ゆきてもどりし(パイレートマン夢小説)
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パイレートマンと彼女は夜をとおして身体を重ね、愛をたしかめあった。やがてカーテンのすきまから曙光が差しこみ、まどろみにしずんでいた彼女をめざめさせる。大きなベッドの上で彼女はうっそりと身をおこした。かたわらに横たわるパイレートマンの漆黒の身体もまたケタ外れに大きい。くしゃくしゃになったシーツをそっとわきによせると、その気配で彼も目をさました。
「……朝か」
「うん」
――最後の朝。
パイレートマンが「シャワーを浴びてくる」とバスルームに姿を消すと、彼女もベッドをはなれた。電話で朝食のルームサービスを注文し、料理がとどくのを待つあいだ、ぼんやりとテレビニュースをながめる。画面のなかでは、ニュースキャスターが「オメガ・ケンタウリの六鎗客らが、ちかく地球を出立する」と告げていた。
彼女はもうとっくに知っている。ゆうべ、パイレートマンからそのことを告げられた。
――オメガ・ケンタウルス星団の惑星オメガに居する超人たちが、前ぶれもなく地球を急襲したのは、それほど昔のことではない。
惑星オメガが滅亡の危機にひんしたため、星を救う術をもとめて、彼らのなかでもとくに優れた六人が「オメガ・ケンタウリの六鎗客」と自らを称し、スペインのサグラダ・ファミリアに現れたのだ。そのうちの一人が超人・パイレートマンであった。機械と肉の融合した身体をもち、身の丈285センチの体躯に見合った男気と実力を兼ねそなえた、堂々たる偉丈夫だ。
六鎗客の目的はある力の取得と地球上の全超人の抹殺にあり、その尋常ならざる野望は、テレビ中継で全世界に放映された。
彼らが地球にもたらす脅威については彼女もじゅうぶん理解していた。しかし、懊悩と苛烈とを溶かしこんだ坩堝のように赤いパイレートマンの瞳や、果断のない戦いぶりをテレビで見ているうちに、気がつけば昼も夜も彼のことを考えているようになってしまい、自分はパイレートマンに恋をしたのだとさとった。
そして彼女は彼を追いもとめてついに愛を伝え、彼もまたそれに答えた。
しかし、初めての夜にパイレートマンはキッパリとこういった。「地球に混乱と災厄をもたらしたオメガの民と通じているなどと、他人に知られぬほうがよい」。彼女自身は気にするつもりもなかったが、相手の立場を考え、言葉にしたがうことにした。
以来、逢瀬は秘密裏に彼女がパイレートマンのもとへおとなうこととなった。
彼女が物思いにふけるうちに、シャワーをおえたパイレートマンがバスルームから姿をあらわした。シーツと見まがうようなサイズのバスローブをまとい、無造作にドレッドヘアを上にくくっている。露出した肌には黒檀色をした人間のような皮膚と、ロボットのような金属の部分がある。彼と肌を重ねると、温かさと冷たさがとなり合っていて、いつも不思議な感じがする。
「おまえもシャワーを浴びるといい」
「まだ朝ごはん、きてないから」
「吾輩が受けとっておく」
「ありがとう、それじゃ」
彼女はバスルームにきえ、パイレートマンはその小さな背中をながめながら昨夜の出来ごとを思いかえしていた。
情交のあと、たがいに荒い息づかいがおさまり、ゆったりと余韻にひたるなかでパイレートマンが彼女につげた。
「オメガに帰るときがきたようだ」
「そう……いつ?」
「地球を出るのはまだ何日か先だが、この部屋はあした引きはらう」
つまり密会も今夜でさいごというわけだ。
「わかったわ、いままでありがとう」
愁嘆場を覚悟していたパイレートマンは、彼女の聞きわけのよさに少々拍子抜けした。
オメガ再生計画はモルティエ・デ・ビンを手にいれたことで、ほぼ達成した(地球超人のせん滅ははたせなかったが、そもそもそれは必要のないことだった)。
計画遂行中、六鎗客らは超人のみならず人間たちからも怒濤のごとく罵詈雑言をあびせられ、仲間の半数が戦いで命をおとしていた。パイレートマンは何ほどのこともないという体をつらぬいていたが、仲間との結びつきをことさら重んじる元・海賊である彼の心中はいかばかりであったか。友のために自らを犠牲にする正義超人の姿が、自分たちと重る瞬間もあったろう。
そんな状況下の戦いのあとは、昂ぶりをしずめるための相手が――女が必要だった。人間の女も異星人とはいえ同じヒト型、交わるだけなら問題ない。金で相手をあがなうつもりだったが、思いがけず彼女がパイレートマンのまえに現れた。
これは好都合と、パイレートマンはためらいなく彼女を抱いた。その身体はオメガの星の女とくらべると、おどろくほどもろかった。パイレートマンが思いきり抱きしめたら、枯れ枝のようにポキリと折れてしまうだろう。生肉を噛みしめるようにその肌に歯をたてたならば。
丁重に彼女をベッドに組み敷くとき、彼のなかにはいつも淫靡な愉悦があった。
けれどもそうして肌を重ねあわせるううち、いつしかパイレートマンはこの人間の女に心をよせるようになっていた。
彼女はシャワーの湯音を我慢できるギリギリまであげると、ハンドルをおもいきりひねった。とたんに熱い雨が彼女の身体をしたたかにうち、バスルームにもうもうと湯気がたちこめる。情交でぼんやりしていた頭のなかが目ざめていくとともに、別離の実感が黒いシミのように心のなかに広がっていった。
