知識
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「で、また我慢できないんですか」
固まりながらも律儀に答えた後、衝撃から回復したらしいスニッフルズが言う。
何の話かさっぱり分からないが、とりあえずオレは本を置いてドアを閉めた。
「スニッフルズ何の話、ぅ、わ……」
そして振り向いて驚いた。十センチくらいのところに顔がある。ナッティの。
ちなみにナッティはスニフより一つ年上なだけなのだが、理不尽なことにオレよりも背が高い。お菓子しか食べない甘味依存症だとトゥーシーから聞いていたので、初めて会った時は何かの間違いかと思った。天辺に行くほど色の抜けていく黄緑の髪と、左目だけが忙しく動くオッドアイ。
ついでに補足するならば、
「イチ、何かあまいモノ持ってる……」
ナッティのパーソナルスペースは非常に狭いということだ。たった今、八センチくらいになった。
「甘いもの?」
「チョコみたいなニオイがする……ッ」
「ああ、フレイキーに貰ったクッキーの残りが、」
ある。という前にナッティはオレから急に離れた。離された。
「駄目です、イチさん」
「何が?」
見るとスニフが、自分より上背のあるナッティを後ろから羽交い絞めにしている。されている方も何故か抵抗せずされるがままになっている。それにしても、ナッティってこんなに大人しかっただろうか?
スニッフルズは拘束を解くと、はぁ、とオレに向き合った。溜め息の多い子だ。
「十五歳で、糖尿病を発病させるわけにはいかないでしょう。今、規制中なんですよ『アマイモノ』」
スニフがそう言うと、それに反応するようにナッティの体から力が抜け、でろんとへたり込む。
「だから大人しいのか」
というか、要するに大人しいのではなく大人しくさせられているらしい。ナッティの原動力は間違いなくお菓子だ。
「今日でちょうど一週間ですね。──前にも一度やったんですが、見ての通り、元の木阿弥です」
「スニッフルズが、ナッティの治療を」
「ええ。こう見えて、『医者の』ランピーの助手もやっていますから。たまにですけど」
初耳だ。
確かにそれくらいこなしそうではあるが。……ああ、そういえばさっき『僕はフリッピーさんの治療は受け持った事が無い』とか何とか言っていた。ナッティの治療は受け持っているという訳だ。
「でも食べるなといわれて食べなくなるなら、最初から依存症にはならないんじゃないか?」
スニフはこの素人意見を鼻で哂った。
「我慢しきれないことも見越しての調整です」
「ナッティちゃんとガマンしてたッ!!」
急に勢いを取り戻した甘味依存者は、ぐるんと上体を回してスニフに詰め寄る。相変わらず、近い。オレの時よりも近い。鼻がくっつきそうだ。しかし若きマッドサイエンティストは動じずに、寧ろその距離を利用してナッティーの涙袋をぎゅみっと押さえて引っ張った。所謂あっかんベーみたいな顔になって面白い。
「まあ、嘘ではないようですね……」
「じゃあいいでしょッ食べてもいいデショッ!?もうナッティあまいものブソクで死んじゃう……」
「死んじゃうならまだいい方です。ナッティの場合、飴玉と間違えた、なんて他人の目玉を取り出そうとするじゃないですか」
「ナッティまちがってないよ?ホントにアメだったもんッ」
「……イチさん」
スニッフルズがひょい、と顔をずらして黄緑越しにオレを呼んだ。
「クッキー、一枚だけいいですか?」
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「それで、結局さっきの音はなんだったんですか?」
「ナッティが叩かれた音ッ、落ちてたキャラメルたべようとしただけなのに……」
「ああだから腫れてるのか、頬」
「ていうか食べようとしてるんじゃないですか、我慢してないじゃないですか」
「誰に叩かれたんだ?」
「ギグルスッ」
【end】
女の子の平手は強烈だという話
冒頭の主治医→診察中
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