鬼灯~二藍の刻にひそむ妖~
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その日はとても天気が良く、朝から抜けるような青空が広がっていた。
「いい天気だなぁ~…」
教室の窓際の席。自分に宛行われた席に座って、俺はのんびりと考えていた。今日も一日、平和な日に──
「うわぁぁぁ!また竜尊にイジメられたー!!」
赤い髪をした男子のクラスメートが、そう叫びながら俺に抱きついてきた。
……どうやら、平和な一日にはなりそうもないようだ……。
◇◇◇◇◇
「んで、今日はどうしたんだよ祢々斬?」
前の席に祢々斬を座らせると、俺は祢々斬と向かい合い話を聞くコトにした。
赤い髪に整った顔立ち。俺の親友の祢々斬は、面食いの女子ならほっとくヤツはいないだろうと言う位の容姿をしている。仲間思いでリーダーシップをとれる点、祢々斬の周囲には沢山の奴らが集まっている。
「…竜尊に電車の中でチカンされた…」
ムスッとした顔で、でも言いにくそうに祢々斬は言う。
そんな祢々斬の表情は、俺にとっては堪らなく愛おしかった。
「チカンされたって…。お前が誘うようなマネしたんじゃねぇの?」
心の内を知られないように、俺は祢々斬にそう言ってのけた。
「ね、ねぇから!そんなコトぜってぇねぇから悠斗!!」
俺の言葉に顔を赤くしながら、祢々斬は手を振った。
「本当かよ?」
「本当だって言ってんだろ!?」
「そのわりには顔赤いぜ~?しかも耳の後ろまでな」
俺が指摘すると、祢々斬は慌てたように耳を手で覆った。普段の祢々斬ならば、絶対に見せるコトのない行為だ。
きっとそれほどまでに、俺に心を許しきっているのだろう。…ったく……
(きっと俺の気持ちなんて、知りやしねぇんだろうな…)
俺は祢々斬のコトを愛している。
いつからだったかは覚えてはいないが、少なくとも、祢々斬が竜尊を好きになるその前から、俺は祢々斬を愛していた。
だから俺は、祢々斬が竜尊を好きだと知った時、胸がはちきれんばかりに痛かった。なぜアイツなのだと、祢々斬に問いただしてやりたかった。
『…やっぱり、気持ち悪いよな…。男が男を好きになるなんて…』
そう呟いた祢々斬の声が、今でも耳に残っている。悲しみと自己嫌悪、何よりも思い悩んでいるその苦しみが、祢々斬の呟きを通して伝わってきた。
『そんなコトねぇよ…。好きになっちまったんなら、それは仕方ねぇだろ?誰が誰を好きになるかなんて、そんなの俺達の知ったこっちゃねぇだろうが』
『…じゃあ、俺が先輩を好きになったのも、仕方がねぇってコトか…?』
うっすらと涙の浮かぶ瞳で、捨てられた子猫が道行く人々に縋るような声で、祢々斬は言った。俺はただ、祢々斬のその言葉に頷くことしかできなかった。頷いてやるこそが、その時の俺がしてやれた精一杯だった。
──あれから、もう半年。
祢々斬は、念願叶って竜尊と付き合い始めた。
そして竜尊と何かあると、今日のように俺の元へとやってくる。
竜尊との出来事を話す祢々斬は、万華鏡のようにクルクルと表情を変えてみせる。元々、俺の前だけは色々な表情を見せていたコイツだが、竜尊と付き合うようになってからはさらに沢山の表情を見せてくれるようになった。それはとても嬉しいが、それに竜尊が関わっているとなると、実に複雑な心境だった。
「それで?その後どうしたんだよ?」
「そ、その後って?」
俺の質問の意味がイマイチ分からなかったのか、祢々斬は目を瞬かせながら逆に質問をしてくる。
「だから、電車の中でチカンされたんだろ?駅に着いてから竜尊先輩とはどうしたんだよ?」
すると祢々斬はバツわるそうな顔で「あ~…」と呟いた。
そんな祢々斬の様子から、俺は一体何が起こったのかというのを瞬時に理解した。
「…おいてきたのかよ?」
コクリと一つ、祢々斬は頷いた。
「オイオイ…。いくらなんでも先輩が可哀想だろうが…」
竜尊は優しい一面のその裏に、サディストな一面も持っている。なのにそのくせ、他人よりも心が脆かったりもする。祢々斬のとった行動はきっと、とても心が傷ついただろう。
(チカンする方もワリィけどな)
同情しかけた自分に、俺はそう釘をさした。
「…流石に…置いてきたのはマズかった…かな…?」
