折原さん家の愉快な日常

金髪のツインテールが揺れている。色白で透き通るような肌は、まるでおとぎ話の白雪姫のよう。ミニスカートからスラリと伸びた足は握ったらすぐに折れてしまうのではないかと言うくらいに細かった。身長はあまり高くなく、それが金髪の少女の魅力を引き立てていた。

「そこの嬢ちゃん」
「うにゅ?」
「俺らと一緒にお茶しないか?」
「ごめんなさい、僕今急いでるんです。また誘ってください」

男に呼び止められ、金髪の少女は足を止める。所謂ナンパというやつに遭うも、金髪の少女は笑顔で断りその場を後にした。ただ後には、少女の可愛さに魅せられてしまった哀れな男達だけが残った。



赤い瞳がケータイに羅列した文字を追っている。眉目秀麗を具現化したようなその人物は何かを考えていた。

「このメールの差出人…どっかで聞いたことあるな…」

漏れた声は甘いテノール。細長い指がケータイを操っていくその様は、さながら愛撫を施しているかのようで。道行く女性で、誰一人として振り返らぬ者はいなかった。

「あ…あの…」
「ん?」
「あの…もし良かったら、メアド交換してくれませんか…?」
「悪いけど、俺簡単に連絡先は教えない主義なんだ。それに君、好みじゃないから。ゴメンね」

彼の魅力に魅せられた少女が一人、連絡先を聞こうと近づく。しかし彼はそっけなくいうと、その場を離れ何処かに歩いていった。



鉄パイプを持ったゴロツキが一人、ゴミ袋の山の中へと突っ込んだ。

「ハッ、口ほどにもねぇな」

服に付着した汚れを払いながら、その人物はケータイを見た。聞いたこともないアドレスからのメールは、確かにこの近くを示していた。

「一体何なんだかなぁ…」

金髪の髪をガシガシとかきあげながら、少年のような出で立ちをした少女は路地裏を出た。メールの差出人は不明だが、一斉送信されているそのメールは二人の年上の兄弟のもとにも届いているようで。
怪しいことこの上ないが、少女はその場に向かって歩いていった。



金髪の少女と眉目秀麗の彼、そして少年のような出で立ちをした少女の三人は同じ場所、とある広場で出会った。

「雄也お兄ちゃん、静緒!!」

先に口を開いたのは金髪の少女だった。

「やっぱり、臨静と静緒も来たんだ」
「当たり前だよ。臨静兄ちゃんと雄也のアドレスにも送信されてたらそりゃ気になるよ」
「…あのさ、なんで俺には「兄ちゃん」つけてくんないの…?」

雄也の言葉に静緒が反応するも、その中の自分の呼び名に「兄」がついていなくて雄也は落胆する。

「雄也お兄ちゃん、大丈夫?」
「ありがと、臨静…!!もうホントに天使だn」
「黙れゴミ虫」

さっきまで高かった声のキーが一気に下がる。そんな臨静の分かりやすい反応に雄也はまたも落胆した。

「そんなことより、オレ達兄妹が集められたってことは…」

静緒が雄也と臨静を見ると、二人も考えていることは同じだとばかりに頷いた。

「だろうね。ねぇ、いい加減出てきたらどうなの?」
「うっ……わぁ……」

雄也の言葉に答えるかのように、広場のあちらこちらから鉄パイプや金属バット、ナイフなどを持った連中が現れる。その数の多さに臨静は本当にと言わんばかりの声を漏らした。

「まさか本当に来るとは思ってなかったなぁ…」

事の主犯なのであろう人物が、下卑た笑いを浮かべながら三人を見た。

「来なかったら来なかったで、今度は僕達を誘拐してるでしょ?」
「父さんと母さんに勝てねぇからってオレ達子供を痛めつけるとか最低じゃね?」
「まぁどちらにせよ、君達の負けは明白だよね~」

