だからお前はバカなんだ(キン肉マンスーパー・フェニックス夢小説)
名前を変える
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
大好きなチョコが来月から値上がりすると、ニュースでみた。
ハッキリいってショックだ。ここのところなんでも値段が上がりつづけていて、仕事のときもランチにいく回数をへらしてお弁当をもっていってる。いちおう「物価高にともなう賃金の見直し」なんていうのがあったけど、ハッキリいって気休めだった。だから資格をとって手当をもらうことにした。資格試験対策に半年くらい講座に通って、もうすぐ最終試験。でも、そのまえに論文を提出しないといけなくて、週明けが期限なので、この土日が山場だった。
今日も朝から資料とパソコンのモニタ、そして講義でとったノートを見くらべ、ああでもないこうでもないとフル回転で頭をはたらかせていた。せっかくの休日だけど外はあついし、それならこうしてフェニックスと二人でクーラーのきいた部屋ですごすほうがマシだ。どうせ家にいるときは(わたしが忙しくてもそうじゃなくても)フェニックスはずっと本を読んでいるし。だけど今日はめずらしく、むこうからコーヒーをいれて声をかけてくれた。
「根をつめてばかりだと効率がおちるぞ、すこし休憩したらどうだ?」
「ありがとう」
せっかくなのでひと休みしよう。おおきなマグカップになみなみはいったコーヒー。うん、いい香りだ。フェニックスはいつも本を片手に、これをチビチビとずっと飲んでいる。冷めたらおいしくないだろうと指摘したら「これはこれで味がある」とか言ってたっけ。でもホントは読書に夢中で飲むのを忘れてるせいだってわたしは知ってる。
「フェニックスの淹れてくれたコーヒーおいしい、なんだか頭のなかのモヤモヤがスッキリする」
「自分で淹れると香りに慣れてしまうからだろう」
「そうなんだけど、なんていうか、まあ気もちの問題?」
「そうか、ならばそうなのかもしれんな」
フェニックスはとっても頭がいい。いま読んでいる本の内容だってわたしにはちっとも分からない。おなじ部屋にいてもまったく別の時間をすごしているような気がするときもあるけど、ふとそれを中断して、こうしておなじものを食べたり飲んだりすると、嬉しさや楽しさを共有できている気がして、こういう瞬間がすごく好きだ。
そうだ、聞きたいことがあったんだ。
「ねえフェニックス、いま書いてる論文なんだけど、シミュレーションのデータをうまく論旨に落としこめなくて……ちょっと見てほしいんだけど」
「それはおまえの仕事だろう」
「うん、そうなんだけど、でもフェニックスは頭がいいからなんとかならないかなって」
あ、眉間のシワがいつもよりふかくなった、まずい。
「おまえは『能力のあるものが能力のないものを助けて当然』と思っているのか?なぜだ?」
う、それは考えてなかった。
「えっとーそれはーそのーそうしたほうが効率がいい……から?」
うわ、頭が悪そう。自分で言っててはずかしい。
「効率?助けているあいだ、能力のあるものの作業は停滞するのだぞ?おまえの主張は『助けることで得られる効率的成果が、助ける側の停滞によって失われる成果よりも大きい』場合のみ成立するのではないか?」
「そ、そうかもしれないけど……」
「主張に正当性が認められないのなら、オレが手伝う謂われはない」
フェニックスの意地悪。でも、ほんとは意地悪で言ってるんじゃないこと、分かってる。
その指摘は事実だし、たぶん彼はこれまでにもこんなふうに多くの人から、ヘルプを求められてきただろう。この超人 の知性は神様に愛されるほどだから。だけど、それらをすべて受けいれていたら、彼の時間はすっからかんになってしまう。
でもいまは事実だからこそ、その指摘がちょっと悲しかった。
だから。
「じゃあさ『好きな人が困ってたらちょっと助けてあげようかな』とかもない?それともわたしのことはそこまで好きじゃない?
