蘇生
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「昨日はごめんなさい」
そういえば知らない道をメモ書きだけで辿り着けるだろうか。
そう歩き始めてから気付いたのだが、いざ行ってみると中々に分かりやすかった。目の前にしたフリッピーの家はかなり大きい。チャイムを鳴らすと、出てきたのは緑の眼をした男の人……フリッピーだった。
フリッピーはオレを見て、一瞬だけ、怯えるフレイキーのように身動いだ。しかしそれは一瞬だけで、すぐにまるでオレが訪ねてくることが最初から決まっていたかのように、家に招きいれる。朝ごはんは済んだと言うと、ジュースとクッキーでもてなされた。
そして勧められるままソファに座ると、向かいに腰を下ろしたフリッピーが、背中とテーブルが一直線になるくらい低く頭を下げたのだった。
「二重人格?」
「うん。解離性同一性障害なんて呼ぶらしいんだけど、そういう専門的な事は僕にはよく分からないんだ。ただこの中にもう一人、僕じゃない誰かが居るって事しか」
とすん、と、自宅の部屋の中なのにも関わらず黒い皮手袋を嵌めた拳が軍服の胸を叩く。
モールさんの言うとおり、フリッピーは全部隠さないで教えてくれた。
自分は退役軍人で、前線で戦った事があること。
沢山の人を殺して、考えられないくらい死と隣り合わせの環境で、いつの間にかもう一人の自分が生まれていたこと。
その人格は凶暴で、とにかく人を殺して殺して殺す殺人鬼のようだという事。
時にはそんなことまで言ってもいいのかと感じるくらい個人的なことも話していたが、フリッピー曰く、イチちゃんには聞く権利があるから、と。
「もう一人の僕に殺された人は、しばらく僕と顔を合わさないようにするから……僕を訪ねてくる人は結構珍しいんだ」
なんでもないようにフリッピーは言っていた。
「それで、もう一人の僕……『アイツ』は僕が恐怖を感じると覚醒する……っていうか、爆発とか、血、とかナイフとか、そういうのを見ると昔を思い出して、怖くなって『僕』は気絶しちゃうみたいで、そしたらアイツと交代しちゃうんだ」
「昨日は自動車のバックファイア……?」
「うん──気がついたらいつも、自分の手が血に染まってる。昨日は、……君を殺した後に目が覚めたよ」
そう言うとフリッピーは立ち上がった。そして自分の腰に手をやると、がたんと何かをテーブルに置いた。クッキーの皿とコップは脇によけてある。
それは、
「昨日のナイフ」
「うん」
フリッピーの目はまだ緑で。
ナイフは駄目だといっていたけど、見るだけなら大丈夫なのか。それとも、自分で持っているからかもしれない。
「……ごめんなさい、僕は、イチちゃんを殺したかったわけじゃない。でも、『僕』が殺した。──怒ってるよね、図々しい事を言ってるのは分かってるんだ、でも、でも僕は許されたいと思ってしまう。やった事は許されないと思う、でも僕がここに居る事を……話しかけたり、することを赦されたいと思って、しまって。皆は優しいからそれを受け入れてくれるけど、でも、自己満足なのも分かってるけど、謝るだけで済まされるべきでもないと思ってしまう」
図々しい 。許されたい 。自己満足 。
見えない掌に小突かれたように頭が揺れる。
その気持ちはオレには分らない。知らない筈 の分らない事をたくさん一度に聞いたからだろうか……何故だか苦しそうなフリッピーのその気持ちを知っているような気がして、
「だから──イチちゃん、もしも怒っているならどうか僕の事を許して 」
そのとんでもない提案を否定し損ねてしまった。
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「昨日はごめんなさい」
そういえば知らない道をメモ書きだけで辿り着けるだろうか。
そう歩き始めてから気付いたのだが、いざ行ってみると中々に分かりやすかった。目の前にしたフリッピーの家はかなり大きい。チャイムを鳴らすと、出てきたのは緑の眼をした男の人……フリッピーだった。
フリッピーはオレを見て、一瞬だけ、怯えるフレイキーのように身動いだ。しかしそれは一瞬だけで、すぐにまるでオレが訪ねてくることが最初から決まっていたかのように、家に招きいれる。朝ごはんは済んだと言うと、ジュースとクッキーでもてなされた。
そして勧められるままソファに座ると、向かいに腰を下ろしたフリッピーが、背中とテーブルが一直線になるくらい低く頭を下げたのだった。
「二重人格?」
「うん。解離性同一性障害なんて呼ぶらしいんだけど、そういう専門的な事は僕にはよく分からないんだ。ただこの中にもう一人、僕じゃない誰かが居るって事しか」
とすん、と、自宅の部屋の中なのにも関わらず黒い皮手袋を嵌めた拳が軍服の胸を叩く。
モールさんの言うとおり、フリッピーは全部隠さないで教えてくれた。
自分は退役軍人で、前線で戦った事があること。
沢山の人を殺して、考えられないくらい死と隣り合わせの環境で、いつの間にかもう一人の自分が生まれていたこと。
その人格は凶暴で、とにかく人を殺して殺して殺す殺人鬼のようだという事。
時にはそんなことまで言ってもいいのかと感じるくらい個人的なことも話していたが、フリッピー曰く、イチちゃんには聞く権利があるから、と。
「もう一人の僕に殺された人は、しばらく僕と顔を合わさないようにするから……僕を訪ねてくる人は結構珍しいんだ」
なんでもないようにフリッピーは言っていた。
「それで、もう一人の僕……『アイツ』は僕が恐怖を感じると覚醒する……っていうか、爆発とか、血、とかナイフとか、そういうのを見ると昔を思い出して、怖くなって『僕』は気絶しちゃうみたいで、そしたらアイツと交代しちゃうんだ」
「昨日は自動車のバックファイア……?」
「うん──気がついたらいつも、自分の手が血に染まってる。昨日は、……君を殺した後に目が覚めたよ」
そう言うとフリッピーは立ち上がった。そして自分の腰に手をやると、がたんと何かをテーブルに置いた。クッキーの皿とコップは脇によけてある。
それは、
「昨日のナイフ」
「うん」
フリッピーの目はまだ緑で。
ナイフは駄目だといっていたけど、見るだけなら大丈夫なのか。それとも、自分で持っているからかもしれない。
「……ごめんなさい、僕は、イチちゃんを殺したかったわけじゃない。でも、『僕』が殺した。──怒ってるよね、図々しい事を言ってるのは分かってるんだ、でも、でも僕は許されたいと思ってしまう。やった事は許されないと思う、でも僕がここに居る事を……話しかけたり、することを赦されたいと思って、しまって。皆は優しいからそれを受け入れてくれるけど、でも、自己満足なのも分かってるけど、謝るだけで済まされるべきでもないと思ってしまう」
見えない掌に小突かれたように頭が揺れる。
その気持ちはオレには分らない。
「だから──イチちゃん、もしも怒っているならどうか僕の事を
そのとんでもない提案を否定し損ねてしまった。
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