歌恋想
「うんめぇえっ!コレ超うめぇえっ!」
「あ、オイ猿!それ俺の春巻きじゃねぇかよ!」
「お前ら飯時ぐらい静かにしろっ!!」
「って三蔵!どさくさに紛れて俺の小籠包食うなよ!!」
いつもの乱闘に三蔵も加わって、一段と賑やかになっている一行のテーブル。
「随分と賑やかだなぁ」
「すみません、五月蝿くて」
料理を運んできた店の人間に、お決まりのように八戒が謝罪を述べた。
「別に気にしねぇよ。夜になってみんな酒が入りゃあこんな感じさ。ハイ、追加分の焼売お待たせ」
人当たりの良い笑顔を浮かべ、その人物は料理を置いた。
紫苑に連れて来られた店は、入って右奥にステージ、左奥にカウンター、そして中央にいくつものテーブルセットが置いてある広々とした店だった。カウンターの方にある棚には多くの酒が並べられており、バーとしても経営していることを告げていた。
「それにしてもごめんね、轟-ゴウ-。手伝わせた上に席用意してもらっちゃって」
「気にすんな、紫苑。俺からしてみれば、この店を一番として連れてきてくれたことに御の字なんだからよ」
「ん?この人、お店のマスターかなんかなのか?」
口の中いっぱいに食べ物を頬張って悟空が尋ねた。
「悟空、口の中に食べ物を入れたまま話すのは行儀が悪いですよ」
「くすっ。そうです、轟はこの店のマスターで、僕の友人なんです」
「よろしく」
そう言って轟は頭に被っていたバンダナを脱いで軽く会釈をした。
その下の髪は、悟浄と全く同じ色をしていた。
「アレ?紫苑じゃん」
不意に女性の声が届いた。
「こんな時間にいるなんて、珍しいこともあるもんねぇ」
紅く長い髪に、スラリと伸びた身長。そこにはモデルと見間違うばかりの女性がいた。
「姉さん、いつの間に…」
「いつの間にって、今さっき来たばっかよ」
「轟のお姉さんの紅華-コウカ-さんです。街中で銃の専門店営んでる方なんですけど、一方で有名な踊り子さんなんです」
轟と紅華が話している横で、紫苑は三蔵達にそう説明した。踊り子であると言われ、確かにその通りであると皆は納得した。
黒いレザーパンツは細い肢体にピッタリとフィットしている。その上にスカートのように巻かれているレザー素材の布にはベルトが通され、
ホルスターには銃が入れてある。上半身を覆うのは、豊満な胸元に巻かれた衣類のみだ。
踊り子とも言える格好だが、一方で戦闘に身を置く人物のような印象さえ受ける。
「ヒュー。超イケてる姉ちゃんじゃねぇか。俺のベッドの中でも踊ってもらうかな~?」
「あら?お兄さん、あたしに興味があるの?」
悟浄の言葉に気付いたらしい。紅い瞳を悟浄に向け、紅華は問い掛けた。
「そりゃもう、かなり」
「ふぅ~ん。遊んであげても良いけど、あたしにコレで勝てたらね」
そう言って紅華が取り出したのは、トランプワンセット。
「へぇ。言っとくけど俺は強いぜ?」
「なら期待してる。轟、カウンター席二つ用意して。それからあたしにブラッディーメアリね。さぁお兄さん、行きましょ?」
「望むところだ」
紅華に連れられ、悟浄はカウンター席へと移動してしまった。
「悟浄、前にもこんなことなかったっけ?」
「似たような事言ってましたよね」
「ふん、くだらん」
三蔵達が話すその横で、紫苑と轟が大きく溜め息を吐いた。
「轟、紅華さんのアレ直したらどう?」
「無理だな。アレはもう直らねえよ」
「流石に言い寄る人達可哀想でしょ?悟浄さんで今週何人目?」
「九人目。もうどうにもならねえよ、マジで…。俺は仕事戻るわ、注文入ったし。皆さん、どうぞごゆっくり」
そう言うと、轟はカウンターの方へと行ってしまった。
「なぁ紫苑、さっきの会話どういう意味?」
「えっ、あぁ…。紅華さん、ナンパとかしてくる男性にはああやってカードの勝負を持ち掛けるんですよ」
悟空の質問に、紫苑は丁寧に答え始めた。
「あの人、この街では負け知らずで有名なんです。今まで紅華さんに言い寄って、カードで勝てた人は一人もいないんです。絶対に負けてしまうのに、紅華さんのペースに乗せられてそれで…」
