最遊記
今日はポカポカ、絶好の日向ぼっこ日和。
「…いい天気ですね…」
誰に言うでもなく、八戒は一人縁側で呟いた。日当たり抜群の縁側は、八戒のお気に入りの場所だ。
その中でも、一番は飼い主様の座ってる座布団の上だ。他の子は煙草臭いから嫌だと言うけど、八戒は飼い主様の匂いのするその座布団が大好きだった。
(ポカポカです~)
誰も見たことないような極上の笑顔を浮かべながら、八戒は座布団の上でまん丸くなっていた。大好きな飼い主様の匂いとお日様の暖かな匂いとが混ざって、八戒は心まで温かくなっていくような幸福を感じていた。
「八戒」
不意に自分を呼ぶ声が聞こえ、八戒は顔を上げた。
「天蓬兄さん!」
「久しぶりですね、八戒。元気にしてましたか?」
ヒラリと、天蓬は軽やかに坪の上から庭へと降り立ち縁側へと登った。
天蓬と八戒は拾われた兄弟だ。物心付いた頃には、既に野良だった。でも優しいとある飼い主様に拾われて、天蓬と八戒は日々を過ごした。でもその飼い主様が亡くなって、互いに今は別の飼い主様の所で暮らしている。それでも暮らしている家が近いから、こうやってどちらかがどちらかの家を訪ねることもある。
「僕は元気にしてましたよ?兄さんは…相変わらずそうですね」
少しだけ乱れた毛並みを見て八戒はそう言った。
八戒の種族は本来綺麗好きだけれども、天蓬にはそんな素振りはない。一応身の回りは綺麗に整えてはいるが、自分自身となると気にもしないようだ。その分、飼い主様が天蓬に念入りにブラッシングしている。
でも、かなりアクティブな天蓬のこと。綺麗にブラッシングしてもすぐに毛並みは乱れてしまう。
「そういえば、八戒は飼い主様に可愛がってもらえてます?昨日まで三日間も留守番だったって、捲簾から聞きましたけど?」
捲簾と言うのは、近所のペットショップの店員だ。動物の言葉が分かるらしく、自分達との会話も成り立つ人だ。天蓬とはある意味で友達同士のような感覚だ。
「留守番くらい平気ですよ。ちゃんとご飯とか用意されてますし。それに悟浄とかも遊びに来てくれますし」
「あぁ、捲簾の弟分の」
「それに飼い主様の先生の光明さんとか、弟さんの悟空も来てくれるんですよ。この前は、悟空とそのお友達ナタク君が一緒に来てくれて。凄く楽しかったです」
そう。飼い主様の知り合いがちょくちょく来てくれるから、八戒としてはあまり寂しくはない。
「へぇ。でも本音はどうなんです?」
「えっ?」
「だから、八戒の本音。飼い主様がしょっちゅうのように留守で、八戒は良いんですか?」
問われて、八戒は俯いた。
「確かに、寂しくはないですよ。みんな僕のこと可愛がってくれますから。…でもやっぱり、飼い主様と居たいです…」
座布団の上で、八戒はさらに丸くなった。
飼い主様と同じ香り。でもどんなに同じ香りをしていようと、どんなにお日様の光で温かくなっていようと、飼い主様の膝の上の温もりと香りには程遠い。
でも悲しいかな。なかなか素直になれない習性故、飼い主様の膝の上になんてあまり乗れない。近付きたいのに、近寄れない。
もっと素直になれれば良いのに…。そう思うとこんな風に、こんな種族に生まれてきたことを恨めしく思う。そしたらきっと、こんな風に思わずに済んだのに…。
「…そんな顔しないでくださいよ」
耳元で、天蓬の声がした。
「まるで僕のせいみたいじゃないですか。そんな悲しそうな顔しないでくださいよ」
ペロペロと、そのまま天蓬は八戒の耳元を舐め始めた。
「にゃっ…!」
突然のことに、八戒は小さく声を上げた。
「に、兄さん…」
「毛繕いしてあげますから、元気出してください。ね?」
「もぅ…そうやれば機嫌が戻ると思って…」
「アレ?違いますか?」
少し意地悪な笑みを浮かべながら、天蓬は八戒を見た。
「あぁ、もう好きにしてください」
口ではそう言うも、八戒は天蓬からされる毛繕いが嫌いではなかった。何てったって、数少ない兄弟同士のスキンシップなのだから。
「じゃあ、好きにさせてもらいますよ」
「んっ…」
始めは耳元、耳の後ろ。それから首筋、背中へと、天蓬は丁寧に八戒へ毛繕いを施していく。それは普段の天蓬からは考えられない、実に細やかな毛繕いだ。