しゅんとした面持ちで祢々斬は俺に聞いてくる。
「多分な。あの先輩って、割と脆いところとかあるだろ?今頃、かなりの勢いで反省してんじゃね?」
俺がそういってドアの方を見た時だった。教室の外に誰かがいるのが見えた。
白い長髪を緑の紐で束ねた、長身の男子生徒。紛れもなくアイツだった。
「祢々斬、お客さんが来てるみてぇだぜ」
「客?…って竜尊!?」
祢々斬がガタンと席を立つと、竜尊は少し困ったような笑顔で祢々斬を手招きした。
「行ってこいよ、祢々斬」
「えっ…?」
困惑したような表情で祢々斬が俺を見た。
本音を言えば行かせたくなんてない。でも、コイツの心が竜尊にある以上は、引き止めたって何の意味も持たない。
俺にできるのは、祢々斬の恋を見守ってやること。ただそれだけだ。
「仲直りしてこい」
そういって笑いかけてやると、祢々斬も笑顔になった。
「わかった。行ってくるよ悠斗。話聞いてくれてありがとな」
「あ、祢々斬!」
俺はそういうと、祢々斬にとあるものを投げ渡した。
「湿布…?」
多分、今日はこれから暫くは帰ってこないだろう。それを見越した上で祢々斬に渡したのだ。
「腰が痛くなったら使えよ」
この意味を理解したらしい祢々斬はまた顔を赤くした。
「そ、そうなる前に帰ってくっから!ぜってぇ帰ってくっから!」
そう俺に言うと、竜尊の待つ廊下へと出て行き二人でどこかへ行ってしまった。
「やれやれ…」
そう呟く俺の顔は笑顔だった。
俺の想いは、祢々斬に届くコトはないだろう。それでも祢々斬が、俺を「親友」として心を預けてくれる間は、俺は「親友」で居続けよう。「親友」として、祢々斬の恋を見守っていてやろう。それもまた、一つの愛のカタチだ。でもそこにある想いはきっと、竜尊なんかには負けちゃいない。誰よりも彼よりも、俺の方が祢々斬を想っている。
もう誰もいない廊下に向かって俺は呟いた。
「竜尊なんかより、絶対俺の方がお前を想っているよ祢々斬」
その時、始業を告げる朝のチャイムが、学校中に、響き渡った───。
[終演]
初ドリームがこんなんでいいのか、自分!!ちなみに書いている本人は楽しかったです。もしかしたら続くかも…?
「いい天気だなぁ~…」
教室の窓際の席。自分に宛行われた席に座って、俺はのんびりと考えていた。今日も一日、平和な日に──
「うわぁぁぁ!また竜尊にイジメられたー!!」
赤い髪をした男子のクラスメートが、そう叫びながら俺に抱きついてきた。
……どうやら、平和な一日にはなりそうもないようだ……。
◇◇◇◇◇
「んで、今日はどうしたんだよ祢々斬?」
前の席に祢々斬を座らせると、俺は祢々斬と向かい合い話を聞くコトにした。
赤い髪に整った顔立ち。俺の親友の祢々斬は、面食いの女子ならほっとくヤツはいないだろうと言う位の容姿をしている。仲間思いでリーダーシップをとれる点、祢々斬の周囲には沢山の奴らが集まっている。
「…竜尊に電車の中でチカンされた…」
ムスッとした顔で、でも言いにくそうに祢々斬は言う。
そんな祢々斬の表情は、俺にとっては堪らなく愛おしかった。
「チカンされたって…。お前が誘うようなマネしたんじゃねぇの?」
心の内を知られないように、俺は祢々斬にそう言ってのけた。
「ね、ねぇから!そんなコトぜってぇねぇから悠斗!!」
俺の言葉に顔を赤くしながら、祢々斬は手を振った。
「本当かよ?」
「本当だって言ってんだろ!?」
「そのわりには顔赤いぜ~?しかも耳の後ろまでな」
俺が指摘すると、祢々斬は慌てたように耳を手で覆った。普段の祢々斬ならば、絶対に見せるコトのない行為だ。
きっとそれほどまでに、俺に心を許しきっているのだろう。…ったく……
(きっと俺の気持ちなんて、知りやしねぇんだろうな…)
俺は祢々斬のコトを愛している。
いつからだったかは覚えてはいないが、少なくとも、祢々斬が竜尊を好きになるその前から、俺は祢々斬を愛していた。
だから俺は、祢々斬が竜尊を好きだと知った時、胸がはちきれんばかりに痛かった。なぜアイツなのだと、祢々斬に問いただしてやりたかった。
『…やっぱり、気持ち悪いよな…。男が男を好きになるなんて…』
そう呟いた祢々斬の声が、今でも耳に残っている。悲しみと自己嫌悪、何よりも思い悩んでいるその苦しみが、祢々斬の呟きを通して伝わってきた。
