あのなかには(ザ・ニンジャ夢小説)
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彼女とザ・ニンジャが日曜の夜をリビングでのんびり過ごしていると、つけっぱなしにしていたテレビで超人格闘技の話が始まった。
案の定キン肉マンの名前が出てきて、なつかしいあの顔――悪魔超人の一人いわくブタ面――が画面いっぱいに映しだされた。
彼が大王についてもうどれくらいになるだろう。
「ねえ、ニンジャさんはキン肉マンとも知り合いなんでしょう?」
「ああ。もう長らく会っていないがな」
「わたしずっと気になってたんだけど、キン肉族ってみんなマスクの頭のところに三角のカザリがついているでしょう?あれは何か意味があるの?」
ふむ、とニンジャはななめ上に目をやり、一考するような様子をみせたあと口をひらいた。
「キン肉族は生まれたときに親から与えられたマスクを一生つけて過ごすことはそなたも知っているだろう?」
「ええ。それでマスクを失くしたり、誰かに素顔を見られてしまったら自害しないといけないしきたりがあるのよね?」
「そうだ。それだけあのマスクは彼らにとって大切なもの、ということになるな。ではあの頭の飾りのなかがどうなっているのかというと……」
秘密めかした様子に彼女はつい身をのりだした。
「いうと?」
ニンジャはナイショだぞ、というふうに人差し指をたてて口にあてた。
「あの中にはな、緊急アイテムが入っているのだ」
「ええっ!?」
「たとえば救荒食とか、薬、それから小さな発信機、などだな。キン肉族はかつては争いの絶えない種族だったから、おそらくそういうところからきているのだろう」
「そうなの……キン肉族は子供思いなのね」
彼女はあらためてテレビ画面をみつめて深く感じいった様子でつぶやいた。
ところが当のニンジャは彼女に背を向けてなぜか肩をふるわせている。
「ニンジャさん?」
「プ、プ……クク」
押しころしたような声はどうやら笑いをこらえかねてのものらしい。とうとうニンジャは「ハハハハハ!」と声をあげて笑いだした。
「ど、どうしたの?」
「ククク……ハハ。すまん、いまのは冗談だ。あのトサカの中身は拙者もさすがに知らなんだ」
「えっ!?じゃあ、あれはウソなの?」
「ああ、そなたの聞き方があんまり無邪気で愛らしいゆえ、たばかってしまった。許してくれ」
「ひどいわ、わたし本気で信じたのに。それにしてもニンジャさん、ウソをつくのが上手ね」
「まあ元・シノビゆえ、な」
それから数日がたったある日、ニンジャは「渡したいものがある」と彼女を居間に呼んだ。
「これをそなたにやろう」
ニンジャがさし出したのは緋色のちりめんでできたきんちゃく袋だった。
「これはなに?」
「開けてみよ」
手のひらよりすこし小さいくらいの袋のなかには小さな丸薬と筒のような笛、そしてなぜか折り鶴がはいっていた。
「このあいだ、トサカの話をしたろう?それでそなたにこれを持たせておこうと思ってな。その丸薬は『兵糧丸』といって救荒食だ。疲れと飢えをいやしてくれる。笛はわかるな?それからその鶴、それは拙者の念をこめてある。もうどうしようないというほどの緊急事態になったら鶴の羽をひろげて、底の穴に息をふきこむのだ。さすればその鶴はひとりでに拙者のもとへ飛んできて、そなたの元へ案内する仕組みになっている」
「……わたしのために?」
「ああ、何かあったとき拙者がそばにおるとは限らぬからな」
「ありがとう、とってもうれしい。ずっと持ち歩くから」
ニンジャは彼女を抱きよせると、やさしく耳元にささやいた。
「いつもそなたのことを思っているぞ、忘れないでくれ」
end
(2024.08.26 書き下ろし)
案の定キン肉マンの名前が出てきて、なつかしいあの顔――悪魔超人の一人いわくブタ面――が画面いっぱいに映しだされた。
彼が大王についてもうどれくらいになるだろう。
「ねえ、ニンジャさんはキン肉マンとも知り合いなんでしょう?」
「ああ。もう長らく会っていないがな」
「わたしずっと気になってたんだけど、キン肉族ってみんなマスクの頭のところに三角のカザリがついているでしょう?あれは何か意味があるの?」
ふむ、とニンジャはななめ上に目をやり、一考するような様子をみせたあと口をひらいた。
「キン肉族は生まれたときに親から与えられたマスクを一生つけて過ごすことはそなたも知っているだろう?」
「ええ。それでマスクを失くしたり、誰かに素顔を見られてしまったら自害しないといけないしきたりがあるのよね?」
「そうだ。それだけあのマスクは彼らにとって大切なもの、ということになるな。ではあの頭の飾りのなかがどうなっているのかというと……」
秘密めかした様子に彼女はつい身をのりだした。
「いうと?」
ニンジャはナイショだぞ、というふうに人差し指をたてて口にあてた。
「あの中にはな、緊急アイテムが入っているのだ」
「ええっ!?」
「たとえば救荒食とか、薬、それから小さな発信機、などだな。キン肉族はかつては争いの絶えない種族だったから、おそらくそういうところからきているのだろう」
「そうなの……キン肉族は子供思いなのね」
彼女はあらためてテレビ画面をみつめて深く感じいった様子でつぶやいた。
ところが当のニンジャは彼女に背を向けてなぜか肩をふるわせている。
「ニンジャさん?」
「プ、プ……クク」
押しころしたような声はどうやら笑いをこらえかねてのものらしい。とうとうニンジャは「ハハハハハ!」と声をあげて笑いだした。
「ど、どうしたの?」
「ククク……ハハ。すまん、いまのは冗談だ。あのトサカの中身は拙者もさすがに知らなんだ」
「えっ!?じゃあ、あれはウソなの?」
「ああ、そなたの聞き方があんまり無邪気で愛らしいゆえ、たばかってしまった。許してくれ」
「ひどいわ、わたし本気で信じたのに。それにしてもニンジャさん、ウソをつくのが上手ね」
「まあ元・シノビゆえ、な」
それから数日がたったある日、ニンジャは「渡したいものがある」と彼女を居間に呼んだ。
「これをそなたにやろう」
ニンジャがさし出したのは緋色のちりめんでできたきんちゃく袋だった。
「これはなに?」
「開けてみよ」
手のひらよりすこし小さいくらいの袋のなかには小さな丸薬と筒のような笛、そしてなぜか折り鶴がはいっていた。
「このあいだ、トサカの話をしたろう?それでそなたにこれを持たせておこうと思ってな。その丸薬は『兵糧丸』といって救荒食だ。疲れと飢えをいやしてくれる。笛はわかるな?それからその鶴、それは拙者の念をこめてある。もうどうしようないというほどの緊急事態になったら鶴の羽をひろげて、底の穴に息をふきこむのだ。さすればその鶴はひとりでに拙者のもとへ飛んできて、そなたの元へ案内する仕組みになっている」
「……わたしのために?」
「ああ、何かあったとき拙者がそばにおるとは限らぬからな」
「ありがとう、とってもうれしい。ずっと持ち歩くから」
ニンジャは彼女を抱きよせると、やさしく耳元にささやいた。
「いつもそなたのことを思っているぞ、忘れないでくれ」
end
(2024.08.26 書き下ろし)
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