折原さん家の愉快な日常
「母さんおはよう」
「おはよう、静緒」
「ママとしーちゃん、おはよー」
「臨静もおはよう」
朝のキッチン。朝食がもうすぐ出来るタイミングで静緒と臨静がやってくる。身支度はとうに整っている辺り、今日もいつも通りに起きれたんだろう。
とある休日の日の朝。休日に早く起きてくるのは、大体がこの二人だ。
「パパと雄也お兄ちゃんは?」
「まだ寝てんじゃねぇの?」
臨静の問いに、新聞を取ってきた静緒が答える。
「今日なんか面白いテレビやるかな?」
静緒の手にある新聞を見るなり、臨静は早速テレビの話題を出す。
「そういえば、今日は幽が出てるドラマの再放送があるぜ」
「ホントか、母さん!?」
「絶対録画しなきゃ!!何チャンかなぁ?」
二人仲良く新聞を広げて、テレビ欄を確認している。そんな姿が愛おしくて微笑ましくて、俺を思わず笑みを漏らした。
「朝からご機嫌だね、シズちゃん」
「臨也」
「おはよう、シズちゃん」
チュッとリップ音を立てて、頬にキスをしてくる臨也。
「おまっ!子どものいる前で!!」
「へーきへーき。臨静と静緒はテレビ欄に夢中だし、それに今更でしょ?」
チラッと子ども達に目を向けると、二人はテレビ欄に目を落としていて全くこっちを気にしてはいなかった。
「ね?」
「ったく、お前は…」
臨也からのキスを今度は素直に受け止め、お互いに軽く触れるだけのキスをする。
─ピロリン。
「朝からお熱いね、父さんと母さんは」
ケータイのカメラのシャッター音にハッとして、食卓の方を向けば…
「雄也!?お前いつからいた!?」
「いつって…父さんが母さんに顔近づけたあたりから」
「挨拶ぐらいしろ!!」
「だって、なんとも言えない空気醸し出してたんだから、挨拶しようにも出来なかったんだよ」
ケータイを操作しながら俺の言葉に答える雄也。なんて器用なヤツなんだと俺は思った。やっぱり、雄也は外見に違わず臨也の遺伝子を完璧に受け継いだ子なんだとしみじみ思う。
「ところで雄也…」
「今の写メは父さんのケータイとパソコンにも送っといたから大丈夫だよ」
臨也が全部言い終わる前に雄也がサラリと言ってのける。
「流石は俺の息子!!」
「今すぐ削除しろ、そんな写真!!」
「あー待って。優太と狩沢さんと幽さんにまだ送ってないから」
「送らなくていいから消せ!!」
「あ、三人から一気に返信きた」
「送ったのかよ!!そんでもってみんな返信早すぎんだろ!!」
俺の言葉には耳もくれず、鮮やかな指裁きでメールを打つ雄也。その早さは臨也といい勝負かもしれない…。
「ふぅ…みんな朝からお腹いっぱいだってさ」
「寧ろ凭れてまえ!!もう!!」
「ぜっったいに琥珀さんだよ!!」
「いや、オレは龍華さんだと思うけどな!」
俺が雄也に言ったと同時に、リビングの方から臨静と静緒の軽い口喧嘩が聞こえてきた。
「二人ともどうしたの?」
「あのねパパ、しーちゃんが琥珀さんより龍華さんの方が演技も歌も上手いって言うの!!僕は断然琥珀さんの方が上だと思うけど!!」
「臨静兄ちゃん、「Black Lotus」の龍華さん見てみ?めっちゃ演技上手いからな!?」
二人が言っている琥珀と龍華とは、音楽ユニット「DN winds」を作った男女の双子だ。本業である歌手の他、そのルックスの良さや演技力などを生かし俳優業や声優業も行っている、オールマイティーな双子だ。幽や聖辺ルリといった人達との共演も多く、親交もある。
まぁとある理由から、俺も個人的に付き合いがあるけども…それはまた別の話だ。
「だったら琥珀さんの演技だって負けてないよ!!第二部の幽さんとの絡みが………ひゃあぁあぁあっ!!」
そのシーンを思い出してしまったらしい臨静は、顔を真っ赤にしながらその場に座り込んでしまった。…臨静のこういう所は、明らかに俺の遺伝だ。
「なぁ、臨静兄ちゃん…なんで敢えてその…絡みのシーンをチョイスしたの…?」
「だって…「Black Lotus」で一番印象に残ってたの、そこだったんだもん…」
「なんか…うん…ごめん…」