三人が口々に言いたいことをいうと、主犯の額に青筋が浮かんだ。

「良いだろう…。お前ら三人とも、親のもとに帰れなくしてやるよ!!」

その言葉を合図に、他の男達も三人に襲いかかった。

「さぁって、久々に暴れよっか」
「ちょうどオレ、イラついてたかんなぁ~。憂さ晴らしにちょうどいい」
「二人とも、ケガしないようにね」

背中合わせになった三人はそれぞれがそれぞれに健闘の言葉を掛け合い、そして三手に散った。



「どっからでも来いよ」
「なめてんなよ、クソガキィィイ!!」

静緒の挑発に乗った一人が手に持った鉄パイプを振りかざす。
そのパイプは静緒の頭に直撃し、静緒は倒れるものと思われた。



「男のクセに武器使うとかさぁ、しかもオレ、何も武器持ってないのにパイプで殴ってくるとかフェアじゃねぇよな?」
「なっ…!?」

鉄パイプは静緒の手のひらによって受け止められていた。さらに静緒がそれを握りしめると、鉄パイプはいとも簡単に形を変えた。

「喧嘩ならさぁ、正々堂々フェアにやるもんだろ!!」

呆然とする男の顔面に、容赦なく回し蹴りをお見舞いする。男はその衝撃で地面を滑り、建物に頭部をぶつけ気絶した。

「こ…こいつ…!!」
「おせぇっ!!」
「!!」

近くにいたもう一人に情け容赦なくアッパーを食らわせる。男は宙を舞い、地面に叩き落ちた。

「テメェもだ!!」
「!?」

後ろから殴りかかろうとしていた男の腕を掴み地面に叩きつけるように投げ飛ばす。体格的には男の方が上だったと言うのに、静緒はそれをものともしなかった。

他の者が戦慄を覚える中、静緒はその者たちに言った。

「一人一人なんて面倒くさい。みんな一気に来いよ。だけど本気で来いよ?つまんねぇから」



「そーいえば、君って恋人いるんだよねぇ?」

ナイフを持って切りかかってきた男の攻撃を避けつつ、雄也は世間話をするかのような口調で話し始める。

「だから何だよ!!」
「いや別に~。ただ、この前他の女性と逢い引きしてたよね?って言いたいだけだから」
「おまっ、なんでそれを知っ!?」

全てを言い切る前に、雄也の蹴りが鳩尾に入る。男はその場に膝をつき、ゴホゴホと咳き込んだ。

「テメェエッ!!」
「おっと」

金属バットを持った男が雄也に殴りかかる。雄也はそれを簡単に避けると、ポケットから護身用のナイフを取り出した。護身用のナイフを持たせたのは、雄也が情報屋として尊敬する父親だ。

「まさか本当にナイフを使うハメになるなんて…」
「ゴチャゴチャ言ってんなよ!!」

金属バットがまたもや殴りかかってくる。雄也はもう片方の腕で、それを受け止めた。

「!?」
「確か君は…薬物不法所持者、だったよね?今もなのかな?」
「適当なこと言ってんじゃねぇ!!」

雄也の発言にキレ、雄也をボコボコにしようとバットを振り回す。雄也はそれを物ともせず、いともあっさりと懐まで入った。

「バットは振り回すものじゃないんだよ!!」

雄也のナイフが服を切り裂いた。そこから溢れたのは赤い液体ではなく、白い粉だ。

「情報屋の息子、ナメちゃだめだよ?」



「雄也お兄ちゃんも静緒もすごーい」

少し離れた場所で臨静はパチパチと手を鳴らした。

「気ぃ抜いてんなよ!!」

鉄パイプを持った男が殴りかかる。臨静はそれをひょいと避け、間を取った。

「弱いものイジメ、カッコ悪ーい」
「はん。俺たちだって、お前みたいな可愛い子は殴りたかねぇよ。悪いことは言わねえ。俺たちと遊ぶってぇんなら、お前だけは見逃してやるよ?」
「なにそれ。新手のナンパですか?うーん…顔は好みかなぁ…。でも…」

