ロマサガ・ミンサガ

「愛する方たちを守りたい」

 サルーインとの戦いが終わった。あの時戦った仲間とは名残り惜しみながら別れた。アイシャさんはガレサステップへ。ジャミルさんは相棒のダウドさんと一緒に南エスタミルへ。シフはバルハラントへ。そして私、アルベルトは——ナイトハルト殿下とその妻であるディアナ姉さんを守る騎士として、クリスタルパレスにいる。

    ***

 「殿下、姉さん!! お怪我はありませんか!?」
 赤い月も銀の月も見えない夜闇に紛れて、クリスタルパレスに賊が侵入した。警備に当たっていた騎士や兵士が数名、怪我を負うが運良く大事には至らなかった。
「ああ、アルベルトか。私もディアナも大事ないぞ」
「アルベルト、ありがとう。この通り無事だから安心して。でも、相手が一枚上手だったわ。あと少しで捕まえられたのに……」
 姉さんが悔しそうに言うと目を伏せた。殿下はそんな姉さんの手を取り微笑みながら言う。
「なに、次にまた賊が侵入してきたら捕らえればいいことだ」
「そうですわね。このローザリア王国に刃向かった事を後悔させてやりますわ!」
「殿下……姉さん……」
 二人があまりにもいい笑顔で話しているものだから、途端に緊張感が抜けてしまった。流石は武人と名高い殿下である。傷一つ負わずに返り討ちにするのだから。それに、姉さんも相変わらず私よりも勇ましく安心してしまった。流石は薔薇騎士隊の現役団長である。

    ***

 殿下たちへの挨拶の後、私は医務室へと向かった。殿下と妃殿下——ディアナ姉さん付きの騎士たちの怪我の様子を見に行くために。
 私が訪れると、騎士たちが手当てを受けながらも笑顔を見せてくれた。ベッドに伏せているような大きな怪我はないようで、ホッと安堵のため息が溢れる。
「うう、殿下と妃殿下が強すぎて守らせてくれない……」
「あのお二人並みに強くなるとか無理すぎでは……?」
「俺たちいる必要ある?」
 そうして、騎士たちに話しかけると、次々に愚痴を溢していった。うん、守るべき対象の方が強すぎると自分がいる意味ってあるのかと、不安になるのはとても良く分かるから……。
「……気持ちはよく分かるよ……私も、お二人よりも弱いから……でも、私たちが先陣を切って剣を振るい、殿下と妃殿下を守る意味はある。お二人の強さは、あのサルーインが復活する時のような、有事の際にこそ振るわれる剣であるのだと」
「アルベルト殿……」
「お二人の強さに私たちが及ばなくても、それでも悪意から守る剣や盾でありたい。私はそう思うんだ」
「……そうですね、大事な事を失念していました。俺たちはこのローザリア王国を愛しています」
「そしてナイトハルト殿下とディアナ妃殿下は敬愛すべき相手。例え己が弱くても、愛する者を守らないで何が騎士といえましょう」
「アルベルト殿、ありがとうございます。己の信念を忘れるところでした」
「いいえ、私も一瞬同じことを思ってしまったので……これではいけないと思い……」
「あっ……」
 騎士たちが涙を浮かべながらアルベルトの手を握ると、アルベルトは困ったように笑い、一瞬だけ遠い目をした。それを見た騎士たちは「アルベルト殿も苦労してるんだな……」と察し、我らは志を同じくする者であるのだ、とその手を強く握り返したのだった。
【終】

「愛する方たちを守りたい——でも肝心の殿下と妃殿下が強すぎて守らせてくれない」
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