ロマサガ・ミンサガ
【ミンサガ】こんな吹雪なら怖くない!
「この盗人共が!正義の刃、受けてみよ!!」
そう言ってガラハドのおっさんは俺たちにアイスソードを振りかざしてきた。
うーん、俺としては事を穏便に運びたかったんだがなー。なんせパーティのリーダーたるグレイが「力ずくでも」と言ったばっかりにこんな羽目になっちまった。あーあ、純粋培養されたお坊っちゃんのアルベルトと、ガレサステップしか知らなかった田舎娘のアイシャの顔がひきつってるじゃねーか。少しはコイツらのことも考えてやれよ、と俺は一人ごちた。
しかし言ってしまった言葉を今さら取り消すことはできない。相手は殺る気満々だし。仕方ない、と思いつつ俺はレイピアを構えるのだった。
「二度と動けぬよう、その身を凍りつかせてくれよう! 吹雪!」
しかし悲しきかな、相手の方が動きが早かった。うわー、どうしよう。俺、素早さには自信あったのに。
うーん流石はフレイムタイラントが所望する剣といったところか。そりゃ手元に置いておきたくなるってもんだよな。
そして大変残念な事に俺たち四人、術に対する防御はてんでないと言っていい。なんせ俺らは現在進行形で貧乏街道まっしぐらなのだから。金さえあればアイスソードなどフレイムタイラントから言われた時点で買っていただろうし。
あーあ、こんな薄っぺらな防具じゃ耐えられないだろーなー。あー、死ぬのかやだなーと思いつつレイピアを逆手に構えて顔の前に持ってくる。ちらりと横を見ればアイシャは目に涙を浮かべながら愛用の杖をギュッと握り締め、アルベルトは茫然自失状態らしく、ぼーっと突っ立っていた。前にいるグレイの顔は見えないが、刀を構えているあたりやる気らしい。おい、打開策あるなら教えやがれ無口男。
そして否応なしに術が発動する。あーあ、ディスティニィストーンを手に入れる俺の夢はここで終わっちまうのか、と襲い来る攻撃にそっと目を閉じた。
――コツン。
「いてっ……ってあれ、生きてる」
いつぞやのバルハラントで体験した猛吹雪のような痛烈な攻撃を想定して身構えていたが一向に来なかった。それより、今、顔に何かぶつかったような。
恐る恐る目を開ければ目の前にはポカンと口を開けたガラハド、そして隣を見れば目をぱちくりしているアイシャとアルベルトがいる。そして俺は足元を見た。
「なんだこりゃ?」
俺は思わす摘まんで拾い上げた。それは例えるならアイスソードをそのまま小さくしたような物だった。――そして、溶けていた。
更に、それは次々とアイスソード本体から放出されており、こちらへ向かって飛んできていた。俺はヒラリと持ち前の素早さでかわすと、それを手に取ってみた。
太陽に透かせばまるで宝石のようにキラキラと輝き、そしてつぅー、と一滴、雫がこぼれ落ちた。俺はそれがあまりにも綺麗だったから――
「ジャミル!?」
「ジャミルさん!?」
ぺろり、と舐めていた。
「あ、美味い」
「……欲しければガラハドに言えばいい」
「ってグレイ! アンタ一体いくつ食ってんだ!?」
「……」
見ればグレイは飛来してくる小さなアイスソードを左手で器用に受け止め、それをこれまた器用に右手に渡し、無言で食べていた。奴の足元には食べ終わったアイスソードの残骸が幾つも散らばっていた。……おい、どんだけ食ってんだよ。
「あ、ホントだおいしー!! ねぇ、アルも食べてみなよ!」
「ええっ!? アイシャさんまでむぐっ……あ、美味しい……」
「でしょー! 食べなきゃ勿体ないよ!! ね、ガラハドさん、もっとちょうだい!!」
横を見れば俺とグレイに触発されたのかアイシャが食べ始め、そのアイシャが半ば無理矢理アルベルトに食べさせていた。アイシャはよほど食べられるアイスソードが気に入ったようで、ガラハドに突撃してねだり始めた。そこでようやくガラハドも意識を取り戻したようである。うん、アイスソードうめぇ。
「こ、こら! お前たち得体の知れない物を食うんじゃない!! …ってグレイ、お前もかー!! ああもう、ペッしなさい! ペッー!!」
「えー、だって美味しいんだもん。ペッなんて勿体ないよ!」
「ええ、とても美味しいです!!」
「……」
「アイスソードうめぇ」
キラキラとアイスソードに負けないくらい目を輝かせ更に所望するアイシャ、おっかなびっくり食べるアルベルト、そして無言で小動物の様に勢いよく貪るグレイ、ついでに呑気に食う俺。ガラハドは慌てて止めようとするがそれは最早無理な話だった。なんせみんなアイスソードの美味さに魅了状態なのだから。
「わたしの求めたアイスソードが、ただの氷菓子を作り出す代物だったなんて……」
穏やかな午後の昼下がり、突然殺伐とした空気に包まれたアルツールの路地裏は、ガラハドの失意と引き換えに長閑な町の光景に戻っていたのだった。