考える素振りを見せながら、臨静は自分の後ろにあった棒を引き抜いた。

「集団で喧嘩仕掛けてくるような人間は論外だよ!!」
「!?」

引き抜いた棒を操り、臨静は次々に男達をなぎ倒していく。

「貴様っ…!!」
「避けないと顔が台無しになるよ」

身長も低くさらには美少女とも呼べる臨静がそんな物を振り回す姿は、まるで修羅か羅刹のようで。

大体の人数をなぎ倒すと、残った人間は呆気にとられて固まっていた。

「残ってるのは…あなた達だけね」

にこりと微笑む顔は美少女そのものだ。だが、放たれているオーラは恐ろしいもので…。

「そうそう。言っておくけど、僕恋人持ちで男の子だから」

それだけいうと、臨静は再び標識片手に男達をなぎ倒した。



三人がもとの場所へ戻ると、残りは主犯だけだった。
それもそのはずだ。残りの者達は三人にボコられたか、或いは三人に怖じ気づいて逃げ出したのだから。

「さて…残るはあんただけみたいだよ?」

ニヤリと雄也が笑みを浮かべる。

「ま、他の連中使うぐらいだし大したことねぇだろうけどな」

かったるそうに静緒が言う。

「それに僕達の相手じゃないよね」

毛先の傷みを気にしながら臨静が言う。

「と言うわけで、帰ろっか二人とも」
「「賛成」」

雄也の言葉に臨静と静緒が賛成する。
主犯に背中を向け、三人は帰ろうと歩き出す。

「バカにしてんじゃねぇぞ!!」

キレた主犯は三人に切りつけようと、ダガーナイフを取り出して走ってくる。

「だから、言ってるじゃん?」
「お前はオレ達の相手じゃねぇって」
「あなたの相手は、僕達のパパとママだよ」

次の瞬間、男の体は宙へと舞った。



数十分後、主犯と薬物不法所持者を含む数名は逮捕された。

「あの人もバカだよなぁ。俺達に喧嘩売ったらこうなるって分かってたはずなのに」
「子供だから勝てると思ったんじゃねぇの?バカな奴が考えそうなことだ」

雄也はコーラ、静緒はジンジャーエールを飲みながらパトカーへと押し込まれていく男達を眺める。

「それにしても、よく僕達の居場所が分かったよね。何でかな?」

ココアの缶を両手で持ちながら、臨静は首を傾げた。

「メールの差出人に覚えがあったから父さんに転送したんだ。だから分かったってわけ」
「ふぅん。雄也もなかなかやるじゃん」
「いやだからさ、なんで俺には「兄ちゃん」つけてくれないの?」
「三人ともお待たせ」

会話をしていた三人のもとに、ファー付きのコートを着た男がやってくる。言わずと知れた新宿の情報屋、折原臨也だ。

「あれ?ママは?」
「シズちゃんもすぐに来るよ」
「お待たせ」
「ママ!!」

現れた池袋最強の金髪の男に臨静は抱きつく。静雄は抱きついてきた臨静の頭を優しく撫でた。

「臨静って、本当に母さんっ子だよね…」
「いいんじゃね、別に」

兄<母なコトに涙する雄也を静緒は笑った。

「んじゃ家族全員揃ったし、帰ろっか」
「そうだな」

臨也の言葉に静雄は頷いて歩き出す。その後を追い、兄妹達も歩き出した。

「あー…お腹減った…。シズちゃん、夕飯何?」
「今日はシチュー。みんな好きだろ?」
「やった!ママのシチュー大好き!!僕手伝うよ!」
「俺も手伝う!」
「オレも!」

そんな温かな会話を交わしながら折原一家は家へと帰っていく。



最強にして、そしてどこよりも温かな家族がそこにいた。



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イザシズ家族シリーズ開始です!なんて最強な家族なんだろうかw。次回からは話によって目線が変わります(^-^)
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