サガフロ

【レッドとアセルス】そして最後の"さようなら"

「烈人、じゃーなー!」
「おう、また明日なー!」
 友だちと別れて、いつもの帰り道を一人で歩いていると少し前に見知った背中が見えたから声をかけていた。
「あっ、アセルス姉ちゃん! 今帰り?」
「お、烈人くん。そうだよー。これから帰って叔母さんの手伝いに行くんだ」
 俺の声に気づいたアセルス姉ちゃんがくるりと振り向く。その動作と見えた笑顔に思わずドキっとしてしまった。だから一瞬、言葉が上手く出てこなくてどもってしまう。
「あっ、あのさ、俺のお母さん赤ちゃん産むんで入院してて、それで近いうちに生まれるんだって!」
「へえ、そうなんだ! おめでとう。そっかー、ついに烈人くんもお兄ちゃんになるんだねえ……」
「うん。でもさ、なんか実感が湧かなくて」
「ふふ、最初はそういうものだよ。きっと赤ちゃんを見ればお兄ちゃんになれるって」
「そうだといいなあ」
「いいなー、きょうだいって。私一人っ子だから羨ましい」
「……あ」
 アセルス姉ちゃんにはお父さんとお母さんがいない。叔母さんとの二人暮らしだ。しまった、姉ちゃんにする話題じゃなかった。黙り込んだ俺を見て姉ちゃんは手を振って申し訳なさそうに口を開いた。
「ってごめんね! なんか烈人くんに気を遣わせちゃって」
「俺こそごめん」
「そんなことないよ! 家族が増えるのはとても素敵なことだもの。……そうだ、赤ちゃんが産まれたら会いに行っても良いかな?」
「! うん! きっとお母さんも喜ぶと思う! ……えっと、それに」
 言いながらふと思ったけれどこれを本当に口に出していいのかとなってつい口を閉じてしまった。急に黙りこくった俺を見てアセルス姉ちゃんはキョトンとしながら俺を見て、おうむ返しをしてくれる。
「それに?」
「お、俺は! アセルス姉ちゃんのこと本当の姉ちゃんみたいに思ってるから!!」
 もうどうにでもなれー! という勢いで俺は思ってたことを叫んでいた。姉ちゃんはポカンとした顔をしていたが、やがて、それは笑みへと変わる。
「……ふっ、ふふっ……烈人くん、ありがとう。私も烈人くんのこと、本当の弟みたいって思ってるよ」
「! あ、ありがと……」
 その笑顔が眩しいと思ったのはきっと夕焼けのせいだと言い聞かせる。そして、他愛ない話をしているうちに、分かれ道へと差し掛かった。
「あ、じゃあまた明日ね、烈人くん!」
「うん。アセルス姉ちゃん、また明日!」
 お互い手を振りながら別れの挨拶を交わしてそれぞれの帰路につく。
 ——この時の俺は知らない。翌朝、アセルス姉ちゃんが事故に巻き込まれて行方不明になることを。

秋桜お題bot@cosmosno
「そして最後の“さようなら”」
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