鬼畜眼鏡

「孝典さん。改めて、お誕生日おめでとうございます。これは、オレからのお祝いの気持ちです」

そう言って、克哉は御堂の目の前にチョコレートケーキを差し出した。

「ありがとう、克哉。じゃあ、いただくことにしよう」

9月29日。今日は御堂の誕生日だ。朝から四柳たちからは祝いの連絡が、一室の部下たちからはささやかではあったが、サプライズでちょっとした誕生会を催された。

誕生日を祝われて嬉しい年齢ではなくなったが、ああやって誕生日を祝われるのも悪くはない。

何より、克哉と─誰よりも大切な、心から信頼しあえる者と一緒に年を重ねることが出来るのは、とても幸福なことだ。

克哉からのチョコレートケーキは、口に含んだ瞬間に舌の上でふわりと軽やかに溶けていった。溶けたそれは甘みよりも、カカオ独特のほろ苦さとラム酒の濃厚な香りを伝えてくる。

「ケーキかと思ったが…スフレ・オ・ショコラか」
「はい。初めて作ったから、自信ないですけど…」
「とても初めてとは思えないな。飾り付けは綺麗だし、味も私好みだ。溶けていく食感も絶妙だ」
「ありがとうございます」

感想を言えば、克哉の顔に笑顔が浮かんだ。まるで花が開くような笑顔は、見ているこちらも幸せな気分にさせられる。

「克哉」

スフレをひと口フォークに乗せ、克哉の口元に運ぶ。

「えっ…あっ…い、いただきます」

少し驚き戸惑いながら、克哉は差し出したフォークを口に含んだ。

「どうだ?」
「…おいしい、です…」

自分で作ったものに美味しいというのは、謙虚な克哉には恥ずかしいものがあるようだ。その顔は、スフレに乗ったイチゴのように真っ赤だった。

「じゃあもうひと口」

今度はスフレに乗ったイチゴをフォークに刺し、克哉の口元に運ぶ。

「でも…」
「いいから」
「じゃあ…」

戸惑いがちに、克哉がイチゴを口に含む。すかさず、御堂は克哉の唇を塞いだ。

「んっ…!?」

驚いたような声が克哉の口から漏れる。舌を差し入れ、克哉の口の中のイチゴを弄ぶように口内を犯す。

「っぁ…っ…」

ぎゅっと、克哉が自身の手を握った。それを見てそっと御堂が手を重ねれば、克哉はその手を握り返す。微かに震える克哉の手は、少なからず彼が感じていることを御堂に伝える。

不意にイチゴが潰れ、甘酸っぱい果汁が二人の口内に広がる。それはショコラの甘さと苦さと混ざり合い、程よいテイストとなる。それに夢中になるかのように舌を絡めてくる克哉の舌を、御堂はまた弄ぶ。

克哉の口内からイチゴを奪ってから、御堂は唇を離した。

「…旨かったな?」
「っ…たかのりさんの、ばかっ…」

ニヤリと笑みを浮かべながら言えば、克哉は目元を真っ赤に染め上げて言葉を返した。

「あれだけ夢中になっておいて、よく言う…」

もう一度、今度は触れるだけのキスをする。濡れた音が響き、その音にすら感じたのか、克哉が体を震わせた。そんな克哉が愛おしくて、御堂は幸福感から目を細めた。

「克哉…ありがとう」

今日の一室のサプライズにしろ、このスフレにしろ。今までずっとずっと思ってきたことを、御堂は改めて伝えた。

克哉に出会えたこと、日々を過ごせたこと、一緒に歩む人生を選んでくれたこと…。それらは確実に、御堂孝典という男の人生に七色の奇跡の光を与えた。

「本当に、ありがとう」

これ以上の奇跡はきっとない。そう思う。それほどに、克哉の存在は御堂の中では大きなモノになっていた。

「…孝典さん…オレ…実はあなたに、伝えたいことがあるんです」
「伝えたいこと?」
「…はい」

頷く克哉の顔には、柔らかい笑みが浮かんでいる。その笑みはまるで、母のような微笑みだ。

「実は、オレ───……」





「──どうしたんですか?」

目の前に出されたスフレ・オ・ショコラを見て笑みを浮かべた御堂に、克哉は尋ねた。

「少し、昔を思い出してな。君は覚えているか?私にあのことを告げた日のこと」

言えば、「あぁ」と克哉も顔に笑みを浮かべた。

「もちろん、覚えてますよ。孝典さんのこと、驚かせたかったから…」
「あれは本当にサプライズだったな。まさか君の口から、あんな言葉が聞けるとは思っていなかったからな」
「オレも…あなたにあんなことを言える日がくるなんて、思ってもいませんでした」
「確かにな。だが、奇跡は確実に起こった、そうだろう?」
「…はい」

