サガエメ
「わあ、あなたもメカなんですね! 私はディーヴァNo.5、通称歌姫です」
「……あんたほんとにメカか?」
「ハイ! 歌って踊れるエンターテイナーメカです!」
デルタベースから脱出後、ボーニーとフォルミナの二人から今いる仲間たちを紹介されていた。よくもまあこんな個性的な面々が集まったものである。その中でも、まるで人間そっくりの外見で作られたメカには驚いた。
そしてなぜだろう。彼女とは初めて会ったはずなのに、彼女のことを知っている気がするのは。己のデータベースにアクセスするが彼女の該当記録は全くない。
メカらしからぬ己の挙動に困惑するが、それを与える当の本人は目の前で歌いながら軽やかに踊ってみせた。歌うことが、踊ることが好きなのだと全身から伝わってくる。無機質なはずの電子音声に感情が乗ればこうも人間らしくなるのか、と驚いた。
「どうでしたか?」
歌と踊りを終えたディーヴァが満面の笑みで彼女が尋ねる。俺は正直、歌にも踊りにも詳しくない。なんせ娯楽などとんと触れたことがないのだから。それでも、俺は彼女の歌を聴いて——
「ああ、最高だった」
「わあ! ありがとうございます! 嬉しい!!」
俺の言葉に見た目は成人した人間の女性なのに、無邪気な子供のようにはしゃぐ彼女。周りの仲間たちからも拍手や称賛の声が上がりその場で華麗にターンしてお辞儀した。
この日のことは絶対忘れてやるものか、と先程のディーヴァの歌と踊りを自分のメモリに何重にもプロテクトをかけて保存したのだった。
***
——いつかさ、お前の歌を聞かせてくれよ。
——いつになるか、分かりません。
——俺もメカだ。いつまででも待っててやる。
——ありがとうございます。
歌を失った歌姫の物語に付き合った彼の、いつかのささやかな記憶。
「果たされた「いつか」の約束」
「……あんたほんとにメカか?」
「ハイ! 歌って踊れるエンターテイナーメカです!」
デルタベースから脱出後、ボーニーとフォルミナの二人から今いる仲間たちを紹介されていた。よくもまあこんな個性的な面々が集まったものである。その中でも、まるで人間そっくりの外見で作られたメカには驚いた。
そしてなぜだろう。彼女とは初めて会ったはずなのに、彼女のことを知っている気がするのは。己のデータベースにアクセスするが彼女の該当記録は全くない。
メカらしからぬ己の挙動に困惑するが、それを与える当の本人は目の前で歌いながら軽やかに踊ってみせた。歌うことが、踊ることが好きなのだと全身から伝わってくる。無機質なはずの電子音声に感情が乗ればこうも人間らしくなるのか、と驚いた。
「どうでしたか?」
歌と踊りを終えたディーヴァが満面の笑みで彼女が尋ねる。俺は正直、歌にも踊りにも詳しくない。なんせ娯楽などとんと触れたことがないのだから。それでも、俺は彼女の歌を聴いて——
「ああ、最高だった」
「わあ! ありがとうございます! 嬉しい!!」
俺の言葉に見た目は成人した人間の女性なのに、無邪気な子供のようにはしゃぐ彼女。周りの仲間たちからも拍手や称賛の声が上がりその場で華麗にターンしてお辞儀した。
この日のことは絶対忘れてやるものか、と先程のディーヴァの歌と踊りを自分のメモリに何重にもプロテクトをかけて保存したのだった。
***
——いつかさ、お前の歌を聞かせてくれよ。
——いつになるか、分かりません。
——俺もメカだ。いつまででも待っててやる。
——ありがとうございます。
歌を失った歌姫の物語に付き合った彼の、いつかのささやかな記憶。
「果たされた「いつか」の約束」
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