花に嵐の喩へもあれど

「…ねぇ、二人とも」

庭を見つめながら、子ども達の一人が呟いた。

「なぁに、おにいちゃん?」
「二人はさ、覚えてる?前にここに泊まっていった、占い師さんから聞いた話」

長男坊なのだろうその子が見つめる先には、真っ黒な烏がいる。

「…うん、おぼえてるよ」
「とある男の子が、お友だちに呪いをかけちゃうお話しだよね…」

今でも、はっきりと思い出すことができる。

昔、あるところに一人の少年がいた。その子の母親は時の親王の乳母であり、年も近いことから少年と親王は兄弟の契りを結んでいた。

でも…

「大きくなるにつれて、男の子が親王と会える機会は少なくなっていったんだよね…」

乳母の息子と、いずれは帝の地位に就くもの。どんなに仲が良くても、立場が気安く宮中に出入りさせることを拒んだ。

少年は恐れた。いずれ親王が、己を忘れてしまうことを。

そんな時、少年は出会ったのだ。旅の修験者だという人物に。

「そのしゅげんしゃさんは、おとこのこにいちまいのまっくろなはねを、わたしたんだよね?」
「そ。これを親王の部屋に忍ばせれば、彼は君を忘れないって言ってね」

でもそれは。親王に呪いをかけるための、呪詛の羽根だったのだ。逃れられない、悪夢へと誘うための。

「悪夢の様子は身体に現れて、そして…」
「その話、もっと詳しく聞かせてもらおうか?」
「「「!?」」」

【NEXT→夜来様】
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