サガ50題。
父親と母親の死の真相に、アレクセイと卵型のクヴェルが関わっていると確信したウィルは、単身アレクセイ一味に乗り込もうと決心した……が、先程、叔母のニーナに釘を刺されてしまった。
「……どうしよう」
ウィルは悩んだ。もし、その仲間を失うことになってしまったら……そう考えると誰とも一緒に組むことができなかった。
「……私が一緒に行くわ!」
ウィルの思考を遮ったのは、女性ヴィジランツのコーデリアだった。
「コーディ!?」
「お前、本気か?」
「……やめておけ」
「私は誰でも構わないよ、ウィル」
その唐突な申し出にウィルはすっ頓狂な声をあげ、ナルセスは呆れた声を出し、タイラーはボソリと呟き、唯一ニーナだけは平然としていた。
「私、ウィルの役に立ちたいの!!だから…駄目、かな……?」
「コーディ……」
コーデリアは必死だった。震える唇を噛み締めて、ウィルに対してはいつもは背けてしまう顔を前に向けて、大きな瞳でウィルをしっかりと見据えていた。
――大好きなウィルと一緒にいたい。彼の役に立ちたい。
コーデリアの真剣な眼差しに、ウィルは戸惑っていた。……本当に、彼女を潜入させてもいいのだろうか、と。
「……で、どうするんだい、ウィル?」
ニーナの声にハッと現実に引き戻されるウィル。暫し瞳を伏せてから、眼前の自分と同い年の少女を見つめ返した。そして、一呼吸置いてから口を開く。
「……コーディ、よろしく頼むよ」
「!! 本当に? 私で良いの?」
コーデリアは信じられないといった表情でウィルを見つめる。そんな彼女を見てウィルは微笑み返した。
「もちろん。あんなに頼み込まれちゃ無下に断れないよ」
「…全く、小娘も小娘なら小僧も小僧か」
再び呆れた風にナルセスは言う。本当は一緒に行きたかったのかも知れない。
「気を付けろよ」
ぶっきらぼうな言い方だけど、心配してくれるタイラー。
「ウィル、コーディ。…死ぬんじゃないよ」
二人の肩を抱きながら優しく、そして真剣に言うニーナ。
「皆…心配してくれてありがとう」
「ウィルの事は私に任せておいて!」
少し照れながら言うウィルに対し、堂々と言うコーデリア。その言い方に少々引っ掛かったウィルはコーデリアに反論する。
「コーディ、それ、僕のセリ」
「あら? だって私はディガーを守るヴィジランツだもの。当然でしょ?」
だが、言葉を途中で遮られ笑顔で言われてしまい、ウィルは「う、うん」と押し切られる形で頷くことしかできなかった。
「それじゃ、早く行きましょう。ウィル」
「そうだね。行こうか、コーディ」
そして、二人は手を握り歩き始めた。
「まったく。本当に世話の焼けるガキ共だ」
「あれでいいんじゃないのか?」
「ふふっ、青春だねぇ……若い頃の私と旦那をみているようだよ」
足早に進む若者二人の後ろから、大人三人がゆっくり歩いていく。
「ねえ、ウィル」
「どうしたんだい? コーディ」
これまで並んで歩いてきた二人だったが、コーデリアが急に立ち止まった。それに合わせてウィルも歩みを止める。
「あ、あのね。この仕事が終ったら、あなたに伝えたいことがあるの……良いかしら?」
「うん、構わないけど……でも、どうして今じゃないんだい?」
コーディの「この仕事が終ったら」という言葉が気になり、ウィルは笑顔で聞いてみた。
「そ、それは……えっと……た、楽しみは、最後まで取っておくって言うじゃない!もうっ!デリカシーがないんだからっ!!」
そう言うなりコーデリアは一人で走っていってしまった。
「あっ……コーディ! 待ってってば~!!」
慌てて追い掛けるウィルだが、コーデリアは既に豆粒くらいの大きさにしか見えないほど遠くに行ってしまっていた。
「……普通、アレで気付かないか?」
「それは……ウィルはこの手の話には鈍感そうだから、としか言いようがないが……」
「アレくらいが丁度良いんだよ。あの二人にとって、ね」
若い二人の後ろには、相も変わらず優しく見守る大人三人がそこにいた。
「コーディ、足、早すぎる……」
「ご、ごめんなさい、ウィル。私ってばつい……」
コーデリアに追い付くために必死で走ってきたウィルは息も絶え絶えだった。
「ううん、気にしなくて良いよ、コーディ。それに、早くこの仕事を終らせてコーディの話を聞きたいし」
「! ……うん、私も早くウィルに伝えたい!」
そうして、二人は互いに見つめ合いどちらからともなく再び放した手を握り、同じ歩幅でゆっくりと歩き出した。