しかし、いずれ別れの日がくることは分かっていた。そもそも告白したものの、パイレートマンが自分を受け容れてくれるとは夢にも思っていなかった。
僥倖だったのだ。
だから、せめて気持ちよく彼を送りだしたい。
「……朝か」
「うん」
――最後の朝。
パイレートマンが「シャワーを浴びてくる」とバスルームに姿を消すと、彼女もベッドをはなれた。電話で朝食のルームサービスを注文し、料理がとどくのを待つあいだ、ぼんやりとテレビニュースをながめる。画面のなかでは、ニュースキャスターが「オメガ・ケンタウリの六鎗客らが、ちかく地球を出立する」と告げていた。
彼女はもうとっくに知っている。ゆうべ、パイレートマンからそのことを告げられた。
――オメガ・ケンタウルス星団の惑星オメガに居する超人たちが、前ぶれもなく地球を急襲したのは、それほど昔のことではない。
惑星オメガが滅亡の危機にひんしたため、星を救う術をもとめて、彼らのなかでもとくに優れた六人が「オメガ・ケンタウリの六鎗客」と自らを称し、スペインのサグラダ・ファミリアに現れたのだ。そのうちの一人が超人・パイレートマンであった。機械と肉の融合した身体をもち、身の丈285センチの体躯に見合った男気と実力を兼ねそなえた、堂々たる偉丈夫だ。
六鎗客の目的はある力の取得と地球上の全超人の抹殺にあり、その尋常ならざる野望は、テレビ中継で全世界に放映された。
彼らが地球にもたらす脅威については彼女もじゅうぶん理解していた。しかし、懊悩と苛烈とを溶かしこんだ坩堝のように赤いパイレートマンの瞳や、果断のない戦いぶりをテレビで見ているうちに、気がつけば昼も夜も彼のことを考えているようになってしまい、自分はパイレートマンに恋をしたのだとさとった。
そして彼女は彼を追いもとめてついに愛を伝え、彼もまたそれに答えた。
しかし、初めての夜にパイレートマンはキッパリとこういった。「地球に混乱と災厄をもたらしたオメガの民と通じているなどと、他人に知られぬほうがよい」。彼女自身は気にするつもりもなかったが、相手の立場を考え、言葉にしたがうことにした。
以来、逢瀬は秘密裏に彼女がパイレートマンのもとへおとなうこととなった。
彼女が物思いにふけるうちに、シャワーをおえたパイレートマンがバスルームから姿をあらわした。シーツと見まがうようなサイズのバスローブをまとい、無造作にドレッドヘアを上にくくっている。露出した肌には黒檀色をした人間のような皮膚と、ロボットのような金属の部分がある。彼と肌を重ねると、温かさと冷たさがとなり合っていて、いつも不思議な感じがする。
「おまえもシャワーを浴びるといい」
「まだ朝ごはん、きてないから」
「吾輩が受けとっておく」
「ありがとう、それじゃ」
彼女はバスルームにきえ、パイレートマンはその小さな背中をながめながら昨夜の出来ごとを思いかえしていた。
情交のあと、たがいに荒い息づかいがおさまり、ゆったりと余韻にひたるなかでパイレートマンが彼女につげた。
「オメガに帰るときがきたようだ」
「そう……いつ?」
「地球を出るのはまだ何日か先だが、この部屋はあした引きはらう」
つまり密会も今夜でさいごというわけだ。
「わかったわ、いままでありがとう」
愁嘆場を覚悟していたパイレートマンは、彼女の聞きわけのよさに少々拍子抜けした。
オメガ再生計画はモルティエ・デ・ビンを手にいれたことで、ほぼ達成した(地球超人のせん滅ははたせなかったが、そもそもそれは必要のないことだった)。
計画遂行中、六鎗客らは超人のみならず人間たちからも怒濤のごとく罵詈雑言をあびせられ、仲間の半数が戦いで命をおとしていた。パイレートマンは何ほどのこともないという体をつらぬいていたが、仲間との結びつきをことさら重んじる元・海賊である彼の心中はいかばかりであったか。友のために自らを犠牲にする正義超人の姿が、自分たちと重る瞬間もあったろう。
そんな状況下の戦いのあとは、昂ぶりをしずめるための相手が――女が必要だった。人間の女も異星人とはいえ同じヒト型、交わるだけなら問題ない。金で相手をあがなうつもりだったが、思いがけず彼女がパイレートマンのまえに現れた。
これは好都合と、パイレートマンはためらいなく彼女を抱いた。その身体はオメガの星の女とくらべると、おどろくほどもろかった。パイレートマンが思いきり抱きしめたら、枯れ枝のようにポキリと折れてしまうだろう。生肉を噛みしめるようにその肌に歯をたてたならば。
丁重に彼女をベッドに組み敷くとき、彼のなかにはいつも淫靡な愉悦があった。
けれどもそうして肌を重ねあわせるううち、いつしかパイレートマンはこの人間の女に心をよせるようになっていた。
彼女はシャワーの湯音を我慢できるギリギリまであげると、ハンドルをおもいきりひねった。とたんに熱い雨が彼女の身体をしたたかにうち、バスルームにもうもうと湯気がたちこめる。情交でぼんやりしていた頭のなかが目ざめていくとともに、別離の実感が黒いシミのように心のなかに広がっていった。
しかし、いずれ別れの日がくることは分かっていた。そもそも告白したものの、パイレートマンが自分を受け容れてくれるとは夢にも思っていなかった。
僥倖だったのだ。
だから、せめて気持ちよく彼を送りだしたい。
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