静緒が臨静の頭をよしよしと撫でている。これじゃあどっちが年上か分からねえ…。
「とりあえず一件落着かな?」
「そう言えば雄也はどっち派なの?」
臨也の問いに雄也はうーんと唸った。
「そうだなぁ…歌なら龍華さん、ダンスなら琥珀さん、演技は両方かな?」
「えっ?なにそのチョイス?」
「だって、龍華さんは高音域も低音域も、男声も女声も丁寧で凄く綺麗だし。琥珀さんのダンスはピッシリしてるかと思ったら柔らかい妖艶な感じになるし。演技に関しては二人とも幅が広過ぎて神ってるし」
「どんだけ観察してるのさ!?」
「観察しちゃうんだから仕方がないじゃないか」
さも当然というように雄也は言ってのける。ま、臨也の遺伝だから仕方ないのかもしれねぇけど…。
「みんなそれぐらいにして。朝ご飯出来たから手伝え」
「朝ご飯!!」
臨静の顔がパァッと輝く。その様子に俺はおっと思う。
「臨静、お腹が空いて起きたのか?」
「だって、昨日の夜ご飯パパのせいで食べ損ねたんだもん!!」
「じゃあお腹空くわな。遅くなってゴメンな、朝ご飯」
「ったく、父さんも大人げねぇよな。臨静兄ちゃんのデートの邪魔して、ワザと門限破らせんだから」
戸棚から茶碗を取り出しながら、呆れ声で静緒が言う。
そう。昨日の夜、臨也は放課後デートに出掛けていた臨静の邪魔をし、門限を守らせなかった。この家では門限を守れなかったら夕飯抜きが暗黙のルールのため、臨静は好物のオムライスを食べ損ねていた。
「やだな、そんな人聞きの悪い。第一昨日邪魔してたのは雄也だよ」
「やるように言ってきたのは父さんじゃないか」
「それを一つ返事で受けたのは雄也でしょ?違う?」
「やらなかったら仕事場に出入り禁止とか言うからじゃないか。そんなことされたら、六臂さんと月さんに会えないじゃんか」
罪の擦り付けあいとか、なんて嘆かわしい…。
「ともかく、二人とも同罪だと僕は思う!」
「まぁ共犯だしな。オレも二人の同罪に一票」
「ちょっ、臨静も静緒もヒドくない!?俺は父さんに唆されて…!!」
「俺のせいにするつもりなの雄也!?シズちゃんどう思う!?」
どう思うと聞かれても、俺が導き出せる答えは一つだけだ。
「臨也も雄也も同罪」
「ちょっ、シズちゃん!?」
キッパリと言い放つと臨也は慌てるような素振りを見せる。一方の雄也は…
「まぁ…うん。やっぱりこうなるよね…仕方ないよね」
と俺の言葉に対し、潔く自らの非を認めるに至っていた。
「雄也、父さんと比べたら潔いよなぁ」
「これでブラコンじゃなかったらもっとカッコいいのに。ねぇ静緒」
「だな」
臨静と静緒がそんな素直な感想を述べながら、手際良く朝食を並べていた。
「母さん、並べ終わったよ」
「サンキュ、二人とも。じゃあ朝食にするか」
「わぁいっ!!」
嬉々として臨静が席に着き、その後にやれやれと言った表情で静緒が席に着く。潔く自分の非を認めた雄也は何も言わずに席に着き、逆に同罪を認められない臨也は今だにブツブツと文句を言いながら席に着く。
「まだ文句言うなら朝食下げるけど?」
「シズちゃんやめて。それだけは止めて」
そんなノリで俺も席に着き、家族全員が食卓についた。
「それじゃ」
と臨也の声に続き、全員で「いただきます」をいう。見慣れた光景だが、俺にとっては少しばかり不思議な光景だった。
「今日はみんな用事あるの?」
だし巻き卵をつつきながら、臨也が子供たちに尋ねる。
「俺は特に用事ないから、父さんの手伝いに行くよ。昨日波江さん愚痴ってたよ~、また仕事溜めてるって」
「臨也、本当か?」
「溜めてるってほどじゃないと思いたい、かなぁ…」
思いっきり目が泳いでる臨也に、俺はやれやれと首を振った。
休日に部活以外の予定がないとき、雄也はよく臨也の手伝いをしに新宿へ出掛ける。雄也は情報屋としての臨也を尊敬していて、自分もいつかはその後を継ぎたいと昔から言っている。
「僕はゆまっちお兄ちゃんと狩沢お姉ちゃんに会ってくる」
「なんかあるのか?」
「ちょっとね~」
ふふふと笑う臨静に、またあの二人が何かを買い与えるに違いないと予想する。
