折原さん家の愉快な日常

俺の名前は折原臨也。新宿で情報屋をやっている永遠の21才だ。趣味は人間観察、好きなモノは人間全て!!…と言いたい所だけど、特にその中でも家族がいちばーん大好きだ。

今日は、そんな俺の家族について話そうと思う。

今俺がいるのは、池袋にある自宅のリビングだ。すぐそばのテーブルでは、俺の三人の子ども達がみんなで仲良く勉強をしている。

「臨静兄ちゃん、この問題分かるか?」

先に口を開いたのは、末っ子長女の静緒だ。俺の愛しい奥さんの特徴を存分に受け継いだ(てか瓜二つな)金髪の天使だ。スカートが嫌いで、私服も制服もズボンしか履かないのがたまに傷かなぁ…。あ、でも式の時は一応スカートを穿いている。きちんとするところはきちんとするんだよね。

「えっと…雄也お兄ちゃん、パス!!」
「え、俺!?」

そんなやり取りをするのは、双子の雄也と臨静だ。長男である雄也は俺譲りな外見の持ち主だ。尤も、髪型はどことなーく幽君みたいな感じだけども。休日なんかはよく、俺の仕事を手伝ってくれる。今じゃすっかり有能な助手だ。成績や運動神経も抜群で、しょっちゅうのように告白されるのはやっぱり俺の息子だからだろう。

それに対し弟の臨静は、これまた愛しい奥さんの特徴を存分に受け継いだ金髪の天使だ。静緒との相違点は、静緒が男に近いのに対し、臨静は女に近い。スカートを好み、尚且つ声まで女の子だったりする俗に言う『男の娘』だ。それを考えたら、静緒は『女の息子』になるのかなぁ…?まぁ良いけどね。ちなみに静緒は愛しの奥さんと似たような髪型が似合うけど、臨静はツインテールがよく似合う。

「現代文かぁ…。現代文はまず、提示されてる文章を音読すると良いんだよ」
「つまり今ここで読めってか?雄也の言うことはあまり信用出来ないんだよなぁ…」
「あのさ、なんで静緒は俺に対して兄ちゃん付けてくんないの?」
「静緒、一回雄也お兄ちゃんの言うとおりにしてみたら?頭だけは良いから、きっと上手くいくよ」
「待ってよ、臨静!頭だけって何!?それだと俺、あとは残念な人間みたいに聞こえるじゃないか!!」
「外見と声と頭と運動神経は良いけど、性格は残念だよね」
「ゴミ虫だからな」
「二人ともヒドいっ!!」

なんてやり取りも何時ものことで。一体何が原因なのか、静緒は基本的に兄弟の中では臨静の言うことしか聞かない。そもそも、雄也のことを兄として認めてないみたい…。ゴミ虫って名付けたのは臨静みたいだけども、それを静緒が言うとなると……うん、俺の方が泣けてくる。なんかこう…俺にも言われてる気がするんだよね…。今だに、俺は愛しの奥さんにノミ虫と言われることがあるワケだからね…。やっぱりこれも遺伝なのかな…。

「とりあえず、まずは音読すりゃあ良いんだろ?えっと…」

問題集を手に持ち、静緒は提示された文章を読み始めた。

「『ドエトエフスキーの小説[カラマーゾフの兄弟]のなかに、ある一人の医師の話が出てくる。この医師は人類全体を熱烈に愛していて、人類への奉仕のためにはどんな犠牲もいとわないという思想をもっている。』………」

静緒がそこまで読み終えると、子ども達の視線が一気に俺へと向けられる。

「…なんでみんなして俺を見るの?」
「いや別に。静緒、先読んで」

雄也に促されて、静緒は文章の続きを読み始めた。

「『しかしそれにもかかわらず、自分の目の前に実際に現れてくる一人一人の人間にたいしては、それが立派な人であれば自分の自尊心が圧迫されると感じて憎むようになり、風邪をひいていて絶えず洟をかむとなれば、それが汚らしく嫌になってしまうのである。』……」
「だからさ、なんで俺の方をみんなで見るのかな…?」

またしても三人の視線が俺へと注がれて、なんだかいたたまれない気分になってくる。

「何でもないよ、パパ。静緒、その続きは?」
「んと…『彼は人類全体を愛すれば愛するほど、個々の一人一人にたいする愛情が薄れてゆき、反対に個々の人を憎めば憎むほど、人類全体にたいする愛はますます熱烈になっていく、と告白するのである。』………」



「「「やっぱりこれ父さん(パパ)のことじゃん!!!!」」」



「ぶっ!?」

特に身構えていなかった俺の顔面に、静緒の問題集(結構厚い)がクリティカルヒットした。

「ちょっ!!父親の顔面に問題集投げるとかなんなの!?」
「投げたくもなるわ!!なんで問題集にまで親父が出てこなくちゃならねぇんだよ!?」
「静緒!?言葉遣いが荒くなってるよ!?てか、お父さんそんな人間じゃないからね!?」
「十中八九父さんじゃないか!!そこまで歪んだ人間、俺が知ってる限りで父さんしかいないよ!!」
「世界はもっと広いんだよ!?自分の世界でだけで雄也は判断しない!!」
「世界中どこ探し回ったって、そんな人間パパしかいないよ!!デュラララ!!×9で似たような発言してたのどこの誰!?」
「俺だけど、そんな人間探せば絶対」

