順応
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「ねぇペチュ、そろそろ行きましょ!カワイイの売り切れちゃうわ!」
やがて溌剌と手を振るギグルスに、袖を引かれてペチュニアは渋々と引き上げていった。
散々フレイキーの世話を焼いて、そろそろオレに飛び火しそうな勢いだったので──初めて会った時にもサイズの合わない一張羅の服装を咎められたから──多分無自覚だろうけどギグルスには少し感謝する。
「……フレイキー?」
二人の姿が小さくなり、そして見えなくなる。
一息ついて横を見るとてっきり言い渡しの通り髪を弄っていると思っていたフレイキーは櫛を持ったままじっとしていた。目が合うとごまかすように笑う。
「髪の毛、括ったりしないの?」
別に無理してまで髪型を変える必要はないと思いながらも訊いてみる。
するとフレイキーは思わぬ表情をした。
「ボクが髪の毛くくったりしたら、変でしょ?」
「変?」
「う、うん。前もね、いっかい、自分でやってみたんだけど、すっごくおかしなことになっちゃって……笑われちゃった」
えへへ、と笑うその顔は一見いつもと同じだが、いつもより少し、何かを押さえるように眉尻が下がる。いつかのフリッピーの表情と少し似ているが──悲しそう、というのだ、多分。この顔は。
この手の直感は、だから当たるのだ。なんでかは知らないけど。
「……いつもの泣いてる顔は平気なんだけど」
そういう顔はちょっと、『どうしていいか分らない』……困る、な。
「へっ?」よく聞こえなかったのか、フレイキーは不思議そうに首をかしげた。オレはそんなフレイキーを眺めながら、その赤い髪をわしっと掴んだ。
「ほえぇ!?」
掴んだだけで引っ張ったわけではないから、痛くはないと思うけど、「痛かったら言って」ぎゅっと握られていた櫛をとりあげて、取りこぼした髪の毛を集めると束にしてみる。
「イチ、いち止めてよ、汚いよ」
フレイキーが今度こそ泣きそうだ。
触ってみた分には別に汚いとは思わないけれど。量が多いな、っていうのと、癖毛が可愛い、という感想しか持たなかった。
まあ、しっとりしてるからお風呂嫌いってのは納得したけど。
「笑われなかったら良いんだろ?」
「そ、そゆ問題じゃあ」
「違うの?」
うー、と涙目で悩むフレイキーは可愛い。
──まずいな、ちょっとフリッピーに影響されてる。この何とも表現できないほわほわした気持ちは『可愛い』と思っているのだと、変換を教えてくれたのは緑の瞳のフリッピーだが、その頻度までが引き摺られている気が少しする。
髪の毛は掴んだままに、ちゃんと触れるようベンチの裏に回った。
「……今、皆あたりまえみたいにお風呂はいって髪の毛洗うけど、昔の人はそうでもなかったらしいよ」
「え、え、そうなの?」
気を逸らそうと話題を変えてみると、フレイキーは分かりやすく興味を示してきた。
かわ……。うん、いや、可愛い。
「お風呂に入るって習慣が出来てからも、毎日は中々入らなかったらしいし」
「へえぇ」
「オレは好きだけどね、風呂」
「あぅ、だってぇ、うぅー」
「いつでも体を洗えるのはいいことだよ、多分」
「そおかなぁ?」
「ほら昔の人はお風呂入りたくても入れなかったのかもしれないし」
きゅっと纏めた髪を緩まないようにきつめに掴む。しまった、何で留めよう。
「女の人は香水をつけて匂いが気にならないようにしたんだって。ちょっと、ペチュニアみたいだ」
青くて長い髪を今日はおさげに結っていた。
ペチュニアはよく首から消臭効果のあるらしい飾りをペンダントに吊っている。
「確か凄く昔の、どこかよその国の話だけど」
「…………よく知ってるんだね?」
「え?」
持ってるわけもないのに、ヘアゴムか何かが無いかとポケットを探っていた手が止まる。
そんなオレの反応にフレイキーは焦ったように、
「え、と、あの、イチ、なんにも覚えてないって、でも、えと、ボクなんかよりたくさん色んなこ、ことをしってるから」
後ろからでも分るくらいに、わたわたしているフレイキーは……可愛いけど。
「だから、何か思い出したのかな、って、思って」