「何回も何回も挑んでしまうと?」
「はい…。それだけなら良いんですけど、中には本気で紅華さんにハマってしまう人とかいたりして、見てる僕らとしては何だか可哀想に思うんですよね。紅華さんにその気はないから、余計に」
はぁ、と紫苑は溜め息を吐いた。
「相当カード強いんだな、紅華って…」
「カードだけじゃないですよ、悟空さん。博打ならなんでも強くて、博打の神に愛された女と言われるほどですから」
突然、カウンター席の方から声が響いた。
ギャラリー達の間、向かい合って座る紅華と悟浄。
「あたしもお兄さんも4カード。でもあたしはキングでお兄さんはクイーンだから、あたしの勝ちね」
「へっ、まだまだこれからだぜ」
「それじゃあ轟、お願い」
紅華からカードを渡された轟は、それを慣れた動作で手早く切っていく。そして五枚ずつ、紅華と悟浄にカードを配った。
「ん~…じゃあ、あたしは二枚トレードで。お兄さんは?」
「俺は一枚。コレでくれば結構良いぜ」
「へぇ?」
轟にカードを差し出し、代わりのカードを紅華は受け取る。そして悟浄も代わりのカードを受け取った。
「うん、こんなモンかな?」
満足げな表情を浮かべ、紅華はいう。
「じゃあお兄さんからどうぞ?」
「後悔すんなよ?」
ニヤリと笑みを浮かべ、悟浄が明かした手役はハートのストレートフラッシュだ。数は9始まりの13終わりと、後少しでロイヤルストレートという滅多にお目にかかれないモノだ。
「おぉっ!」
「やるじゃん、あのあんちゃん!引きが強いな」
「これは流石の紅華も負けんじゃないか?」
ギャラリーの男性客たちが口々にそんな感想を漏らす。一方の紅華は、明かされた悟浄の手役に俯きながら震えていた。
「さぁ、次はアンタの番だぜ?それとも…明かせないぐらいに大差つけちまったかな?」
依然、紅華は俯いたまま震え手役を明かそうとしない。そして、誰もが悟浄の勝利を確信しかけたその時──。
「プ…あははははっ!」
突如紅華が笑い始めた。
「あはっ、あははははっ!」
相当何かがツボにハマったらしく、紅華の笑いは止まらない。
「あははっ、偶然偶然。私もストレートフラッシュなんだよ」
そして明かされた紅華の手役は、確かにストレートフラッシュだ。だが…
「あぁ、でも、コレってロイヤルストレートフラッシュって言うんだっけ?」
スペードの、10始まりのA終わり。最強の手役だ。
「…マジかよ…」
「というわけで、あたしの勝ちね!」
紅華の言葉にキャアアッという歓声が響く。悟浄を応援していた者の多くが男なら、紅華はその逆だった。
「流石は紅華さんだわ!」
「ホントホント!!私尊敬しちゃう!」
「流石ですわ、紅華お姉様!!」
キャイキャイと女性客達が紅華の周りに集まり、口々に賞賛を述べる。
「みんなありがとな。さてお兄さん、まだあたしと勝負する?」
「ここで引き下がれるかよ。もう一発勝負だ!」
「そうこなくっちゃ!」
「…ああやって、みんな紅華さんのペースに乗せられるんですよ…」
「「「納得」」」
二人の様子を見ながら呟いた紫苑に、三蔵達は頷いた。
「悟浄、大丈夫かな…?」
「放っておけ。ヤツには良い薬になるだろうよ」
懐からマルボロを取り出し、三蔵はそれを銜え火を付けた。
「…マルボロ…」
「どうかしたんですか?」
三蔵のマルボロを見つめ呟く紫苑。その様子は、まるで何かを怖がるようで。そんな紫苑を心配した八戒は、紫苑に声をかけた。
「い、いえ。何でもないです。ただ…思い出したくない事を思い出しそうになっただけですから」
その言葉に引っ掛かりを覚えた三蔵だが、思考を遮るように響き渡った歓声に思索の中断を余儀無くされた。
因みに余談だが、この日悟浄は紅華に一勝することなく終わったという。
[NEXT]
…この話を書いている時に、ゼロサムを衝動買いしました。しかも本家最遊記の新しい女性キャラと、紅華のキャラが微妙に被っている、だと…!?ビビりました、峰倉先生すみません。
次の話は紫苑と悟空、そしてあの方がメインです。