幸せそうに微笑んだ克哉に、御堂もまた笑みを返す。スフレにフォークを入れ口に含めば、あの日と変わらない上品な味と食感が口の中に広がった。

「そういえば、二人とも遅いですね…」

時計をチラリと見て、心配そうな表情を浮かべた。

「遅くなると、連絡は来たんだろう?」
「そうですけど…なんだか心配で」
「ただいまー!」
「ただいま帰りました」

克哉の言葉を遮り、玄関から少女二人の声が聞こえてきた。

「二人とも、お帰りなさい」

克哉が席を立ち、玄関まで二人を出迎えに行った。

─克哉があの日の誕生日に伝えたこと。それは子どもを身ごもったことだった。それも一人ではなく、双子の。

普通ならば有り得ない、非現実的なこと。でも、そんな奇跡は確かに起こったのだ。

あれからもう18年。克哉が身ごもった二人の娘達も、高校二年生。二人とも、親の愛情を抜きにしてもとても美しく成長したと思う。それぞれ両親に似た二人を、御堂は「かおる」、「かや」と名付けた。

「お帰り、薫、香夜」
「ただいまですわ、お父様」
「お父さんただいま!」

ダイニングに来た二人娘を御堂は温かく迎えた。

「お父さん、誕生日おめでとう!これ、私たちからのプレゼント」

克哉に似た、短い髪に水色のリボンを付けた香夜が小さな包みを差し出した。

「あぁ、ありがとう、二人とも」
「お父様に、似合うと思うモノを選びました。気に入ってくださったら嬉しいですわ」

御堂に似た、長い髪に赤い大きなリボンを付けた薫が言った。感性が御堂に似ている長女が言うのだ、きっと御堂に似合うモノなのだろう。

「二人とも、お風呂沸いてるから入ってくれば?外寒かったでしょ?」

「ありがとう、お母さん!お姉ちゃん、行こ!!」
「はいはい」

克哉の言葉にパッと笑顔になった香夜。薫を呼ぶと、二人で仲良くシャワールームに向かった。

「ふふ。二人とも、本当に仲良いですね」
「仲が良いに越したことはないからな」

娘達の様子に笑顔になる克哉に御堂も頷く。こんな幸せが訪れるとは、本当に思ってもいなかった。

香夜から受け取った小さな包みを御堂は開けた。中から出て来たのは、ネクタイを留めるためのタイピンだ。

「コレは…選んだのは香夜だな」

ピンを見て、御堂の顔に笑みが浮かぶ。

「なんで分かるんです?」
「香夜は克哉と感性も似ているからな。だから、君と同じモノを選んできた。だから薫も、私に似合うと言ってきたんだ」
「あ…ほんとだ」

タイピンを見て、克哉もクスリと笑う。そのタイピンはかつて、克哉が御堂に贈ったものと全く同じだった。克哉から贈られたそのタイピンは、いつも御堂のネクタイに留まっている。

「やっぱり、親子って似るんですね」

目を細めながら言う克哉の顔には、幸せそうな微笑みが浮かんでいる。

「そうだな…」

言って、御堂は克哉を抱き寄せた。はじめ克哉は驚いたようだが、すぐに理解したようで、身を預けてくる。その顔には、笑顔が浮かんでいた。

「克哉…私は、君に出会えて、本当に良かった」
「オレも…孝典さんに出会えて、こうして家族になれて…すごくすごく、幸せです」

きっともう、これ以上の幸せはない。そう思ったあの日、克哉は最高の幸せを持ってきた。それはきっとこれからもそう。御堂の予想を超えた幸せを、克哉は運んで来るのだろう。

「孝典さん…お誕生日、おめでとうございます」
「ありがとう、克哉」

これからも、これから先も。続いていく人生に、きっと幸せは尽きない。

[END]


初めてサイトにあげるミドカツがこんなんでいいのかwwいや良いんだ、愛はある!

今回の小説は、御堂さんおたおめ兼早く子ども生まれてくれ願望込めて書きました、嘘です。ミドカツに子どもデキちゃうネタは前からあった!twitterでも色々晒した!twitter遡っていただければ、薫と香夜のイラありますっていう←ミドカツの子どもは双子の娘だといい。で、お姉ちゃんが妹大好きで、妹もお姉ちゃん大好きならそれ
でいいよ((そんな話もいつかあげたい。

何はともあれ、御堂さんお誕生日おめでとうございます!!


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