臨静のことをえらく気に入って可愛がっている二人は、よく臨静に可愛い服を買い与えたり、コスプレイベントに連れて行ったりしている。おかげで臨静のコスプレ力やらなんやらは今でも上昇傾向だ。
「オレはセシルんちで勉強してくる。もしかしたら昼もアッチでご馳走になるかも…」
「あ、だったらセルティに本渡しといてくれるか?」
「前に貸すって言ってた小説だっけ?分かった、持ってくよ」
セシルとは静緒の幼なじみで、新羅とセルティの娘だ。家族ぐるみの付き合いだからか、静緒がセシルの所へ泊まりに行くこともしばしばある。今は受験生と言うこともあり、放課後や休日には二人で勉強しているようだ。前にセルティのバイクに乗せてもらったこともあり、いつかはバイクでセルティと出掛けたいという夢を静緒は持っている。
「うん。雄也と静緒はともかく、臨静は気をつけて出掛けるんだよ?最近変な人多いから」
「変な人?変な人ってパパじゃないの?」
「ちょっ、臨静ww」
「あー、同感」
「父さん以上に変な人間なんていねぇよなぁ」
「前回に引き続きヒドいよみんな!!」
賑やかな朝の食卓。それはいつもの光景。だけど昔の俺にはこんな光景は考えられなかった。自分自身の力に囚われ、自分の幸せなんて見えなかった俺には、こんな光景は縁もゆかりもなかった。
だけど。だけど今、俺は自分の新しい家族とこうして生活をしている。それは温かくて、少しばかりくすぐったい。そんな生活をくれたのは他でもない臨也だ。
(感謝してる。ありがとう、臨也)
今だ子供たちにいじられている臨也を横目で見ながら、俺は密かに微笑んだ。
今日と言う日は、まだまだ始まったばかりだ。
[NEXT]
前回に引き続き、今回も臨也乙な終わり方ですね(笑)。だけどシズちゃんは臨也に感謝してるんだよ、いやマジで。
次回は長男の雄也視点かな?この話の続きになります。多分派生組きっての少女マンガカップルも出る…かな?未定です。だけど出したいあの二人。今頃シズちゃん派生の方は迷子になってるでしょうな←←
「おはよう、静緒」
「ママとしーちゃん、おはよー」
「臨静もおはよう」
朝のキッチン。朝食がもうすぐ出来るタイミングで静緒と臨静がやってくる。身支度はとうに整っている辺り、今日もいつも通りに起きれたんだろう。
とある休日の日の朝。休日に早く起きてくるのは、大体がこの二人だ。
「パパと雄也お兄ちゃんは?」
「まだ寝てんじゃねぇの?」
臨静の問いに、新聞を取ってきた静緒が答える。
「今日なんか面白いテレビやるかな?」
静緒の手にある新聞を見るなり、臨静は早速テレビの話題を出す。
「そういえば、今日は幽が出てるドラマの再放送があるぜ」
「ホントか、母さん!?」
「絶対録画しなきゃ!!何チャンかなぁ?」
二人仲良く新聞を広げて、テレビ欄を確認している。そんな姿が愛おしくて微笑ましくて、俺を思わず笑みを漏らした。
「朝からご機嫌だね、シズちゃん」
「臨也」
「おはよう、シズちゃん」
チュッとリップ音を立てて、頬にキスをしてくる臨也。
「おまっ!子どものいる前で!!」
「へーきへーき。臨静と静緒はテレビ欄に夢中だし、それに今更でしょ?」
チラッと子ども達に目を向けると、二人はテレビ欄に目を落としていて全くこっちを気にしてはいなかった。
「ね?」
「ったく、お前は…」
臨也からのキスを今度は素直に受け止め、お互いに軽く触れるだけのキスをする。
─ピロリン。
「朝からお熱いね、父さんと母さんは」
ケータイのカメラのシャッター音にハッとして、食卓の方を向けば…
「雄也!?お前いつからいた!?」
「いつって…父さんが母さんに顔近づけたあたりから」
「挨拶ぐらいしろ!!」
「だって、なんとも言えない空気醸し出してたんだから、挨拶しようにも出来なかったんだよ」
ケータイを操作しながら俺の言葉に答える雄也。なんて器用なヤツなんだと俺は思った。やっぱり、雄也は外見に違わず臨也の遺伝子を完璧に受け継いだ子なんだとしみじみ思う。
「ところで雄也…」