「「「お前しかいねぇよ!!」」」

「四人とも煩い!!ご近所の迷惑だろ!!」

聞こえてきた俺たち以外の声に、キッチンへと繋がる場所を見れば…

「シズちゃん!」

俺の愛しの奥さんであるシズちゃんが、お玉を片手に白いエプロン姿で立っていた。

「聞いてよ、シズちゃん!あのさ」
「母さん!やっぱり静緒の問題集に出てた医者って父さんだよね!?」

俺が言い切るより先に雄也が言葉を紡ぎ終わる。こういうところまで俺に似たのか、雄也は!!

「全部聞こえてたよ。アレは間違いなく臨也だな」
「ちょっ、シズちゃんまで!?」

俺が叫ぶその横で、三人の子ども達はハイタッチをした。

「そんな答えの分かり切ってる結論より、誰か昼飯の準備手伝え」
「あ、僕手伝う」

パタパタと臨静が台所まで走って行く。その姿はまるでフェアリー!!

「臨静可愛い…ハスハス」
「全くもってその通りだよ、父さん…!眼福だよ!」

後ろの方から、「そこの父子、マジキモイ」という静緒の声が聞こえてくるけど、そんなのいちいち俺は気にしない!!寧ろそんな罵倒でさえ、俺にはとても愛おしいワケで。雄也の俺に賛同してくれる姿も、流石は俺の長男と言わんばかりだ。

てかもぉ、ぶっちゃけ

「子ども達love!!」
「気持ちだけもらっておくよ、父さん」
「パパの気持ちは嬉しいけど、僕はママの方が好きだから」
「ノーコメントで」
「ちょっwみんなの態度冷たっww」

あんまりな子ども達の態度に微妙に心が傷つく。

でも、その裏では俺を慕っていてくれているのを知ってるから、まぁ良いかという気持ちになる。

「臨也、その年にもなってそれやるな。聞いてるこっちが恥ずかしいわ」
「俺は永遠の21才だからね」
「確かに、父さん見た目は20代で通りそうだけど、実年齢は…」
「単純計算で、よ」
「それ以上言っちゃらめぇえぇっ!!」

先を言おうとした静緒を俺は制した。確かに、俺もシズちゃんも外見はまだまだ20代だ。だけどほんとは、きちーんと年をとってるわけで。

「下手したら、あと十年後とかにはじいちゃんって呼ばれてんじゃないか?」
「そんなリアリティのあるコト言わないでよ、シズちゃん!!」

雄也と臨静は現在高校二年生だ。あと三年もすれば成人式、そうなれば結婚だってそう遠くない話で…。

「俺、おじいちゃんって呼ばれんのやだよ!?」
「それ、遠回しにオレたちに結婚するなって言ってんの?」
「父さんもよく言うよ。自分はデキ婚のクセに」
「ママにナカ出ししたの処理しなかったんだっけ?」

シズちゃんの表情がピシリと固まる。

「臨静、それ誰から聞いたんだ…?」
「パパが話してくれたよ」

「お前子どもに何話してんだぁっ!!」

「ぶっ!?」

特に身構えていなかった俺の顔面に、今度はシズちゃんの投げたお玉がクリティカルヒットした。

「ちょっ!!夫の顔面にお玉投げるとかなんなの!?」
「投げたくもなるわ!!なんでそんな恥ずかしいコト話したんだよ!?」
「そんなの性教育のためじゃないか!!」
「だからって普通そんなコト言わねえだろ!?」

俺たちが言い合っているのを横目に見ながら、子ども達は子ども達で話し始める。

「あー、確かにあんなコト言わないよねぇ。体位とか、平均で何回とか」
「母さんの一番感じやすいところとか」
「あとはアレだよ。ママの効率的な攻め方」
「お前ホントに何話してんだよ!?」
「何って、夜の営みのノウハウ?」
「最っ低!!」

耳まで真っ赤になってるシズちゃんカワユス!!子ども達のコトも好きだけど、俺はやっぱりシズちゃんが一番だ。

「シズちゃんlove!!」
「うっせぇ!臨也だけ昼飯抜き!!」
「えっ、嘘っ!?」

シズちゃんの手料理食べられないとか、一体どういう拷問!?

「はん、親父ザマァ」
「ま、当然の報いだよね」
「寧ろママに殺されないだけマシじゃない?」
「全然マシじゃないよ!!一体どういう拷問!?」

拷問じゃねぇ、教育的指導だ。というシズちゃんの目は滅茶苦茶怒っていて…。

ちなみにその日のお昼ご飯は、シズちゃんお手製の冷やし中華で。俺は子ども達に散々いじられながらお昼ご飯の様子を見たのでした。

[NEXT]

臨也乙ww。ちなみに、静緒の問題集に載っていた文章は実在します。だって、自分が持ってる問題集からの引用だもの!!←←

次の視点はきっと、池袋最強の嫁でしょうな(笑)
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