『そんなコトねぇよ…。好きになっちまったんなら、それは仕方ねぇだろ?誰が誰を好きになるかなんて、そんなの俺達の知ったこっちゃねぇだろうが』
『…じゃあ、俺が先輩を好きになったのも、仕方がねぇってコトか…?』
うっすらと涙の浮かぶ瞳で、捨てられた子猫が道行く人々に縋るような声で、祢々斬は言った。俺はただ、祢々斬のその言葉に頷くことしかできなかった。頷いてやるこそが、その時の俺がしてやれた精一杯だった。
──あれから、もう半年。
祢々斬は、念願叶って竜尊と付き合い始めた。
そして竜尊と何かあると、今日のように俺の元へとやってくる。
竜尊との出来事を話す祢々斬は、万華鏡のようにクルクルと表情を変えてみせる。元々、俺の前だけは色々な表情を見せていたコイツだが、竜尊と付き合うようになってからはさらに沢山の表情を見せてくれるようになった。それはとても嬉しいが、それに竜尊が関わっているとなると、実に複雑な心境だった。
「それで?その後どうしたんだよ?」
「そ、その後って?」
俺の質問の意味がイマイチ分からなかったのか、祢々斬は目を瞬かせながら逆に質問をしてくる。
「だから、電車の中でチカンされたんだろ?駅に着いてから竜尊先輩とはどうしたんだよ?」
すると祢々斬はバツわるそうな顔で「あ~…」と呟いた。
そんな祢々斬の様子から、俺は一体何が起こったのかというのを瞬時に理解した。
「…おいてきたのかよ?」
コクリと一つ、祢々斬は頷いた。
「オイオイ…。いくらなんでも先輩が可哀想だろうが…」
竜尊は優しい一面のその裏に、サディストな一面も持っている。なのにそのくせ、他人よりも心が脆かったりもする。祢々斬のとった行動はきっと、とても心が傷ついただろう。
(チカンする方もワリィけどな)
同情しかけた自分に、俺はそう釘をさした。
「…流石に…置いてきたのはマズかった…かな…?」
しゅんとした面持ちで祢々斬は俺に聞いてくる。
「多分な。あの先輩って、割と脆いところとかあるだろ?今頃、かなりの勢いで反省してんじゃね?」
俺がそういってドアの方を見た時だった。教室の外に誰かがいるのが見えた。
白い長髪を緑の紐で束ねた、長身の男子生徒。紛れもなくアイツだった。
「祢々斬、お客さんが来てるみてぇだぜ」
「客?…って竜尊!?」
祢々斬がガタンと席を立つと、竜尊は少し困ったような笑顔で祢々斬を手招きした。
「行ってこいよ、祢々斬」
「えっ…?」
困惑したような表情で祢々斬が俺を見た。
本音を言えば行かせたくなんてない。でも、コイツの心が竜尊にある以上は、引き止めたって何の意味も持たない。
俺にできるのは、祢々斬の恋を見守ってやること。ただそれだけだ。
「仲直りしてこい」
そういって笑いかけてやると、祢々斬も笑顔になった。
「わかった。行ってくるよ悠斗。話聞いてくれてありがとな」
「あ、祢々斬!」
俺はそういうと、祢々斬にとあるものを投げ渡した。
「湿布…?」
多分、今日はこれから暫くは帰ってこないだろう。それを見越した上で祢々斬に渡したのだ。
「腰が痛くなったら使えよ」
この意味を理解したらしい祢々斬はまた顔を赤くした。
「そ、そうなる前に帰ってくっから!ぜってぇ帰ってくっから!」
そう俺に言うと、竜尊の待つ廊下へと出て行き二人でどこかへ行ってしまった。
「やれやれ…」
そう呟く俺の顔は笑顔だった。
俺の想いは、祢々斬に届くコトはないだろう。それでも祢々斬が、俺を「親友」として心を預けてくれる間は、俺は「親友」で居続けよう。「親友」として、祢々斬の恋を見守っていてやろう。それもまた、一つの愛のカタチだ。でもそこにある想いはきっと、竜尊なんかには負けちゃいない。誰よりも彼よりも、俺の方が祢々斬を想っている。
もう誰もいない廊下に向かって俺は呟いた。
「竜尊なんかより、絶対俺の方がお前を想っているよ祢々斬」
その時、始業を告げる朝のチャイムが、学校中に、響き渡った───。
[終演]
初ドリームがこんなんでいいのか、自分!!ちなみに書いている本人は楽しかったです。もしかしたら続くかも…?
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