鬼畜眼鏡
「─んっ…」
真夜中。いつも感じている温もりを感じなくて、克哉は目を覚ました。ベッド脇の棚の時計は、2時34分を示している。
(まだ…こんな時間…)
ぼぉっとした頭で、克哉はそう思った。
大月隠の誓い
昨夜、御堂と共にベッドに雪崩れ込み、熱に浮かされるままに互いを貪り合った。貪って、欲を吐き出し、体内に注がれる熱に安堵を覚え意識を手放した。ベッドに入った時間が時間だけに、もっと時間が経っているものと思っていたが…。
(案外、時間経って無かったんだな…)
隣を見ると、やはり御堂の姿は無かった。それを少し寂しいと思ったが、恐らくシャワーでも浴びに行っているのだろう。
のそのそと、克哉はベッドから起き上がる。情後独特の腰の痛みは多少なりともあるが、それ以外の不快感などはない。どうやら克哉が意識を飛ばした後、御堂が後始末をしてくれたようだ。
そう認識その時、部屋のドアが開いた。
「なんだ、起きたのか」
「孝典さん…」
入ってきた御堂は、やはりシャワーを浴びてきたのだろう。タオルで髪を拭きながら、起き上がっていた克哉に微笑を向けた。
「まだ眠っていてもよかったんだぞ」
「すみません…なんだか、目が覚めてしまって」
貴方の温もりがなくて寂しかった、なんて。付き合い始めてから何年も経ってはいるが、それを口に出すのはなんだか恥ずかしい。
「私がいなくて、寂しかったのか?」
「そ…そんなこと…」
思っていたそばから言い当てられて、恥ずかしくて顔を背けてしまう。そんな克哉の姿に、御堂は楽しそうに笑った。
「図星だな…。耳まで赤いじゃないか、克哉」
「っ…」
チュッと耳に口づけられる。寄せられた唇は熱くて、思わず息が詰まる。
「こちらを向け、克哉」
言われるがままに、真っ赤になった顔を向ける。御堂の顔は相変わらず楽しそうで、それは無邪気な少年にも見える。
軽く濡れた音を響かせて、唇同士が触れ合い離れる。ただそれだけなのにひどく満たされ安心して、克哉の顔に穏やかな笑みが浮かんだ。
「幸せそうな顔だな…」
そんな克哉につられてか、御堂の笑みも、いたずらなものから幸せそうなものへと変わる。
「克哉、目を瞑れ」
「えっ…」
「いいから」
言われるがままに、克哉は目を閉じる。片手を取られ、そこに何か冷たく硬い感触を感じた。それは緩くもきつくもなく、克哉の指を包んでいた。
「…いいぞ」
「っ……これ……」
目を開けて、克哉は驚いた。左手薬指。そこに、プラチナのリングが嵌まっていた。リングには小さなダイヤモンドがあしらわれており、上品な雰囲気を醸し出している。
「君への、誕生日プレゼントだ」
「でも、これ…」
「よく似合っているな。これにして正解だった」
そっと、御堂は薬指にキスを落とす。落ち着いている御堂とは違い、克哉はただただ驚くばかりだ。
「だって、これ……結婚指輪……」
そう。御堂が克哉に贈ったのは、ただの指輪じゃあない。マリッジ・リング、結婚指輪だ。それも、フランスはパリを代表するブランドのひとつ─カルティエの、結婚指輪。
「そうだ。君に、ずっとこれを贈りたかったんだ」
「ずっと…?」
「ああ。君が私に婚姻届を渡してきた、あの時からな」
「あ…」
御堂克哉になる気はないかと問われ、答えに迷って。でも心を決めて、御堂の家族になりたいと思った。だから御堂に、婚姻届を渡した。
もちろんそれは、今の日本では到底受理されない。受理されることはないけれど、御堂に伝えたかった。
─一生、あなたに連れ添いたいと。
「婚姻届は君に先を越されてしまったからな。それで、指輪を贈ることを思い付いた」
しかし、すぐにそれを渡すことは叶わなかった。克哉の海外出張もさることながら、克哉に似合うデザインのものがなかなか見つからなかったのだ。
そして今年の冬。新しく出たデザインの指輪が克哉にようやく似合ったのだ。繊細かつ、上品で。しかし何ものにも遮ることの出来ない唯一の輝き。それはこの指輪のイメージだが、同時に克哉自身のことのようだとも感じた。だから御堂は、この指輪を選んだ。
「…本当に…いいんですか…?」
「もちろんだとも。君のために用意したものだからな」
「っ…嬉しい…」
こんな日が来るなんて、昔の自分は思いもしなかった。もしかしたら、一生一人かもしれない。そう考えることの方が多かっただろう。
でも御堂に出会って、恋人同士になって、少しずつ少しずつ様々なことを乗り越えて…。今はもう、御堂のいない人生なんて考えられない。
あなたさえそばにいてくれれば、それで良い。
「克哉。誕生日、おめでとう」
「ありがとうございます…孝典さん…」
御堂に思わずもたれかかれば、それを彼は優しく受け止める。そんな御堂の指にも、同じデザインの指輪が嵌まっていた。それがとても、嬉しかった。
これからも、ずっとずっと一緒に。来年も再来年も、それから先も。指輪は目に見えるその約束の証。
その確かな約束を胸に、二人はもう一度、唇を重ねた。
[END]
克哉、誕生日おめでとぉおっ!というわけで、克哉おたおめ小説でした。シブさんには当日あげたのに、自サイトには今日って私…orz