――しかし、運命の歯車は戦いに赴く少女のそれとは違った方向へと動き出していた。
「……どうしよう」
ウィルは悩んだ。もし、その仲間を失うことになってしまったら……そう考えると誰とも一緒に組むことができなかった。
「……私が一緒に行くわ!」
ウィルの思考を遮ったのは、女性ヴィジランツのコーデリアだった。
「コーディ!?」
「お前、本気か?」
「……やめておけ」
「私は誰でも構わないよ、ウィル」
その唐突な申し出にウィルはすっ頓狂な声をあげ、ナルセスは呆れた声を出し、タイラーはボソリと呟き、唯一ニーナだけは平然としていた。
「私、ウィルの役に立ちたいの!!だから…駄目、かな……?」
「コーディ……」
コーデリアは必死だった。震える唇を噛み締めて、ウィルに対してはいつもは背けてしまう顔を前に向けて、大きな瞳でウィルをしっかりと見据えていた。
――大好きなウィルと一緒にいたい。彼の役に立ちたい。
コーデリアの真剣な眼差しに、ウィルは戸惑っていた。……本当に、彼女を潜入させてもいいのだろうか、と。
「……で、どうするんだい、ウィル?」
ニーナの声にハッと現実に引き戻されるウィル。暫し瞳を伏せてから、眼前の自分と同い年の少女を見つめ返した。そして、一呼吸置いてから口を開く。
「……コーディ、よろしく頼むよ」
「!! 本当に? 私で良いの?」
コーデリアは信じられないといった表情でウィルを見つめる。そんな彼女を見てウィルは微笑み返した。
「もちろん。あんなに頼み込まれちゃ無下に断れないよ」
「…全く、小娘も小娘なら小僧も小僧か」
再び呆れた風にナルセスは言う。本当は一緒に行きたかったのかも知れない。
「気を付けろよ」
ぶっきらぼうな言い方だけど、心配してくれるタイラー。
「ウィル、コーディ。…死ぬんじゃないよ」
二人の肩を抱きながら優しく、そして真剣に言うニーナ。
「皆…心配してくれてありがとう」
「ウィルの事は私に任せておいて!」
少し照れながら言うウィルに対し、堂々と言うコーデリア。その言い方に少々引っ掛かったウィルはコーデリアに反論する。
「コーディ、それ、僕のセリ」
「あら? だって私はディガーを守るヴィジランツだもの。当然でしょ?」
だが、言葉を途中で遮られ笑顔で言われてしまい、ウィルは「う、うん」と押し切られる形で頷くことしかできなかった。
「それじゃ、早く行きましょう。ウィル」
「そうだね。行こうか、コーディ」
そして、二人は手を握り歩き始めた。
「まったく。本当に世話の焼けるガキ共だ」
「あれでいいんじゃないのか?」
「ふふっ、青春だねぇ……若い頃の私と旦那をみているようだよ」
足早に進む若者二人の後ろから、大人三人がゆっくり歩いていく。
「ねえ、ウィル」
「どうしたんだい? コーディ」
これまで並んで歩いてきた二人だったが、コーデリアが急に立ち止まった。それに合わせてウィルも歩みを止める。
「あ、あのね。この仕事が終ったら、あなたに伝えたいことがあるの……良いかしら?」
「うん、構わないけど……でも、どうして今じゃないんだい?」
コーディの「この仕事が終ったら」という言葉が気になり、ウィルは笑顔で聞いてみた。
「そ、それは……えっと……た、楽しみは、最後まで取っておくって言うじゃない!もうっ!デリカシーがないんだからっ!!」
そう言うなりコーデリアは一人で走っていってしまった。
「あっ……コーディ! 待ってってば~!!」
慌てて追い掛けるウィルだが、コーデリアは既に豆粒くらいの大きさにしか見えないほど遠くに行ってしまっていた。
「……普通、アレで気付かないか?」
「それは……ウィルはこの手の話には鈍感そうだから、としか言いようがないが……」
「アレくらいが丁度良いんだよ。あの二人にとって、ね」
若い二人の後ろには、相も変わらず優しく見守る大人三人がそこにいた。
「コーディ、足、早すぎる……」
「ご、ごめんなさい、ウィル。私ってばつい……」
コーデリアに追い付くために必死で走ってきたウィルは息も絶え絶えだった。
「ううん、気にしなくて良いよ、コーディ。それに、早くこの仕事を終らせてコーディの話を聞きたいし」
「! ……うん、私も早くウィルに伝えたい!」
そうして、二人は互いに見つめ合いどちらからともなく再び放した手を握り、同じ歩幅でゆっくりと歩き出した。
――しかし、運命の歯車は戦いに赴く少女のそれとは違った方向へと動き出していた。