『好きな人』という言葉を聞いたとたん、フェニックスの顔がクシャリとゆがんだ。まるで泣き笑いみたいに。
「……バカなことを」
そう、わたしはあなたに比べたらすこしも利口じゃない。だからいつだってあなたがわたしに見切りをつけて、どこかに行ってしまわないかと不安で、それでこんなふうに理屈ではとおらないことを、つい無理強いしたくなる。
「……論文を見せてみろ」
「え?」
「論文を見せろ、と言ったんだ。それからシミュレーションの結果と元データも」
「フェニックス……」
「言っておくが、能力以上のふるまいをしたツケは自分で払うんだぞ」
「うん!分かってる」
フェニックスの分析とアドバイスのおかげで課題の論文は無事に完成し、試験も合格した。来月からはお給料に手当が加算されるうえに、今月はなんと合格報奨金がでた。だから今夜はお祝いにちょっと奮発してお寿司を買って帰った。
「このたびはお世話になりました!これはお礼の気もちです、たべてたべて!!」
「金がないから資格を取るのだと言っていたのにこんな無駄づかいをして、まったく」
口ではそう言いながらもフェニックスはさっそく寿司桶のなかのマグロに手をのばした。それも大トロ。まあそのつもりで買ってきたからいいんだけど。マグロに白身にアナゴにと、たちまちお寿司が消えていく。
「無駄づかいかもしれないけどさ、論文が書けたのはフェニックスのおかげだし。それにうれしかったの、フェニックスのなかでわたしは特別なんだって分かったから」
「なにを今さら……だからおまえはバカなんだ」
またバカって言われてしまった。でもマスクにはちゃんと笑顔がうかんでいる。それが本心じゃないってことも、言葉の裏側にかくれているものも、わたしはもう知ってるからね。
end
(2025.07.25 書き下ろし)
ハッキリいってショックだ。ここのところなんでも値段が上がりつづけていて、仕事のときもランチにいく回数をへらしてお弁当をもっていってる。いちおう「物価高にともなう賃金の見直し」なんていうのがあったけど、ハッキリいって気休めだった。だから資格をとって手当をもらうことにした。資格試験対策に半年くらい講座に通って、もうすぐ最終試験。でも、そのまえに論文を提出しないといけなくて、週明けが期限なので、この土日が山場だった。
今日も朝から資料とパソコンのモニタ、そして講義でとったノートを見くらべ、ああでもないこうでもないとフル回転で頭をはたらかせていた。せっかくの休日だけど外はあついし、それならこうしてフェニックスと二人でクーラーのきいた部屋ですごすほうがマシだ。どうせ家にいるときは(わたしが忙しくてもそうじゃなくても)フェニックスはずっと本を読んでいるし。だけど今日はめずらしく、むこうからコーヒーをいれて声をかけてくれた。
「根をつめてばかりだと効率がおちるぞ、すこし休憩したらどうだ?」
「ありがとう」
せっかくなのでひと休みしよう。おおきなマグカップになみなみはいったコーヒー。うん、いい香りだ。フェニックスはいつも本を片手に、これをチビチビとずっと飲んでいる。冷めたらおいしくないだろうと指摘したら「これはこれで味がある」とか言ってたっけ。でもホントは読書に夢中で飲むのを忘れてるせいだってわたしは知ってる。
「フェニックスの淹れてくれたコーヒーおいしい、なんだか頭のなかのモヤモヤがスッキリする」
「自分で淹れると香りに慣れてしまうからだろう」
「そうなんだけど、なんていうか、まあ気もちの問題?」
「そうか、ならばそうなのかもしれんな」
フェニックスはとっても頭がいい。いま読んでいる本の内容だってわたしにはちっとも分からない。おなじ部屋にいてもまったく別の時間をすごしているような気がするときもあるけど、ふとそれを中断して、こうしておなじものを食べたり飲んだりすると、嬉しさや楽しさを共有できている気がして、こういう瞬間がすごく好きだ。
そうだ、聞きたいことがあったんだ。
「ねえフェニックス、いま書いてる論文なんだけど、シミュレーションのデータをうまく論旨に落としこめなくて……ちょっと見てほしいんだけど」
「それはおまえの仕事だろう」
「うん、そうなんだけど、でもフェニックスは頭がいいからなんとかならないかなって」
あ、眉間のシワがいつもよりふかくなった、まずい。
「おまえは『能力のあるものが能力のないものを助けて当然』と思っているのか?なぜだ?」
う、それは考えてなかった。
「えっとーそれはーそのーそうしたほうが効率がいい……から?」
うわ、頭が悪そう。自分で言っててはずかしい。
「効率?助けているあいだ、能力のあるものの作業は停滞するのだぞ?おまえの主張は『助けることで得られる効率的成果が、助ける側の停滞によって失われる成果よりも大きい』場合のみ成立するのではないか?」
「そ、そうかもしれないけど……」
「主張に正当性が認められないのなら、オレが手伝う謂われはない」
フェニックスの意地悪。でも、ほんとは意地悪で言ってるんじゃないこと、分かってる。
その指摘は事実だし、たぶん彼はこれまでにもこんなふうに多くの人から、ヘルプを求められてきただろう。この
でもいまは事実だからこそ、その指摘がちょっと悲しかった。
だから。
「じゃあさ『好きな人が困ってたらちょっと助けてあげようかな』とかもない?それともわたしのことはそこまで好きじゃない?
『好きな人』という言葉を聞いたとたん、フェニックスの顔がクシャリとゆがんだ。まるで泣き笑いみたいに。
「……バカなことを」
そう、わたしはあなたに比べたらすこしも利口じゃない。だからいつだってあなたがわたしに見切りをつけて、どこかに行ってしまわないかと不安で、それでこんなふうに理屈ではとおらないことを、つい無理強いしたくなる。
「……論文を見せてみろ」
「え?」
「論文を見せろ、と言ったんだ。それからシミュレーションの結果と元データも」
「フェニックス……」
「言っておくが、能力以上のふるまいをしたツケは自分で払うんだぞ」
「うん!分かってる」
フェニックスの分析とアドバイスのおかげで課題の論文は無事に完成し、試験も合格した。来月からはお給料に手当が加算されるうえに、今月はなんと合格報奨金がでた。だから今夜はお祝いにちょっと奮発してお寿司を買って帰った。
「このたびはお世話になりました!これはお礼の気もちです、たべてたべて!!」
「金がないから資格を取るのだと言っていたのにこんな無駄づかいをして、まったく」
口ではそう言いながらもフェニックスはさっそく寿司桶のなかのマグロに手をのばした。それも大トロ。まあそのつもりで買ってきたからいいんだけど。マグロに白身にアナゴにと、たちまちお寿司が消えていく。
「無駄づかいかもしれないけどさ、論文が書けたのはフェニックスのおかげだし。それにうれしかったの、フェニックスのなかでわたしは特別なんだって分かったから」
「なにを今さら……だからおまえはバカなんだ」
またバカって言われてしまった。でもマスクにはちゃんと笑顔がうかんでいる。それが本心じゃないってことも、言葉の裏側にかくれているものも、わたしはもう知ってるからね。
end
(2025.07.25 書き下ろし)
1/1ページ
