全面降伏(ネプチューンマン夢小説)
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梅雨真っ盛り。湿気と人ごみで息がつまりそうになる街から逃げだすように、ネプチューンマンは彼女をつれて海へとクルマを走らせた。マセラッティの車内はエアコンが申し分なくきいていてたいへん心地よい。彼女はゆったりとしずむ本革のシートに身体をあずけ、ネプチューンマンもまたなにかのメロディを口ずさみながら、悠揚と運転を楽しんでいる。
「窓をあけてもいい?」
「ああ」
彼女がパワーウィンドウのスイッチにふれると、窓ガラスは音もなくスルスルとさがり、たちまち潮の香をふくんだ風が車内に流れいった。
「いい気もち」
彼女は髪を風にあそばせながら、そのにおいをかいだ。
やがて二人は海ぞいの駐車場にクルマをとめ、眼下にひろがる海原をながめた。遠くでサーファーたちが波のりに精をだしている。
風がネプチューンマンの金髪をなぶるたび、髪は陽にすけて金糸のようにキラキラと輝き、雲間からさしこんだ陽光にネプチューンマンのマスクがキラリと照り映えた。赤く艶々しい仮面は、コーカソイドならではの白い肌とあざやかなコントラストをなしている。
そして鍛えあげられたみごとな体躯。まるでなにかの神性が具現化したかのようにも思える。
彼が完璧を称するだけのことはある。もちろんそれは超人としての強さや理念について冠せられた言葉なのだけど。
彼女の視線に気づいたネプチューンマンはいぶかしげにたずねた。
「……私の顔になにかついているか?」
「え、ううん、べつに」
マズい、と彼女はおもった。
きっとこのまま見つめあっていたら、ネプチューンマンは彼女のあごに手をかけて。
顔をあおむかせて。
キスをするだろう。
そう、いつもみたいに。
それはたいへん歓迎すべきことだけど、できることなら周りに人がいないときにしてほしい。
流れをかえようと、彼女は海に視線をむけた。
「そ、そういえば、海がキレイね」
するとネプチューンマンは彼女の肩に手をまわして、おのれの腕のなかに抱きよせるとささやいた。
「おまえのほうが綺麗だ」
あけすけな熱情に、顔がカッと熱くなる。見あげたマスクの表面にはうっすら自分の姿が映っていた。
――だけど、今まで彼はいったいどれだけの相手に同じことを言ってきたのだろう。これほどの人を、いや超人を、だれが放っておくというのだ。
「……こんなことを言うのはおまえだけだ」
魂の奥底まで見すかすような青い瞳でのぞきこまれ、彼女はそんなちいさな懊悩など、もうどうでもよくなってしまった。
仕方がない。彼女は全面降伏することにきめた。
「ありがとう。愛しているわ、ネプチューンマン」
end
(2024.06.29 書き下ろし)
「窓をあけてもいい?」
「ああ」
彼女がパワーウィンドウのスイッチにふれると、窓ガラスは音もなくスルスルとさがり、たちまち潮の香をふくんだ風が車内に流れいった。
「いい気もち」
彼女は髪を風にあそばせながら、そのにおいをかいだ。
やがて二人は海ぞいの駐車場にクルマをとめ、眼下にひろがる海原をながめた。遠くでサーファーたちが波のりに精をだしている。
風がネプチューンマンの金髪をなぶるたび、髪は陽にすけて金糸のようにキラキラと輝き、雲間からさしこんだ陽光にネプチューンマンのマスクがキラリと照り映えた。赤く艶々しい仮面は、コーカソイドならではの白い肌とあざやかなコントラストをなしている。
そして鍛えあげられたみごとな体躯。まるでなにかの神性が具現化したかのようにも思える。
彼が完璧を称するだけのことはある。もちろんそれは超人としての強さや理念について冠せられた言葉なのだけど。
彼女の視線に気づいたネプチューンマンはいぶかしげにたずねた。
「……私の顔になにかついているか?」
「え、ううん、べつに」
マズい、と彼女はおもった。
きっとこのまま見つめあっていたら、ネプチューンマンは彼女のあごに手をかけて。
顔をあおむかせて。
キスをするだろう。
そう、いつもみたいに。
それはたいへん歓迎すべきことだけど、できることなら周りに人がいないときにしてほしい。
流れをかえようと、彼女は海に視線をむけた。
「そ、そういえば、海がキレイね」
するとネプチューンマンは彼女の肩に手をまわして、おのれの腕のなかに抱きよせるとささやいた。
「おまえのほうが綺麗だ」
あけすけな熱情に、顔がカッと熱くなる。見あげたマスクの表面にはうっすら自分の姿が映っていた。
――だけど、今まで彼はいったいどれだけの相手に同じことを言ってきたのだろう。これほどの人を、いや超人を、だれが放っておくというのだ。
「……こんなことを言うのはおまえだけだ」
魂の奥底まで見すかすような青い瞳でのぞきこまれ、彼女はそんなちいさな懊悩など、もうどうでもよくなってしまった。
仕方がない。彼女は全面降伏することにきめた。
「ありがとう。愛しているわ、ネプチューンマン」
end
(2024.06.29 書き下ろし)
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