そしてそこから伝わる温かな愛情が、八戒にとって堪らなく幸せで、嬉しくて。
「八戒の毛は何時やっても柔らかいですね。気持ちいいですよ」
毛繕いをしながら、天蓬はそんな言葉を漏らした。
「そう言う兄さんの毛だって、さらさらで柔らかくて、気持ちいいですよ」
届くギリギリまで首を伸ばして、八戒も天蓬の毛を繕っていく。
「機嫌は直りましたか、八戒?」
「そんなのとっくにですよ」
笑顔で答えて、また互いに毛繕いを再開する。昔はこうやって、兄弟でいつも毛繕いをしていた。その様子を、飼い主様はいつもニコニコと見守っていた。
煙草が大好きな人だった。いつも煙草をプカプカと吹かしながら、自分達を撫でてくれた。
最初の飼い主様は優しい人、今の飼い主様も優しい人だ。昔の飼い主様も好きだけど、それ以上に八戒は今の飼い主様が大好きだった。
──この感情の意味に、八戒はまだ気付いてはいないけど…。
「はい、終わりましたよ八戒」
「ん、僕も終わりました」
毛繕いが終わったと同時に、家の引き戸が開く音が響いた。
「ただいま」
「飼い主様!」
八戒が立ち上がると同時、縁側に金髪の青年が姿を現す。八戒の飼い主様だ。
その後ろには同じく金髪の─こっちは背が高く、長髪を束ねた─青年がいた。八戒の飼い主様の兄であり、天蓬の飼い主様だ。
「あっ、やっぱり天蓬ここに居やがったか」
「げっ…!!」
「今日は予防接種受けに行くって、言ったろうが!」
逃げようとした天蓬を手早く捕まえ、そのまま抱え上げる天蓬の飼い主様。
「…兄さん、逃げてきたんですか?」
「当たり前!だって、駅前の動物病院の先生、なんかイヤらしくて嫌いなんですから!!」
八戒の言葉に涙目で答える天蓬。そんな天蓬の言葉に、八戒も同情せざるを得ない。
確かに、駅前の動物病院のニィ先生は八戒も苦手だった。まるで品定めするような目つき、撫でてくる手付きもなんだか気持ち悪くて。
まぁ、でも…
「腕は一流なんですから、ドンマイと言うことで…」
「ひ、ひどいっ!!」
「…金蝉、天蓬うるせぇ…」
「コイツ、駅前の動物病院嫌いなんだよ。まぁ文句あっても連れてくけどな。じゃあまたな三蔵、邪魔したな」
嫌がる飼い猫を連れ、金蝉は家を出て行った。
「ったく…」
ため息を一つ吐き、三蔵は自分の飼い猫の前に座った。
「お前のアニキはなんであんなにうっせぇんだろうな?」
人差し指で喉元を撫でてやれば、ゴロゴロと喉を鳴らす。気持ちよさそうに目を細める様子はとても可愛らしくて。
一旦撫でる手を休めれば、普段は乗ってこない膝の上にぴょこんと乗ってくる。
「どうしたんだよ?今日はよく甘えてくるな」
そういう三蔵の顔には、柔らかな笑みが浮かんでいた。普段は仏頂面だの何だの言われている三蔵だが、自分の前では笑顔になることを飼い猫は知っていた。
座布団を引き寄せ、その上に三蔵は座り直す。
「…いつも留守番させて、悪いな」
撫でながら三蔵は飼い猫に謝った。すると、飼い猫は三蔵を見上げた。深い湖のようなエメラルドの瞳が、三蔵を見つめていた。
「でも、あと少しだからな。そしたら、俺とお前とでどっかに出掛けるか?」
問いかけると、飼い猫は嬉しそうにニャアと鳴いた。
「お前のおかげで、ここまで頑張ってこれたしな。…ありがとうな、八戒」
そう言って三蔵が抱き上げれば、八戒の尾が幸せと言わんばかりに揺れ動いた。
[END]
擬人化ならぬ擬獣化ですか、お姉さん(笑)。にゃんこ天蓬とにゃんこ八戒、書いててスッゴい美味しかったです(^P^)
二匹の最初の飼い主は待覚さんです。それはそれは二匹を可愛がっていました。でもお亡くなりになりまして…。金蝉と三蔵が待覚さんの葬儀で家に訪れた時に、二匹に一目惚れ(!?)しました。コイツらなんか可愛いと。で、天蓬は金蝉の家に、八戒は三蔵の家に引き取られました。ちなみに金蝉の職業は美容師、三蔵の職業は俳優で、光明は金蝉や三蔵が学生だった時の先生であり近所のおじ様(笑)。
三蔵がもう少しと言ってるのは、とある番組の撮影です。某ライナーの出てくるアレです。三蔵的には色々キツかったけど、飼い猫八戒のおかげで今までやって来れたという\(^o^)/もしかしたら続編書くかも…←
「…いい天気ですね…」
