花に嵐の喩へもあれど

「「雀パイ!!」」

「こ、これって……」

悟空は唇を噛み締め、悟浄は思い切り顔を歪め、三蔵は…

三蔵は、ただじっとそれを見詰めていた。

悟浄はそっとドアを開け、中を伺った。微かな寝息を感じ取り、ホッと息を吐き部屋の中へと身体を滑り込ませた。

飲ませた薬が珍しく効いているのか、覗き込んだ八戒はびくとも動かず寝息を立てている。

悟浄はゆっくりと寝汗で貼り付く髪を撫でた。

「なんでかなぁ…」

ひょんなことから拾った綺麗なこの男は、見かけと違う陰惨な過去を持ち、その強い意思と脆い精神と併せ持つ稀有な存在としてまわりの者を惹き付ける。

―出かけなきゃ良かった。

夕べ何があったか分からない。が、せめて自分がいれば何か変わっていたかもしれない。

悟空と遊ぶという約束もちゃんと覚えていた。

が、

―辛くて堪んねぇや。

旅に出ればこんな想いは吹っ切れると思っていた。悟空や三蔵との危険に溢れた旅は、八戒との甘くて切ない毎日から解き放たれると思っていたのだが…

同室となれば別だ。だから、そうと決まると街に出る。賭博や適当な女が見つからなければひとり野宿もした。

たとえ自分に気持ちが向いてないとわかっていても、

―離れられねぇよ、もう。

ふと、八戒が寝ている枕と窓の間に本が置いてあるのが気になった。手に取れば、一緒に住んでいる頃からいつも大事そうに抱えている本だった。

なんだか難しい詩みたいなのがずらずら書いてある、およそ自分の知らない島国の本。

パラパラと捲れば…

「なんだ、これ…」

そこには艶々と黒く輝く羽根が挟まれていた。

【NEXT→若宮】
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