そういうことはあまり(アトランティス夢小説)
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肩口まですっぽりコタツにはいりながら、彼女はあらためて部屋を見わたした。
八畳の和室はテレビもなくひどく殺風景で、壁の振り子時計がカチコチと時を刻む音だけが存在を主張している。陽光を受けて照り映える雪の明るさが障子を透かしてうかがえた。
ふいにアトランティスがボソリとつぶやいた。
「悪かったな、ほんと」
「違うわ。後ろから雪を投げつけた私が悪いのよ。そうだ、そういえば渡したかったものがあるのよ」
彼女はあわててかぶりをふると、かたわらのショルダーバッグから包みを取り出した。
「はい、これ!開けてみて」
彼女にうながされ、アトランティスが鮮やかな緑色の包装紙をひらくと、太い毛糸でざっくりと編まれた真っ赤なマフラーが姿を現した。広げればダラリと長く、そこに首だけでなく顎下まですっぽり埋めたらたいそう暖かいだろう。
「……オレの?」
「うん。本当はクリスマスに渡したかったの。でも、編みあがらなくて」
彼女は少し恥ずかしそうに微笑んだ。それから立ち上がって彼に近づき「貸して」とマフラーをアトランティスの首に優しく巻きつけた。
「似合うわ、あなたの眼の色にピッタリ」
嬉しそうにこちらを見上げる相手に、自分はこれまで何を返してやっただろうか。
照れ隠しとはいえ、いつもすげない素振りをしてきたことに対して急に罪の意識が芽生えた。
「聞いてもいいか?」
「なあに?」
「何でだ?旨いメシや、こんなモノを……オレは人好きのするタイプじゃないし、アンタに優しくも親切にもしたことがない」
「親切にしてくれたわ。コンパクトを拾ってくれたじゃない、初めて会ったとき」
「それきりだ」
「ちゃんと待ち合わせに来てくれるし」
「約束は守るもんだろ」
「そうねえ……でもそういう事はあまり気にしていないの。なぜって結局はアトランティスのことが好きだからよ」
大人しげでいつも柔らかな笑みを浮かべている彼女から、思いもかけずストレートな愛の告白をうけてアトランティスはつい「ハア!?」とすっとんきょうな声を上げてしまった。
「寒さでアタマがおかしくなったか?」
「ううん、ちゃんと正常よ。正常だし、アトランティス、あなたが好きよ。分かってくれるまで何度でも言うわ」
アトランティスは自身の手の甲に白く滑らかな指がそっとのせられたのを感じた。
それから彼女はうつむくと、彼の厚い胸板にコツンと小さな額をあてた。
「……ダメかな?」
「別に、そんなことは」
その応えに彼女はそっと顔をあげた。
「アトランティスは?」
やはり、そう来たか。
その一言が出てこないから苦労しているのに。いつものように切り返せたらどんなに楽だろう。
――仕方ない。
「眼、とじろよ」
「……え?」
「眼をひらいたままキスをするのが趣味なら構わないがな」
彼女はほんのり頬を赤らめ、ほほえみを浮かべたままでまぶたを閉じた。
驚くほど長いまつ毛がフル、と揺らいだ。
本当にこいつらは面倒な生き物だ。
そっと唇を寄せながらアトランティスは再びそう思った。
End
初出 オンラインイベント 2021.00.00
八畳の和室はテレビもなくひどく殺風景で、壁の振り子時計がカチコチと時を刻む音だけが存在を主張している。陽光を受けて照り映える雪の明るさが障子を透かしてうかがえた。
ふいにアトランティスがボソリとつぶやいた。
「悪かったな、ほんと」
「違うわ。後ろから雪を投げつけた私が悪いのよ。そうだ、そういえば渡したかったものがあるのよ」
彼女はあわててかぶりをふると、かたわらのショルダーバッグから包みを取り出した。
「はい、これ!開けてみて」
彼女にうながされ、アトランティスが鮮やかな緑色の包装紙をひらくと、太い毛糸でざっくりと編まれた真っ赤なマフラーが姿を現した。広げればダラリと長く、そこに首だけでなく顎下まですっぽり埋めたらたいそう暖かいだろう。
「……オレの?」
「うん。本当はクリスマスに渡したかったの。でも、編みあがらなくて」
彼女は少し恥ずかしそうに微笑んだ。それから立ち上がって彼に近づき「貸して」とマフラーをアトランティスの首に優しく巻きつけた。
「似合うわ、あなたの眼の色にピッタリ」
嬉しそうにこちらを見上げる相手に、自分はこれまで何を返してやっただろうか。
照れ隠しとはいえ、いつもすげない素振りをしてきたことに対して急に罪の意識が芽生えた。
「聞いてもいいか?」
「なあに?」
「何でだ?旨いメシや、こんなモノを……オレは人好きのするタイプじゃないし、アンタに優しくも親切にもしたことがない」
「親切にしてくれたわ。コンパクトを拾ってくれたじゃない、初めて会ったとき」
「それきりだ」
「ちゃんと待ち合わせに来てくれるし」
「約束は守るもんだろ」
「そうねえ……でもそういう事はあまり気にしていないの。なぜって結局はアトランティスのことが好きだからよ」
大人しげでいつも柔らかな笑みを浮かべている彼女から、思いもかけずストレートな愛の告白をうけてアトランティスはつい「ハア!?」とすっとんきょうな声を上げてしまった。
「寒さでアタマがおかしくなったか?」
「ううん、ちゃんと正常よ。正常だし、アトランティス、あなたが好きよ。分かってくれるまで何度でも言うわ」
アトランティスは自身の手の甲に白く滑らかな指がそっとのせられたのを感じた。
それから彼女はうつむくと、彼の厚い胸板にコツンと小さな額をあてた。
「……ダメかな?」
「別に、そんなことは」
その応えに彼女はそっと顔をあげた。
「アトランティスは?」
やはり、そう来たか。
その一言が出てこないから苦労しているのに。いつものように切り返せたらどんなに楽だろう。
――仕方ない。
「眼、とじろよ」
「……え?」
「眼をひらいたままキスをするのが趣味なら構わないがな」
彼女はほんのり頬を赤らめ、ほほえみを浮かべたままでまぶたを閉じた。
驚くほど長いまつ毛がフル、と揺らいだ。
本当にこいつらは面倒な生き物だ。
そっと唇を寄せながらアトランティスは再びそう思った。
End
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