【終】
「この盗人共が!正義の刃、受けてみよ!!」
そう言ってガラハドのおっさんは俺たちにアイスソードを振りかざしてきた。
うーん、俺としては事を穏便に運びたかったんだがなー。なんせパーティのリーダーたるグレイが「力ずくでも」と言ったばっかりにこんな羽目になっちまった。あーあ、純粋培養されたお坊っちゃんのアルベルトと、ガレサステップしか知らなかった田舎娘のアイシャの顔がひきつってるじゃねーか。少しはコイツらのことも考えてやれよ、と俺は一人ごちた。
しかし言ってしまった言葉を今さら取り消すことはできない。相手は殺る気満々だし。仕方ない、と思いつつ俺はレイピアを構えるのだった。
「二度と動けぬよう、その身を凍りつかせてくれよう! 吹雪!」
しかし悲しきかな、相手の方が動きが早かった。うわー、どうしよう。俺、素早さには自信あったのに。
うーん流石はフレイムタイラントが所望する剣といったところか。そりゃ手元に置いておきたくなるってもんだよな。
そして大変残念な事に俺たち四人、術に対する防御はてんでないと言っていい。なんせ俺らは現在進行形で貧乏街道まっしぐらなのだから。金さえあればアイスソードなどフレイムタイラントから言われた時点で買っていただろうし。
あーあ、こんな薄っぺらな防具じゃ耐えられないだろーなー。あー、死ぬのかやだなーと思いつつレイピアを逆手に構えて顔の前に持ってくる。ちらりと横を見ればアイシャは目に涙を浮かべながら愛用の杖をギュッと握り締め、アルベルトは茫然自失状態らしく、ぼーっと突っ立っていた。前にいるグレイの顔は見えないが、刀を構えているあたりやる気らしい。おい、打開策あるなら教えやがれ無口男。
そして否応なしに術が発動する。あーあ、ディスティニィストーンを手に入れる俺の夢はここで終わっちまうのか、と襲い来る攻撃にそっと目を閉じた。
――コツン。
「いてっ……ってあれ、生きてる」
いつぞやのバルハラントで体験した猛吹雪のような痛烈な攻撃を想定して身構えていたが一向に来なかった。それより、今、顔に何かぶつかったような。
恐る恐る目を開ければ目の前にはポカンと口を開けたガラハド、そして隣を見れば目をぱちくりしているアイシャとアルベルトがいる。そして俺は足元を見た。
「なんだこりゃ?」
俺は思わす摘まんで拾い上げた。それは例えるならアイスソードをそのまま小さくしたような物だった。――そして、溶けていた。
更に、それは次々とアイスソード本体から放出されており、こちらへ向かって飛んできていた。俺はヒラリと持ち前の素早さでかわすと、それを手に取ってみた。
太陽に透かせばまるで宝石のようにキラキラと輝き、そしてつぅー、と一滴、雫がこぼれ落ちた。俺はそれがあまりにも綺麗だったから――
「ジャミル!?」
「ジャミルさん!?」
ぺろり、と舐めていた。
「あ、美味い」
「……欲しければガラハドに言えばいい」
「ってグレイ! アンタ一体いくつ食ってんだ!?」
「……」
見ればグレイは飛来してくる小さなアイスソードを左手で器用に受け止め、それをこれまた器用に右手に渡し、無言で食べていた。奴の足元には食べ終わったアイスソードの残骸が幾つも散らばっていた。……おい、どんだけ食ってんだよ。
「あ、ホントだおいしー!! ねぇ、アルも食べてみなよ!」
「ええっ!? アイシャさんまでむぐっ……あ、美味しい……」
「でしょー! 食べなきゃ勿体ないよ!! ね、ガラハドさん、もっとちょうだい!!」
横を見れば俺とグレイに触発されたのかアイシャが食べ始め、そのアイシャが半ば無理矢理アルベルトに食べさせていた。アイシャはよほど食べられるアイスソードが気に入ったようで、ガラハドに突撃してねだり始めた。そこでようやくガラハドも意識を取り戻したようである。うん、アイスソードうめぇ。
「こ、こら! お前たち得体の知れない物を食うんじゃない!! …ってグレイ、お前もかー!! ああもう、ペッしなさい! ペッー!!」
「えー、だって美味しいんだもん。ペッなんて勿体ないよ!」
「ええ、とても美味しいです!!」
「……」
「アイスソードうめぇ」
キラキラとアイスソードに負けないくらい目を輝かせ更に所望するアイシャ、おっかなびっくり食べるアルベルト、そして無言で小動物の様に勢いよく貪るグレイ、ついでに呑気に食う俺。ガラハドは慌てて止めようとするがそれは最早無理な話だった。なんせみんなアイスソードの美味さに魅了状態なのだから。
「わたしの求めたアイスソードが、ただの氷菓子を作り出す代物だったなんて……」
穏やかな午後の昼下がり、突然殺伐とした空気に包まれたアルツールの路地裏は、ガラハドの失意と引き換えに長閑な町の光景に戻っていたのだった。
【終】