「あ、オイ猿!それ俺の春巻きじゃねぇかよ!」
「お前ら飯時ぐらい静かにしろっ!!」
「って三蔵!どさくさに紛れて俺の小籠包食うなよ!!」
いつもの乱闘に三蔵も加わって、一段と賑やかになっている一行のテーブル。
「随分と賑やかだなぁ」
「すみません、五月蝿くて」
料理を運んできた店の人間に、お決まりのように八戒が謝罪を述べた。
「別に気にしねぇよ。夜になってみんな酒が入りゃあこんな感じさ。ハイ、追加分の焼売お待たせ」
人当たりの良い笑顔を浮かべ、その人物は料理を置いた。
紫苑に連れて来られた店は、入って右奥にステージ、左奥にカウンター、そして中央にいくつものテーブルセットが置いてある広々とした店だった。カウンターの方にある棚には多くの酒が並べられており、バーとしても経営していることを告げていた。
「それにしてもごめんね、轟-ゴウ-。手伝わせた上に席用意してもらっちゃって」
「気にすんな、紫苑。俺からしてみれば、この店を一番として連れてきてくれたことに御の字なんだからよ」
「ん?この人、お店のマスターかなんかなのか?」
口の中いっぱいに食べ物を頬張って悟空が尋ねた。
「悟空、口の中に食べ物を入れたまま話すのは行儀が悪いですよ」
「くすっ。そうです、轟はこの店のマスターで、僕の友人なんです」
「よろしく」
そう言って轟は頭に被っていたバンダナを脱いで軽く会釈をした。
その下の髪は、悟浄と全く同じ色をしていた。
「アレ?紫苑じゃん」
不意に女性の声が届いた。
「こんな時間にいるなんて、珍しいこともあるもんねぇ」
紅く長い髪に、スラリと伸びた身長。そこにはモデルと見間違うばかりの女性がいた。
「姉さん、いつの間に…」
「いつの間にって、今さっき来たばっかよ」
「轟のお姉さんの紅華-コウカ-さんです。街中で銃の専門店営んでる方なんですけど、一方で有名な踊り子さんなんです」
轟と紅華が話している横で、紫苑は三蔵達にそう説明した。踊り子であると言われ、確かにその通りであると皆は納得した。
黒いレザーパンツは細い肢体にピッタリとフィットしている。その上にスカートのように巻かれているレザー素材の布にはベルトが通され、
ホルスターには銃が入れてある。上半身を覆うのは、豊満な胸元に巻かれた衣類のみだ。
踊り子とも言える格好だが、一方で戦闘に身を置く人物のような印象さえ受ける。
「ヒュー。超イケてる姉ちゃんじゃねぇか。俺のベッドの中でも踊ってもらうかな~?」
「あら?お兄さん、あたしに興味があるの?」
悟浄の言葉に気付いたらしい。紅い瞳を悟浄に向け、紅華は問い掛けた。
「そりゃもう、かなり」
「ふぅ~ん。遊んであげても良いけど、あたしにコレで勝てたらね」
そう言って紅華が取り出したのは、トランプワンセット。
「へぇ。言っとくけど俺は強いぜ?」
「なら期待してる。轟、カウンター席二つ用意して。それからあたしにブラッディーメアリね。さぁお兄さん、行きましょ?」
「望むところだ」
紅華に連れられ、悟浄はカウンター席へと移動してしまった。
「悟浄、前にもこんなことなかったっけ?」
「似たような事言ってましたよね」
「ふん、くだらん」
三蔵達が話すその横で、紫苑と轟が大きく溜め息を吐いた。
「轟、紅華さんのアレ直したらどう?」
「無理だな。アレはもう直らねえよ」
「流石に言い寄る人達可哀想でしょ?悟浄さんで今週何人目?」
「九人目。もうどうにもならねえよ、マジで…。俺は仕事戻るわ、注文入ったし。皆さん、どうぞごゆっくり」
そう言うと、轟はカウンターの方へと行ってしまった。
「なぁ紫苑、さっきの会話どういう意味?」
「えっ、あぁ…。紅華さん、ナンパとかしてくる男性にはああやってカードの勝負を持ち掛けるんですよ」
悟空の質問に、紫苑は丁寧に答え始めた。
「あの人、この街では負け知らずで有名なんです。今まで紅華さんに言い寄って、カードで勝てた人は一人もいないんです。絶対に負けてしまうのに、紅華さんのペースに乗せられてそれで…」