誰に言うでもなく、八戒は一人縁側で呟いた。日当たり抜群の縁側は、八戒のお気に入りの場所だ。
その中でも、一番は飼い主様の座ってる座布団の上だ。他の子は煙草臭いから嫌だと言うけど、八戒は飼い主様の匂いのするその座布団が大好きだった。
(ポカポカです~)
誰も見たことないような極上の笑顔を浮かべながら、八戒は座布団の上でまん丸くなっていた。大好きな飼い主様の匂いとお日様の暖かな匂いとが混ざって、八戒は心まで温かくなっていくような幸福を感じていた。
「八戒」
不意に自分を呼ぶ声が聞こえ、八戒は顔を上げた。
「天蓬兄さん!」
「久しぶりですね、八戒。元気にしてましたか?」
ヒラリと、天蓬は軽やかに坪の上から庭へと降り立ち縁側へと登った。
天蓬と八戒は拾われた兄弟だ。物心付いた頃には、既に野良だった。でも優しいとある飼い主様に拾われて、天蓬と八戒は日々を過ごした。でもその飼い主様が亡くなって、互いに今は別の飼い主様の所で暮らしている。それでも暮らしている家が近いから、こうやってどちらかがどちらかの家を訪ねることもある。
「僕は元気にしてましたよ?兄さんは…相変わらずそうですね」
少しだけ乱れた毛並みを見て八戒はそう言った。
八戒の種族は本来綺麗好きだけれども、天蓬にはそんな素振りはない。一応身の回りは綺麗に整えてはいるが、自分自身となると気にもしないようだ。その分、飼い主様が天蓬に念入りにブラッシングしている。
でも、かなりアクティブな天蓬のこと。綺麗にブラッシングしてもすぐに毛並みは乱れてしまう。
「そういえば、八戒は飼い主様に可愛がってもらえてます?昨日まで三日間も留守番だったって、捲簾から聞きましたけど?」
捲簾と言うのは、近所のペットショップの店員だ。動物の言葉が分かるらしく、自分達との会話も成り立つ人だ。天蓬とはある意味で友達同士のような感覚だ。
「留守番くらい平気ですよ。ちゃんとご飯とか用意されてますし。それに悟浄とかも遊びに来てくれますし」
「あぁ、捲簾の弟分の」
「それに飼い主様の先生の光明さんとか、弟さんの悟空も来てくれるんですよ。この前は、悟空とそのお友達ナタク君が一緒に来てくれて。凄く楽しかったです」
そう。飼い主様の知り合いがちょくちょく来てくれるから、八戒としてはあまり寂しくはない。
「へぇ。でも本音はどうなんです?」
「えっ?」
「だから、八戒の本音。飼い主様がしょっちゅうのように留守で、八戒は良いんですか?」
問われて、八戒は俯いた。
「確かに、寂しくはないですよ。みんな僕のこと可愛がってくれますから。…でもやっぱり、飼い主様と居たいです…」
座布団の上で、八戒はさらに丸くなった。
飼い主様と同じ香り。でもどんなに同じ香りをしていようと、どんなにお日様の光で温かくなっていようと、飼い主様の膝の上の温もりと香りには程遠い。
でも悲しいかな。なかなか素直になれない習性故、飼い主様の膝の上になんてあまり乗れない。近付きたいのに、近寄れない。
もっと素直になれれば良いのに…。そう思うとこんな風に、こんな種族に生まれてきたことを恨めしく思う。そしたらきっと、こんな風に思わずに済んだのに…。
「…そんな顔しないでくださいよ」
耳元で、天蓬の声がした。
「まるで僕のせいみたいじゃないですか。そんな悲しそうな顔しないでくださいよ」
ペロペロと、そのまま天蓬は八戒の耳元を舐め始めた。
「にゃっ…!」
突然のことに、八戒は小さく声を上げた。
「に、兄さん…」
「毛繕いしてあげますから、元気出してください。ね?」
「もぅ…そうやれば機嫌が戻ると思って…」
「アレ?違いますか?」
少し意地悪な笑みを浮かべながら、天蓬は八戒を見た。
「あぁ、もう好きにしてください」
口ではそう言うも、八戒は天蓬からされる毛繕いが嫌いではなかった。何てったって、数少ない兄弟同士のスキンシップなのだから。
「じゃあ、好きにさせてもらいますよ」
「んっ…」
始めは耳元、耳の後ろ。それから首筋、背中へと、天蓬は丁寧に八戒へ毛繕いを施していく。それは普段の天蓬からは考えられない、実に細やかな毛繕いだ。
そしてそこから伝わる温かな愛情が、八戒にとって堪らなく幸せで、嬉しくて。
