刺殺
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「イチちゃんはいつこの街に越してきたの?」
「ここに来たのは一ヶ月前。フレイキーと会ったのは今日」
「へぇ、会って一日でフレイキーがここまで打ち解けるなんて珍しいね」
「……っうん!」
そうなのか。
フリッピーは力いっぱい頷くフレイキーを見てやわらかく笑んだ。紙袋を持っていなかったらまた頭を撫でたりしそうだ。むしろ、オレが持とうかと言いそうになるくらい。言えば良いだろうか。
『街に慣れてないなら、明るいうちに道を覚えた方がいいよ』というフリッピーの助言の元に、オレとフレイキーと、フリッピーは公園からオレの家を辿る道を歩いていた。
フリッピーなんかは買い物帰りにもかかわらず、二人ともオレを家まで送ってくれるらしい。
往路より一人が増えた帰り道は、何だか……フリッピーの声は大きい方ではないから、そんな筈は無いのに随分と賑やかになったような、ふわふわした気分になり少し歩調が上がってしまう。フレイキーは一生懸命、オレのことをフリッピーに話し、フリッピーのことをオレに話した。オレはそれを黙って聞いて、フリッピーも穏やかな顔で聞いていた。
「何か困った事があったら、言ってね」
オレがここに来る前のことを覚えていないと言えば、フリッピーはそう微笑んだ。
そうやって平和に、オレの家まで辿り着くものだとばかり思っていたのだが。
──オレが二人の前を歩いていたとき、自動車のバックファイアが鳴り響いた。
「フレ……?」
結構な音量だったのでフレイキーは驚いたんじゃないかなああフリッピーがいるから大丈夫なのかなんて、そんな考えは吹き飛んでしまった。
振り向いた瞬間、目の前で赤が破裂した。
同時に飛んできた『何か』を咄嗟に受け止めると、それは明らかに人の、肘から上の手で、その向こう側に、右腕が不自然に短い赤毛の子供が胸から銀色の刃を生やしていた。
「…………!」
フレイキーの、口から鮮血が溢れる。妙に赤い。真っ赤だと思っていたかっこいい髪よりずっとずっと赤い。
口の端に、ごぽりと血泡が噴いた……友達が明らかに死にゆく寸前だというのに、オレは何を冷静に観察しているんだろう。
どうしたらいいどうするべきだ。
考える間もなく、薄い体へ刃が引っ込んだ。一瞬、その胸に見えた縦長の穴から止め処なく溢れ出す赤。
反射的に後ずさる。フレイキーの腕を後生大事そうに抱えたままだが、大事でないわけでもないと思ってそのままにした。
小さな体はずるずると赤に染まった地面に崩れ落ちていく。
その後ろに現れるのは、
「ふり、っぴー……」
今、この場にいるのは三人で、殺されたのはフレイキーで。次に殺されるのはどう考えてもオレで、そうすると恐ろしく無骨なナイフを持って立っているのは、軍服を血飛沫で濡らしているのは、口角を鋭く上げた緑髪の男は、一人しかいない筈なのだが、
「じゃない、な」
違う人だよね。
自分でも驚くほど淡々と言葉が滑り出た。
その血濡れの軍人は微かに身動ぎをしただけだったが、恐らくオレは間違えていない。この手の直感が本当に良く当たる訳をオレは知らないが。
明らかに顔つきが違ったし、何より。
「へぇえ、分かんのか」
──目が違う。
オレは気を付けるべき『髪の毛が緑色の人』が誰だったのかを知った。
【end】
「イチちゃんはいつこの街に越してきたの?」
「ここに来たのは一ヶ月前。フレイキーと会ったのは今日」
「へぇ、会って一日でフレイキーがここまで打ち解けるなんて珍しいね」
「……っうん!」
そうなのか。
フリッピーは力いっぱい頷くフレイキーを見てやわらかく笑んだ。紙袋を持っていなかったらまた頭を撫でたりしそうだ。むしろ、オレが持とうかと言いそうになるくらい。言えば良いだろうか。
『街に慣れてないなら、明るいうちに道を覚えた方がいいよ』というフリッピーの助言の元に、オレとフレイキーと、フリッピーは公園からオレの家を辿る道を歩いていた。
フリッピーなんかは買い物帰りにもかかわらず、二人ともオレを家まで送ってくれるらしい。
往路より一人が増えた帰り道は、何だか……フリッピーの声は大きい方ではないから、そんな筈は無いのに随分と賑やかになったような、ふわふわした気分になり少し歩調が上がってしまう。フレイキーは一生懸命、オレのことをフリッピーに話し、フリッピーのことをオレに話した。オレはそれを黙って聞いて、フリッピーも穏やかな顔で聞いていた。
「何か困った事があったら、言ってね」
オレがここに来る前のことを覚えていないと言えば、フリッピーはそう微笑んだ。
そうやって平和に、オレの家まで辿り着くものだとばかり思っていたのだが。
──オレが二人の前を歩いていたとき、自動車のバックファイアが鳴り響いた。
「フレ……?」
結構な音量だったのでフレイキーは驚いたんじゃないかなああフリッピーがいるから大丈夫なのかなんて、そんな考えは吹き飛んでしまった。
振り向いた瞬間、目の前で赤が破裂した。
同時に飛んできた『何か』を咄嗟に受け止めると、それは明らかに人の、肘から上の手で、その向こう側に、右腕が不自然に短い赤毛の子供が胸から銀色の刃を生やしていた。
「…………!」
フレイキーの、口から鮮血が溢れる。妙に赤い。真っ赤だと思っていたかっこいい髪よりずっとずっと赤い。
口の端に、ごぽりと血泡が噴いた……友達が明らかに死にゆく寸前だというのに、オレは何を冷静に観察しているんだろう。
どうしたらいいどうするべきだ。
考える間もなく、薄い体へ刃が引っ込んだ。一瞬、その胸に見えた縦長の穴から止め処なく溢れ出す赤。
反射的に後ずさる。フレイキーの腕を後生大事そうに抱えたままだが、大事でないわけでもないと思ってそのままにした。
小さな体はずるずると赤に染まった地面に崩れ落ちていく。
その後ろに現れるのは、
「ふり、っぴー……」
今、この場にいるのは三人で、殺されたのはフレイキーで。次に殺されるのはどう考えてもオレで、そうすると恐ろしく無骨なナイフを持って立っているのは、軍服を血飛沫で濡らしているのは、口角を鋭く上げた緑髪の男は、一人しかいない筈なのだが、
「じゃない、な」
違う人だよね。
自分でも驚くほど淡々と言葉が滑り出た。
その血濡れの軍人は微かに身動ぎをしただけだったが、恐らくオレは間違えていない。この手の直感が本当に良く当たる訳をオレは知らないが。
明らかに顔つきが違ったし、何より。
「へぇえ、分かんのか」
──目が違う。
オレは気を付けるべき『髪の毛が緑色の人』が誰だったのかを知った。
【end】
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