「何回も何回も挑んでしまうと?」
「はい…。それだけなら良いんですけど、中には本気で紅華さんにハマってしまう人とかいたりして、見てる僕らとしては何だか可哀想に思うんですよね。紅華さんにその気はないから、余計に」
はぁ、と紫苑は溜め息を吐いた。
「相当カード強いんだな、紅華って…」
「カードだけじゃないですよ、悟空さん。博打ならなんでも強くて、博打の神に愛された女と言われるほどですから」
突然、カウンター席の方から声が響いた。
ギャラリー達の間、向かい合って座る紅華と悟浄。
「あたしもお兄さんも4カード。でもあたしはキングでお兄さんはクイーンだから、あたしの勝ちね」
「へっ、まだまだこれからだぜ」
「それじゃあ轟、お願い」
紅華からカードを渡された轟は、それを慣れた動作で手早く切っていく。そして五枚ずつ、紅華と悟浄にカードを配った。
「ん~…じゃあ、あたしは二枚トレードで。お兄さんは?」
「俺は一枚。コレでくれば結構良いぜ」
「へぇ?」
轟にカードを差し出し、代わりのカードを紅華は受け取る。そして悟浄も代わりのカードを受け取った。
「うん、こんなモンかな?」
満足げな表情を浮かべ、紅華はいう。
「じゃあお兄さんからどうぞ?」
「後悔すんなよ?」
ニヤリと笑みを浮かべ、悟浄が明かした手役はハートのストレートフラッシュだ。数は9始まりの13終わりと、後少しでロイヤルストレートという滅多にお目にかかれないモノだ。
「おぉっ!」
「やるじゃん、あのあんちゃん!引きが強いな」
「これは流石の紅華も負けんじゃないか?」
ギャラリーの男性客たちが口々にそんな感想を漏らす。一方の紅華は、明かされた悟浄の手役に俯きながら震えていた。
「さぁ、次はアンタの番だぜ?それとも…明かせないぐらいに大差つけちまったかな?」
依然、紅華は俯いたまま震え手役を明かそうとしない。そして、誰もが悟浄の勝利を確信しかけたその時──。
「プ…あははははっ!」
突如紅華が笑い始めた。
「あはっ、あははははっ!」
相当何かがツボにハマったらしく、紅華の笑いは止まらない。
「あははっ、偶然偶然。私もストレートフラッシュなんだよ」
そして明かされた紅華の手役は、確かにストレートフラッシュだ。だが…
「あぁ、でも、コレってロイヤルストレートフラッシュって言うんだっけ?」
スペードの、10始まりのA終わり。最強の手役だ。
「…マジかよ…」
「というわけで、あたしの勝ちね!」
紅華の言葉にキャアアッという歓声が響く。悟浄を応援していた者の多くが男なら、紅華はその逆だった。
「流石は紅華さんだわ!」
「ホントホント!!私尊敬しちゃう!」
「流石ですわ、紅華お姉様!!」
キャイキャイと女性客達が紅華の周りに集まり、口々に賞賛を述べる。
「みんなありがとな。さてお兄さん、まだあたしと勝負する?」
「ここで引き下がれるかよ。もう一発勝負だ!」
「そうこなくっちゃ!」
「…ああやって、みんな紅華さんのペースに乗せられるんですよ…」
「「「納得」」」
二人の様子を見ながら呟いた紫苑に、三蔵達は頷いた。
「悟浄、大丈夫かな…?」
「放っておけ。ヤツには良い薬になるだろうよ」
懐からマルボロを取り出し、三蔵はそれを銜え火を付けた。
「…マルボロ…」
「どうかしたんですか?」
三蔵のマルボロを見つめ呟く紫苑。その様子は、まるで何かを怖がるようで。そんな紫苑を心配した八戒は、紫苑に声をかけた。
「い、いえ。何でもないです。ただ…思い出したくない事を思い出しそうになっただけですから」
その言葉に引っ掛かりを覚えた三蔵だが、思考を遮るように響き渡った歓声に思索の中断を余儀無くされた。
因みに余談だが、この日悟浄は紅華に一勝することなく終わったという。
[NEXT]
…この話を書いている時に、ゼロサムを衝動買いしました。しかも本家最遊記の新しい女性キャラと、紅華のキャラが微妙に被っている、だと…!?ビビりました、峰倉先生すみません。
次の話は紫苑と悟空、そしてあの方がメインです。
