サガフロ

【サガフロ】真夏の昼下がりの思い出【レッドとアセルス】

 あまりの暑さに、帰宅途中でちょっと休憩させてもらおうと駄菓子屋さんに寄り道したその時、店先に置いてある丸椅子に見知った人が座っていて、思わず声をかけていた。
「あ、アセルス姉ちゃんじゃん!」
「お、烈人くんじゃん。今帰り?」
「うん。暑いからちょっと休憩させて貰いたくて……」
「あはは、そうだよねえ。今日本当にあっついもんね。お疲れ様」
「アセルス姉ちゃんも帰り?」
「うん。暑すぎるからアイス買っちゃった」
 見ればアセルス姉ちゃんは二つセットのチューブ型のアイスを食べている。俺はといえば思ったことをそのまんま口にしていた。
「いいなー」
「あ、そっか。小学生は買い食い禁止だっけ?」
「うん。でもさあ、こんな暑い中飲まず食わずじゃ死んじゃうって」
「ふふっ、じゃあこれあげる」
「えっ」
 そうして、アセルス姉ちゃんは残ったもう一本を俺へと渡す。びっくりして思わずアイスを姉ちゃんを交互に見てしまった。
「あ、お代は出世払いでいいよ!」
「お金とるのかよー!」
「あはは、冗談だって! でもこんな暑いんだもん。アイス一個くらい誰も文句言わないよ」
「うん。ありがとう、アセルス姉ちゃん」
「ふふ、どういたしまして」
 
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「そっか、あの駄菓子屋さん無くなっちゃったんだ」
「うん。五、六年前くらいかな。店やってたじいちゃんばあちゃんが年齢的に無理だってことで閉店して、今はコンビニになったんだよ」
 アセルス姉ちゃんが久しぶりにシュライクに来ていた。もう一度ちゃんと今のシュライクを見たい、という申し出を受けて、俺と一緒に昔よく行った場所を巡っていたのである。この場所で過ごしてきた俺は、日々の変化を少しずつ受け入れて行くことができたけど、姉ちゃんにとっては昨日から急に世界が変わってしまったようなもので、その変化に戸惑いを隠せないようだった。
「やっぱり十二年は長いね……」
「そうだな……俺が姉ちゃんより年上になっちゃったし」
「いや本当にびっくりしたよ……あんなちっちゃかった烈人くんがこんな大きくなってて。身長いっぱい伸びたんだねえ〜」
 あの頃と変わらず微笑ましい目で見てくる姉ちゃんの姿があまりにも眩しく映るから、なんだかむず痒い気持ちになって俺は気を紛らすように大声を出していた。
「あっ! そうだ姉ちゃんちょっと待っててくれ! 喉乾いたろ!? そこのコンビニで飲み物買ってくるから!!」
「えっ、あっ」
 そうして戸惑う姉ちゃんをよそに俺は一目散にコンビニへと駆け込んだ。そうして、何か適当に飲み物を買おうとして、ふとアイス売り場が目に入って——
「……」
 気づけば、それを手に取って会計を済ませていた。
「もう、烈人くんてば急に走り出すんだから」
「ごめんごめん! さっきの話で急に思い出してさ。……これ、あの時のお礼」
 そうして目の前で二つのアイスをパキッと割って、一つを姉ちゃんに渡す。
「……覚えてて、くれたの?」
姉ちゃんの目が丸く見開かれて、アイスと俺を交互に見る。
「いや、さっき姉ちゃんと話してて思い出したんだ。あ、もっと別のがいいなら買ってくるけど」
「ううん! そんなことないよ! ……烈人くん、ありがとう」
「どういたしまして」
 そうして俺たちはどちらかともなく笑い出す。十二年間できなかったことを埋めるように。
【終】
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