「八戒の毛は何時やっても柔らかいですね。気持ちいいですよ」
毛繕いをしながら、天蓬はそんな言葉を漏らした。
「そう言う兄さんの毛だって、さらさらで柔らかくて、気持ちいいですよ」
届くギリギリまで首を伸ばして、八戒も天蓬の毛を繕っていく。
「機嫌は直りましたか、八戒?」
「そんなのとっくにですよ」
笑顔で答えて、また互いに毛繕いを再開する。昔はこうやって、兄弟でいつも毛繕いをしていた。その様子を、飼い主様はいつもニコニコと見守っていた。
煙草が大好きな人だった。いつも煙草をプカプカと吹かしながら、自分達を撫でてくれた。
最初の飼い主様は優しい人、今の飼い主様も優しい人だ。昔の飼い主様も好きだけど、それ以上に八戒は今の飼い主様が大好きだった。
──この感情の意味に、八戒はまだ気付いてはいないけど…。
「はい、終わりましたよ八戒」
「ん、僕も終わりました」
毛繕いが終わったと同時に、家の引き戸が開く音が響いた。
「ただいま」
「飼い主様!」
八戒が立ち上がると同時、縁側に金髪の青年が姿を現す。八戒の飼い主様だ。
その後ろには同じく金髪の─こっちは背が高く、長髪を束ねた─青年がいた。八戒の飼い主様の兄であり、天蓬の飼い主様だ。
「あっ、やっぱり天蓬ここに居やがったか」
「げっ…!!」
「今日は予防接種受けに行くって、言ったろうが!」
逃げようとした天蓬を手早く捕まえ、そのまま抱え上げる天蓬の飼い主様。
「…兄さん、逃げてきたんですか?」
「当たり前!だって、駅前の動物病院の先生、なんかイヤらしくて嫌いなんですから!!」
八戒の言葉に涙目で答える天蓬。そんな天蓬の言葉に、八戒も同情せざるを得ない。
確かに、駅前の動物病院のニィ先生は八戒も苦手だった。まるで品定めするような目つき、撫でてくる手付きもなんだか気持ち悪くて。
まぁ、でも…
「腕は一流なんですから、ドンマイと言うことで…」
「ひ、ひどいっ!!」
「…金蝉、天蓬うるせぇ…」
「コイツ、駅前の動物病院嫌いなんだよ。まぁ文句あっても連れてくけどな。じゃあまたな三蔵、邪魔したな」
嫌がる飼い猫を連れ、金蝉は家を出て行った。
「ったく…」
ため息を一つ吐き、三蔵は自分の飼い猫の前に座った。
「お前のアニキはなんであんなにうっせぇんだろうな?」
人差し指で喉元を撫でてやれば、ゴロゴロと喉を鳴らす。気持ちよさそうに目を細める様子はとても可愛らしくて。
一旦撫でる手を休めれば、普段は乗ってこない膝の上にぴょこんと乗ってくる。
「どうしたんだよ?今日はよく甘えてくるな」
そういう三蔵の顔には、柔らかな笑みが浮かんでいた。普段は仏頂面だの何だの言われている三蔵だが、自分の前では笑顔になることを飼い猫は知っていた。
座布団を引き寄せ、その上に三蔵は座り直す。
「…いつも留守番させて、悪いな」
撫でながら三蔵は飼い猫に謝った。すると、飼い猫は三蔵を見上げた。深い湖のようなエメラルドの瞳が、三蔵を見つめていた。
「でも、あと少しだからな。そしたら、俺とお前とでどっかに出掛けるか?」
問いかけると、飼い猫は嬉しそうにニャアと鳴いた。
「お前のおかげで、ここまで頑張ってこれたしな。…ありがとうな、八戒」
そう言って三蔵が抱き上げれば、八戒の尾が幸せと言わんばかりに揺れ動いた。
[END]
擬人化ならぬ擬獣化ですか、お姉さん(笑)。にゃんこ天蓬とにゃんこ八戒、書いててスッゴい美味しかったです(^P^)
二匹の最初の飼い主は待覚さんです。それはそれは二匹を可愛がっていました。でもお亡くなりになりまして…。金蝉と三蔵が待覚さんの葬儀で家に訪れた時に、二匹に一目惚れ(!?)しました。コイツらなんか可愛いと。で、天蓬は金蝉の家に、八戒は三蔵の家に引き取られました。ちなみに金蝉の職業は美容師、三蔵の職業は俳優で、光明は金蝉や三蔵が学生だった時の先生であり近所のおじ様(笑)。
三蔵がもう少しと言ってるのは、とある番組の撮影です。某ライナーの出てくるアレです。三蔵的には色々キツかったけど、飼い猫八戒のおかげで今までやって来れたという\(^o^)/もしかしたら続編書くかも…←
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