真夜中。いつも感じている温もりを感じなくて、克哉は目を覚ました。ベッド脇の棚の時計は、2時34分を示している。
(まだ…こんな時間…)
ぼぉっとした頭で、克哉はそう思った。
大月隠の誓い
昨夜、御堂と共にベッドに雪崩れ込み、熱に浮かされるままに互いを貪り合った。貪って、欲を吐き出し、体内に注がれる熱に安堵を覚え意識を手放した。ベッドに入った時間が時間だけに、もっと時間が経っているものと思っていたが…。
(案外、時間経って無かったんだな…)
隣を見ると、やはり御堂の姿は無かった。それを少し寂しいと思ったが、恐らくシャワーでも浴びに行っているのだろう。
のそのそと、克哉はベッドから起き上がる。情後独特の腰の痛みは多少なりともあるが、それ以外の不快感などはない。どうやら克哉が意識を飛ばした後、御堂が後始末をしてくれたようだ。
そう認識その時、部屋のドアが開いた。
「なんだ、起きたのか」
「孝典さん…」
入ってきた御堂は、やはりシャワーを浴びてきたのだろう。タオルで髪を拭きながら、起き上がっていた克哉に微笑を向けた。
「まだ眠っていてもよかったんだぞ」
「すみません…なんだか、目が覚めてしまって」
貴方の温もりがなくて寂しかった、なんて。付き合い始めてから何年も経ってはいるが、それを口に出すのはなんだか恥ずかしい。
「私がいなくて、寂しかったのか?」
「そ…そんなこと…」
思っていたそばから言い当てられて、恥ずかしくて顔を背けてしまう。そんな克哉の姿に、御堂は楽しそうに笑った。
「図星だな…。耳まで赤いじゃないか、克哉」
「っ…」
チュッと耳に口づけられる。寄せられた唇は熱くて、思わず息が詰まる。
「こちらを向け、克哉」
言われるがままに、真っ赤になった顔を向ける。御堂の顔は相変わらず楽しそうで、それは無邪気な少年にも見える。
軽く濡れた音を響かせて、唇同士が触れ合い離れる。ただそれだけなのにひどく満たされ安心して、克哉の顔に穏やかな笑みが浮かんだ。
「幸せそうな顔だな…」
そんな克哉につられてか、御堂の笑みも、いたずらなものから幸せそうなものへと変わる。
「克哉、目を瞑れ」
「えっ…」
「いいから」
言われるがままに、克哉は目を閉じる。片手を取られ、そこに何か冷たく硬い感触を感じた。それは緩くもきつくもなく、克哉の指を包んでいた。
「…いいぞ」
「っ……これ……」
目を開けて、克哉は驚いた。左手薬指。そこに、プラチナのリングが嵌まっていた。リングには小さなダイヤモンドがあしらわれており、上品な雰囲気を醸し出している。
「君への、誕生日プレゼントだ」
「でも、これ…」
「よく似合っているな。これにして正解だった」
そっと、御堂は薬指にキスを落とす。落ち着いている御堂とは違い、克哉はただただ驚くばかりだ。
「だって、これ……結婚指輪……」
そう。御堂が克哉に贈ったのは、ただの指輪じゃあない。マリッジ・リング、結婚指輪だ。それも、フランスはパリを代表するブランドのひとつ─カルティエの、結婚指輪。
「そうだ。君に、ずっとこれを贈りたかったんだ」
「ずっと…?」
「ああ。君が私に婚姻届を渡してきた、あの時からな」
「あ…」
御堂克哉になる気はないかと問われ、答えに迷って。でも心を決めて、御堂の家族になりたいと思った。だから御堂に、婚姻届を渡した。
もちろんそれは、今の日本では到底受理されない。受理されることはないけれど、御堂に伝えたかった。
─一生、あなたに連れ添いたいと。
「婚姻届は君に先を越されてしまったからな。それで、指輪を贈ることを思い付いた」
しかし、すぐにそれを渡すことは叶わなかった。克哉の海外出張もさることながら、克哉に似合うデザインのものがなかなか見つからなかったのだ。
そして今年の冬。新しく出たデザインの指輪が克哉にようやく似合ったのだ。繊細かつ、上品で。しかし何ものにも遮ることの出来ない唯一の輝き。それはこの指輪のイメージだが、同時に克哉自身のことのようだとも感じた。だから御堂は、この指輪を選んだ。
「…本当に…いいんですか…?」
「もちろんだとも。君のために用意したものだからな」
「っ…嬉しい…」
こんな日が来るなんて、昔の自分は思いもしなかった。もしかしたら、一生一人かもしれない。そう考えることの方が多かっただろう。
でも御堂に出会って、恋人同士になって、少しずつ少しずつ様々なことを乗り越えて…。今はもう、御堂のいない人生なんて考えられない。
あなたさえそばにいてくれれば、それで良い。
「克哉。誕生日、おめでとう」
「ありがとうございます…孝典さん…」
御堂に思わずもたれかかれば、それを彼は優しく受け止める。そんな御堂の指にも、同じデザインの指輪が嵌まっていた。それがとても、嬉しかった。
これからも、ずっとずっと一緒に。来年も再来年も、それから先も。指輪は目に見えるその約束の証。
その確かな約束を胸に、二人はもう一度、唇を重ねた。
[END]
克哉、誕生日おめでとぉおっ!というわけで、克哉おたおめ小説でした。シブさんには当日あげたのに、自サイトには今日って私…orz
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