「今の写メは父さんのケータイとパソコンにも送っといたから大丈夫だよ」
臨也が全部言い終わる前に雄也がサラリと言ってのける。
「流石は俺の息子!!」
「今すぐ削除しろ、そんな写真!!」
「あー待って。優太と狩沢さんと幽さんにまだ送ってないから」
「送らなくていいから消せ!!」
「あ、三人から一気に返信きた」
「送ったのかよ!!そんでもってみんな返信早すぎんだろ!!」
俺の言葉には耳もくれず、鮮やかな指裁きでメールを打つ雄也。その早さは臨也といい勝負かもしれない…。
「ふぅ…みんな朝からお腹いっぱいだってさ」
「寧ろ凭れてまえ!!もう!!」
「ぜっったいに琥珀さんだよ!!」
「いや、オレは龍華さんだと思うけどな!」
俺が雄也に言ったと同時に、リビングの方から臨静と静緒の軽い口喧嘩が聞こえてきた。
「二人ともどうしたの?」
「あのねパパ、しーちゃんが琥珀さんより龍華さんの方が演技も歌も上手いって言うの!!僕は断然琥珀さんの方が上だと思うけど!!」
「臨静兄ちゃん、「Black Lotus」の龍華さん見てみ?めっちゃ演技上手いからな!?」
二人が言っている琥珀と龍華とは、音楽ユニット「DN winds」を作った男女の双子だ。本業である歌手の他、そのルックスの良さや演技力などを生かし俳優業や声優業も行っている、オールマイティーな双子だ。幽や聖辺ルリといった人達との共演も多く、親交もある。
まぁとある理由から、俺も個人的に付き合いがあるけども…それはまた別の話だ。
「だったら琥珀さんの演技だって負けてないよ!!第二部の幽さんとの絡みが………ひゃあぁあぁあっ!!」
そのシーンを思い出してしまったらしい臨静は、顔を真っ赤にしながらその場に座り込んでしまった。…臨静のこういう所は、明らかに俺の遺伝だ。
「なぁ、臨静兄ちゃん…なんで敢えてその…絡みのシーンをチョイスしたの…?」
「だって…「Black Lotus」で一番印象に残ってたの、そこだったんだもん…」
「なんか…うん…ごめん…」
静緒が臨静の頭をよしよしと撫でている。これじゃあどっちが年上か分からねえ…。
「とりあえず一件落着かな?」
「そう言えば雄也はどっち派なの?」
臨也の問いに雄也はうーんと唸った。
「そうだなぁ…歌なら龍華さん、ダンスなら琥珀さん、演技は両方かな?」
「えっ?なにそのチョイス?」
「だって、龍華さんは高音域も低音域も、男声も女声も丁寧で凄く綺麗だし。琥珀さんのダンスはピッシリしてるかと思ったら柔らかい妖艶な感じになるし。演技に関しては二人とも幅が広過ぎて神ってるし」
「どんだけ観察してるのさ!?」
「観察しちゃうんだから仕方がないじゃないか」
さも当然というように雄也は言ってのける。ま、臨也の遺伝だから仕方ないのかもしれねぇけど…。
「みんなそれぐらいにして。朝ご飯出来たから手伝え」
「朝ご飯!!」
臨静の顔がパァッと輝く。その様子に俺はおっと思う。
「臨静、お腹が空いて起きたのか?」
「だって、昨日の夜ご飯パパのせいで食べ損ねたんだもん!!」
「じゃあお腹空くわな。遅くなってゴメンな、朝ご飯」
「ったく、父さんも大人げねぇよな。臨静兄ちゃんのデートの邪魔して、ワザと門限破らせんだから」
戸棚から茶碗を取り出しながら、呆れ声で静緒が言う。
そう。昨日の夜、臨也は放課後デートに出掛けていた臨静の邪魔をし、門限を守らせなかった。この家では門限を守れなかったら夕飯抜きが暗黙のルールのため、臨静は好物のオムライスを食べ損ねていた。
「やだな、そんな人聞きの悪い。第一昨日邪魔してたのは雄也だよ」
「やるように言ってきたのは父さんじゃないか」
「それを一つ返事で受けたのは雄也でしょ?違う?」
「やらなかったら仕事場に出入り禁止とか言うからじゃないか。そんなことされたら、六臂さんと月さんに会えないじゃんか」
罪の擦り付けあいとか、なんて嘆かわしい…。
「ともかく、二人とも同罪だと僕は思う!」
「まぁ共犯だしな。オレも二人の同罪に一票」
「ちょっ、臨静も静緒もヒドくない!?俺は父さんに唆されて…!!」
