がやって来た瞬間本当に馬車にでも轢かれたのかと思ったが。二、三歩豪快によろけるだけで何とか地面に突っ伏せずに済んだ。何よりフレイキーを巻き込まなかったのが幸いだが、背後から肩口に、というか頭上に乗っかったのは黄緑色の甘い匂いのする頭。
「イチッ!!見てみてッ、ナッティ思いついたのー!」
にゅ、と腕が伸びてきて、眼前三センチに突き出されるのは十桁の数字が並ぶ液晶画面。かたた、とその数字が一気に跳ね上がる。なるほど、端末を振って中の振子を騙しているのか。ナッティが上機嫌に腕を振るたびに、かたかた、かたかた、と微かで一定の音を漏らしながら溜まっていく数字の羅列。
「…………オレもやってもいいか」
「イイヨーッ!」
スニッフルズには悪いが。
愛情や友情や恋路……貧相なオレの頭はそろそろ容量上限である。
動かせば動かすだけ定量的に増える万歩計の記録は、パンクした脳味噌にも随分と分かりやすく、とても親切に見えた。
【end】
※トゥーシー・カドルス・ギグルスはもともと三人で友達
※カドルス⇔ギグルスが思春期恋愛で物凄く感情拗れた
※ギグ→ペチュもちょっと友情拗らせてる
※ハンディとペチュニアは割りと両想いなんだけどカドギグが拗れてる(しかもギグが自分への依存拗らせてる)の知ってるペチュが誤魔化し続けてて付き合ってない
めちゃくちゃややこしい
フレは知っててそっとしてあるしナッティは知った事ではないしスニフはそもそも気付けてないし大体の皴寄せはトゥーシーに行く
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