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「ねぇペチュ、そろそろ行きましょ!カワイイの売り切れちゃうわ!」
やがて溌剌と手を振るギグルスに、袖を引かれてペチュニアは渋々と引き上げていった。
散々フレイキーの世話を焼いて、そろそろオレに飛び火しそうな勢いだったので──初めて会った時にもサイズの合わない一張羅の服装を咎められたから──多分無自覚だろうけどギグルスには少し感謝する。
「……フレイキー?」
二人の姿が小さくなり、そして見えなくなる。
一息ついて横を見るとてっきり言い渡しの通り髪を弄っていると思っていたフレイキーは櫛を持ったままじっとしていた。目が合うとごまかすように笑う。
「髪の毛、括ったりしないの?」
別に無理してまで髪型を変える必要はないと思いながらも訊いてみる。
するとフレイキーは思わぬ表情をした。
「ボクが髪の毛くくったりしたら、変でしょ?」
「変?」
「う、うん。前もね、いっかい、自分でやってみたんだけど、すっごくおかしなことになっちゃって……笑われちゃった」
えへへ、と笑うその顔は一見いつもと同じだが、いつもより少し、何かを押さえるように眉尻が下がる。いつかのフリッピーの表情と少し似ているが──悲しそう、というのだ、多分。この顔は。
この手の直感は、だから当たるのだ。なんでかは知らないけど。
「……いつもの泣いてる顔は平気なんだけど」
そういう顔はちょっと、『どうしていいか分らない』……困る、な。
「へっ?」よく聞こえなかったのか、フレイキーは不思議そうに首をかしげた。オレはそんなフレイキーを眺めながら、その赤い髪をわしっと掴んだ。
「ほえぇ!?」
掴んだだけで引っ張ったわけではないから、痛くはないと思うけど、「痛かったら言って」ぎゅっと握られていた櫛をとりあげて、取りこぼした髪の毛を集めると束にしてみる。
「イチ、いち止めてよ、汚いよ」
フレイキーが今度こそ泣きそうだ。
触ってみた分には別に汚いとは思わないけれど。量が多いな、っていうのと、癖毛が可愛い、という感想しか持たなかった。
まあ、しっとりしてるからお風呂嫌いってのは納得したけど。
「笑われなかったら良いんだろ?」
「そ、そゆ問題じゃあ」
「違うの?」
うー、と涙目で悩むフレイキーは可愛い。
──まずいな、ちょっとフリッピーに影響されてる。この何とも表現できないほわほわした気持ちは『可愛い』と思っているのだと、変換を教えてくれたのは緑の瞳のフリッピーだが、その頻度までが引き摺られている気が少しする。
髪の毛は掴んだままに、ちゃんと触れるようベンチの裏に回った。
「……今、皆あたりまえみたいにお風呂はいって髪の毛洗うけど、昔の人はそうでもなかったらしいよ」
「え、え、そうなの?」
気を逸らそうと話題を変えてみると、フレイキーは分かりやすく興味を示してきた。
かわ……。うん、いや、可愛い。
「お風呂に入るって習慣が出来てからも、毎日は中々入らなかったらしいし」
「へえぇ」
「オレは好きだけどね、風呂」
「あぅ、だってぇ、うぅー」
「いつでも体を洗えるのはいいことだよ、多分」
「そおかなぁ?」
「ほら昔の人はお風呂入りたくても入れなかったのかもしれないし」
きゅっと纏めた髪を緩まないようにきつめに掴む。しまった、何で留めよう。
「女の人は香水をつけて匂いが気にならないようにしたんだって。ちょっと、ペチュニアみたいだ」
青くて長い髪を今日はおさげに結っていた。
ペチュニアはよく首から消臭効果のあるらしい飾りをペンダントに吊っている。
「確か凄く昔の、どこかよその国の話だけど」
「…………よく知ってるんだね?」
「え?」
持ってるわけもないのに、ヘアゴムか何かが無いかとポケットを探っていた手が止まる。
そんなオレの反応にフレイキーは焦ったように、
「え、と、あの、イチ、なんにも覚えてないって、でも、えと、ボクなんかよりたくさん色んなこ、ことをしってるから」
後ろからでも分るくらいに、わたわたしているフレイキーは……可愛いけど。
「だから、何か思い出したのかな、って、思って」
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