「俺のせいにするつもりなの雄也!?シズちゃんどう思う!?」
どう思うと聞かれても、俺が導き出せる答えは一つだけだ。
「臨也も雄也も同罪」
「ちょっ、シズちゃん!?」
キッパリと言い放つと臨也は慌てるような素振りを見せる。一方の雄也は…
「まぁ…うん。やっぱりこうなるよね…仕方ないよね」
と俺の言葉に対し、潔く自らの非を認めるに至っていた。
「雄也、父さんと比べたら潔いよなぁ」
「これでブラコンじゃなかったらもっとカッコいいのに。ねぇ静緒」
「だな」
臨静と静緒がそんな素直な感想を述べながら、手際良く朝食を並べていた。
「母さん、並べ終わったよ」
「サンキュ、二人とも。じゃあ朝食にするか」
「わぁいっ!!」
嬉々として臨静が席に着き、その後にやれやれと言った表情で静緒が席に着く。潔く自分の非を認めた雄也は何も言わずに席に着き、逆に同罪を認められない臨也は今だにブツブツと文句を言いながら席に着く。
「まだ文句言うなら朝食下げるけど?」
「シズちゃんやめて。それだけは止めて」
そんなノリで俺も席に着き、家族全員が食卓についた。
「それじゃ」
と臨也の声に続き、全員で「いただきます」をいう。見慣れた光景だが、俺にとっては少しばかり不思議な光景だった。
「今日はみんな用事あるの?」
だし巻き卵をつつきながら、臨也が子供たちに尋ねる。
「俺は特に用事ないから、父さんの手伝いに行くよ。昨日波江さん愚痴ってたよ~、また仕事溜めてるって」
「臨也、本当か?」
「溜めてるってほどじゃないと思いたい、かなぁ…」
思いっきり目が泳いでる臨也に、俺はやれやれと首を振った。
休日に部活以外の予定がないとき、雄也はよく臨也の手伝いをしに新宿へ出掛ける。雄也は情報屋としての臨也を尊敬していて、自分もいつかはその後を継ぎたいと昔から言っている。
「僕はゆまっちお兄ちゃんと狩沢お姉ちゃんに会ってくる」
「なんかあるのか?」
「ちょっとね~」
ふふふと笑う臨静に、またあの二人が何かを買い与えるに違いないと予想する。
臨静のことをえらく気に入って可愛がっている二人は、よく臨静に可愛い服を買い与えたり、コスプレイベントに連れて行ったりしている。おかげで臨静のコスプレ力やらなんやらは今でも上昇傾向だ。
「オレはセシルんちで勉強してくる。もしかしたら昼もアッチでご馳走になるかも…」
「あ、だったらセルティに本渡しといてくれるか?」
「前に貸すって言ってた小説だっけ?分かった、持ってくよ」
セシルとは静緒の幼なじみで、新羅とセルティの娘だ。家族ぐるみの付き合いだからか、静緒がセシルの所へ泊まりに行くこともしばしばある。今は受験生と言うこともあり、放課後や休日には二人で勉強しているようだ。前にセルティのバイクに乗せてもらったこともあり、いつかはバイクでセルティと出掛けたいという夢を静緒は持っている。
「うん。雄也と静緒はともかく、臨静は気をつけて出掛けるんだよ?最近変な人多いから」
「変な人?変な人ってパパじゃないの?」
「ちょっ、臨静ww」
「あー、同感」
「父さん以上に変な人間なんていねぇよなぁ」
「前回に引き続きヒドいよみんな!!」
賑やかな朝の食卓。それはいつもの光景。だけど昔の俺にはこんな光景は考えられなかった。自分自身の力に囚われ、自分の幸せなんて見えなかった俺には、こんな光景は縁もゆかりもなかった。
だけど。だけど今、俺は自分の新しい家族とこうして生活をしている。それは温かくて、少しばかりくすぐったい。そんな生活をくれたのは他でもない臨也だ。
(感謝してる。ありがとう、臨也)
今だ子供たちにいじられている臨也を横目で見ながら、俺は密かに微笑んだ。
今日と言う日は、まだまだ始まったばかりだ。
[NEXT]
前回に引き続き、今回も臨也乙な終わり方ですね(笑)。だけどシズちゃんは臨也に感謝してるんだよ、いやマジで。
次回は長男の雄也視点かな?この話の続きになります。多分派生組きっての少女マンガカップルも出る…かな?未定です。だけど出したいあの二人。今頃シズちゃん派生の方は迷子になってるでしょうな←←
